魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~ 作:G-3X
迫り来るホルダーモドキを蹴散らしていくディケイド。
しかし倒しても、倒しても、校庭を闊歩するホルダーモドキ達の数は、一向に減りはしない。
「数が多いな……それならこれで行くか」
ディケイドは正面から襲い掛かるホルダーモドキを相手取りながら、腰のライドブッカーに手を掛けて一枚のカードを取り出す。
取り出したカードをディケイドは素早くディケイドライバーを展開させて、内部に取り込んでその能力を発動させる。
『アタックライド……イリュージョン!』
音声が響いた次の瞬間、マゼンタの光がディケイドの両脇に出現して、二体の分身体が生成された。
本体を含む三体のディケイドは三方向に分かれて駆け出す。
まずは中央に駆け出した本体のディケイドは先程と同様に近接格闘で、周囲のホルダーモドキを蹴散らしていく。
更に両端に位置した二体の分身体のディケイドが、其々ライドブッカーからカードを引き抜いて、ディケイドライバーにセットする。
『アタックライド……ブラスト!』
『アタックライド……スラッシュ!』
分身体のディケイド達は各々のライドブッカーを、ガンモードとソードモード変形させて、攻撃を開始する。
アタックライドの力で強化されたガンモードの威力を高めると共に、銃身が幾重にも分身してホルダーモドキ達に光弾が嵐の様に降り注ぐ。
一方でソードモードのライドブッカーもガンモードと同様に、アタックライドの効果によって威力が高まり、斬撃が放たれる度にその刃からも分身が生み出されて、斬ったホルダーモドキの周囲までも、その範囲に巻き込む。
物量を増した事により、瞬く間に校庭のホルダーモドキの数が殆ど居なくなった頃、その瞬間を狙うかの様に銀色のオーロラが出現した。
銀のオーロラから出て来た一人の人物。
「……鳴滝」
オーロラから出て来た人物の名を、ディケイドは呟く。
その呟きには、またかという若干、諦めにも似た感情が含まれている。
これまで幾つもの世界を旅してきた先で、鳴滝は現れ続けたのだ。
いい加減にしつこいと辟易するのも、致し方無いだろう。
「ディケイド。貴様の旅もここで終わりだ」
鳴滝は開口一番に、ディケイド言い放つ。
その鳴滝の言葉を合図に、背後に再び銀のオーロラが出現して、その内側からこの世界に新たな存在が姿を現す。
額から伸びる四本の金色の角。
禍々しさと高潔さを混ぜ合わせた様な、独特の重圧を周囲に放つ白き異形の姿が其処にはあった。
「これこそ貴様を倒すに相応しい究極の刺客!ン・ダグバ・ゼバだ!」
高らかに咆哮する鳴滝。
「究極だか何だか知らないが、こんな場所でやられるつもりは無いな」
ディケイドは鳴滝の咆哮を一蹴して、イリュージョンによって生み出した二体の分身体と共に、ン・ダグバ・ゼバへと強襲を仕掛ける。
まずは離れた位置に陣取った分身体のディケイドが、ガンモードにしたライドブッカーの銃身を構えて、援護射撃を行う。
その隙に本体ともう一体の分身体が、挟み込む形で近接戦を仕掛けるが、ン・ダグバ・ゼバは一切の動揺すら見せない。
まず第一に本体であるディケイドが繰り出した拳を、自らの手で受け止めると、無造作に投げ飛ばす。
更にその横から、分身体がソードモードにしたライドブッカーで斬りかかるが、ン・ダグバ・ゼバはその攻撃に対して何の対処をする訳でもなく、正面から斬撃を受け止めた。
だがその一撃は、強靭なン・ダグバ・ゼバの肉体によって殆どのダメージすらも見受ける事が出来ない。
しかもン・ダグバ・ゼバは、分身体から強引にソードモードのライドブッカーを奪い取り、逆にその凶刃で分身体を切裂いてしまう。
儚く無に帰る分身体を前に、残っている分身体が、銃撃を必死に浴びせ掛けるが、ン・ダグバ・ゼバにとってそれは何の意味も成さなかった。
ただ、意識を向ける事だけは出来たのだろう。
ン・ダグバ・ゼバは無造作に持っていた分身体の持っていたソードモードのライドブッカーを、槍の様に銃撃を続ける分身体のディケイドへと投擲する。
投擲されたライドブッカーの刃は吸い込まれる様に分身体の胸に突き刺さり、瞬く間に光の粒子となって突き刺さったライドブッカーもろとも消失した。
「どうだディケイド!この圧倒的な力こそ、まさに究極!!今度こそ貴様もここで終わりだ!!!」
圧倒的な力で二体のディケイドの分身体を倒したン・ダグバ・ゼバを前に、勝利を確信した鳴滝は歓喜の声を上げる。
しかしディケイドは、諦めず再び立ち上がった。
この世界を巡る長い旅が、何をもたらすのかは分からない。
だがそれを知るためにも、こんな場所で旅を終わらせる訳には行かないと、ディケイドは自らを奮い立たせる。
「……そっちが究極なら、こっちも究極だ!」
自らを奮い立たせながら叫んだディケイドの手には、中央に大きなディスプレイがある機械が握られていた。
ディケイドはその機械、ケータッチに一枚のカードを差し込む。
一瞬、高いキーの電子音が流れ、ディスプレイには差し込んだカードに描かれていた複数の紋章が浮かぶ。
ディケイドはその紋章を、順番に指でなぞっていく。
『クウガ』
『アギト』
『龍騎』
『ファイズ』
『ブレイド』
『響鬼』
『カブト』
『電王』
『キバ』
紋章を一つなぞる度に、ケータッチから音声が鳴り響く。
『ファイナルカメンライド……ディケイド!』
そして全ての紋章をなぞり終えた瞬間、ディケイドに新たな変化が訪れる。
全体のカラーリングはマゼンタと白を基調としたものから、黒と銀を基調としたものに変わり、緑の複眼もマゼンタに変わって顔の造詣そのものが若干変化していく。
更に、ディケイドの胸部に新たな外装が生成され、その内部にはこれまでの旅で出会った9人のライダー達の姿が描かれたカードが装填されて、その額にもディケイド自身が描かれたカードが装填される。
そしてディケイドは自ら腹部のバックルを取り外して、右腰に着け直すと、空いた中央部分にケータッチを差し込んだ。
ディケイドが9人のライダーと出会いを果たし、その力を束ねたこの姿こそ、コンプリートフォームである。
コンプリートフォームとなったディケイドに、校庭に残っていたホルダーモドキの残党が牙を向く。
しかしディケイドはその攻撃を意図も容易く、回避してカウンターとして拳と蹴りを一発ずつ与えていくと、その高い威力により、攻撃を受けたホルダーモドキは一体残らず爆散した。
次にディケイドはおもむろにケータッチを外してディスプレイを操作して、再びベルトに装着する。
『クウガ……アルティメット!』
ケータッチから音声が響くと同時に、ディケイドの胸のカードが全てクウガのものへと変わり、その隣には全身が黒く、金のラインが血管の様に走る一人の戦士、アルティメットクウガが出現した。
これこそコンプリートフォームとなったディケイドの力の一端である。
このフォームは9つの世界で出会った全てのライダーの能力を使う事が可能であり、更にその力を一つに集約する事で、そのライダーの強化状態の力の発動すら可能としてしまうのだ。
ディケイドがライドブッカーから一枚のカードを引き抜くと、召喚されたクウガもまた同じ動きをトレースして、右腰のディケイドライバーにカードを装填する動きを見せる。
『ファイナルアタックライド……ク、ク、ク、クウガ!』
スクラッチ状に音声が響くと、ディケイドとクウガの右足に燃え盛る炎の様な光が集約され、二人は同時に跳躍した。
それを見ていたン・ダグバ・ゼバも迎え撃つ為に、大きく跳躍する。
輝く右足を突き出したディケイドとクウガに対して、ン・ダグバ・ゼバも右足を突き出し、空中で大きな力が火花を散らす。
だがその拮抗も一瞬の事でしかなく、ディケイドとクウガの右足を取り囲む光の濁流が、ン・ダグバ・ゼバを飲み込み、大きな爆発を引き起こす。
召喚され、役目を果たしたクウガはその場で消え去り、勝ち残ったディケイドがただ一人、再び大地の上に着地した。
「おのれ、ディケイドおおおお!!!」
戦いの顛末を見届けた鳴滝は、その敵意を剥き出しに、叫びながら出現した銀色のオーロラの中にその姿を消してしまう。
その様子を無言で見送るディケイド。
ふと気が付けば、先程まで居た筈の二人の怪人、オーバーとメルトの姿すらも何処かに消えていた。
取り敢えずの危機が去った事を確認したディケイドの姿が、コンプリートフォームから通常のフォームへと戻り、そのまま変身を解こうとした、その瞬間。
先程走ってきた中庭の方角から、何か大きな音が、断続的に聞こえてきた。
「まさかまだ残党が残ってるのか?」
ディケイドは途中で変身を解除する事を止めて、再び中庭の方へと駆け出して行った。
チェイサーさんに頼んで、アリサちゃんを安全な場所に避難して貰った後、俺はホルダーモドキの集団と相対していた。
『一気に勝負を仕掛けるぞマスター!』
「言われなくてもそのつもりだ!」
俺はメカ犬の言葉に短く返事を返しながら、襲い掛かるホルダーモドキ達の攻撃を捌き、ベルトからタッチノートを引き抜き、自身の全体図を開いて四肢をタッチして再びベルトに差し込んだ。
『ポイントチャージ』
『ポイントチャージ』
『ポイントチャージ』
『ポイントチャージ』
ベルトから発生した光が四肢に伸びる銀のラインを伝い、俺の両手、両足へと集約されていく。
「こいつで決めるぜ」
俺は光り輝く手足を伴いながら、ホルダーモドキが密集する位置目掛けて駆け出した。
「ライダーラッシュ」
俺は駆け抜けながら、必殺の威力を持つ拳と蹴りをホルダーモドキ達に放ちつつ、密集地帯を抜ける。
その間にも後方で連鎖的に爆発が起こり、最後に俺が振り向いた時には、一番最後に攻撃を加えたホルダーモドキが、爆発四散する瞬間だった。
「……ふぅ」
俺は全体を見渡して、周囲にホルダーモドキが残っていない事を確認してから、安堵の息を吐き出した。
『どうやらこの近辺に居た奴らは、粗方片付いた様だな』
「ああ、そうだな」
『……しかし良かったのか?』
ホルダーモドキが既に付近から消えた事を確認していると、不意にメカ犬が俺に一つの疑問を投げ掛けてきた。
「……何がだよ?」
その問いがどういった意味を持つのか、大体の想像がつきながらも、俺はあえてメカ犬に、ぼかす様に返答をする。
『アリサ嬢の事だ。マスターはどう説明するつもりだ?』
「どうもこうも……今までの事を説明して分かってもらうしか無いだろう」
予想通りの質問の内容に、俺はこれからするべき事をメカ犬に話す。
自分の言っている事が、間違っているとは思わない。
目の前で変身してしまった以上、下手な誤魔化しをする訳にも行かないし、そもそもアリサちゃんに対して妙な隠し事をする理由も俺やメカ犬には無いのだから……
……だけど、口ではそう言っていても、俺の心の中に一抹の不安が過ぎる。
その不安の正体が、何なのか上手く言葉には言い表せない。
恐らくメカ犬も、その何かを感じたからこそ、俺にこんな質問をしてきたのだろう。
「兎に角、一度。士さんと合流してから……」
俺が話題の転換という意味も含めて、これからの方針を立て様とメカ犬に言葉を投げ掛けたその時、近くから一人の人間が拍手する音が聞こえてきた。
「さっきの戦いは、中々見事だったよ」
更に拍手に混じって聞こえて来る若い男性の何処かキザっぽい声。
しかもその男性の声に対して、俺は聞き覚えがあった。
まさかという思いを胸に、俺は周囲を再び見回して、声の主を探し始める。
実際に探し始めたと言っても、その捜索は、ほんの数秒間でしかなかった。
中庭に植えられた木の一本に身を預けながら拍手をする男性の姿を、その目に映したからである。
そして俺のまさかという思いも、その男性を見た瞬間に、確信へと変わった。
木に身を預ける若い青年。
俺は彼を知っている。
士さんと同様に、世界を旅しながら……その世界のお宝を求め続ける……彼はその当人で間違い無い。
「……海東《かいとう》 大樹《だいき》」
俺は思わず、その青年の名を呟いていた。
「おや、僕を知っているなんて、中々の博識だね」
俺の呟きに対して、彼、海東さんは指で鉄砲の形を作り、撃つ動作をしながら微笑んだ。
だが次の海東さんの言葉によって、場の雰囲気は、一気に緊張に包まれる。
「まあ、自己紹介をしなくて良いみたいだから、先に用件を言っておこうかな。君のお宝を僕に渡したまえ!」
そう宣言すると同時に、海東さんは一枚のカードとシアン色を基調とした一丁の銃を取り出し、その銃にカードを装填して、頭上に掲げた。
「変身!」
その言葉と同時に銃の引き金を引くと、銃口から射出された複数の光弾。
更に海東さんの全身が、モザイクの様な光で包み込みまれ、放たれた複数の光弾が、プレート状になって、その頭部へと突き刺さっていき、モザイクが晴れると共に、俺の目の前に一人のシアン色の戦士が、その姿を現した。