魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~   作:G-3X

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第七話 スキャンダルは仮面ライダー?【後編】

「なるほど。正式なお名前は仮面ライダーシードさんっていうんですね」

 

「は、はい」

 

恵理さんはメモ用紙にペン先を走らせながら、次々に俺へと質問を投げかけてくる。

 

現在俺と恵理さんは、海鳴公園のベンチで緊急独占仮面ライダー座談会を開催している。

 

商店街で話し掛けられた時に、逃げようと思えば簡単に逃げる事は確かに出来た。

 

だがそれをすれば、プロの記者である恵理さんは躍起になって、俺の動向を追う様になるだろう。

 

それは後々の事を考えると非常に拙い。

 

ならば此処はあえて恵理さんのインタビューに応じる事で、満足してもらい余計な手間を省こうと、メカ犬と相談して決めた。

 

かくして、この様なガチのヒーローインタビューという、シュールな光景が繰り広げられる事になったのである。

 

ちなみに何故海鳴公園のベンチで開催しているかというと、流石に商店街のど真ん中では目立つし、仮面ライダーの格好で落ち着ける様な飲食店に行こうものなら、その店が落ち着かない事になる事受け合いだからである。

 

一瞬だけ、翠屋なら大丈夫そうだなと思いもしたが、それはそれで新たな厄介の火種を生む恐れが有るので、近場で夕方なら人気が少ない、この海鳴公園でする事になったのである。

 

「ズバリ聞くんですけど、仮面ライダーさんは何者なんですか?」

 

恵理さんが興奮気味に瞳を輝かせながら聞いてくる。

 

「えっと、正義の味方をやってます…一応」

 

これから更に三十分にも及ぶ恵理さんの質問攻撃は続いた。

 

俺達やホルダーの事はそれとなくぼかしながら、話せる範囲を話し切った事で、恵理さんは満足したようだ。

 

「貴重なお話ありがとう御座いました。良い記事にしますんで楽しみにしていてくださいね」

 

「はぁ」

 

絵里さんは俺に一礼するとベンチから立ち上がり公園を走り去っていった。

 

その後姿が見えなくなるのを確認した俺は全身を脱力させた。

 

「…はぁ~やっと行ってくれたな」

 

『うむ。しかし完全にホルダーを見失ってしまったな』

 

恵理さんが居なくなった事でメカ犬も喋りだした。

 

「ああ。それに分からない事も有るしな」

 

『目の前に居た筈のホルダーが、突然後ろから攻撃を仕掛けてきた事か」

 

「メカ犬は何か分るか?」

 

俺の質問に無言で暫く熟考してからメカ犬は答えた。

 

『すまないマスター。現状では情報が少なすぎて言える事は何も無い』

 

俺達は変身を解く事も忘れ、夕日が沈むまで考えたが答えは出なかった。

 

その為、家に帰るのが随分と遅くなってしまい、母さんに怒られたが、それはまた別の話だ。

 

一ヶ月の間お小遣い50%カットは何気に痛かったりする。

 

こうなったら翠屋でバイトでもさせてもらおうか…

 

まぁ、それこそ別の話である。

 

結局ホルダーの能力の謎を解く糸口も無いままに、今日という一日は終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日もメカ犬は朝早くから出掛けていった。

 

少しでもあのホルダーの情報を得る為に、事件が起こっている中心部のビジネス街で探りを入れてみるらしい。

 

俺も一緒に行きたかったのだが、生憎今日は平日で学校がある為、放課後に合流する事を約束して見送った。

 

そういえば昨日はホルダーの事で頭が一杯だったので、メカ犬の話とやらを聞くのを忘れていた。

 

メカ犬からすればホルダーの優先度の方が高いというだけの事なのだろうか。

 

まぁ、どちらにせよ、本人が話すのを待てば良いだけの事だ。

 

時間が経っても話さずに、忘れていたと感じた時に聞いてみれば良いだろう。

 

それよりも今の問題はホルダーだ。

 

被害者の人から聞いてみれば、何かヒントが掴めるかも知れない。

 

でもどうやって調べれば良いのだろうか。

 

ジャックに聞いてみるのが一番手っ取り早いが、ジャックから得られるのは如何しても動物目線になってしまうだろう。

 

今回のホルダーは人間のみを相手にしてる上に、目的が強盗という人間特有の犯罪なので、動物からの状況証拠だけじゃ、今持ってる以上の情報は集まりそうに無い。

 

あーでも無い、こーでも無いと考えながら俺は家を出て何時もの通り隣の高町宅に赴いた。

 

人間の慣れという物は中々に恐ろしい物で、考え事をしながらも無意識の内に、俺は普段通りなのはちゃんを起こし、学校に向かっていた。

 

何時もと同じ学校生活を送り、今日も無事に放課後を迎えた俺は、全速力で教室を飛び出した。

 

後ろから美少女三人組が俺に何か言っている気もするが、今はそれどころではない。

 

振り返りもせずにまた明日と叫び返し俺は更に速度を上げた。

 

幸いな事に途中で、教師に遇って廊下を走るなと注意される事も無く、校門前にまで辿り着く事に成功した。

 

メカ犬とは海鳴公園で合流する約束をしていたので、急いで向かおうとした所、進行方向に見知った顔を俺の視界が捕らえた。

 

「あら、確か君は翠屋に居た純君だったよね」

 

あちらも俺を視界に捕らえた様で話しかけてきた。

 

「こんにちわ。恵理さん」

 

話しかけてきたのは、昨日知り合ったばかりの新聞記者の恵理さんだった。

 

恵理さんは気付いていないだろうが、俺としては仮面ライダーの状態で昨日は質問攻めに遭ったばかりなので、どうも身構えてしまう。

 

それにしても恵理さんは良く俺を認識できた物だと感心してしまう。

 

それと言うのも、初対面の時、俺は美少女三人組であるなのはちゃん達と一緒に居たのである。

 

個人的に知り合ったのなら兎も角、そうで無いのであれば、俺なんぞしがないモブキャラでしかないので、印象なんぞ塵一粒程も残らない筈なのだ。

 

しかし恵理さんは覚えていた。

 

やはりプロの取材記者なだけあって、洞察力が凄いのかもしれない。

 

もしもそうだとするのなら、少しだけで良いから俺の存在を頻繁に忘れる我が担任に分けてあげて欲しいと切実に願ってしまう。

 

「此処で会ったのも何かの縁かもしれないわね。そうだ!今日も取材をしているんだけど、少しだけ協力してくれないかしら純君」

 

恵理さんはお願いと手を合わせてお願いしてきた。

 

急いでいるので、断ろうとしたのだが、その意思を言葉にする前に、俺の頭の中で一つの考えが浮かんだ。

 

恵理さん雑誌の記者だという事だ。

 

つまり取材で様々な事を調べている。

 

しかも昨日翠屋で見せたスカイモンキーの写真と、仮面ライダーにインタビューをしてきた事から、今恵理さんが取材している内容が今回のホルダーと何らかの関わりを持っている可能性はかなり高い筈だ。

 

餅は餅屋とも言う事だし、恵理さんの手伝いをしていれば新しい情報が得られるかも知れない。

 

ならば、俺が取るべき行動は一つだけだ。

 

「ええ、良いですよ。何だか面白そうですし、俺は何をお手伝いすれば良いんですか?」

 

俺は笑顔で協力する事を承諾した。

 

「助かったわ、本当にありがとう純君。手伝って欲しい事なんだけどね…まずはこれを見て欲しいのよ」

 

恵理さんはそう言ってから数枚の写真を俺に渡してきた。

 

「昨日の夕方に撮った写真を現像した物なんだけどね」

 

俺は恵理さんから受け取った写真に目を通すと、其処には信じがたい物が写り込んでいた。

 

「これってもしかして…」

 

「そう。スカイモンキーの写真よ。しかもこれは…今までの見解を塗り替える物なのよ」

 

確かに、この写真に写りこんだ画像は、俺の固定概念を見事なまでに砕き散ってくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ていう訳なんだよ」

 

『うむ。確かにそれならば、全ての説明が着くな』

 

俺は恵理さんからある頼まれ事をされた後、別行動を取り海鳴公園に向かい、メカ犬と合流していた。

 

恵理さんに見せてもらった写真から俺が導き出した見解をメカ犬に説明した所、メカ犬はそれで間違い無いだろうと、太鼓判を押してくれた。

 

『しかし恵理殿。これではまるで…』

 

メカ犬が何かを考え込む様に若干言葉を濁した。

 

「如何したんだ?」

 

考え込むメカ犬に俺は如何したのか聞いてみた。

 

『・・・いや、今はそれよりもホルダーを如何にかしなくてはいけないな』

 

悩む行為と解決する事を自己完結したメカ犬は、俺に何でも無いと告げた。

 

多少気にはなったが、メカ犬が言う通り今はホルダーを如何にかする事が最優先事項だ。

 

俺とメカ犬は早速作戦会議を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『本当にこの場所にホルダーが来るのかしらマスター?』

 

明らかにオッサンボイスなのに、乙女な口調の声が俺の隣から聞こえてくる。

 

「うん。多分ね。その時は頼むよチェイサーさん」

 

俺は声の主である新宿二丁目系ライダーバイクのチェイサーさんの質問に息を潜めながら答えた。

 

チェイサーさんを呼んだのは勿論作戦の為だ。

 

俺とチェイサーさんは現在ビジネス街のビルの陰から、こっそりと表の道を睨みつけながら張り込みをしている最中なのだ。

 

ちなみにメカ犬は俺達とは別の場所で身を潜めている。

 

暫くすると、靴底がコンクリートを軽く打ち付ける様な足音が聞こえてきた。

 

白い色の鍔が長い帽子の所為で顔までは確認できないがその帽子と同じ色でコーディネートされたレディスーツを身に纏った女性が歩いてきた。

 

打ち付ける様な足音がするのはその女性が赤いハイヒールを履いている為であろう。

 

誰が見ても相当な値段が付きそうに見える、高級感溢れるハンドバッグを、優雅に揺らしながら気品すら漂う歩き方をしている。

 

足音は段々と俺達に近づき、そして俺達の前を通過すると、少しずつ音が小さくなっていく。

 

このまま一人の通行人として立ち去ってしまうと思われたその時だ。

 

「きいええええええええええ!!!」

 

空から異形が降ってきた。

 

その異形は成人男性と同等の背丈で、全身を白い毛に覆われていた。

 

顔は木彫りの猿の能面を貼り付けた様にしている。

 

昨日遭遇したホルダーだった。

 

「きやあああああああああああ!?」

 

突然の怪物の襲来に女性は大声を上げるが、あまりにも大きな精神的ショック受けた所為か、次の瞬間操り人形の糸が切れてしまったかの様に力無く倒れた。

 

それを見たホルダーは下劣な笑い声を上げると、気絶した女性に近づき、その手に持っているハンドバックに手を掛けようとした。

 

『そこまでだホルダー!』

 

俺とチェイサーさんが隠れている場所と反対側から、この時を待っていたと言わんばかりにメカ犬が走り込んで来て、ホルダーの顔面に飛びついた。

 

「な!?何だってんだ!?」

 

突然視界を奪われたホルダーはパニックに陥り手足をバタつかせている。

 

『今だ!』

 

メカ犬のGOサインが出た。

 

「頼むよチェイサーさん」

 

『まっかせなさ~い!』

 

チェイサーさんはそう言うと、エンジンの唸りを上げてホルダー目掛けて突っ込んだ。

 

チェイサーさんの接近に気が付いたメカ犬はホルダーを足蹴に飛んでその場から退避した。

 

『いっくわよ~』

 

更に加速して突っ込むチェイサーさんに、メカ犬が顔面から離れた事で視界を取り戻したホルダーも気づきはするが、避けるにはあまりにも時間が足りなさ過ぎた。

 

「まそっぷ!?」

 

気づいた瞬間には既にチェイサーさんのバイクタックルによって華麗に宙を舞っていた。

 

此処からは俺の出番である。

 

俺はある物を手に持ちながら、倒れているホルダーに近づくと、手にした物をホルダーに向けて構えた。

 

次に俺が手にした物が俺の指を一本動かす度に眩い光とシャッター音を放つ。

 

そう、俺が手にしている物は一眼レフカメラなのである。

 

「全く、無茶する人だよ本当に…」

 

十分な量の写真を取った後、俺は幾分あきれた口調で、気絶している女性に視線を送った。

 

俺は気絶した女性に近づき、持っていたカメラをその女性の手に握らせてから、帽子を取り払った。

 

帽子を取った事で露わとなった、その顔はこのカメラの持ち主である恵理さんだった。

 

実は今回の作戦は恵理さんの計画に乗っかった部分がかなりの率を占めているのだ。

 

俺が恵理さんから頼まれた事とはこういった物だった。

 

恵理さんは独力でかなりの情報を掴んでいて、次のホルダーの出現しそうな位置を俺達以上の精度で計算していたのだ。

 

其処で恵理さんは自分自身を囮にして、ホルダーを誘い込もうと計画したのである。

 

俺の本来頼まれた事とは恵理さんの代わりにその現場を押さえて写真に収めて欲しいとの事だった。

 

最初は勿論反対した。

 

何でそんなに危険な事をするのかと。

 

それでも恵理さんは一歩も引かなかった。

 

時間もあまり無く、俺としてもこのチャンスは逃したくないので、妥協案を模索したのだ。

 

恵理さんには腕っ節の強い人を呼んでおくので絶対に無理をしない様にと釘を刺して置いてから、この囮作戦を基準にした俺達の計画を考えたのである。

 

万が一の事態を考えて、チェイサーさんには腕っ節の強い人という設定で、待機してもらう事にしたのだ。

 

今回は恵理さんが気絶してしまったので、意味は無かったのだが、本当はチェイサーさんがホルダーを攻撃している間に恵理さんを逃がして、それから仮面ライダーに変身して戦うつもりだった。

 

写真を撮るのは二の次だ。

 

危険だと判断したのなら変身を見られる事を覚悟すらしていた。

 

実際は恵理さんが早くに気絶してしまったので、余裕が生まれて写真を撮る事まで出来た訳だ。

 

「痛ってぇ…ってまたてめえかこのクソガキ!」

 

漸く動けるほどに回復したのか立ち上がったホルダーは俺を見るや、指をさして地団駄を踏んだ。

 

昨日も思ったが本当に直情的なホルダーである。

 

『行くぞマスター!』

 

俺の隣にやって来たメカ犬が戦いの始まりを告げるかの様に叫んだ。

 

「ああ!」

 

俺もそれに気合いを込めた返事を返して、ポケットからタッチノートを取り出してボタンを押した。

 

『バックルモード』

 

タッチノートから流れる音声と共に、隣のメカ犬が銀色のベルトへと変形して俺の腹部に巻きつく。

 

「変身」

 

設定された音声キーワードを放ちタッチノートをバックル中央の溝に差し込んだ。

 

『アップロード』

 

バックルに差し込んだタッチノートから音声が流れると同時にベルトを中心に白銀の光が俺の全身を包み込む。

 

更に眩い光を放つと光は飛散し一人の戦士が姿を現す。

 

背丈も成人男性と同程度に変わり、メタルブラックのボディには、銀色のベルトを中心に四肢に同色のラインが伸びている。

 

更にⅤ字の角飾りと、赤く大きな二つの複眼を持つ、仮面ライダーが誕生したのだ。

 

「しゃらくせえんだよ!!!」

 

ホルダーは変身が完了すると同時に昨日と同じ様に飛び掛ってきた。

 

余程に怒りの沸点が低いのか、ただ単に学習していないだけなのだろうか?

 

「はっ!」

 

俺はがむしゃらに飛び掛ってくるホルダーに、避け様の肘鉄を腹部に喰らわせた。

 

軌道修正の出来ないジャンプ中にそんな攻撃を喰らえば、当然バランスを崩して着地もろくに出来ないだろう。

 

案の定ホルダーは腹を手で押さえて痛みに耐えながらアスファルトの地面を転がっていく。

 

俺は更に追撃を仕掛ける為にホルダーに向かって走り出す。

 

『後ろだマスター!』

 

俺は突然のメカ犬の声に反応してサイドステップで瞬時に横に移動してから、先程まで自分の居た場所に確認もせずに回し蹴りを叩き込んだ。

 

本来ならば放った回し蹴りは空を蹴りそれで終わる筈だった。

 

しかし俺が放った回し蹴りは確かなまでの感触を感じたのだ。

 

「ぐは!?」

 

それは苦痛の声を上げて先程まで俺が戦っていたホルダーの方向に吹っ飛んでいった。

 

俺がその吹っ飛んだ正体を確かめる為に前方を向くと、そこに居たのは同じ姿をした二体のホルダーだった。

 

いや正確に言えば、限りなく似ているホルダーと言った方が正しいだろう。

 

先程吹っ飛ばしたホルダーの木彫りの様な能面の方が若干色が濃いし、毛並みも多少だが黄色がかっている。

 

「大丈夫か兄貴!?」

 

白い毛並みのホルダーがそう言って、吹き飛ばしたホルダーを支え起こしている。

 

『うむ。兄弟でホルダーになっていたという事か。それならば姿が似ている事にも納得がいく』

 

メカ犬がホルダーの言葉から納得のいく答えを導き出した様だ。

 

「…ぐっ、何で俺が居ることに気づいた?」

 

黄色い毛並みのホルダーが弟のホルダーに支えられながら起き上がるとそんな質問をしてきた。

 

「さあ、如何してだろうな…」

 

俺はその質問を適当に流す。

 

ネタばらしをするのならば、それは恵理さんに見せてもらった写真のおかげだ。

 

写真には昨日の戦いで、俺が突然背後から攻撃を受けた瞬間の風景が写し出されていた。

 

そこに写っていたのは俺とそして…二体のホルダーだった。

 

だから思ったんだ。

 

これはホルダーの能力でも何でも無く、単純にもう一体のホルダーが居るんじゃないかってさ。

 

だからメカ犬に頼んで俺が攻撃している最中も出来るだけ周りの気配に気を配ってもらっていた。

 

事前に来るであろう攻撃を予測出来ていたからこそ、避けきった上で反撃をする事まで出来たのだ。

 

まぁ、兄弟でホルダーやっているとまでは予想していなかったけれど…

 

「チクショウが!」

 

白い毛並みの弟ホルダーが吼える。

 

今のこの状況がよっぽど腹立たしいみたいだ。

 

「まあ待て」

 

それを黄色がかった毛並みの兄ホルダーが制す。

 

「確かに一人ではあの仮面ライダーとかいう奴に実力で負けているかもしれないが、俺達は二人居るんだぞ。力を合わせれば勝てる筈だ」

 

弟に対して兄は常に冷静沈着の様だ。

 

兄ホルダーの言葉に弟ホルダーも冷静さを取り戻したのか、荒くなっていた息を落ち着かせ始めている。

 

「そうだな兄貴。俺達の連携を見せてやろうぜ」

 

「ああ」

 

二体のホルダーは互いに頷くと俺と距離を取りながら走り始める。

 

先程までの動きよりも確実に早い。

 

『奴らの能力は二体とも速度強化の様だな。オーソドックスでは有るが手強いぞマスター』

 

「みたいだな・・・」

 

俺はメカ犬の声に返事を返しながら、何処から攻撃が来ても良い様に身構える。

 

「きえええ!!」

 

弟ホルダーが背後から奇声を上げて飛び掛ってきた。

 

俺は即座に振り向いて反撃に移ろうとするが突然横から兄ホルダーが不意打ちを仕掛けてきた。

 

「しゃああああ!!」

 

身を捩る事で何とかかわすが、この兄弟ホルダーは入れ替わり立ち代り、連携した攻撃を仕掛けてくる。

 

「くそ!裁くので精一杯だ。このままじゃジリ貧だぞ」

 

素早さは向こうの方が早すぎる為、俺は近づいてきた所をカウンターで仕留めるしかないのだが、肝心の動きに着いて行けないでいる。

 

冗談抜きでピンチかもしれない。

 

「如何にかならないかメカ犬!?」

 

俺は藁をも掴む思いで、ホルダー達の連撃を避けながらメカ犬に尋ねる。

 

『うむ。逆転する為の秘策はあるぞ』

 

メカ犬から返ってきた返答は、かなりのアグレッシブさを含んでいた。

 

「何か自信満々だな・・・」

 

その意味不明な自信に俺は逆に一抹の不安を覚えるんだが。

 

『奴らがスピードを武器にするのならば、此方もそれ以上のスピードで対抗するのだ』

 

言っている事は理解できるのだが、それが出来ないから、現状こんなに苦労していると思うんだけど?

 

「奴ら以上のスピードで対抗するってそんな事出来るのか」

 

『うむ。実は昨日の朝ワタシがマスターに話したいと言っていた事は、この事に深く関わっているのだ』

 

「話したい事が有るって言っていたあれか?」

 

『今まで失われて閲覧不可能となっていた、ワタシのメモリが一部ではあるが復帰して、戦闘時の能力の閲覧が出来るようになったのだ』

 

「素直におめでとうって思うけど、如何してまた急に?」

 

『うむ。昨日の朝から閲覧が可能になった』

 

昨日の朝?

 

俺がその言葉を聞いて思い出したのは・・・焦げて煤塗れになり黒っぽくなったメカ犬の姿だった。

 

「まさか、昨日の感電騒ぎで記憶が戻ったて事は無いよな」

 

俺はまさかと思い冗談っぽく聞いてみた。

 

『案外効くのだな。ショック療法という奴は』

 

自分でも驚いているといった口振でメカ犬は言っている。

 

どうやら冗談抜きで昨日の感電が原因らしい。

 

こんなシリアス展開中で、まさかのギャグを投入してくるとは、流石に予想外だ。

 

突っ込みたい所だが、今は生憎そんなほのぼのとした状況じゃない。

 

「あ~もうギャグだろうがコメディーだろうが、かまうもんか!解決策があるなら早いとこ教えてくれよ!」

 

俺は半ば自暴自棄になりながらメカ犬に話の続きを促した。

 

『うむ。了解だマスター。これからワタシがする通り、指示に従ってくれ」

 

「ああ」

 

俺はメカ犬の言葉に、ホルダーの攻撃を捌きながら短く返事を返す。

 

『まずはバックルの右側を押さえ込みながら後方にスライドさせてくれ』

 

俺はメカ犬の言う通りに自分の右腰に手を当てて軽く動かしてみる。

 

すると溝になっている部分が軽くスライドしたのだ。

 

中には横並びに複数のボタンが並んでいた。

 

手前から順番に、黒・緑・青・赤色の円形のボタンが、そして他のボタンと違う四角形で黄色のボタンが一つ並んでいたのだ。

 

『開いたら複数のボタンが有る筈だ。その中から緑色のボタンを押してくれ』

 

俺はその指示に若干の恐怖を抱きながらも、メカ犬が言う通りに押してみた。

 

『スピードフォルム』

 

「うを!?」

 

ボタンを押すと何故かタッチノートから音声が流れ出す。

 

変化はそれで終わりじゃなかった。

 

いや、寧ろ始まりだったのだ。

 

ベルトを中心に白銀の光が再び俺を包み込む。

 

その光は一瞬だけの物で俺は光からすぐに開放される。

 

次に俺は自分自身の身体を確認して驚いた。

 

「何じゃこりゃ!?」

 

何時ものメタルブラックでは無く、ボディカラーがライトグリーンに変わっている。

 

それにどういう事か、自分の身体がやけに軽く感じる。

 

「色が変わりやがった?」

 

「むう?」

 

突然俺の姿に変化が現れた事で兄弟ホルダーが警戒を強めた。

 

『それはシステムの能力の一つ。スピードフォルム。その名の通り、最も素早さに重点を置いた状態だ』

 

俺はそのメカ犬の説明に納得した。

 

道理で身体が羽の様に軽い筈である。

 

『だが素早さに比重がいっている分、格闘戦時の威力は落ちているから気をつけてくれマスター』

 

再びメカ犬から補足説明が入る。

 

「ああ、ってそれじゃ駄目だろ!?ただでさえ1対2なんだぞ」

 

素早さで勝っても、こっちの攻撃が効かないんじゃ意味が無いだろう。

 

『心配無用だマスター。対策は万全だ。今度は一番奥の黄色いボタンを押してみてくれ』

 

「何だよ対策って?」

 

俺は疑問に思いながらも手を右腰にやり黄色のボタンを押してみる。

 

『スピードロッド』

 

再びタッチノートから音声が流れると、今度は白銀の光が俺を包むのでは無く、俺の目の前に集まり始める。

 

『その光を掴むんだマスター』

 

メカ犬からの指示が飛ぶ。

 

はっきり言って躊躇してしまいそうになる光景ではあるが、背に腹は変えられない。

 

俺は覚悟を決めて、目の前の光を鷲掴みにする。

 

すると、光はまるで生き物の様に蠢き、一つの形に変化していく。

 

光が飛散すると、俺の手元には成人男性身長程の、一本の棒の様な物が握られていた。

 

両端は今の俺と同じライトグリーンで中央部が銀色になっている。

 

中心には持ちやすいグリップの様な部分があり、その脇には出っ張りが有って、その中には溝が設けられている。

 

『それがこのスピードフォルムの専用武器であるスピードロッドだ』

 

俺はメカ犬の説明を聞きながら、手に持ったスピードロッドの感触を確かめる様に、軽く振り回す。

 

足りない分は武器で補えという事なのだろう。

 

「へっ!あんなのこけおどしだろ」

 

弟ホルダーが俺の変わった姿を見ながらそう言うと、再び飛び掛ってくる。

 

『来るぞマスター』

 

「ああ」

 

俺はロッドを構えて迎え撃つ。

 

「きえええええええ!!!」

 

飛び掛かるホルダーに対しロッドの先端を斜めに打ち込みその軌道を変えてやる。

 

更に脇から兄の方が攻撃を仕掛けて来るが、俺は持ち手を先端に持ち替えて、円を描く様に振り回す事で近づけない様に牽制する。

 

「今度はこっちから行くぞ」

 

俺はロッドを斜めに持ち構えながら、弟ホルダー目掛けて走り出す。

 

今の俺の速さはこのホルダー達を完全に凌駕していた。

 

距離を置こうとするホルダーに、追い着いた事でホルダーは驚愕している。

 

俺は驚き固まっているホルダーに、お構い無しのロッドによる連撃を叩き込む。

 

「はっ!」

 

最後に突きを喰らわせ後方に吹き飛ばす。

 

「しゃああああああ!!」

 

弟ホルダーを吹き飛ばした直後、今度は兄ホルダーが俺の背後から飛び掛ってきた。

 

俺はロッドを垂直に地面に叩き付け、棒高跳びの選手の様に垂直に飛び上がる事で、背後からの攻撃を回避する。

 

「うおりゃああああ!!!」

 

更に上空からホルダーの脳天目掛けて、ロッドを上段に構えて叩き込んでやる。

 

「がは!」

 

攻撃は見事に決まり、ホルダーはよろけながら後方に下がっていく。

 

しかし使いやすいな、このスピードロッド。

 

「兄貴!」

 

吹き飛ばされた兄ホルダーに、弟ホルダーが駆け寄っていく。

 

「こうなったら同時攻撃で行くぞ」

 

今だよろめきながらも弟ホルダーに指示を出した兄ホルダーは、弟が無言で頷くのを確認してから、同時に別方向に走り出す。

 

「仕掛けて来る気か」

 

俺はロッドのグリップを握り直し襲撃に備える。

 

『マスター。奴らが仕掛けてくる前に此方から決めるぞ』

 

身構える俺に対してメカ犬がまたしてもアグレッシブな発言をした。

 

「こっちからってどうやってだよ」

 

『即興だが、説明プログラムを組んでみた。簡単な図解も入っているから目を通してくれ』

 

メカ犬がそう言うと、俺の視界にウインドウの様な物が出てきた。

 

それを読んでみると、これは今の状態の俺が使える必殺技についての記述だった。

 

「・・・OKだメカ犬。こっちから仕掛けるぞ」

 

『うむ』

 

内容を把握した俺は、決着をつけるべく行動を開始する。

 

まずバックルからタッチノートを取り出した俺はスピードロッドの溝に、取り出したタッチノートをスライドさせた。

 

『ロード』

 

スライドさせる事で音声が流れ、俺は再びタッチノートをバックルに差し込んだ。

 

『アタックチャージ』

 

何時もとは少し違う音声が流れると同時にベルトから白い光が発生する。

 

その光は右腕の銀のラインを通して、スピードロッドに流れ、その先端に集約する。

 

「きえええええええ!!!」

 

「しゃああああああ!!!」

 

俺が何かをやっている事に気づいたのか、兄弟ホルダーが同時に雄叫びを上げながら突っ込んできた。

 

しかし気づくのが少し遅かった様だ。

 

俺の準備は既に整っている。

 

「こいつで決めるぜ」

 

俺はそう言ってからロッドを構える。

 

「スピードロッド」

 

俺は自分を支点として、ロッドの先端に集まった光が手前に来るようにしながら、回転し始める。

 

「ウインドテイスティング」

 

光は円状に波紋を描きながら、真空の刃を俺を中心とした円範囲に撒き散らす。

 

その様はさながら、ワイングラスを回した際に、中のワインが波打つ様な光景だった。

 

勿論この範囲には二体のホルダーも入っており直撃を受けた。

 

二体のホルダーは真空の刃を受けた場所を中心に白い光を発しながら爆発した。

 

爆発した後には二人の高校男子が気絶していた。

 

顔を見てみると、不気味な位同じ顔をしていたのである。

 

ただの兄弟では無く、双子だったらしい。

 

まぁ、取り敢えずこれで今回の事件は、一件落着といった所だろう。

 

何だか今回はやけに精神的に疲れた気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ~」

 

今回の事件が解決してから数日後。

 

俺は今、翠屋でウェイターのバイトをさせて貰っている。

 

お小遣い50%カットは、予想以上にかなり深刻な事なのだ。

 

勿論俺は中身は大人とはいえ、見た目も戸籍も小学生なので、一部の例外を除いて現金を頂く分けにはいかない。

 

俺の働いた報酬は翠屋限定で使用できるタダ券だ。

 

翠屋にはよく顔を出すし、これだけでも凄く助かる。

 

それと言うのも、何故かアリサちゃんは生粋のお金持ちのお嬢様だというのに俺に飲食店で奢らせようとして来る事が多々あるのだ。

 

しかもなのはちゃんと、挙句の果てはすずかちゃんまで便乗してくるので、俺のお小遣いの約半分は毎月美少女三人組の胃袋を満たす為に使用されてしまう。

 

士郎さんと桃子さんはその光景を見ながら、それが男の甲斐性だと言ってくるが、やられている本人としては何の励ましにもならない。

 

そう思いながらも、小学生の身で健気に労働をする俺は、彼女達に甘いのだろうか?

 

『マスター。ウェイター姿がよく似合っているぞ』

 

店の隅で座っているメカ犬がよく分らない微妙な励ましの言葉を掛けてくる。

 

下手な慰めならしないで貰いたい。

 

メカ犬を睨み付けた直後、翠屋の扉が開き新たなお客さんがやって来た。

 

「いらっしゃいませ…来たんだ、なのはちゃん達」

 

噂をすれば何とやらだろうか。

 

美少女三人組が俺の目の前に居た。

 

「その格好、似合ってるよ純君」

 

「お仕事大変そうだね」

 

「アルバイトしてるって聞いたから見に来てあげたわよ」

 

三人は口々に言ってくる。

 

「あら、皆揃ってるわね」

 

なのはちゃん達の後ろから声が聞こえてきた。

 

四人で声のした方を見てみると其処に居たのは、数日前に知り合った雑誌記者の恵理さんだった。

 

恵理さんは軽く挨拶を交わすと、一冊の雑誌を取り出した。

 

「これ、今月号の月刊ウミナリよ。みんなの事も載ってるから見てみてね」

 

それを見たなのはちゃん達三人はお礼を言いながら雑誌を受け取り読み始めた。

 

俺はその後方で背中に大量の汗を、密かに流す。

 

表紙を見て度肝を抜かれたのだ。

 

何せ表紙を飾っていたのは俺、つまり仮面ライダーだったのだ。

 

それだけなら別にかまわない。

 

正式にインタビューにも答えたし、写真撮影にだって協力した。

 

それならば、何が問題なのか。

 

その問題の写真は本来ならば恵理さんが持っている筈の無い写真だったからだ。

 

表紙を飾る仮面ライダーのボディカラーは、メタルブラックでは無く、ライトグリーンだったのだ。

 

俺はスピードフォルムを恵理さんに見せた覚えは一度も無い。

 

という事は…

 

メカ犬が俺の足元まで近づいてきていた。

 

それに合わせて恵理さんも俺のすぐ近づいて来ていて、小声で話しかけてきた。

 

「いい写真だったから表紙に使わせて貰っちゃった。仮面ライダー君」

 

悪戯が成功した子供の様な笑顔で恵理さんが言ってきた。

 

『やはり気付いていたのだな恵理殿』

 

メカ犬がやっぱりかといった具合で話しかけてきた。

 

「まあね。でも安心してね。何だか正体を内緒にしてるみたいだし、雑誌にもインタビューで聞いた以上の事は載せてないから」

 

どうやら仮面ライダーの正体をばらす心算は全く無いらしい。

 

今にして思えば、不可解な行動も結構あったと思う。

 

囮作戦なんて俺が仮面ライダーだって事を知っていたからこそ、やろうと思った作戦なんじゃないだろうか。

 

『目的は何なのだ?』

 

「目的なんて無いわよ。私はただ真実が知りたいだけ」

 

メカ犬の質問にそれだけ答えた恵理さんは、背中を向けて手を振って去り際にこう言った。

 

「また取材させてね。正義の味方さん」

 

悪い人では無さそうだけど、如何にも油断ならない人だなと俺は恵理さんの背中を見送りながら思った。

 

今日の海鳴はスキャンダルが多々あるが・・・それなりに平和だ。

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