魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~ 作:G-3X
がむしゃらに炎を放つホルダーに対して、俺は二丁拳銃を扱うガンマンの如く飛び掛る炎の全てを撃ち抜きながら炎の海を前進し続け、ホルダーのとの距離を確実に縮めていく。
明らかな焦りを見せるホルダーを前に、充分に距離を縮めた俺は、銃のグリップ部分を基点として裏拳をホルダーの顔面に放ち、続け様にホルダーの腹部へと強烈な蹴りを叩き込み、ホルダーを吹き飛ばす。
本来なら全てのフォルムの中で最も肉弾戦での戦いを不得意とするサーチフォルムではあるが、ガイアモードによる急激な攻撃力増加の恩恵によって、遠距離からの攻撃と接近戦による戦いを可能としている。
『このまま一気に決めるぞマスター!』
「ああ!」
俺はメカ犬の指示に頷きながら、ガイアブレイガンをサーチバレットの溝へと差し込む。
『ジョイントアップ・ガイアバレット』
二つの武器を一つに重ねる事によって、新たな武器、ガイアバレットを生み出し、その銃口をホルダーへと向ける俺だったが……。
「お楽しみのところに申し訳ありませんが、その物騒な物を私の部下に向けるのを止めて頂けますかね?」
俺とホルダーの間に、そう言って割り込んできたのは、紫の肌をした蝙蝠の姿を模した姿の新たに出現した新たなホルダーだった。
更に聞き覚えのあるこの男の声から察するに、この新たに現れたホルダーの正体は、あの地上げ屋の紫のスーツを着た男で間違いないだろう。
だがそれ以上に、今の俺には無視出来ない事態が目の前で起こっている。
「真昼ちゃん!?」
俺は叫ぶ。
何故ならば新たに現れたホルダーは一人の少女、つまり真昼ちゃんを背負った状態で現れたのだ。
俺の呼び掛けに真昼ちゃんは返事をしなかったが、呼吸はしているらしい事がサーチフォルムによって強化された感覚で察する事が出来たので、まだ最悪の事態へは発展していないのが、不幸中の幸いとしか言い様がない。
しかしそれは今もなお、悪い現状が打破されたという訳では無いのは、俺にだって分かる。
『卑怯だぞ!?』
「真昼ちゃんを放せ!」
メカ犬と俺が、ほぼ同時に言い放つが、相手が素直に応じる訳が無い。
だが、それが分かっていたとしても、そう言わざるを得ない心境だった。
「ふふふ。残念ながら放せと言われて、はいどうぞと言う程、私は善人では無いですからね。この娘の身の安全が大切なら、銃口を下ろしてください」
「くっ!」
素直に相手の要求を呑めば、真昼ちゃんの安全が保障されるという確証は無い。
だがそれ以上に、現状では打つ手が無いという事も事実だと思い、俺はガイアバレットを手放した。
「賢明な判断ですね」
俺の行動に対して、ホルダーの言動は怒りを逆撫でするが、それでも俺は拳を強く握り込む事で、その怒りを押さえ込む事に勤める。
俺が手出し出来ない事を確信したホルダーが、俺に近付いていく。
だが勝利を確信した奴は、戦いの場では決して許されない、気の緩みを見せてしまった。
無防備に俺に近付いた瞬間、真横から見覚えのあるロボットアームが伸び、真昼ちゃんを掴むと、まるで魚の一本釣りの様に、ホルダーの手から奪い取ってしまったのである。
「要救助者を確保しました!」
続いて聞こえて来る声も、これまた聞き覚えのある声だった。
振り向いた先に居たのは、メタルイエローのボディーが光の反射によって輝く、この海鳴市を守る仮面ライダーの一人、仮面ライダーE2が、真昼ちゃんを抱き止めていたのである。
先程のロボットアームの正体は、E2が左腕に装備しているESM04だったのだ。
開発者である恵美さんの話によると、普段は敵を捕縛する際に使う事が多いらしいのだが、救助活動も視野に入れた開発をされた装備らしく、ロボットアームの射出速度や威力もある程度自由に設定出来るらしい。
まさかその機能がこんな場面で役立つとは思わなかったが、今は恵美さんの天才的な技術力に素直に感謝しよう。
俺は突然の事態に、隙を見せたホルダーに対して、地面に落としたガイアバレットを拾いながら前転で間合いを詰めて、ゼロ距離で銃口を押し付けたまま引き金を引く。
放たれた光弾が、ホルダーの腹部で弾けその衝撃でホルダーが吹き飛ばされる。
その姿を確認しながら、俺はガイアバレットを肩に担ぎながら立ち上がった。
「シードさん!」
その直後、E2が俺に駆け寄ってくる。
気絶した真昼ちゃんは、どうやらこの一連の騒ぎで駆け付けた警官の一人に預けて来たらしく、E2の後方から一台のパトカーがこの場から離れていく光景が視界に入った。
「ありがとう。おかげで助かった」
俺はE2に、正直に感謝の言葉を贈る。
実際にあのままの状況では、俺は一切の手出しをする事が出来なかった。
「いえ、住民の方から目撃情報がすぐに入りましたし、丁度現場の近くに居ましたから」
「それでも感謝している……だが一旦この話は置いておく事にしよう」
本当ならば、まう少し感謝の気持ちを言葉にしておきたいのだが、生憎と現状がそれを許してはくれないらしい。
E2もその意味に気付き、頷きながら俺と共に正面を見据える。
目の前には紫の蝙蝠の姿を模したホルダーと、九尾の尾に炎を灯すホルダーの二体の身構える姿。
奴等をどうにかしなくては、ゆっくりと会話をする事も出来ない。
俺とE2は臨戦態勢の二体のホルダーに向けて、それぞれガイアバレットとESM01による射撃を開始する。
ガイアバレットの光弾とESM01の銃撃の弾幕に対して、ホルダーの九尾の炎が大きく壁の様に全面へと広がり、飲み込んでいく。
更にその上空から、俺の耳に届く翼をはためかせる音。
視線を上に向けると、炎の壁を越えてもう一体のホルダーが急降下で此方へと接近してくる。
迎撃するのは既に間に合わないと判断した俺とE2は、この場から飛び退きホルダーの攻撃を何とか回避するのだが、その隙を突き、炎の壁の中から、九尾を振り上げながらホルダーが飛び出して、俺に体当たりを仕掛けてきた。
流石に咄嗟の対応が間に合わず、それならば少しでも威力を減らせる事に力を注ぎ、真後ろに飛び自ら吹き飛ばされる。
更にもう一体のホルダーも、E2へと近接戦闘を仕掛け、俺達は見事に分断されてしまう。
こうなってしまっては仕方が無いので、ホルダーの内一体はE2に任せ、俺は目の前の敵に集中する。
続け様に放たれるホルダーの炎をみきり、ガイアバレットから撃ち出される光弾を撃ち込む。
怯んだ隙に駆け寄り、頭部へと回し蹴りを見舞い、踏鞴を踏んだホルダーにもう一度ガイアバレットによる光弾を撃ち込み追撃を仕掛ける。
「シードさん!そっちに行きましたよ!」
ホルダーに多大なダメージを与えた直後、E2の声が俺の耳へと届く。
直ぐに声のした方向に振り向くと、先程までE2が相手をしていた筈のホルダーが上空で滞空しながら、俺を見ていた。
「ふふふ。中々悪巧みというのは上手くいかないというのを、今日は身を持って学びましたよ」
俺に言い放ったホルダーのその言葉は、負け惜しみというよりも、素直に感じた感想のように聞こえた。
もしかしたら本気で、そう思っているだけなのかもしれない。
「そう思うんだったら、すっぱりと足を洗ったらどうだ?」
「まあ、地上げ屋は今日で廃業にしようとは思っていますが、副業はこれからも続けていきますよ」
「そんな事を許すと思うか?」
地上げ屋を止めるというのは大いに賛成するが、こいつの副業を許す訳にはいかない。
「許して頂けないのは残念ですが、私はこれで失礼させて頂きますね」
「逃がすか!」
そのまま飛び去ろうとするホルダーに対して、俺はガイアバレットを向けるが引き金を引く寸前、その斜線上を遮る様に炎が舞い散る。
『は、反応が消えてしまいましたよ!?』
アタッチメントパーツとなったメカ竜が驚愕の声を上げる通り、視界が阻害された一瞬の隙に、上空を飛んでいたホルダーは、忽然とその姿を消してしまっていた。
しかもかなりの範囲を、敏感に感じ取れるサーチフォルムですら、完治する事が出来ない。
メカ竜が反応が消えたと言っていた事から、もしかしたら何らかの能力によって別の離れた場所へと移動してしまったかもしれないと予想するが、今となっては確認する事も出来そうにないのが悔しいところだ。
過ぎた事を気にするよりも、もう一つの脅威をどうするべきか考えるべきだろう。
炎の熱気を先程から敏感に感じる方角に視線を向ければ、もう一体のホルダーが、九尾を揺らめかせている。
俺とE2は改めてホルダー出かたに対して身構えるのだが、ホルダーは予想外の行動を始めた。
まず九尾の先端に灯る九つの炎が限りなく球体となり、ホルダー自身が全ての尾を地面に下げると、丸い形状となった炎が、回転し始めてまるで車の様に本体であるホルダーを高速で運んでいく。
『不味いぞマスター!奴もこのまま逃走する気だ!』
メカ犬の指摘を聞くまでも無く、そんな事は分かっている。
俺はタッチノートを引き抜き、チェイサーさんに応援要請を掛け、E2も急いでマシンドレッサーの下へと駆け出していった。
市街地を暴走するホルダーを、後ろから其々チェイサーさんとマシンドレッサーに乗って追走する俺とE2。
それに気付いたホルダーは、俺達に向けて炎の塊を放つ。
『あら、危ないわね!』
こちらへと飛んできた炎の塊をチェイサーさんは、そう言いながらも軽やかに避ける。
だがこの攻撃は一度では終わらず、続け様に何度も炎が放たれて、俺とE2に猛威を振るう。
「このままじゃ追いつけない……」
俺はチェイサーさんの方向転換に体重移動を合わせながら、逃走を続けるホルダーに対して、苛立ちを覚える。
ホルダーが放つ炎を避ける事は出来るが、そのせいで思った様に速度を上げる事が出来ず、何時まで経っても追いつく事が出来そうにない。
今はまだ市街地の中でも、比較的に見晴らしの良い公道を走っているから、見失わずに済んでいるが、あと数分も走れば、入り組んだ道に入ってしまう。
もしもそうなれば、ホルダーに逃げられてしまう可能性が高くなる。
『アタシの本気を見せてあげるわよ!』
何か策は無いかと思案したその時、チェイサーさんが叫びを上げる。
するとチェイサーさんが黄金色に輝き始め、その姿を変えていく。
銀色のラインの脇に金のラインが走り、黒と赤を基本としたボディーカラーの上に青と、緑のカラーリングの追加ボディーが足されたその姿は、チェイサーさんの全ての力を引き出すことを可能としたドライブチェイサーモードである。
『オレサマの前は走らせねえぜ!』
先程までのオネエ言葉はなりを潜め、高々と荒ぶるチェイサーさんは、ホルダーが放つ炎に対して迷う事無く突っ込む。
だがその炎が俺とチェイサーさんに衝突する事は無く、ドライブモードとなったチェイサーさんが走る際に生み出される風圧によって、全て掻き消される。
『これでも喰らっとけええええええええええええ!!!』
スピードを落とすどころか、最大加速でチェイサーさんのバイクタックルがホルダーを、見事に吹き飛ばす。
若干やり過ぎではないかと思えるほどに吹き飛んだホルダーだったが、同情の余地は無い。
俺は無事に停止したチェイサーさんから降り、ガイアバレットを構え、少し遅れてきたE2もマシンドレッサーから降りて、ESM03を持ち出して、準備を整える。
『マックスチャージ』
『ブレイクチャージ』
俺はアタッチメントパーツのレバーを引き、その隣りではE2が左腰に取り付けたマガジンを取り出し、グリップの底からセットする事により、音声が流れガイアバレットとESM03に眩い光が集約される。
「こいつで決めるぜ」
俺とE2は互いに視線を交わし、頷くと同時に銃口をホルダーに向けて引き金を引く。
「「ダブルライダーショット!」」
二人の声が揃い、一際眩い光弾の嵐がホルダーを飲み込み、大きな爆発を引き起こす。
爆発の後には、気を失った白いスーツの男が倒れている姿が、視界に入った。
男の身体の中から、幽体の様に抜け出る試練の光。
それに対して、例の石を翳すと以前と同様に光は石の中へと吸い込まれ、門番から貰った時は透明だった筈が、完全に白く染まっていた。
更に少しだけこの石から、人肌の様なほんのりとした温かみを感じる。
俺はこの石が持つ本当の意味を、改めて考えてみるが、結局答えを出す事は出来なかった。
「加山《かやま》明輝《あきてる》。純君が言う紫のスーツを着た男っていうのは、その男で多分間違いないと思うわ」
地上げ屋に潜入してから数日が過ぎ、調べてくれるように頼んでいた情報を持った恵理さんが、椎名家の道場へと戻って来たのは、俺が無事に合宿の日程の全てを終えて帰宅する早朝の事だった。
「それで、加山は今どこに居るんですか?」
既に俺と恵理さん以外のメンバーは帰りのバスに乗車しており、丁度バスからは死角となる椎名宅へと続く長い階段の下で、恵理さんに質問する。
恵理さんの情報によって判明した加山という男には、色々と聞きたい事があった。
まず奴自身がホルダーである以上、このまま放置しておく訳にはいかない上に、地上げ屋の事務所のパソコンに記録されていたリストも気になる。
戦いが終わった後、気絶した白いスーツの男をE2に任せて、すぐに事務所の方に戻って何か無いのか調べてはみたのだが、他には何も発見出来ず、パソコンの中にあったデータも全て消されていた。
これ以上の情報を得る為には、是が非でも加山に直接問い質すしかない。
「残念だけど、純君達が事務所で会った日以降、加山の消息は掴めてないみたいよ。警察の側でも捜索しているけど見つからないって恵美が愚痴ってたわ」
「……そうですか」
「私の方でも、出来るだけ調べてみるわね」
不安が顔に出ていたのか、恵理さんはそう笑顔で告げると、先にバスに行ってるわと言って、足早にバスに向って歩いていってしまう。
何でそんな急いで行ってしまったのかと、俺が首を傾げていると、俺の右肩に誰かが後ろから手を添えた。
「話は終わった?」
振り向くと、その手の正体は真昼ちゃんだった。
「うん。真昼ちゃんはどうしてここに?」
確かお別れの挨拶は、階段の上で済ませた筈だし、俺の記憶が確かならば今頃は玄大さんと朝稽古をしていると思ったけれど……。
「……改めて御礼を言いたかったんだ」
「お礼って言っても、そもそも俺は大した事はしてないしもう何度も聞いたから、そう何度も言わなくても大丈夫だよ」
「それでも、お礼が言いたかったんだ。僕にとって……それに玄爺にとってもこの道場は凄く大切な場所だったから」
真昼ちゃんはそう言って、出会った初日では想像も出来なかった満面の笑顔を俺へと向けた。
今回は色々と解決に至らない部分が多かったが、それでもこうやって誰かの大切な居場所が守れたのなら、少しは胸を張っても良いのかも知れないと思う事が出来る。
少なくても、俺は目の前に居る一人の少女を笑顔にする事が出来たのだから。
「そっか。そう言ってくれるなら、俺も嬉しいよ」
「だ、だからさ。また長い休みが来たら……また合宿に……その、また一緒に稽古を……しよう?」
照れくさそうに言う真昼ちゃんが、なんだか可愛くて俺が思わず噴出すと、真昼ちゃんは顔を真っ赤にしながら頬を膨らませつつ、鋭い眼光を向けてくる。
「ごめん、ごめん。また一緒に稽古しよう。俺も楽しみにしてる」
俺と真昼ちゃんは固い握手を交わし、同門として再び共に稽古をする事を誓った。
ここは少し海鳴の外れに位置する場所ではあるが、今日も夏の日差しが眩しいようだ。
とある施設の薄暗い部屋の中に、一人の男性がノックもせずに入室した。
男性は見た目にも派手な紫のスーツを着こなし、常に自身に満ちた笑顔を崩さない。
そして視線は、部屋に入ってから、ずっと薄暗い部屋の正面へと向けられている。
「待っていたよ。加山君」
視線の先にある大きな椅子に陣取った人物が呼び掛けた。
「今回は、ちょっとしたトラブルがありまして、色々と面倒な事になり掛けましたが、何とか貴方の情報の漏洩だけは防ぐ事が出来ました」
その声に対して、報告を告げる加山は深々と頭を下げながら報告した。
「その点に関しては礼を言わせて貰うよ。もしも今回の件で嗅ぎ付けられてしまえば、今までの準備と計画が全て無駄となっていたかもしれないからね」
「ふふふ。それに関しては私も一緒ですよ。仮面ライダーのせいで本業の地上げ屋は引退ですし、暫くはこっちの副業で稼がなくてはならないですから」
「加山君には大いに期待しているよ。君のおかげで此処のところ、中々進展の無かった研究が、予定以上に早く実を結ぶかもしれない」
部屋の中には夏とは思えないほどの、凍るような寒気が生まれる。
それはこの部屋の空調設備のせいではなく、この室内に存在する人物達から放たれる独特のおぞましい雰囲気が成せる業だろう。
だが当の本人達にはそんな自覚は当然ながら無く、淡々と話を進めていく。
「それで、これから私はどう動いた方が良いですかね。やはりどう動くにしても雇い主の要望に沿った働きをしたいですからね」
「今まで通り、これからも素晴らしい人材のスカウトをしてくれればそれで良いさ。まだまだ多くのデータを収集する必要がある」
「……分かりました」
二人の関係を述べるのであれば、それは雇い主と雇われた者という関係であり、それ以上でもそれ以下でもない。
だが加山はそれだけで、雇われの身となっているだけでは無かった。
ただ純粋に、この雇い主が何をしようとしているのかを、一番近い場所で見届けてみたい。
それが加山が服従する、絶対的な唯一の理由だった。
海鳴市に住むものは、まだ誰も知らない。
ある大きな意思が、この海鳴市で、巨大な混乱を巻き起こそうとしている事実に……。