魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~   作:G-3X

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第35話 花嫁衣裳は誰のもの?【前編】

「私が撮りたい写真はこんなのじゃない!!!」

 

暗室の中で現像された写真が、そんな叫びと共に次々と破られていく。

 

自然の風景を写したものから不特定の人物まで、この暗室の中にある写真の種類は多岐に渡るが、この写真を破き続ける人物にとっては、どれも納得のいく出来栄えでは無かった。

 

「こんな写真じゃ……なんて出来ない!」

 

思った通りの写真が撮れないというのは、普段から写真を撮る身としては、十分に理解していたつもりだったが、今のこの人物にはそれを寛容に受け止められる時間が無かったのである。

 

その焦りが写真にまで現れるという、悪循環に陥っているという事実にすら気付かない。

 

「……自分が納得出来る写真を撮りたいというのが君の夢か?」

 

「誰!?」

 

暗室で写真を破き続けていた人物は、突如として聞えた声に驚愕の声を上げる。

 

それもその筈、この暗室には自らが撮影した写真を現像する為に入った為、自身以外の人物が居る等とは、予想すらしていなかったのだ。

 

「君の夢を叶える力をあげよう」

 

暗室の為か、輪郭すら不明な謎の存在は、相手の意を解する事無く話を進めていく。

 

謎の存在が取り出したのは、小さな赤く丸い玉だった。

 

その玉だけが、この光の射さない筈の暗室の中で怪しく光を放つ。

 

「……これは?」

 

写真を破り続けていた人物は、未だ驚き続けながらも、その玉が放つ光に魅入られるかの様に手を伸ばしていく。

 

「そう……この玉が君の夢を叶えてくれるよ」

 

「これがあれば……私の夢が……」

 

赤い玉を手にした瞬間、暗室は眩い光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「時を駆ける列車に別の世界の正義の味方って……今更だけど現実離れした出来事ばかり引き起こすわね?」

 

「はは……」

 

俺の対面に座り、アイスコーヒーを片手に呆れ顔をするミルファに俺は乾いた笑いで返答を返す。

 

「今日はアリシアちゃんの歓迎会なんだから、何でも好きなものを頼んでね」

 

「払いはアリシアちゃんのお兄ちゃんが、全部してくれるから心配せんで良いよ」

 

俺とミルファから少し離れた席で、なのはちゃんが音頭を取る。

 

その後にはやてちゃんの不穏当な発言が聞えた気がしたが、まあ今日だけは無礼講という事で不問にしておこう。

 

「ほら、今日の主役はアリシアなんだから、何か言いなさい!」

 

「頑張ってアリシアちゃん」

 

「同じ転校生として、我も応援するのじゃ」

 

更にアリサちゃんが、アリシアちゃんに改めて挨拶をする様に促し立ち上がらせ、すずかちゃんとエミリーちゃんが応援の言葉を送る。

 

「え、えっと……今日は私の歓迎会を開いて貰って……あ、ありがとうございます」

 

多少ぎこちない形ではあったが、アリシアちゃんの挨拶に対してなのはちゃん達が盛大な拍手を送った。

 

「その上に……新しい妹が出来るなんてね」

 

「は、ははは……」

 

細目とで見ながらしてくるミルファの発言に、俺は再度として乾いた笑いで返答するしか出来ない。

 

アリシアちゃんが俺の妹となってから数日後、転校生としてそして俺の妹としての歓迎会がここ翠屋で開催されていた。

 

学校帰りの放課後に開催された為に、ミルファを除けば全員が制服姿である。

 

俺も今日に限ってはウェイター姿ではなく、制服を着て完全にお客さんとして席に座っていた。

 

ちなみに士郎さんと桃子さんの粋な計らいによって、店内の一部を貸切にさせて貰っている。

 

これも普段から俺がこの翠屋で、子供店員として貢献し続けてきた実績だと密かに自画自賛したいところだ。

 

まあ、そんな事よりも俺には別にやらなければならない事があった。

 

「……はは。ところで俺もミルファには聞きたい事があったんだ」

 

俺がアリシアちゃんの歓迎会にミルファを呼んだのは、純粋にこの歓迎会に参加して貰いたいという気持ちとは別に、ミルファに確認したい事があったからだ。

 

「何よ。聞きたい事って?」

 

「ミルファは管理局ってところに勤めてるの?」

 

「なっ!?どうしてそれを!?」

 

明らかに動揺したミルファを見て、俺の中の疑惑は確信へと変わった。

 

「実はアリシアちゃんの出身は、ミルファと同じミッドチルダなんだよ。管理局についてはアリシアちゃんから聞いたんだ。それでミルファも、もしかしたら管理局に勤めているんじゃないかと思ってさ」

 

「……そういう事ね。まあ、しょうがないわ」

 

俺の説明に納得したのか、ミルファが溜息を一つ零す。

 

「確かに私は純の言う通り、管理局員よ。本当は純が私の正体を知らない方が、純にとっては都合が良かったんだけどね……」

 

「それってどういう意味?」

 

何処か含みを持った言い方に、俺は首を傾げる。

 

「言っておくけど、純とメカ犬の仮面ライダーの力っていうのは私が知る限りでは他に類を見ない異端よ。上層部に純達の存在が知られれば、何かしらの行動に出るかも知れないの」

 

「アリシアちゃんの話では、管理局は俺達の世界で言うところの警察みたいな組織って言ってたけど?」

 

「その認識は間違っていないし、管理局で働いている大半の人達は私も含めてそう思っているんだけどね……」

 

ミルファの言葉で、何が言いたいのか何となくではあるが分かった様な気がする。

 

きっとそれは大きな組織には何かしら一つは有るであろう、決して表に出る事は無い裏の部分なのだと思う。

 

「本当は純が知らなければ、万が一にでも調査された時に言い逃れが出来たんだけど、知った以上一つだけ忠告しておくわよ。出来るだけ私以外の管理局員の前で変身するのは止めておきなさい」

 

その言葉は脅しではなく、純然たる事実だという事が、ミルファの俺を真っ直ぐに見詰める瞳から伝わってくる。

 

だがどうしても解せない事が、俺の脳裏に浮上した。

 

「ミルファは、どうして管理局に?」

 

ここまでの発言で、ミルファが管理局を心から信頼しているとは思えなかった。

 

だが事実として、ミルファは管理局にその身を置いている。

 

何かしらの事情があるとでも言うのだろうか。

 

「それは……」

 

やはり話し辛い事だったのか、ミルファの表情に陰が差す。

 

どうしても話したく無いのであれば、無理に聞かない方が良いと判断した俺はミルファに話しかけようとしたが、次の瞬間、俺とミルファの肩が何者かの手によってがっしりと掴まれる。

 

「どうしたんだよお二人さん!折角の歓迎会だっていうのに辛気臭い顔しちゃって!」

 

豪快な笑い声を上げながら、今度は俺とミルファの背中をバシン!バシン!と叩き始める。

 

正直に言ってかなり痛い。

 

「ちょっと、止めて下さいよ鳥羽さん!?」

 

俺はこの強行の実行犯であるト鳥羽さんに文句を言う。

 

「そうよ鳥羽君。貴方が力加減を間違えたら、相手が子供じゃなくても普通に病院行きになっちゃうわよ」

 

俺の文句を支援してくれたのは、鳥羽さんの後ろから事の経緯を見ていた恵理さんだった。

 

止めてくれるのは素直に嬉しいのだが、言っている事は果てしなく物騒で俺は背中に寒気を感じてしまう。

 

だがそのお陰でミルファとの気まずい雰囲気は、上手い具合に払拭する事が出来た。

 

肝心のミルファも、鳥羽さんに背中を叩かれたダメージで咳き込んでおり、もう少しの間は会話する事も困難だろう。

 

頭を掻きながら、悪い悪いと軽く謝罪する鳥羽さんに、注意を終えた恵理さんが視線を俺に向ける。

 

……何故だろうか。

 

さっきとは別の意味で、俺の背中に再び寒気が走る。

 

「ところで純君」

 

「な、何でしょうか?」

 

笑顔で話し掛けてくる恵理さんを警戒しながらも、俺は恵理さんとの会話を試みる。

 

「純君も海鳴デパートは知っているわよね」

 

「ええ、それは勿論……」

 

海鳴デパートはこの近辺では有名で、近隣の住民では知らない人を探す方が困難だ。

 

それに俺としても、以前に母さん達の策略によってなのはちゃんとデートしたり、ホルダーと戦う事になったりしたという思いで深い場所である。

 

「そのデパートの中の店舗にある子供写真館って知ってるかしら?」

 

「子供写真館……確か二階の奥にあったお店ですよね」

 

子供写真館というのは、七五三やこどもの日を始めとして、果ては誕生日と、様々な子供達の記念日を写真に撮るお店だった筈だ。

 

俺やなのはちゃんも何度かお世話になった事があるのだが、店内には他店以上に様々な衣装が常備されていて、中々ユニークな写真を撮ってもらう事も出来たりと面白いお店だった。

 

ちなみに俺が最後に撮ってもらった時に着ていた衣装は、何故かオコジョのきぐるみだったのだが今となっては、何故そのチョイスにしたのだろうと、自問自答するばかりである。

 

「実はその写真館の店長が私と鳥羽君の元同級生なんだけどね」

 

「そうなんですか」

 

以前から若い女性の店長さんだとは思っていたのだが、鳥羽さんと恵理さんの元同級生という事は、本当に若い人だったらしい。

 

「それで本題なんだけど、実は純君に写真のモデルを頼みたいのよ」

 

「はあ!?」

 

俺は恵理さんの意外な申し出に、思わず声を上げてしまった。

 

「どういう事ですか?」

 

自分で言うのも何だが、俺の様な地味な奴が写真のモデルに選ばれるなんて常識的に言って考えられない。

 

俺は恵理さんに当然の質問をぶつけた。

 

「その写真館が、今度リニューアルするらしくてね。近所の子供達により身近に来て貰える様に、お店の前に宣伝も兼ねた新しい写真を置く事に決めたそうなのよ」

 

「それがどうして俺に写真のモデルを依頼するなんて話になるんですか?」

 

「その店長の古川《ふるかわ》さんに頼まれちゃったのよね。古川さんはその写真のモデルには海鳴市の子供を使いたいらしくて、私なら仕事柄良いモデルを探してくれるんじゃないかって」

 

「受ける受けないは別にして、どんな写真のモデルなんです?」

 

あまりに恥ずかしい格好をさせられるとしたら、二つ返事で良いですよと言う訳にはいかない。

 

「確か今の時期にも合わせる形にするから、結婚式をイメージした写真を撮るそうよ。多分純君が着る事になるのは新郎役のタキシードでしょうね」

 

恵理さんは私の知っている中で、スーツを違和感無く着こなせるのは純君だけよと太鼓判を押した。

 

ただ単に執事やらウェイター時の姿のせいで、恵理さんの中で俺のイメージが固定されているだけの様な気もするが、普段から持ってくる難儀な頼みと比べれば可愛いものである。

 

「別に俺は構わないですけど、それなら俺以外にも新婦役が必要ですよね。誰か当てはあるんですか?」

 

「それなんだけどね。新婦役は純君に一任しようと思ってるの。ほら純君の周りには可愛い女の子が多いし、何なら、ミルファさんでも全然OKよ」

 

確かに俺の周りには、なのはちゃんを始めとして、美少女と呼べる女の子が多い気がするので恵理さんの言う事も満更でも無いと思うのだが、ミルファを起用するのはどうしたものだろう。

 

ミルファの外見年齢は100人中100人が見ても、小学生だと思われてしまうだろうが、これでもれっきとした17歳で、この日本においては法的にも結婚可能なのだ。

 

果てしなく犯罪臭がしないでもないが、本人が聞くと確実に怒ると思うので、この考えは俺の胸の内にだけでそっと閉まっておこうと思う。

 

「お嫁さんか……ちょっと憧れるわね」

 

当の本人は何時の間にか鳥羽さんの背中張り手のダメージから復活したらしく、頬を緩めながら何かを期待する様な目で此方を見ていた。

 

どうやら俺の考えは杞憂だったらしい。

 

それにミルファも、お嫁さんという言葉の響きに、何か感じるものがある様だ。

 

「ミルファ。興味があるなら俺の新婦役を……」

 

俺は既に乗り気に見えたミルファを誘おうと声を掛けようとした。

 

だがその言葉を最後まで言う事は出来ず、他の多数の声によって掻き消されてしまう。

 

「「「「「「お嫁さん!?」」」」」」

 

何時から俺達の話を聞いていたのか、今まで別席で歓迎会をしていたなのはちゃん達が、声を揃えて俺に詰め寄ってきた。

 

何故か全員の目が、血走っている様に見えるのは俺の気のせいだろうか。

 

「ねえ純君。ミルファさんが純君のお嫁さんってどういう事なのかな?」

 

笑顔で質問してくるなのはちゃんだったが、妙なプレッシャーを感じて、俺は思わず後ろに座った椅子ごと後退しながら返答を返す。

 

「えっと……なのはちゃんも海鳴デパートの子供写真館は知ってるよね?そのお店が今度リニューアルするんだけど、その時に店頭に飾る写真のモデルをやらないかって誘われて、その写真が結婚式をイメージするっていうらしいから、お嫁さんの役をミルファに頼もうかなって思ってさ」

 

「何じゃ。それならば我に言ってくれれば良いではないか。一国の姫である我の写真を飾れば、良い宣伝効果になる事確実なのじゃ」

 

俺の話を聞いて一番に、エミリーちゃんが名乗りを上げた。

 

確かに本物のお姫様ならば、話題性抜群と言えるかもしれない。

 

「それじゃあ、エミリーちゃんに頼もうかな?」

 

「ちょっと待ちい!ここはいっそ、車椅子のお嫁さんなんて斬新でええと思わんか!?」

 

俺が誘う相手をミルファからエミリーちゃんに変更しようとすると、今度はそれを遮ってはやてちゃんが名乗り出る。

 

「そ、それだったら私も興味があるし、やってあげても良いわよ!」

 

更にアリサちゃんが、少し頬を赤く染めながら自分もやりたいと名乗り出た。

 

アリサちゃんの場合は、変な部分で素直じゃないところがあるので、この言い方は相当お嫁さん役をやりたいのだろう。

 

さっきのミルファの反応もそうだが、女の子にとってお嫁さんというのは、やはり誰もが憧れる存在なのだろうか。

 

「あの……私もお嫁さん役をやってみたいかな」

 

俺の考えを肯定するかの様に、普段はこういった状況では一歩身を引く事が多いすずかちゃんまでもが、控えめではあるが名乗りを上げる。

 

「駄目だよ皆!純お兄ちゃんは、私のお兄ちゃんなんだから、お嫁さんの役は当然私だよ」

 

そして最後にはアリシアちゃんが、謎の持論を自信満々に述べつつ、頑なに権利を主張してきた。

 

「最初に誘われたのは私なんだから、純は当然パートナーである私を選ぶわよね?」

 

なのはちゃん達が激論を交わす中で、ミルファが俺に対して、笑顔で確認を取って来る。

 

「な!?それだったらこの中では一番付き合いの長い幼馴染の私にも、権利はあると思います!」

 

ミルファの問いに俺が返事をするよりも早く、なのはちゃんが反応を示す。

 

先程まで和気藹々と和やかな歓迎会が催されていた筈なのに、気付けば何処までも殺伐とした雰囲気が店内を支配していた。

 

「それなら皆で写真を撮りに行って、一番良い写真を飾ってもらえば良いんじゃないかしら?」

 

何気なく発した恵理さんの言葉によって、騒がしかった店内に静寂が訪れる。

 

この喧騒を丸く治めたのは何の皮肉か、その最たる原因となる話題を持ってきた恵理さんに他ならなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの波乱の歓迎会から数日が過ぎた日曜日の午後、私服姿の俺は重い足取りで、海鳴デパートを目指していた。

 

『しかしモテル男は辛いなマスター』

 

「……メカ犬はあの時店に居なかったからそんな冗談が言えるんだよ』

 

肩口に担いだショルダーバッグの中から顔だけ出して、性質の悪い冗談を口にするメカ犬に、俺は溜息混じりに応対する。

 

恵理さんの言葉によって、何時の間にか勝負へと発展した今回の件は、これから行く子供写真館によって決着がつく訳なのだが、俺としてはこういった女の子特有の譲れないイベントで巻き込まれるのは成るべく勘弁願いたい。

 

その旨をメカ犬に話したところ、相変わらずの鈍感だなマスターは、何故かなじられたのは甚だ疑問である。

 

女の子が花嫁衣裳に憧れるのは、普通の事だと思う俺の認識は何か間違っているのだろうか。

 

ちなみに現在は俺の妹として一緒に暮らしているアリシアちゃんや、お隣に住む幼馴染のなのはちゃんがこの場に居ないのは、女の子には色々準備があるかららしい。

 

母さんと桃子さんが結託して何やらやっているらしいが、それこそ男子禁制の女性の聖域なので俺はその内容に一切触れようとは思っていないとここに明言しておく。

 

なので少し早めにメカ犬をお供に家を出て来ているのだが、改めて考えるとやはり憂鬱な気持ちへとなってしまう。

 

「……憂鬱だな」

 

『いや、ワタシ個人の意見としては男としてこの展開は喜ぶべきだと思うぞ?』

 

「そうか?」

 

『うむ。なのは嬢達の様な美少女達と、モデル撮影とは言え結婚式さながらの写真が撮れるならば、やはり素直に喜んでおくべきだろう』

 

確かにメカ犬の言う通り、俺の様な冴えない男が、将来なのはちゃん達の様な美人なお嫁さんを貰う可能性は低い。

 

自分で言っていて悲しくなるが、これも長い目で見れば一つの良い思い出という奴になるのだろうか。

 

『キンキュウケイホウキンキュウケイホウキンキュウケイホウ……』

 

俺が自分の心の中で、一つのスタンスを形成し終えた直後、ズボンのポケットの中に忍ばせていたタッチノートから、警告音が鳴り響く。

 

「ホルダー反応!?」

 

『距離は近いぞマスター!』

 

「分かってるさ!」

 

メカ犬の言葉に返事を返しながら、俺は周囲を見渡して近くに人が居ない事を確認してからタッチノートを操作していく。

 

『バックルモード』

 

タッチノートから鳴り響く音声と共に、ショルダーバッグの中から飛び出して来たメカ犬がベルトに変形を果たして、俺の腹部へと巻きつく。

 

「変身」

 

俺はそれを確認しつつ、手にしたタッチノートをベルトの中心の窪みに差し込む。

 

『アップロード』

 

眩い光が俺の全身を包み込み、その姿を一人の戦士へと変えていく。

 

『お待たせマスター!』

 

俺がシードへの変身を終えた直後、後方から大きなエンジン音を響かせながら、変身する直前にタッチノートで呼んで置いたチェイサーさんが現れる。

 

「頼みますよ!」

 

『任せておいてん!』

 

相変わらずの新宿二丁目的な返事をするチェイサーさんに跨り、俺はホルダー反応の出た地点に向かって出発した。

 

先程もメカ犬が言った通り、ホルダーの出現場所は俺達が居た場所からさほど離れておらず、程無くして俺の視界の中に、人と似た形をしながら人では無い異形の姿が飛び込んでくる。

 

その異形がホルダーと見て、まず間違い無いだろう。

 

ホルダーは身体そのものは青黒い肌をしている以外は、殆ど筋肉質な人間の様に見えたが、その頭部は明らかに人間のものとは異なっていた。

 

一言で表すとするならば、その頭部は巨大な一眼レフのカメラだ。

 

俺が前世の頃に足繁く通っていた映画館の、上映時間直前に流れていたあれの親戚にも思える姿だが、あまり言及する事はしないでおこうと思う。

 

そのホルダーなのだが、既に激しい戦いを繰り広げていた。

 

相手はこの海鳴市を守る、メタルイエローのボディーが特徴的な仮面ライダーであるE2だ。

 

E2は接近を試みるホルダーに対して上手く距離を保ちながら、ESM01による得意の射撃で攻撃を加え続ける。

 

だがホルダーもただやられているだけではなく、被弾しながらも強引に距離を詰めようとE2に向かって駆け抜けていく。

 

だがホルダーの拳がE2に届く事は叶わなかった。

 

何故ならば……

 

「ぶけべら!?」

 

E2との距離を埋めるよりも早く、チェイサーさんのバイクタックルによって奇声を発しながら吹き飛ばされた為だ。

 

ホルダーが地面を転がり続ける情景を見ながら、俺はチェイサーさんから降りてE2との合流を果たす。

 

「シードさん。ありがとうございます」

 

俺はE2の感謝の言葉に無言で頷きながら、ホルダーの転がっていった方向に身構える。

 

思ったよりもタフなのか、ホルダーは大したダメージを負った様子も無く立ち上がってきた。

 

「また新手の仮面ライダーか!?どうしてお前達は私の芸術的な創作活動を妨害する!?」

 

憤慨しながらホルダーが予想外な言葉を口にする。

 

「創作活動?」

 

「奴は創作活動なんて言っていますけど、実際にやっている事はただの破壊活動ですよ。現に僕が通報を受けて来た時も、辺り構わず暴れ続けていました」

 

ホルダーの言葉をオウム返しで聞き返した俺に対して、E2が補足説明を付け加えてくれた。

 

「本当の芸術とは、自然の中から滲み出るものさ!それを手っ取り早く引き出せるのは恐怖だ!私はその瞬間を永遠の芸術として写真に撮るのさ!」

 

誇らしげに語った後、ホルダーが俺達に数枚の写真をちらつかせて来る。

 

その写真に写っている写真の人達の顔は、例外無く恐怖によって歪んでいた。

 

「こんなものが芸術だと!?」

 

「これ以上一般市民に危害は加えさせない!」

 

だがその行為は、俺達の怒りの炎に油を注ぐだけだった。

 

俺とE2はホルダーのしようとしている事に怒りを覚えながら突貫を開始する。

 

「おっと!私はまだ最高の写真を撮るという重大な使命があるんでね。こんなところで倒される訳には行かないんだよ!」

 

しかしホルダーは俺達の行動を事前に予測していたのが、自身の側頭部に存在するボタンらしきものを押す。

 

すると、ホルダーの頭部から眩い光が生まれて、真正面から突貫を開始していた俺とE2の視界を短い間ではあるが、完全に遮断してしまう。

 

暫くして視界を取り戻した俺達の前には、ホルダーの姿は何処にも見当たらなかった。

 

『どうやら逃げられた様だな』

 

メカ犬が呟いた通り、ホルダーの姿はその場から完全に消え去り、俺達には奴の行方を追う事すら叶わなかった……

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