魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~   作:G-3X

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第43話 ボクシングライフ 【後編】

駆け寄るホルダーに対して、俺が身構えている間に、E2は後方へと走り出す。

 

繰り出されるホルダーの拳の軌道は真っ直ぐに俺の頬へと迫るが、その攻撃を甘んじて受ける理由は無い。

 

俺は腕を外側に向けながら間に挟むように置き、ホルダーの拳を外側へと向けることで本来の軌道から大きく外し、攻撃を回避する。

 

だがそれは初撃を回避したに過ぎず、ホルダーの攻撃が終わった訳では無い。

 

大きく空振りした反動を原動力に、足を力強く踏み込み腰の回転を利用して逆方向から勢いの乗ったサイドブローを放つ。

 

流石に初撃の様に受け流すのは難しく、俺は大きく後ろにバックステップで下がり、ホルダーの攻撃を回避する。

 

更に追撃をしようと詰め寄るホルダーだが、その攻撃が俺に届く事は無かった。

 

「シードさん!」

 

後ろから呼び掛けるE2の声を合図にして、俺はホルダーを限界まで引き寄せてから今度は右に大きくサイドステップで今居た場所から大きく飛び退く。

 

その直後、後ろから数発の弾丸がホルダーに直撃して火花を散らす。

 

俺がホルダーの相手をしている間に、E2が弾き飛ばされたESM01を拾い上げて反撃の狼煙を上げたのである。

 

言わば俺の役目は、その時間を稼ぐ為の囮だった訳だ。

 

確かにあのホルダーの繰り出す拳は早く、遠距離から放たれた弾丸すらも打撃によって撃ち落す程に強力ではあるが、それは一対一で戦った場合と言えるだろう。

 

一人が前衛を勤めて、相手の注意を引き、もう一人が後方から支援するという戦法を取れば、決して戦うことが難しい相手という訳でも無い。

 

『このまま一気に……むっ!?』

 

「どうしたメカ犬?」

 

『この近くに新たなホルダー反応だ!しかもこの反応は……』

 

メカ犬が言い終わるよりも早く、上空から聞き覚えのある羽音が、俺の耳へと届く。

 

音のする上空へと振り向くと、その先には紫色の蝙蝠を模したホルダーの姿。

 

「また会いましたね」

 

「加山……」

 

俺の視線に気付いた、ホルダーが直ぐ近くに舞い降りて丁寧にお辞儀をして挨拶してくる。

 

その声と行動は、まさしく俺の知る加山に相違なかった。

 

「困るんですよね。彼にはまだ色々とやってもらって貴重なデータを収集しなくてはいけないので」

 

『データの収集だと? この前のリストのことと言い……何が目的だ!?』

 

「ふふ……残念ながらお教えする事は出来ないですね。私はただクライアントの指示通りに動いているだけですから」

 

メカ犬の疑問に対しても飄々と答えるホルダーの姿をする加山の真意は分からないが、先程の発言から奴が俺達の妨害に来たのだという事だけは理解出来た。

 

「丁度良い。あんたには聞きたい事が山ほどあるんだ。洗いざらい吐いてもらうぞ!」

 

E2の射撃によって吹き飛ばされたホルダーは後回しに、俺は加山を無力化する為に走り出すのだが……。

 

『マスター横に思い切り飛べ!』

 

其処へベルト状態のメカ犬から、唐突な指示が飛ぶ。

 

「なっ!?」

 

俺は聞き返すよりも早く、右足で地面を蹴って飛ぶと、俺の鼻先を銀色の軌跡が掠め去っていく。

 

その視界の先に居たのは、この海鳴市を脅かす藍色の怪人の姿があった。

 

「オーバー!?」

 

着地と同時に体勢を立ち直しながら、俺は奴の名を叫ぶ。

 

「あらら。避けられちゃったよ」

 

オーバーは残念そうに西洋剣を肩に担ぎながら、不敵な笑みを浮かべる。

 

当然ながら何故オーバーがここに居るのかという疑問が湧くが、事態はそれどころではない。

 

オーバーの動きに注意をしながら周囲の状況を確認すると、E2は加山と戦っている状態で、先程まで俺達が戦っていた筈のホルダーの姿は既に何処にも無かった。

 

「加山の雇い主ってのはお前なのか!? オーバー!」

 

「うん? 何の事か僕には良く分からないなぁ」

 

俺の詰問に対して、相変わらずの態度を示すオーバー。

 

ただとぼけているだけなのか、それとも本当に加山が言うクライアントが別にいるのか、判断に迷う。

 

「ただどっちにしても、ホルダーが簡単に倒されちゃうのは、僕達的に困っちゃうんだよね~」

 

そう言うとオーバーが西洋剣の刃を地面のコンクリートに這わせると、火花と煙が周囲を覆い、視界が戻る頃には俺とE2の前からはオーバーはおろか、加山の姿さえもこの場から消えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

海鳴ボクシングジムから少し離れた橋の下を、一人の男が荒い息で傷だらけの身体を引きずりながら歩く。

 

「先程は大変でしたね……島川さん」

 

背後から響く声に傷だらけの男、島川が振り向くと其処に居たのは紫のスーツに身を包んだ一人の男性だった。

 

「……加山さん」

 

一瞬だけ、背後から急に声を掛けられた事に緊張した川島ではあったが、その相手が加山だった事を知り安堵する。

 

「随分と派手にやられたようですが、ここで止めておきますか? 今ならまだ引き返す事も出来るんですよ」

 

「……俺はこのままじゃ終わらない。加山さんにはこの力をくれた事を感謝してるが、それを奪うなら俺は……」

 

加山の提案に対して、川島は懐から緋色の球体を自身の眼前に翳して、プロのステージでも見せた事の無い鋭い眼光を向ける。

 

「いえいえ。私はそういう道もあるとお伝えしたかっただけです。あくまで決めるのは川島さんの意思ですから、そのように警戒なさらないで頂きたい」

 

「それなら……良いんだ」

 

両手を広げて、弁解する加山を信頼したのか、それともまともに相手にする事が馬鹿らしく思えたのか、川島は手に持った緋色の球体を再び懐へとしまう。

 

「ですが島川さんは御怪我をなさっているように見えますが、このままでは満足に行動する事もままならないでしょう」

 

「……」

 

「其処で私から一つ提案があるのです」

 

「提案?」

 

訝しぶ島川に、表面上はにこやかな微笑みを浮かべながら加山は頷く。

 

「島川さん程の強い力と意思があればきっと向こうから、貴方を求めてくる筈ですよ」

 

「一体何の事だ?」

 

「一度騙されたと思って、ホルダー化して強く願ってください。貴方がするべき事を……そうすればきっと私の言う意味を理解する事が出来ます」

 

加山の甘言を受け、島川は懐から緋色の光を放つ暴走プログラムを取り出して、その手に握りこみホルダー化する。

 

島川はボクサーとしての力を求めた。

 

誰にも負けない強さをその手にしたいと心の奥底から願う。

 

例えそれが偽りの力だと、何処かで気付いていたとしても、一度その力に触れてしまえば歯止めは利かず、まるで喉の渇きを癒す為に水を求めるように、ただひたすらに更なる力を渇望した。

 

その願いに呼応するかの様に、ホルダー化した島川の上空に光の球体が舞い降り、光の球体は島川の身体の内部へと吸い込まれる。

 

「がっ!? ああっ!?」

 

光の球体……試練の光の影響を受けて、突如としてその身体を更に変貌させていく島川。

 

その光景を前にして、加山は貼り付けた様な微笑を浮かべたまま、その様子を見詰め続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『この海鳴ジムに所属する島川夢路という男が、今回のホルダーの正体とみて、まず間違いないだろうな』

 

「そうだな」

 

俺はメカ犬の言葉に頷く。

 

ホルダーに逃げられた後、呼び止めてきたE2を何とか振り払い、変身を解いた俺はメカ犬と共にホルダーが現れた際の詳しい状況を長谷川さんの目を掻い潜りながら聞いて周った。

 

その結果、数人の人がその島川という人物が突然姿を変えたのだという証言をしたのだ。

 

本来ならば、直ぐにでもその島川さんを探しに行きたいところではあるのだが、そう出来ない理由が俺達の目の前にある……。

 

「つまりその島川さんっていう人の傍に居れば、シードさんと会える可能性が高い訳やな」

 

「そうだけど、私達が一緒に付いて行ったら長谷川さんに迷惑じゃないのかなぁ?」

 

何故ならば今、俺とメカ犬の前にはすずかちゃんとはやてちゃんが居るからである。

 

どうしてこの二人が居るのか、その理由は言ってしまえばとてもシンプルのものだった。

 

単純に俺と長谷川さんが無事に潜入調査をしっかりとやっているのか気になったのと、やはりシードの正体がジムの中に居るかもしれないのならば、自身の目で確かめたい気持ちが強く、こっちに来てしまったというのが、事の顛末である。

 

俺とメカ犬は運悪くジムを抜け出す直前に、この二人に発見されて今に至るという訳だ。

 

ジムの方々の証言は、長谷川さんも勿論別口の調査で聞いていた訳で、既に島川さんがホルダーだという事は、この場に居る全員が知るところであり、これからどう動くべきか作戦会議を行っているのだが……。

 

「僕としては君達を危険に巻き込む訳にはいかないからね」

 

長谷川さんは苦笑いで、すずかちゃんとはやてちゃんを連れて行く事は出来ないと、やんわり伝える。

 

「……確かに長谷川さんに迷惑がかかってまうからなぁ」

 

「残念だけど仕方ないよね」

 

二人は特に反論する事もなく、素直に長谷川さんに今回の件を任せる事を承諾した。

 

俺は表面上は顔に出さない様に勤めるが、この自称美少女探偵が取り敢えず諦めてくれた事に内心ホッとする。

 

「それじゃあ、僕はこれから追跡捜査に行くからね」

 

話がついたところで、長谷川さんはそう言ってボクシングジムを出るとマシンドレッサーに乗ってこの場を後にする。

 

「それじゃあこれから私達はどないしよう?」

 

長谷川さんを見送った後、はやてちゃんが俺達にこれから何をしようかと聞いてきた。

 

「この時間なら図書館が良いんじゃないかな」

 

すずかちゃんの提案にそうやなぁと答えるはやてちゃん。

 

俺もそれに着いて行きたいところではあるが、残念ながら俺にはやるべき事がある。

 

「ごめんね二人共。俺ちょっと用事があるから」

 

「直ぐに済むなら私らも一緒に……」

 

「行くぞメカ犬」

 

俺ははやてちゃんが言い終わるよりも早く、メカ犬に呼び掛けてボクシングジムを飛び出して人通りの少ない裏路地へと入りタッチノートを開き、チェイサーさんを呼び出して長谷川さんに続き俺はホルダーの捜索を開始した。

 

ジムメイトの話によると、島川さんは商店街近くのアパートに住んでいるらしい。

 

ホルダーは怪我を負っていたという事もあり、取り敢えず俺達はアパート付近を捜す事に決めた。

 

捜索を始めてから一時間がたった頃……。

 

「純!」

 

俺を呼ぶ声が聞こえたのでチェイサーさんい止まってもらうと、声のした方向にはミルファの姿があった。

 

「どうしたんだ?」

 

人目のつかない場所に移動してからチェイサーさんに安全装置を外してもらった俺は、ミルファに改めて呼び止めてきた理由を聞く。

 

「実は一瞬だけ試練の光が、この近くで活性化したのよ」

 

「試練の光が?」

 

ホルダーの出現に続き、試練の光の反応……。

 

これまでの経験から言って、嫌な予感しかしない。

 

「この近くで反応があったのは確かだから、私はもう少しこの近くを探してみるわ」

 

「俺もホルダーがこの近辺に居る可能性が高いからもう少し、探し回る事にするよ」

 

俺とミルファはお互いに頷きあい、再び捜索を再開する。

 

『それにしても妙だな』

 

「妙って何がだ?」

 

捜索を再開してから直ぐ、唐突に呟いたメカ犬に俺は聞き返す。

 

『あの加山という男と、オーバーの関係性についてだ。どうもワタシ達の知らないところで得体の知れない何かが起こっているとしか思えない』

 

メカ犬の言う事はもっともだ。

 

でもメカ犬の言う得体の知れない何かが、なんなのか俺には想像も出来ない。

 

「確かに放置できない事だけど、今は俺達がするべき事に集中しなくちゃだろ?」

 

『……うむ』

 

いずれは対策を練る必要はあるかもしれないが、それでも今はホルダーを野放しにしておく訳にはいかない。

 

それにホルダーが居る場所ならば、また加山やオーバーと会う機会はある筈だ。

 

『キンキュウケイホウキンキュウケイホウキンキュウ……』

 

俺のそんな考えを他所に、タッチノートが警報を放つ。

 

『どうやら探し当てる前に、向こうの方から動き出したようだな』

 

「そうみたいだな……行くぞメカ犬!」

 

『うむ!』

 

チェイサーさんが進行方向を変更すると同時に、俺はタッチノートを操作する。

 

『バックルモード』

 

音声が響き、チェイサーさんの後部座席に鎮座していたメカ犬がベルトに変形して、俺の腹部に巻きつく。

 

「変身」

 

力ある言葉を紡ぎ、俺はタッチノートをベルト中央の溝へと差し込む。

 

『アップロード』

 

チェイサーさんがベルトから音声が響くと同時に、安全装置を解除して俺の全身は眩い光に包まれて俺の姿を一人の戦士へと変える。

 

シードへの変身を経て、から直ぐに前方には既にE2との戦闘を開始しているホルダーの姿。

 

『先程と同じ固体のホルダーの様だが姿が違うな』

 

「多分ミルファが言ってた試練の光が原因だろう?」

 

ホルダーの姿は頭の鶏冠が異様に伸び、ボクシンググローブの様な形状をした拳に鋭い突起、等と凶暴な見た目に変貌を遂げていた。

 

『いっくわよ~!』

 

だがそんな小さな事は関係ないと言わんばかりの勢いで、チェイサーさんは更にスピードを上げて、ホルダーへと突撃を仕掛ける。

 

チェイサーさんのバイクタックルによって吹き飛ばされるホルダーを他所に、俺がチェイサーさんの座席シートから飛び退き、タッチノートを開く。

 

「また邪魔が入る前に、一気に攻めるぞ!」

 

俺はそう宣言しつつタッチノートのディスプレイに映る項目を指でなぞる。

 

『コール・ライガー』

 

すると音声が流れて、メタリックグリーンの身体を持つメカ虎がこちらへと駆け寄って来る姿が俺の視界の中へと飛び込む。

 

『呼ばれて来たジャン!』

 

「行くぞメカ虎!」

 

『OKジャン!』

 

メカ虎の同意を得て、俺は更にタッチノートを操作する。

 

『スタンディングモード』

 

アタッチメントパーツへと変形したメカ虎を握った俺は、タッチノートを再びベルトに差し込み、続いてベルトの左側をスライドさせて、その差し込み口にアタッチメントパーツとなったメカ虎をセットする。

 

『ベーシック・ライガー』

 

音声が鳴り響いたその瞬間に、メタリックグリーンの追加パーツが、ベルトから発せられる光から生成され、次々と俺の全身に装着されていく。

 

「悪夢はここで終わらせる」

 

ライガーモードとなった俺は、E2と共にホルダーへ突撃する。

 

俺が前衛を勤め、E2が後方からESM01による射撃で、援護という形で果敢に攻めていく。

 

「おうおう、何だか盛り上がってるじゃねえか」

 

戦いが加熱するその最中、聞き覚えのある声が俺の耳に届いた。

 

俺の予想通り、声の主は腹部にベルトを巻いて緑のカードケースを手にした鳥羽さんだ。

 

「俺も参加させてもらうぜ! 変身!」

 

鳥羽さんは言葉を紡ぐと、取り出した緑のケースをベルト中央の窪みへと差し込んだ。

 

『アクセス・リンク』

 

すると機械的な音声がベルトから響き、鳥羽さんの身体の前方に、光が様々な数式が羅列された様な状態で浮かび上がる。

 

その光は、瞬時に人の形へと編みあがり、鳥羽さんの身体と重なり合い鳥羽さんの姿を仮面ライダーアクセスへと変えた。

 

更にアクセスが戦いに参加し、俺達は果敢にホルダーを攻め立てる。

 

ライガーモードで速度の上昇した俺と接近戦に長けたアクセスが、交互に近接戦闘を仕掛け、E2が援護を担う。

 

試練の光の影響でホルダーは、確かに強くはなっているが俺達、三人のライダーの連携はそれを上回る。

 

「はあああああああああああ!」

 

「うをおおおおおおおおおお!」

 

そして俺とアクセスの拳が、ホルダーの腹部にめり込み、後方へと吹き飛ばし最大のチャンスが到来する。

 

『決めるなら今ジャン!』

 

アタッチメントパーツとなったメカ虎の言葉に頷きながら、俺はアタッチメントパーツのレバーを引く。

 

『マックスチャージ』

 

音声が響くと同時に俺の右足に光が集約し、四体の分身体が俺の隣りに生み出される。

 

「こいつで決めるぜ」

 

俺は分身体と時間差に飛び、右足を突き出す。

 

「ライガーフォースマッシュ」

 

少しの時間差を空きつつ必殺の一撃となるキックが、五連続でホルダーを捉え大きな爆発を引き起こした。

 

爆発した後には、破壊された緋色の暴走プログラムと力無く倒れた島川さん……。

 

その様子を見て、取り敢えずこの件は一件落着だと、ホッと胸を撫で下ろす。

 

「まだ終わるには早いよ」

 

だがそんな俺の安堵は、次の瞬間に裏切られる結果となる。

 

突如として聞こえた声。

 

その正体は、藍色の怪人オーバーだった。

 

何の前触れも無く、倒れた島川さんの傍で佇むオーバーに俺は戦慄する。

 

「君はこんなところで終わる男じゃないんだろう? だから特別に僕がもう一度だけ力を与えてあげるよ」

 

オーバーはそう言いながら、その手に持った緑色の球体を島川さんに対して翳す。

 

すると、破壊した筈の緋色の暴走プログラムが光を放ちオーバーの持っていた緑の暴走プログラムを包み込み、そのまま島川さんの全身までも光の中へと取り込んでしまう。

 

「さあ、新しいホルダーの誕生だよ!」

 

高らかに叫ぶオーバーに呼応して、光の密度は更に増していき、その光が収まると目の前には先程倒した筈のホルダーの姿があった。

 

ただしその姿は、全身が黒くなっており異様なプレッシャーを放ち続けている。

 

「これは?」

 

「一体何が起こって……」

 

「何だか知らないが、まだ終わらないみたいだな」

 

俺とE2、それにアクセスが其々の反応を目の前のホルダーに見せるが、気にした様子も無くホルダーはゆっくりと一歩を踏み出す。

 

『来るぞマスター!』

 

メカ犬の言葉に我に帰り、俺は急いで構えを取るが、気付いた時には既にホルダーの姿が眼前へと迫っていた。

 

「何で……」

 

ゆっくりと前足を出したと思ったのに、どうしてこの一瞬でホルダーが目の前に居るのかという疑問を口にするよりも早く、俺の腹部に強烈な痛みが走る。

 

俺はその時になって、初めてホルダーの拳が、俺の腹を叩いたのだという事実に気付く。

 

だがそれだけでは終わらない。

 

俺に攻撃を加えた直後には、もうホルダーの姿は目の前から消えて、代わりにE2とアクセスが凄まじい勢いで吹き飛ばされていたのだ。

 

「このっ!」

 

激痛が走る腹部を自らの意思で押さえつけて、俺はホルダーに攻撃を仕掛けるが、その攻撃が当たるよりも早く、ホルダーの繰り出した拳の連撃が、俺の全身へと降り注ぐ。

 

『マスター!?』

 

『しっかりするジャン!?』

 

メカ犬とメカ虎の呼ぶ声が微かに聞こえはするが、俺の意識は段々と遠のいていく。

 

そして俺の腹部からは、ベルトが外れシードへの変身は強制的に解除されてしまう。

 

「……まさかシードさんの正体が板橋君!?」

 

「こりゃあ、何の冗談だよ」

 

微かに残った意識の断片に、E2とアクセスが驚く声が俺の耳に届くが、はっきり言ってこれ以上は何も考える事が出来そうに無い。

 

「あっ……ああ……」

 

俺は訳の分からないままに、言葉にならない何かを呟きながら視界が暗転し、そのまま意識を手放す。

 

意識を手放す一瞬だけ前に、何か不思議な声が確かに聞こえた気がしたが、今の俺にその言葉を理解する術は皆無だった。

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