魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~ 作:G-3X
「確か……この奥が子供写真館だったな」
父さん達と来た時の記憶を頼りに、海鳴デパートの二階の通路を進んでいくと、営業中では無いが見覚えのある看板が俺の視界に入ってきた。
『ここがマスターの言っていた店なのだな』
メカ犬も一度は海鳴デパートに、デート事件の時に一緒に来ていたがその際はデパートの奥に当たるこのお店には寄る事は無かったのだから、初めて来たと言っても差し支え無いだろう。
「ああ、だけど本当に良かったのかメカ犬。俺達も逃げたホルダーを追わなくてさ?」
『うむ。ホルダー自身が再び活動するまでは、タッチノートも反応しないだろうしな。目撃情報等を短時間で入手するならば、警察に任せておいた方が確実だろう。それよりも今の私達なりに出来る調査を行った方が堅実だ』
ホルダーに逃げられてしまった後、俺達はホルダーの追跡を開始したE2を見送り、当初の予定通り海鳴デパートの子供写真館へとやって来ていた。
最初に誤解の無い様に言っておくが、俺達は別に今回のホルダーの件を、E2に全て押し付けた訳ではない。
以前にもメカ犬から聞いていた話ではあるのだが、ホルダー化した際に、その姿は暴走プログラムの持ち主の特性が色濃く反映される場合が多いのだ。
今回のホルダーの姿と、言動から考察して写真にかなりの執着が見られるのは、俺でも分かる。
一つの例としてこの写真館の店長さんが、今回のホルダーの正体だと明言するのは、あまりにも乱暴な推理ではあるが、何かしらのヒントが得られるかもしれない可能性が秘められているというのは、紛れも無い事実だ。
それにこの近辺で写真に造詣が深いという点でいえば、この写真館はどの道調べる対象に上がってくるだろう。
ならばそれを逆手にとって、元々の予定であった写真のモデルをやりながら、調べた方が幾分と効率は良い。
念のためにチェイサーさんに頼んで、情報屋でワイルドチワワなジャックにも話は通してあるので、今の俺達が出来るのはこれ位のものでしかないというのもあるが……
「あ!待ってたわよ純君!」
お店の前で待っていた人物が俺に声を掛けて来る。
今回俺に写真のモデルを頼んだ恵理さんその人だ。
「恵理さん……その……後ろのそれは何ですか?」
俺は出迎えてくれた恵理さんよりも、その後ろに控えるとある物体の異様なまでの存在感に、挨拶よりも先に質問を投げ掛けてしまう。
それと言うのも、恵理さんの背後に俺を出迎えるが如くやたらファンシーな狸と河童のきぐるみが鎮座していたからである。
「俺だよ、俺」
挨拶代わりにした俺の質問に恵理さんが答えるよりも早く、そう言いながら河童のきぐるみが自身の頭部へと手を掛けて思い切り引っこ抜く。
きぐるみの中から現れた人物の顔に、俺は思わず噴出した。
「と、鳥羽さん!?」
なんと河童の正体は、まさかの鳥羽さんだったのである。
そうなると残る狸の中身はやっぱり……
俺が視線を狸へと向けると、河童な鳥羽さんの例に倣ってか同じく頭部を引っこ抜く。
「……やっぱりヤスだったんだな」
狸の中身は予想通りヤスだった。
鳥羽さんによって無理矢理やらされたのだろうか、凄く疲れた顔をしている。
「……今日は意を決して、柿崎さんをデートに誘おうとしたのに、鳥羽さんがいきなり俺の家にやって来てお前も手伝えって……」
涙ながらに語るヤスには同情を覚えるが、その狸姿だとどうしても笑いが込み上げてきそうになる。
そして重ね重ねヤスには悪いと思うが、週末の休みごとにデートに誘うと息巻いているヤスだが、一度として成功した試しが無いので、恐らくは鳥羽さんに拉致されなくても、結果は同じだったのでは無いのかと思う。
説明を終えた後、再びヤスが狸さんヘッドを装着しても滲み出てくる哀愁に、俺は掛ける言葉を見つける事が出来なかった。
「……えっと、それで二人は何でそんな格好を?」
「そりゃ、今日の主役の板橋達が撮る写真の手伝いに決まってるだろ」
気を取り直して質問した俺に、鳥羽さんが当然の様に答えるが、事前に聞いていた結婚式をイメージした写真の撮影に、ファンシーな河童と狸がどんな手伝いをするのだと言うのだろうか。
俺はホルダーの件とは別に、この撮影自体に一抹の不安を覚える。
「ほら、それより純君も急いで中に入って準備して。君以外はもう全員準備が出来ているのよ」
まだ鳥羽さんに聞きたい事があったのだが、恵理さんが強引に話を纏めると、俺の背中を押してお店の中へと入っていく。
恵理さんの言い方から察するに、少なくても俺の方がなのはちゃんとアリシアちゃんよりも早く家を出た筈だったのだが、どうやらホルダーと戦っていた間に先に到着して撮影の準備を終えていたらしい。
促されるままに店内に入った俺は、目の前に広がる光景に息を呑んだ。
俺の正面には撮影する準備を終えたなのはちゃん達が勢揃いしていた訳なのだが、その姿は普段の彼女達とはまるで違っていた為である。
純白のドレスを見事なまでに着こなした彼女達は、まるで一国の美しい姫達が一堂に会したかの様な、華やかさを感じさせた。
まあ、実際にこのメンバーの中に一人、本物のお姫様も混じっている訳なのだが、俺の少ないボキャブラリーではこの表現が精一杯なので勘弁していただきたい。
「いや~これは良い被写体ね~」
俺がなのはちゃん達の花嫁姿を前に硬直していたら、後ろから嬉しそうな女性の声が、俺の耳の鼓膜を振るわせる。
だがその声の主は恵理さんで無い事が明らかだったので、俺は何とか硬直状態から脱する事に成功して、声の主を確認する為に、後ろへ振り返った。
後ろへ振り向くと、満面の笑みを浮かべながら、なのはちゃん達を見る一人の女性。
ボブカットの黒髪に温和な瞳、白いカッターシャツとタイトなスカートというラフな格好。
更には首に一眼レフのカメラをぶら下げている。
この人こそ子供写真館の店長にして、恵理さんと鳥羽さんの元同級生、そして今回写真のモデルを引き受ける直接の切欠を作った人物、古川美咲《ふるかわみさき》さんだ。
「そうでしょう古川さん。私も今度の表紙のモデルに使いたい位だもの」
先程の古川さんの台詞に対して、恵理さんが胸を張りながら話し掛ける。
「うふふ。やっぱり風間さんにお願いして正解だったわ。私じゃこんな逸材を沢山集めてくるなんて出来なかっただろうし」
「まあ……本当のところを言うと、彼女達がモデルを引き受けたのは、私のお陰って言うよりも、この純君の功績なんだけどね」
恵理さんはそう言うと、俺の両肩を持った状態のままで、強引に俺を古川さんの正面側へと方向転換させる。
「えっと、お久し振りです古川さん。今日は宜しくお願いしますね」
「ええ。今日はありがとうね純君。御礼に最高の写真を撮ってあげるから楽しみにしてて」
俺の短い挨拶に対して、古川さんは挨拶を返しつつ、その穏やかな瞳の奥に熱い闘志を宿しながら、握り拳を作って見せた。
その様子から古川さんのやる気が、伝わってくる。
「来てもらって直ぐで悪いんだけど、純君はタキシードに着替えてくれるかしら。この奥の衣装棚に色々と揃えてあるから、最初は好きなのを選んで頂戴。何か分からない事があったら、私は風間さん達と撮影ブースの方で準備してると思うから、遠慮無く聞きに来てね」
「はい」
古川さんの説明に返事を返しながら、俺は以前にも何度か訪れた事のある衣装棚の方に、これから自分の着る衣装を探しに向かう事にした。
「……なあ、メカ犬」
『どうしたマスター?』
その後程なくして衣装棚で見つけた、俺に合うサイズの子供用の白のタキシードに着替え始めながら、俺はメカ犬に話し掛ける。
「メカ犬は古川さんがホルダーだと思うか?」
『……現段階では完全に否定する材料が足りないが、恐らく彼女がホルダーという事は無いとワタシは思うぞ』
「やっぱりメカ犬もそう思うよな」
今までホルダー化した人物とは結構な頻度で、戦う前や最中に話をする機会があったが、例外無くその人達は何処か常軌を逸した雰囲気をその身に纏っていた事が嫌でも感じられた。
だが古川さんとの会話では、そんな雰囲気は微塵も感じる事は無かったのだ。
俺だけでなくメカ犬も同じ意見なのだから、その見解に間違いは無いだろう。
つまりホルダーの捜索も、また別の線を洗わなければいけないという事である。
「そうなるとこの近くは……確かこの海鳴デパートの中に、家電を扱うお店も入っていたな」
『うむ。撮影を切りの良いところで抜けたらそちらに行ってみよう』
もしもそれで収穫ゼロであれば、ジャックに情報が何か無いか聞きに行くか、警察の捜査を待って長谷川さんを尾行する……最悪の場合は、再びホルダーが現れるのを待つしか無いだろう。
「どっちにしても、今回のホルダーの目的は、写真の為に他人を傷つけるなんて事なんだから、一刻も早く止めないと」
『それは確かにそうだが、ワタシ達が慌てたところで、事態は進展しない。それにホルダーが健在な以上何が起こるか分からないからな。ここは慎重に行動した方が良いだろう』
「ああ」
俺はメカ犬と今後の方針について話しながら着替えを終えて、皆が居るであろう撮影ブースへと向かう事にした。
「あら純、随分と遅かったわね」
撮影ブースで最初に俺を出迎えてくれたのは一番ブースの入り口付近に陣取っていた花嫁衣裳に身を包んだミルファだった。
「ごめん。色々とやる事が多かったんだ」
「……もしかしてホルダー?」
俺の返答に、ミルファが他の人達に聞えない様に、小声で聞いて来る。
「ああ。もしかして試練の光も、この近くで反応があったのか?」
「いいえ。プリズムの話じゃ、今のところそんな大きな反応は出ていないけど、もしもホルダーがこの近くで暴れだしたら、一気に引き寄せられて来るかも」
「取り敢えず、俺とメカ犬は撮影が済んだらホルダーの情報を探しに行ってみる。ミルファもそっちの警戒をしておいた方が良いと思う」
「分かってるわよ。それより純達も気を付けなさいよ」
「ああ、そうするよ」
俺はミルファの忠告に、頷きながら答えを返すが、当の本人は何処か不満気な表情を見せる。
「ホルダーの事もだけど、純のお友達の事よ!」
「え?」
『ミルファ嬢よ。鈍感なマスターにそんな繊細さを求めるのは酷というものだぞ』
俺がミルファの言わんとする事が理解出来ず呆けていると、更にメカ犬が苦言を呈してきた。
「まあ、純にそういった乙女心を理解しろっていうのも無理な話よね」
『うむ』
何故だか分からないが、俺は今この二人に物凄い悪口を言われている様な気がしてならない。
だが俺の勘が、その話題に対して首を突っ込むと、もれなく大きな損害に見舞われると激しく警報を鳴らす為に、何も言い返す事が出来なかった。
理不尽な言葉の暴力に晒されながらも、古川さん達の近くへ行くと、何やら撮影側の古川さんが困り果てた表情を浮かべている。
「古川さん。着替えて来ましたよ」
「……あら、思っていたより早かったわね。それじゃあ早速撮影を始めましょう……って言いたいんだけど、もう少し待ってもらっても良いかしら?」
古川さん自身は早く撮影を始めたといった感じだったが、返ってきた答えは真逆の意味の言葉だった。
「何かあったんですか?」
「実はあともう一人撮影スタッフに、ここでアルバイトしてる子が来る筈何だけど、連絡が取れないのよ」
「アルバイトの人ですか?」
「ええ。その子も勿論写真が大好きなんだけど、最近スランプらしくてね。コンテスト用の写真が上手く撮れないらしいのよ。だから気分転換に偶にはコンテストとは関係無い写真でも撮ってみたらどうかなって誘ってみたんだけど……」
写真に並々ならない関心を持ちながら、強いコンプレックスを持っている持ち主。
話を聞く限り、人物像としては古川さんよりもそのアルバイトの人の方がホルダーの可能性が高そうに思える。
何の根拠も無い、ただの一つの可能性でしかない考えが、俺の頭の中に浮かんだ次の瞬間……
「あら!?心配したのよ鈴音《すずね》さん」
俺越しにお店の入り口に視線を向けた古川さんが、知らない名前を呼んだ。
振り返り入り口に視線を向けると、黒髪が腰の辺りまで伸びた、高校生から大学生に見える女の人が、入り口に佇んでいた。
恐らくこの人が、鈴音さんという人なのだろう。
そして古川さんの話の流れからして、この鈴音さんがアルバイトの人なのだと思われる。
待っていたのよと言いながら、鈴音さんの下へと近付いていく古川さん。
だが俺の直感が、これ以上鈴音さんに近付くのは危険だと告げている。
「ちょっと待って古川さん!!!」
俺が叫ぶのと、鈴音さんに起こった変化はほぼ同時だった。
古川さんが俺の叫びで足を止めた直後、鈴音さんの全身が赤い光に包まれて、異形の姿へと変貌を遂げたのだ。
更にその変貌した姿は、俺達がここに来る前に戦ったホルダーだったのである。
気付いたのは、鈴音さんを視界に映してから直ぐだった。
鈴音さんからは、ホルダー化した人達が放つ特有の雰囲気が感じられたのである。
何の皮肉なのか、先程の俺の根拠も無い推測が現実のものとなってしまったのだ。
「きゃああああああああああああああああああああ!?」
古川さんが鈴音さんのホルダー化を前にして、悲鳴を上げる。
その悲鳴に呼応する様に、古川さんとホルダーの間に、一匹のファンシーな河童が飛び込んできた。
「鳥羽さん!」
「板橋!早く古川ちゃん達を下がらせろ!!!」
俺は河童こと鳥羽さんの指示に従い、怯える古川さんの手を引きなのはちゃん達が居る後方へと下がらせる。
「おりゃ!」
河童姿の鳥羽さんが果敢にホルダーに接近戦を仕掛けるが、その攻撃自体はあまり効いている様には見えない。
今度は此方の番だとばかりに、ホルダーが拳を繰り出すが、寸でのところで見事にその攻撃を鳥羽さんは捌ききってみせる。
だが完全に避ける事は出来ず、河童のきぐるみの頭部が吹き飛ばされて、鳥羽さんの顔が露出してしまう。
「鳥羽さんこれを!」
其処へ今度は狸姿のヤスが、普段から鳥羽さんの持ち歩いているアタッシュケースを開けて、一本のベルトを投げ放つ。
「ナイスだヤス!」
鳥羽さんは咄嗟の判断で、ホルダーの腹部に蹴りを叩き込み後ろに下がらせてから、ヤスの投げたベルトをキャッチしてすぐさま自身の腹部へと巻き付けた。
「変身!」
高らかに力ある声を発した鳥羽さんは、素早く取り出した緑のカードケースをベルトの中央へと差し込む。
『アクセス・リンク』
機械的な音声がベルトから響き、鳥羽さんの身体の前方に、光が様々な数式が羅列された様な状態で浮かび上がるとその光が瞬時に人の形へと編みあがり、鳥羽さんの身体と重なり合い全体的に白を基調としたフォルムに、所々緑の装飾があしらわれたデザインの仮面ライダーアクセスへと変身を果たす。
「さあ、本番はここからだぜ!」
アクセスはホルダーに対してそう宣言すると、ホルダーに掴み掛かり、一気に駆け出してお店の外へと出て行く。
その先は大きな透明のガラス張りとなっており、アクセスは躊躇する事無く、ガラスへと突っ込み外の駐車場へと戦いの舞台を移した。
戦いは終始アクセスが果敢に接近戦を仕掛けて優位に進めていた。
これならば、俺が加勢するよりも早く決着がつくだろうと確信したその時だ。
上空から光の玉が舞い降りて、ホルダーの体内へと取り込まれてしまったのである。
「あれは!?」
「もしかしなくても試練の光よ!」
『急ぐぞマスター!』
俺は事態の悪化を素早く悟ったメカ犬とミルファと共に、この場をヤスと恵理さんに任せる事にして店内を出て、急いで下の駐車場へと走る。
人気の無い非常階段で、変身を遂げた俺とミルファが駐車場に辿り着くと、アクセスとホルダーの両名が睨み合いを続けていた。
「取り敢えずホルダーは俺達が何とかする。試練の光の処理は任せるぞ」
「分かったわ」
俺はミルファと短い言葉を交わしてから、駆け足でアクセスの横へと並び立つ。
其処で俺は改めてホルダーの風貌を確認したのだが、その姿は先程とは試練の光の影響か、著しく異なっていた。
全身は黒色の鋼の様な武装に身を包み、頭部のカメラの形状も、若干巨大になった様に思える。
「はは!何だかさっきよりも手応えのありそうな感じになって来たぜ!」
この場で一番先に動いたのはアクセスだった。
相変わらずの好戦的な台詞と共に、ホルダーへと突っ込んで行く。
だが先程の防戦一方だった戦いから打って変わり、ホルダーは繰り出されたアクセスの拳を意とも簡単に受け止めてしまう。
更にホルダーのカメラを模した頭部が眩い光を放ち、その光はアクセスの全身を包み込んでしまう。
だがそれも一瞬の出来事で、光はすぐに収まり光に包まれていたアクセスの姿もはっきりと見える様になる。
しかしその光景には、かなりの違和感が伴っていた。
「どういう事だよこりゃ!?」
その光景を間近で目撃したアクセスが、驚きの声を上げる。
それも致し方ないだろう。
何故ならば、ホルダーと正面から対峙するアクセスとは別に、もう一人のアクセスがホルダーの横に佇んでいたのだ。
「……行け」
しかも新たに出現したもう一人のアクセスは、ホルダーの短い号令の下、先程驚きの声を上げた方のアクセスに襲い掛かってきたのだ。
「まさかこれがこのホルダーの能力なのか!?」
『うむ。恐らくあのホルダーの能力は現実世界の一部を転写する事なのだろう。恐らくアクセスを転写出来たのは試練の光によって力を増した為だろうがな』
「それじゃあ迂闊に近付いたら、俺達も自分の姿を転写されるって事か」
『そうなるだろうな。遠距離から攻撃を仕掛けるにしても、奴の視界に入って戦う以上は、何時転写されてもおかしく無いだろう』
こういった相手に対して、距離を置いて戦うのは定石ではあるが、あの能力の射程と発動条件が分からない以上は下手な真似をすると、俺もアクセスの二の舞となってしまう。
そのアクセスも今は、転写された自分自身と戦っているが、俺が見る限りその能力はほぼ互角と言える。
どうやら姿だけでなく、転写した相手の能力も再現出来る様だ。
『……そうだマスター!』
何か打開策は無いかと思案していると、ベルト状態のメカ犬が俺に話し掛けてきた。
「どうした?」
『あのホルダーの能力の詳細までは分からないが、恐らくあの能力の根底にカメラの機能が大きく関係している事に間違いは無い筈だ!ならばその機能の逆手を取れば良い』
「……そうか!もしメカ犬の予想が正しいなら……」
俺はメカ犬の言わんとしている事を理解して、早速行動へと移す。
まず俺はベルトの右側をスライドさせて緑色のボタンを押した。
『スピードフォルム』
流れる音声と共に、メタルブラックのボディーが鮮やかなライトグリーンへと変わっていく。
更にタッチノートをベルトから引き抜いて操作する。
『コール・ライガー』
俺が呼び出したのは、この場で唯一あのホルダーの能力を掻い潜る事が出来る可能性を秘めた緑の獣。
『お待たせじゃん!』
呼び出したメカ虎が何時もの様に、フランクな挨拶をしてくるが、生憎と今は返事を返している時間も惜しい。
「力を貸してくれメカ虎!」
『OKじゃん!』
俺はメカ虎と一言だけ言葉を交わしてから、再びタッチノートを操作していく。
『スタンディングモード』
アタッチメントパーツへと変形したメカ虎を握った俺は、タッチノートを再びベルトに差し込み、続いてベルトの左側をスライドさせて、その差し込み口にアタッチメントパーツとなったメカ虎をセットする。
『スピード・ライガー』
音声が鳴り響いたその瞬間に、ライトグリーンの追加パーツが、ベルトから発せられる光から生成されて、次々と俺の身体に装着されていく。
「行くぞ!」
ライガーモードとなった俺は、一気にホルダーへと駆け出した。
「ふん!お前もさっきのライダーと同じ様に、自分と戦うが良いわ!」
向かって来る俺に対して、ホルダーは自信満々に言い放つと、先程のアクセスした時と同じ様に、頭部から眩い光を放出する。
だが俺もそう来る事は、読めていた。
ホルダーの頭部が光り始めると同時に、俺は素早くステップを踏んで、ホルダーの横へと回り込む。
更に俺はアタッチメントパーツのボタンを押す。
『ライガーファング』
ベルトから発生した光が両手両足に絡まり、虎の顔を模した形のプロテクターになり、それぞれのプロテクターからは、鋭い三本の刃が伸びる。
「はああああああああああああああ!」
俺は生成されたライガーファングで、ホルダーを連続で斬りつけていく。
「な、何で私の能力が!?」
攻撃を受けた事よりも、ホルダーは自身の能力が俺に効かなかった事の方に驚いていた。
『思った通りだなマスター』
「ああ、このまま一気に行くぞ!」
俺はメカ犬の言葉に頷きながら、更にホルダーへ攻撃を畳み掛けていく。
メカ犬と俺の予測は当たっていた。
基本的にカメラとは静止した状態の被写体でなければ、上手く写らない事が多々あるものだ。
最新のカメラは、手ブレ機能などの補正機能があるので、多少は動いても問題は無いかもしれないが、それにだって限度というものがある。
この結果により確証を得た訳だが、恐らくあのホルダーの転写能力を発動するには、その対象の姿をはっきりと写す事が条件なのだろう。
だからこそ俺はメカ虎を呼んだのだ。
スピード・ライガーは全てのフォルムの中でも最速を誇る。
メカ犬はそのスピードによって、相手に俺の姿を転写させる事を阻止しようと考え付いた訳だ。
「うをおおおおおおおおお!」
「くうっ!?」
ライガーファングの一撃が、ホルダーの頭部の巨大なレンズ部分に大きな傷を付ける。
その瞬間、先程まで本物のアクセスと戦い続けていた転写されたアクセスが、忽然と消えてしまった。
「お!?折角楽しくなってきたのにもう終わりか?」
残念そうに言うアクセス。
良かれと思ってやったのだが、どうやらアクセスは転写された自分と戦うのを楽しんでいたらしい。
「くっ!?折角あの御方から貰った力なのに……」
あの御方?
暴走プログラムを鈴音さんに渡したのは、オーバーとメルトじゃないのか?
そう言えば鈴音さんはホルダー化する時に、全身から赤い光を放っていた。
このタイプのホルダーとは何度か戦った事があるが、もしかしたら俺達は何か根本的な部分で考え方を間違っているのかも知れない。
「そんじゃ、手伝いも残ってるしそろそろ終わりにするか!」
俺が思案している間に、アクセスが怯んだホルダーに怒涛のラッシュを加えていく。
『マスター!』
「ああ、こんな悪夢はここで終わらせる!」
メカ犬の言葉によって、目の前の戦いに改めて集中した俺は再びベルトの右側をスライドさせて赤いボタンを押した。
『パワー・ライガー』
ライトグリーンのボディー部分が、クリムゾンレッドへ変わり、身体の奥底から力が漲っていく。
『マックスチャージ』
更にアタッチメントパーツのレバーを引く事で、音声が流れ右腕に装着されたライガーファングに光が集約される。
「止めは任せたぜ!」
俺の準備が整った直後、アクセスがホルダーを此方へ投げ飛ばした。
「こいつで決めるぜ」
此方へ飛んで来るホルダーに対して、俺は下から上にアッパーの様に右腕のライガーファングを振り上げる。
「パワードスラッシュ」
必殺の一撃がホルダーを切裂き、大きな爆発を引き起こす。
爆発の中から、気絶した鈴音さんと、主を失った試練の光が飛び出して来た。
気絶した鈴音さんは、地面に落ちる前に俺がキャッチし、空中に浮かぶ試練の光は、ミルファの魔法によって無へと返る。
取り敢えずこれで今回のホルダー事件は、思ったよりも早く解決した訳だが、幾つか気掛かりが残る結果となった……
あのホルダーは中々の出来だったが、やはり倒されてしまったか。
だがこれでまた一つ、貴重なデータが増えた。
更にあのホルダーを強化した光……
あれを分析する事が出来れば、私の野望が現実となるのも、夢では無いかもしれないな。
だとすれば……今までの様なやり方では生温いかも知れない。
多少のリスクを払ったとしても、より確実に詳細なデータを集めなければ……
意識を取り戻した鈴音さんは、やはりホルダーだった時の記憶は失っていた。
唯一覚えていたのが、暗室で写真を現像している際に、突如として現れた謎の存在が居たという事だけだった様だが、肝心の容姿は部屋が暗かったので、分からなかったらしい。
まあ、それとは別にその後の鈴音さんなのだが、古川さんにある程度のホルダーの特性を恵理さんを通して説明した事によって、何とか理解を得る事に成功した。
それだけでなく、思った以上に鈴音さんが悩んでいた事に気付いてあげられなかったのだと自らを悔やみ、鈴音さんの悩みを真摯に聞き続けたのである。
恵理さんと鳥羽さんの知り合いだというのに、何て良心的な女性なんだろうと感動したのは、きっと俺だけでは無いだろう。
無事に事件も解決したという事もあり、それから俺達は当初の予定通り撮影を開始した。
……その撮影が終わって数日後の話だ。
「……こ、これを本当に飾るつもりなんですか!?」
「ええ。古川さんもやっぱりそれが一番良い出来に仕上がったって言ってたからね」
俺は恵理さんが持ってきてくれた写真の内の一枚を見ながら、思わず声を震わせてしまった。
撮影ではなのはちゃんを始め、一人ずつツーショットで写真を撮って行き、最後に記念として花嫁全員と、その中央に半ば強引に俺を含んで撮影されたのだが、何と店頭に飾る写真に選ばれた写真がその最後に撮った写真だったのである。
「これは流石に恥ずかし過ぎるんですけど……」
何とか抗議しようとするが、恵理さんは無情にも静かに首を横に振る。
その後暫くの間、俺のあだ名がハーレム王となったというのは、俺の生涯隠したい黒歴史の一つとして認定された。
……まあ、何だかんだで今日の海鳴はそれなりに平和である。