魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~   作:G-3X

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第44話 新たなる力 【前編】

『……ター』

 

……誰かが呼んでる?

 

『お……ろ……スター』

 

何だか聞き覚えのある……この声は……。

 

『起きろマスター!』

 

「メカ犬!?」

 

耳元に聞こえる声の主を呼びながら、俺は飛び起きた。

 

それと同時に、全身に鋭い痛みが走る。

 

「ぐっ!?」

 

痛みに声を上げながら俺は再び倒れ込むが、背中に強い衝撃が来る事は無かった。

 

その事で、俺は初めて自分が今までベッドの上で寝ていたという事実に気付く。

 

「……ここは?」

 

改めてベッドの上から、周囲に視線を巡らせると、どうやらここは小さな個室のようだ。

 

俺が寝ているベッドの他には、小さな木製の棚と、小さな小窓に何の変哲も無い扉。特別何かがあるといった感じは、微塵も無い。

 

『心配したんだぞマスター!』

 

そして、そんな俺の枕元には、メカ犬の姿があった。

 

どうやら俺が気を失っている間、ずっと呼び掛けてくれていたらしい。

 

「心配掛けてごめんなメカ犬。ところでここは……」

 

ここは何処なのかをメカ犬に聞こうとしたその時、カチャリという音と共に、部屋の扉が開く。

 

「あら、どうやら目が覚めたみたいね」

 

部屋に入ってきた人物は、俺の良く見知った人物。

 

セーラー服に白衣を羽織るという、独特な格好を普段からしている恵美さんに他ならなかった。

 

「恵美さん……」

 

色々と話さなければいけない事があると思い、俺は全身に走る痛みを堪えながら、何とか上半身だけでも起こそうと試みる。

 

「無理は止めて置きなさい。其処のフルメタル犬から先に大体の事情は聞いてるし、今は少しでも休んでおいた方が良いわよ」

 

しかし恵美さんにやんわりと言われつつ、額を指で押されて俺は再びベットに倒れ込む。

 

「メカ犬から事情を聞いたって事は……」

 

「まあね。正直に言ってかなり驚いたわよ。でも私自身もE2のカメラ越しに見たし、長谷川君も直接見たって言ってたからね。信じない訳にはいかないでしょ」

 

メカ犬に視線を向けると、静かに頷いて見せた。

 

どうやら恵美さんに、詳しい説明は不要らしい。

 

ならば俺の方から、確認しておきたい事を聞いた方が話は早いだろう。

 

「恵美さん。ここは何処なんですか? それにあの黒いホルダーはどうなりました?」

 

「ここは海鳴署の医務室よ。それとホルダーについては……」

 

質問に答えながら、恵美さんはノートパソコンを取り出して、ディスプレイを俺へと向ける、

 

向けられたディスプレイに映っていたのは、以前にも見せてもらった事のあるE2に内臓されたカメラから送られてくるリアルタイム画像だった。

 

その画像では、あの黒いホルダーが戦っている姿だ。

 

画像の隅に、E2の手やアクセスの姿もちらほらと見える。

 

「倒れた君を長谷川君が、一度ここまで運んでくれたよ。その後はまた戦闘に戻って行った……」

 

「……まだ戦いは終わってないんですね」

 

まだホルダーが健在だと分かった以上、ここでのんびりとしてはいられない。

 

「無理しないでって言ったでしょう!」

 

だが俺が無理に立ち上がろうとした次の瞬間、予想外にも恵美さんが強い語気で俺に静止の声を掛ける。

 

「え、恵美さん!?」

 

「今は長谷川君達が頑張ってくれてるわ。だから君はじっとしてなさい」

 

「で、でも」

 

「……いつも長谷川君は言っていたわ。シードの正体がどんな人物だったとしても、彼は共に戦う大切な仲間だって」

 

「長谷川さんがそんな事を?」

 

「君がシードだと知っても、きっと長谷川君の考えは変わらないでしょうね。だから今君がすべき事は、君を信じている仲間の頑張りを信じて、少しでも早く万全の状態にする事じゃないかしら」

 

「恵美さん……」

 

『ワタシも今は身体を休める事に賛成だ。マスターの身体に目立った外傷は無いが、変身が強制的に解除される程の衝撃を受けた事で、かなりの負荷が掛かっている。だから今は少しでも休んでおけ』

 

続いて、メカ犬も俺に今は休めと言ってくる。

 

実際に俺は全身に痛みが走り、身体は鉛の様に重い状態だ。

 

今直ぐに、不自由無く身体を動かせと言われても、それが不可能だという事は良く分かる。

 

だからこそ悔しい。

 

俺にもっと戦う力があったなら……。

 

メカ犬と恵美さんに促されるままに、俺はベットで横になり瞼を閉じて、その悔しさすらも忘れる様に意識を闇へと落としていく。

 

だからこの瞬間にも俺がズボンのポケットに入れていた、あの白く輝く石が何かを訴える様に、更に激しく光を放ち続けている事に気付く事が出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気付いたら何も無い暗い闇の中に居た。

 

少し前まで、俺は海鳴署の医務室で寝ていた筈だし、ずっと感じていた全身への痛みもまるで嘘の様に消えている。

 

だから俺は、これが夢なのだなとすぐに気付く。

 

だがそれにしては、とても意識がはっきりとしている様にも思える。

 

まあ、起きた後に忘れてしまうとしても、現在進行形で夢を見ている最中というのは、もしかしたら案外意識がはっくりとしているものなのかもしれない。

 

こんな考えも、やはり目を覚ませば、全て忘却の彼方へと消えてしまうのだろうか?

 

結局はこれが夢だと仮定した場合、俺自身が起きなくてはどうしょうも無い。

 

そんな事を考え始めた時、頭の中に直接響く様に声が聞こえてきた。

 

声は何度も俺に問い掛ける。

 

力を望むか? と。

 

何度も何度も、声は俺にそう問い掛け続ける。

 

だから俺は、寝ている間だけでも考えない様にと勤めていた事を、無理矢理に考えさせられてしまう。

 

自分の力が通用しないという事への、悲痛なまでの悔しさを……。

 

あの時、もっと俺に力があったならば、今の様な状況にならずに済んだのではないかと、何度も何度も心の中で繰り返す。

 

俺は思わず声に対して、返答していた。

 

力が欲しいと……。

 

そう答えると、声の質問の内容に変化が生じた。

 

何故お前は力を望むのか?

 

今度は俺にそう問い掛けてくる声。

 

答えは簡単だ。

 

今必要だと感じているから、だから俺は力が欲しい。

 

守りたいんだ。

 

全てを守るなんて傲慢になる気は無いけれど、それでも俺は目の前で手が届くかもしれないならば、最後まで諦めずに足掻き続けてみせる。

 

今、この瞬間にも俺を大切な仲間だと言ってくれた人が、俺の代わりに頑張ってくれているんだ。

 

その人を助ける為にも、俺は今以上の力が欲しいんだよ。

 

俺が更に質問に答えた次の瞬間、闇だけが広がっていた空間に一筋の光が差す。

 

あまりにも眩しい光に、俺は目を細めるが、暫くするとその光も収まり、俺は改めて周囲を見渡してみた。

 

「何だよここは?」

 

周りの景色を前にして、俺は思わず声に出してしまう。

 

現在俺は、断崖絶壁の上に立っていたのだ。

 

夢ならば、何が起こっても不思議ではないのかも知れないが、ここまで荒唐無稽な夢を見るのは初めてで、若干ながらここが本当にただの夢なのか疑わしく思えてくる。

 

「ん?」

 

この有り得ない光景に目を奪われて、今まで気付かなかったが、俺は自分の手に何かを握っている事に気付く。

 

それは片手で持つには中々に重い、岩の塊の様に見える。

 

いつからこんな物を持っていたのか、見当もつかない。

 

この岩の塊が何なのかわ分からないが、どうすれば良いのかは、すぐに理解する事が出来た。

 

何故ならば再び、俺の頭の中に直接、あの声が聞こえてきたからである。

 

声は俺に言った。

 

俺が持っているこの岩の塊はとても大切な物だから、何があっても手放すなと。

 

そうすれば俺が望む力を得られるだろうと、声は言うのだが、それが何時もでなのか、期限すら教えてくれない。

 

このまま立ち続けていても疲れるだけだと思い、俺はその場で腰を下ろす事にした。

 

声は手放すなと言っていただけなので、手で持ち続けていれば別にこの岩の塊を地面に置いても問題は無いようだ。

 

暫くの間、そのまま暗雲を見上げていると、俺の頭に直接聞こえて来る声とは別の声が耳に届く。

 

「きゃああああああああああああああああああああああ!?」

 

その声は悲鳴だった。

 

しかも凄く聞き覚えのある声が、遥か上空から聞こえてくる。

 

「え!? な、なのはちゃん!?」

 

上空から降ってくる声の主を目視で捉え、俺は思わずその悲鳴の主の名前を叫ぶ。

 

上空からパラシュートも無しに落下してくるなのはちゃん。

 

更にこのまま落下すると、なのはちゃんは断崖絶壁の下へと落ちてしまう事は確実だ。

 

「間に合え!」

 

俺は急いでなのはちゃんの下へと駆ける。

 

そして断崖絶壁のスレスレを落ちようとするなのはちゃんの右手を、俺は辛うじて左手で掴む事に成功した。

 

普通に考えればこんな事をすれば、肩が外れていたっておかしくない筈だ。

 

だがそれにしては、かなりの激痛が確かに俺の左腕には伝っている。

 

あまりにも無理な体勢でなのはちゃんを掴んだ為なのか、持ち上げるだけの余力は出せそうにない。

 

それどころか、右手も前に突き出した状態となってしまっているので、実際には右手で岩の塊を、左手でなのはちゃんを辛うじて断崖絶壁の下に落下しない様に、繋ぎ止めている形となっている。

 

「……純君」

 

「絶対に助けるから……だから手を離しちゃ駄目だよなのはちゃん!」

 

涙ぐむなのはちゃんを勇気付けるが、それでも今の俺には現状を維持するのが精一杯で、引っ張り上げる事は出来そうに無い。

 

せめてこの岩の塊を捨てれば……。

 

なのはちゃんを助ける為には仕方が無い。

 

そう考えて、岩を手放そうとした時、またしても俺の頭の中に声が響く。

 

声は何度も俺に囁き続ける。

 

今この場で岩を手放すのであれば、俺が望んだ力は永遠に手に入る事は無いと。

 

それで良いのか?

 

望んだ力を、自ら諦めるのか?

 

声は何度も何度も、俺に問う。

 

なのはちゃんをこのまま見捨てるなんて選択肢は、例えこれが夢の中だとしても有り得ない。

 

だけどこれは、本当にただの夢なのか?

 

まるで現実の様な感覚が常に付き纏うこの夢を、ただの夢だと切り捨てて、岩を手放す事で俺は後悔しないのか?

 

痛みと焦り。

 

迫られる選択に、俺は判断に迷う。

 

もしもこれが、俺を試す誰かの意図を伴う夢ならば……。

 

「……たす……けて……純……君……」

 

するべき事は……決まっている!

 

俺は右手の力を緩めて、岩の塊を手放して、空いた右手も使いなのはちゃんを掴む。

 

「うをおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

そして渾身の力を込めて、俺はなのはちゃんを引っ張り上げる。

 

確かに俺は力を望んだ。

 

だけど望んだ力をこんな形で手に入れたとしても、俺は嬉しくない。

 

甘いと言われればそれまでだろう。

 

だけど、俺が望むのは大切な誰かを守るための力なんだ。

 

例えこれが夢の中だとしても、俺自身の大切な人を蔑ろにして得られる力に、何の意味も無い。

 

それが俺の導き出した、唯一の答えだ。

 

「ありがとう……純君」

 

なのはちゃんが笑顔で、俺に笑い掛けると、辺り一体がだんだんと深い霧に包み込まれるかのように白み始める。

 

恐らく、夢はこれで終わりなのだろう。

 

結局俺の導き出した答えが、正解ではなかったのかもしれないが、それでも後悔は無い。

 

それに何時までも夢を見ている場合ではないのだ。

 

今持てる力で、俺は大切な何かを守り続ける。

 

きっとこのまま、目を閉じれば次に目が覚めるときは、現実世界の筈だ。

 

そうして夢の中にありながら、尚も意識を手放そうとしたその時。

 

確かに俺の頭の中に、声が聞こえた。

 

お前の望む力への意思は確かに見せてもらった。

 

その強い意志があれば、新たな力を使いこなす事も出来るだろう。

 

……声は、確かにそう言っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……俺は、あれからどれくらい眠ってた?」

 

目覚めてから開口一番で、俺は隣りに陣取っていたメカ犬に質問を投げ掛けた。

 

『あれからまだ一時間も経ってはいないが、起きて平気なのかマスター?』

 

メカ犬の返事を聞いて、まだあまり時間が経っていない事を知った俺は、随分と長い夢を見ていた筈なのに意外だなと思いつつも身を起こす。

 

「まだ、ホルダー反応は消えてないんだよな」

 

『確かにそうだが、まだマスターの身体は……』

 

「俺はもう充分に休んだよ。だから行かなくちゃ」

 

本当はまだ身体中が痛い。

 

だけどこれ以上、俺だけがのんびりとしている訳にはいかないんだ。

 

重い身体を起こして、簡単に身支度を済ませた俺は、メカ犬を連れて短い時間ではあるがお世話になった医務室に別れを告げる。

 

警察署内部を見た目小さな子供と、フルメタルな犬が練り歩くのは、相当に珍しいのか、周囲の人達が向ける好奇の視線が若干痛いが、呼び止めてくる人は誰もいないので、俺達はそのまま出口に向って廊下を進んでいく。

 

「そんなに急いで、何処に行く気なのかしら?」

 

だが俺とメカ犬が丁度出入り口のあるロビー付近まで辿り着いたところで、ついに呼び止められる。

 

「……何処って、言わなくても恵美さんは分かってると思いますけど」

 

俺は呼び止めた相手である恵美さんに、そう返答する。

 

「少し前にも言ったわよね。今は長谷川君達を信じて、君は休みなさいって」

 

「俺はもう充分に休みましたよ。だからもう行かなくちゃ」

 

恵美さんと俺は言葉の裏に、互いに意見を譲らないと、態度を示しつつ会話を交わす。

 

「……あのホルダーは今までとは桁外れに強いわ。勝算はあるの?」

 

「正直に言って分かりません」

 

「ならせめて、対策くらい立ててから行きなさいよ」

 

「……でも、それでも俺は行かなくちゃならないんです」

 

俺はゆっくりと左右に首を振りつつ、自身の我を通す事を、恵美さんに伝える。

 

「恵美さんは俺に言いましたよね。長谷川さんは俺を……シードを仲間だと思ってくれているんだって。きっとそれは鳥羽さんも同じで……俺もあの二人を大切な仲間だと思っているんです。だから俺は行かなくちゃいけない」

 

俺はただ大切な仲間を、助けたいんだ。

 

別に助けられたから、その恩返しがしたいなんて殊勝な理由なんかじゃなく、俺は自分の大切な日常を守りたい、自分の大切な誰かを助けたい。

 

俺が持つ仮面ライダーの力は、そんな願いを形にした力なんだと、信じているから……。

 

「そっか。君も長谷川君と似た様な事を言うのね……もう止めたりしないわ。好きになさい」

 

「ありがとうございます」

 

呆れたとばかりに溜息を吐く、恵美さんに感謝の言葉を述べてから、俺はメカ犬を引き連れて恵美さんの横を通り抜ける。

 

「ただし行くからにはしっかりと帰ってきなさいね!」

 

背中越しに恵美さんの激励を受けながら、俺は海鳴署を飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

薄暗い部屋の中で、一人の人物がモニターに映し出される戦いを見て、口端を歪めていた。

 

「これは中々に素晴らしい。一度は破損した暴走プログラムを別のプログラムで補う事によって、更なる進化を果たすか……予想外のデータだよ」

 

嬉々として語る人物を前に、陣取っていた加山は内心でこの人物に恐れと尊敬を抱く。

 

計画に加担しているものの、はっきりと言ってこれは人間が行う所業とはとても思えない。

 

加山自身もホルダー化するからこそ、思うのかも知れないが、目の前でライダー達と戦うホルダーは完全に理性を失っている化け物だ。

 

今まで加山が見てきたホルダーの中には、確かに理性を失い暴走するホルダーも少なくは無かった。

 

だが、そんな暴走した状態であったとしても、心根にある素体となった人物の本能的な行動理念だけは残っていた様に感じる。

 

しかしあのただ暴力を撒き散らすだけの存在と化したホルダーからは、それすらも感じる事は出来ない。

 

だからこそ加山はあのようなホルダーを見て、貴重なデータだと言い張る目の前の人物に人が持つべき概念を超えた事への尊敬と、人間として踏み超えてはいけない筈の一線を超えた者に対する恐怖の念を抱く。

 

「このデータを解析すれば、更なる飛躍が見込まれるだろう……君もそうは思わないかね加山君?」

 

狂気をその瞳に宿し、加山に同意を求める人物に対して、加山はただ愛想良く笑顔を浮かべた。

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