魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~   作:G-3X

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第39話 兄妹の秘密特訓?【前編】

「皆!来週からプールの授業が始まるから、体育の時間に水着を忘れない様にしてくださいね」

 

帰りのホームルームの最後に真理子先生が俺達、生徒に連絡事項を言い渡す。

 

「もう、そんな季節なんだな」

 

俺は帰り支度をしながら、感慨深く呟いた。

 

既に六月も下旬に入り梅雨も終わり、少し早いかも知れないが初夏が訪れたという事を実感させてくれる日本特有のジメッと湿気を含んだ暑さ。

 

そんな折にプール開きというイベントは嬉しい限りだ。

 

「純君。一緒に帰ろう」

 

そんな事を考えながら鞄に教科書等をしまい終えた頃に、既に鞄を背負って準備を終えていたなのはちゃんが、俺に声を掛けてきた。

 

更になのはちゃんの後ろには、何時ものメンバーである、すずかちゃんとアリサちゃん、それにエミリーちゃん。

 

それと……あれ?

 

「えっと、アリシアちゃん?」

 

俺は思わず一番後ろに居た、今はとある事情から俺の妹をしているアリシアちゃんに声を掛けていた。

 

何故ならアリシアちゃんの様子が、何処か普段と違っていたからだ。

 

一言で表すとするならば、心此処にあらずとでも言えば良いのだろうか。

 

「……え?えっと、どうしたの純お兄ちゃん?」

 

「いや、何だか様子が少し変に見えたからなんだけど……何か悩み事でもあるのかなって思ってさ」

 

アリシアちゃんの様子が普段と何処か違うのには皆も気付いたのか、俺だけでなくなのはちゃん達の心配する視線までもがアリシアちゃんに向けて注がれる。

 

「べ、別に何でも無いよ!?」

 

慌てながら否定するアリシアちゃんを怪訝に思いながらも、俺達は深く追求する事はせずに帰路につく事にした。

 

アリシアちゃんが何を悩んでいるのかは分からないが、それを無理に聞き出しても良いものか、その場では判断が着かなかった為にこの処置となってしまったのは仕方が無い事かも知れないが、このままの状況が続いても良いという訳では決してない。

 

例え本人が話したがらないとしても、現在はアリシアちゃんの契約イマジンであるメアならば、何かしら知っているかもしれないから、いざという時はこっそりと問い質してみようと夕食後に俺が自室で一人考えに耽っていたその時だ。

 

「ん?」

 

俺は自室と廊下を隔てている扉がノックされる音に、反応して首を傾げた。

 

「……あの、純お兄ちゃん。今、部屋に入っても大丈夫かな?」

 

扉をノックしたのは、声から察するにアリシアちゃんで間違いなかった。

 

「うん、鍵は掛けてないからそのまま入っちゃって良いよ」

 

俺が短く返事を返すと扉のノブが下に傾き、この前に母さんとデパートで買ってきたという黄色い星形の模様が刺繍された黄色いパジャマを着たアリシアちゃんが、少し遠慮がちに俺が腰掛けていたベットの近くまでやって来る。

 

お風呂上りなのか、アリシアちゃんの頬はほのかに赤く、髪が少しだけ湿っていた。

 

「最近は暑くなってきたけど、ちゃんと髪を乾かさないと風邪を引くかも知れないから気を付けなよ」

 

「う、うん……そうするね。でもその前に話したい事があるんだ」

 

「話したい事?」

 

「……良いかな?」

 

不安げに眉を寄せるアリシアちゃんを安心させる為に、俺は出来るだけ笑顔で頷く。

 

「それは良いんだけど、もしかしてその話って放課後の……」

 

俺の問いにアリシアちゃんは、二度三度と頷きつつ、肯定の意思を示し俺が話し易い様にと隣に座る様に促すとアリシアちゃんは、素直に俺の隣に腰を下ろした。

 

「あのね……私って長い間、ターミナルでメアと一緒に暮してたでしょ」

 

「そうだね」

 

「だから……その、私って……お風呂の浴槽よりも広い場所って何だか、その……」

 

何処か言い辛そうに続きを濁すアリシアちゃんを前に、俺はまさかとい思い、一つ質問をしてみる事にしてみた。

 

「もしかしてさ……アリシアちゃんって泳げないの?」

 

俺の一言に対して、石の様に固まるアリシアちゃんの様子を見て、俺の考えは確信へと変わる。

 

「だ、だってターミナルにはプールも無かったし!ミッドに住んでた時もプールや海に行った事なんて無かったんだよぅ!」

 

「わ、分かった!分かったから少し落ち着こうよアリシアちゃん!?」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

「いや、そんな謝る事は無いんだけどさ」

 

俺はアリシアちゃんを宥めながら心の中で納得した。

 

種が分かればなんて事は無い。

 

アリシアちゃんの様子がおかしくなった原因は、来週から始まるプールの授業で間違い無いだろう。

 

「そ、それで……実は純お兄ちゃんにお願いがあるんだけど」

 

「お願いって、もしかして俺に泳ぎを教えて欲しいとか?」

 

「うん。出来れば今度のお休みの日に、練習に付き合って欲しいの」

 

「教えるのは構わないんだけど、練習する場所がね……」

 

「あ、それなら大丈夫だよ!」

 

そう言うとアリシアちゃんは二枚のチケットを、俺の目の前に差し出した。

 

「これって……」

 

「これはこの近くの市民プールのタダ券だよ。お母さんが商店街で買い物している時に貰ったんだって」

 

そう言えば夕食の時に、母さんが買い物帰りに福引で、何か当てたと言っていた様な気もする。

 

アリシアちゃんの持っていたチケットを良く見せて貰って分かったのだが、何でもこの夏に向けて内部の施設をリニューアルしたので、一足先にこのタダ券を持っている人をお客さんとして先行招待するのだそうだ。

 

「それじゃあ、今度の日曜日に一緒に行って練習しよう」

 

「うん!」

 

こうして俺達兄妹は、この夏に先駆けて日曜日にプールに行く事と相成った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

水とは人々に大きな恩恵を与えてくれると同時に、一歩間違えば命すら脅かす脅威と成り得る。

 

夏になれば人は涼を求めて、海やプールに訪れる訳だが、どれだけ注意をしても思わぬ事故というものは起こってしまう。

 

それが分かった上でも、人々は集まる。

 

だからこそ人はその可能性を出来る限り減らす為に、ここ海鳴市内の市民プールにも監視員が常駐している。

 

地域によっても違いはあるのだが、海鳴市の市民プールは室内プールとなっており、基本的に季節に関係無く一年を通して運営されていた。

 

ただ、ここ最近までは施設の増設を伴うリニューアルの工事が続き休館となっていたが、遂に工事も終わり明日から商店街と提携して配ったチケットを持った方に対してのみとはなるが、新しくなった市民プールが再び運営を再開する事となる。

 

それを心待ちにしている一人の青年は、本来ならば明日に備えて寝なければいけない筈なのに、中々寝付けずに居た。

 

彼は小さい頃から泳ぐ事が好きだった。

 

その思いは大きくなるにつれて、廃れるどころか更に膨れ上がり、高校生になってからは直ぐに海の家や、監視員としてのアルバイトに明け暮れて、それが終われば残りの時間は思うままに泳ぎ続けるという日々を過ごし、それは大学生になった今でも変わらない。

 

それは大学生となった今でも、市民プールの監視員をしている事から察せられる。

 

「少し外でも走ってくるかな?」

 

こんな時は布団の中で悶々としているより、少し運動した方が良く眠れるという事を今までの経験から知っている彼は、流石にパジャマで出掛ける訳にもいかないので、動き易いスポーツウェアに手早く着替えて、愛用のランニングシューズを履き、一時間程を目安にして夜の街にジョギングを開始した。

 

ジョギングのコースは、基本的に家の近くの市街地を回るのだが、既に遅い時間の為か、人通りは皆無で、彼の走る足音と、涼しい風の音だけが夜の静寂の中で響く。

 

「君の夢を叶えてあげようか?」

 

唐突に背後から声が聞こえて、思わず彼は後ろに振り返った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうアリシアちゃんは着替え終わってるかな?」

 

水着に着替えた俺は、男子用ロッカーを出て、アリシアちゃんを探した。

 

日曜日の朝から、予定通り市民プールを訪れた俺達は、リニューアルされた施設を前に、軽い感動を覚えた。

 

市民プールだというのに、ウェータースライダーが完備されて、プールの数も競泳用のプールに、小さい子供が遊べる娯楽用の浅いプール。

 

更に流れるプール、極めつけには別のフロアには水着のまま入れる温泉エリアと、既に市民プールの域を超えていると思うのはきっと俺だけでは無いだろう。

 

「純お兄ちゃん!」

 

リニューアルされて文字通り生まれ変わった市民プールに圧倒されていると、横から聞き覚えのある声が俺の耳に届く。

 

振り向いた先には、学校指定のスクール水着で走るアリシアちゃんの姿。

 

「転んだら危ないよ?」

 

「大丈うきゃ!?」

 

俺が注意している間に目の前までやって来たアリシアちゃんが、狙い澄ませたかの様に足を滑らせる。

 

「危ない!」

 

咄嗟の判断で、俺はアリシアちゃんの手と腰を掴んで、何とか転倒する前に、アリシアちゃんを抱き寄せる事に成功した。

 

「……あ、ありがとう。純お兄ちゃん」

 

「いや、アリシアちゃんに怪我が無くて良かった。これから泳ぐ練習をするんだから、もう少し気を付けないと駄目だよ」

 

「ご、ごめんなさい。何だか嬉しくって……」

 

まあ、アリシアちゃんにとっては、初めてのプールな訳だし、その気持ちは分からないでもない。

 

でもあまりプールで浮かれ過ぎるのも危ないので、その辺りはきちんと注意しておかないといけないだろう。

 

アリシアちゃんに改めてプールでの注意事項を一通り説明した後、俺達は準備体操をしっかりとして、まずは浅いプールの方へと向かった。

 

浅いとは言っても、小学生低学年である俺やアリシアちゃんにとっては、それなりの深さであり、丁度腰までは余裕で浸かる程の深さである。

 

これぐらいの深さであれば、よっぽどの事が無い限り、溺れる心配も無いだろう。

 

「それじゃあまずは水に慣れる事から始めてみようか」

 

プールの中に入った俺はまず見本を見せる為に、顔を水に沈めていく。

 

この市民プールは温水なので、特に冷たさを感じるという事も無く、大体十秒程経ってから俺は水面に顔を出して、新鮮な空気を吸い込む。

 

「今度はアリシアちゃんの番だよ」

 

「う、うん!」

 

「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。別に特別な事をする訳じゃないんだから、もっと気楽にいこう」

 

「そう……だよね」

 

言葉では同意を示すアリシアちゃんではあったが、それでもやっぱり緊張しているのが分かる程に肩に力が入っているのが分かる。

 

まあ、慣れれば大丈夫だろうと思いながら、俺とアリシアちゃんの特訓は続く。

 

練習を開始してから一時間が経つ頃には、アリシアちゃんも大分と水に馴れて、まだまだフォームを崩しながらではあるが、バタ足で二メートル程ならば、難無く泳げるまでの成長を遂げていた。

 

小学二年生が初めてでこれだけ泳げれば、まあ及第点と言えるのでは無いかと思う。

 

アリシアちゃんは比較的覚えるのが早いので、後は息継ぎを覚えれば、直ぐにでも泳げる距離は伸びると思われるが、無理は禁物だ。

 

「そろそろ休憩にしよう」

 

「うん、そうだね」

 

練習を一先ず切り上げて、プールから上がり広間の柱の上に設置された時計を見ると、短針が既に十一時を回っていた。

 

「少し早いけど、お昼御飯にしようか?」

 

泳ぐというのは、思った以上にエネルギーの消費が早いという事もあるし、もう少ししたら施設内の売店も込むだろうと思い提案してみる。

 

驚くべき事なのだが、ここは市民プールなのにも関わらず、飲食店が開かれていたのだ。

 

しかもそのお店の面々は何処かで見た事のある顔触れが多いと思っていたら、普段は商店街で良く見かける各お店の店員さんが殆どだった。

 

どうやら俺達の知らない所で、様々な思惑がこの市民プールを中心に繰り広げられている様だが、俺達に何が出来る訳でも無いので、ここは素直に利用させてもらう事にしよう。

 

取り敢えず売店で売っていた特製ランチセットなるものを二つ買い、売店近くの椅子に座る俺とアリシアちゃん。

 

「あら、もしかして純君?」

 

早速昼食を摂ろうとしたその時、横から聞き覚えのある声が聞こえて来た。

 

声のした方向に振り向くと、其処に居たのは一眼レフのカメラを首から提げている恵理さんが、俺の視界に映る。

 

「もしかして恵理さんもタダ券でこっちに?」

 

「あははっ違うわよ。実はリニューアルした市民プールを取材しに来たの」

 

俺の質問に答えながら、恵理さんは首に提げたカメラを手にしつつ、悪戯っぽくウインク一つ。

 

まあ、恵理さんが居る理由としては、俺達と同じでタダ券で入ったというよりは、説得力がある。

 

「そういう純君は、今日はアリシアちゃんとデートかしら?」

 

「いえ、実は来週からプールの授業が始まる予定なんで、今日は泳ぎの練習に来たんですよ」

 

「そ、そうなんです!」

 

俺の返答に続き、アリシアちゃんも頷く。

 

ただ、少し恥ずかしそうにしているのが気にはなったが、恐らく泳げない事を他の誰かに知られるのが恥ずかしかったのかもしれない。

 

そうだったとしたら、アリシアちゃんに何の断りも無しに、恵理さんに事情を話してしまったのは早計だったのかも……

 

「ところでここを取材していて気になったんだけど、どうも深い方のプールで変な話を聞いたのよね」

 

何時の間にか俺とアリシアちゃんの間に陣取って、俺のランチセットからフライドポテトをさり気なく摘み上げながら会話をしてくる恵理さん。

 

「変な話ですか?」

 

「それがプールの中に鮫が出たって騒ぐお客さんが何人か居たらしいのよ」

 

「鮫って……ここはプールですよ!?」

 

海ならば兎も角、こんな市内のプールで鮫が居るなんて現実に起こる筈も無い。

 

「もしかしてホルダーかなって思ったんだけど、純君の様子からすると違うのかしらね」

 

『そんな事は無いぞ』

 

恵理さんに疑問に答えたのは、俺でも無ければ、アリシアちゃんでも無い。

 

俺はその声の主が誰なのか分かっていながら、ゆっくりと視線を声のした方角に向ける。

 

「……やっぱりお前かメカ犬」

 

一体何時から居たのか、テーブルの上にちょこんと座ったメカ犬に、俺は溜息を吐く。

 

今日は恵理さんと言い、メカ犬と言い、神出鬼没なのが流行っているのだろうか。

 

「メー君、さっきそんな事は無いって言っていたけど、もしかして本当にホルダーなの?」

 

『うむ。アリシア嬢の言う通りだ』

 

メカ犬はアリシアちゃん質問に即答すると、今度は俺の方に首を傾ける。

 

『マスター、タッチノートをロッカーの中に置きっ放しにしていただろう』

 

「あ……そう言えばそうだった」

 

言われてみればメカ犬が言う通り、タッチノートは着替えと一緒に今もロッカーの中だ。

 

そんな俺に対して突き刺さる、恵理さんとアリシアちゃんの呆れ果てた視線が、心に痛い。

 

だけどしょうがないじゃないか。

 

普通は水着の時に、持って行くのなんて精々が最低限使う小銭程度のものだろう。

 

取り敢えず一度ロッカーに戻ると、確かにタッチノートがホルダー反応を示していた。

 

タッチノートを持ち出した俺は、メカ犬を連れて例の深いプールへとやって来たのだが……

 

「何で二人まで着いて来てるのさ?」

 

俺は溜息を吐きながら、視線を横に向ける。

 

「え、だって一人じゃあんまり練習にならないし、何だか心配だから」

 

「こんな面白そうなネタがあるのに私が大人しくしてるなんて、まさか本気で思ってるの?」

 

アリシアちゃんの理由は兎も角、恵理さんに至っては逆に俺に真顔で問い返す有様である。

 

今更気にしても仕方が無いので、取り敢えず情報を集める事にしてみた。

 

まず手始めに俺は、この場所で常に居るであろうと算段をつけて、監視員さんに話し掛けてみる。

 

「あの、ちょっと良いですか」

 

「ん、落とし物でもしたのかい?」

 

俺が話し掛けると、既に夏を先駆けて小麦色に焼けた肌の監視員のお兄さんが、白い歯を覗かせながら俺に何かあったのかと聞き返す。

 

「いえ、落とし物って訳じゃないんですけど……」

 

其処まで言ったところで、俺は口篭る。

 

正直にこのプールに鮫は居ますかと聞いたところで、変な顔をされるであろう事が簡単に想像が出来るのだが、どう言ったものかと考えても、中々良い案は浮かばない。

 

「あの……このプールで何か変わった様子の人とか見掛けませんでしたか?」

 

悩む俺を他所に、アリシアちゃんが監視員のお兄さんに質問をぶつける。

 

「変わった行動……今のところ俺が見た限りじゃお客さんの中にそんな人は居なかったと思うけど」

 

しかし監視員さんは、アリシアちゃんの質問に対して首を傾げた。

 

咄嗟に考えたとしては、悪くない質問だと思うのだが、どうも監視員さんに心当たりは無い様だ。

 

「……あ!そう言えば一人だけ居たな」

 

諦めて誰か別の人に聞こうとしたその時、監視員さんが思い出した様に声を上げる。

 

「それってどんな人だったんですか?」

 

「いや、お客さんじゃないんだけどね。実は俺がこのプールを監視し始めたは少し前からなんだけど、それまで監視員をしていたアルバイトの奴の様子が何か変でさ」

 

「それって何が……」

 

変だったんですか、と言葉を続けようとしたその時。

 

『キンキュウケイホウキンキュウケイホウキンキュウケイホウ……』

 

タッチノートから、ホルダー反応を知らせる警報が鳴り響く。

 

更に次の瞬間、プールから大きな水飛沫が上がり、他のお客さんの多数の悲鳴が木霊する。

 

水飛沫を上げながらプールの中から出て来たのは、先程の恵理さんが言っていた様に、鮫に良く似た異形の怪物だった。

 

背中に大きな背ビレを持ち、黒に近い灰色の表皮を持ち大きな口と鋭い歯を持つという鮫の特徴を持ちながら、人間と同様の手足が生えている。

 

それはタッチノートの反応から見ても、十中八九ホルダーで間違い無い。

 

「か、怪物だ!?」

 

監視員のお兄さんも、ホルダーを見た瞬間に悲鳴を上げて俺達にも早く逃げる様に促すとこの場から逃げる為に走り出す。

 

だが俺はそうする訳にはいかない。

 

「こっちから探す手間が省けたな」

 

『うむ。行くぞマスター!』

 

「ああ!」

 

俺はメカ犬と共に、一歩前に踏み出して、タッチノートのボタンを押した。

 

『バックルモード』

 

タッチノートからは音声が響き、メカ犬がベルトに変形して俺の腹部へと巻き付く。

 

「変身」

 

音声キーワードを紡ぎながら、俺はタッチノートをベルト中央の溝へと差し込む。

 

『アップロード』

 

すると俺の全身が、光に包まれてその姿を一人の戦士へと変える。

 

メタルブラックのボディーに、銀のベルトから四肢へと伸びる同色のラインと、更に額に輝くⅤ字型の角飾り、そして赤い二つの複眼を持つのが今の俺の姿だ。

 

「頑張ってね純お兄ちゃんに、メー君!」

 

「良い記事を書くから、頑張って!」

 

この海鳴市を守る仮面ライダーシードへと変身を果たした俺は、その背中に二人の声援を受けながら、プールサイドに上がってきたホルダー目掛けて、一直線に駆け付ける。

 

「ん!?」

 

俺の存在に気付き、此方に振り向くホルダーだったが、既に俺は拳を放つ準備を完了させていた。

 

相手が何かしらの対策を取るよりも早く、繰り出した俺の拳がホルダーの鮫と同様に尖った鼻先へと命中する。

 

このホルダーも本物と同じで鼻先への攻撃に弱かったのか、思った以上のダメージを受けた様で、たった一発の攻撃で大きく身体をよろめかせた。

 

これならば一気に攻め切る事が出来ると確信した俺は、更に畳み掛けようとするが……

 

『待てマスター!この反応は……恐らく試練の光が来るぞ!』

 

「何だって!?」

 

ベルト状となっているメカ犬の宣言通り、何処からともなく光の球体が俺達の前に姿を現すと、何の躊躇いも無くホルダーの身体の中へと吸収され、ホルダーの身体は劇的な変化に見舞われる。

 

まるで鮫をサイボーグ化するかの様に、全身が鋼の鎧に覆われていくホルダー。

 

その強化されたホルダーに戸惑いながらも、俺は更に攻撃を続けるべく、力強く地面を蹴りつけて駆け出した。

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