魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~ 作:G-3X
「まず最初に、長谷川君にはこれを渡しておくわね」
心機一転した後に、場所をホルダー特務課に属する恵美用に署内に設けられた簡易ラボへと移した直後、恵美は長谷川にメタルイエローに輝く腕輪を手渡した。
「これは……Eブレスですか?」
手渡された腕輪は現在も長谷川が腕に身に着けているEブレスと殆ど見た目が一緒であった為、そんな質問が自然と口から出てくる。
「そうよ。ただし今の長谷川君が使っているEブレスとは段違いの性能を持っているけどね。あえて名付けるなら今までのEブレスの常識を打ち砕く……Eブレイクってところかしら」
どこか思春期の多感な少年が考えそうなネーミングセンスではあったが、フルメタルな犬に安直な名前をつける謀少年と比べれば、随分とマシだった。
そして付け加えるのであれば、恵美の実年齢は天才と呼ばれようとも、その多感な少年達と同年代なのである。
ドヤ顔な恵美の顔など見慣れている長谷川は特に突っ込みを入れる事も無く、今まで身に着けていたEブレスを取り外して恵美が命名したEブレイクを巻き付ける長谷川も、中々にアレだなとこの場面を見た人の多くが思うかもしれない。
「これの使い方は基本的に同じなんですか?」
「まあね。EブレイクはEブレスの機能を全て引き継いでるから、今までと同じ様に使う事は可能よ」
長谷川の質問に即答する恵美だったが、それだけじゃないのよと、含みを持った言い方をする、白衣を羽織ったセーラー服の自称天才美少女。
「新しいE2に合わせて、専用のバイクも用意してあるわ!」
派手に身振りを大きくして恵美は、ラボの片隅に置かれていた銀色のシートを思い切り引っぺがした。
「これは……」
シートの中身を目の前に、長谷川は感嘆の声を零す。
長谷川の視界の中に入ったのは一台のバイク。
基本的なデザインは、白と黒という警察の白バイを元としているマシンドレッサーと同様の大型バイクである。
だが一つだけ大きな変化があった。
座席部分の後ろの、本来ならばバイクの種類によれば荷台となっている部分。
その部分にはマシンドレッサーには無かった、複数のパーツが折り畳まれた様に見えるバックパックが装着されていたのだ。
「これが新しい長谷川君のバイク! マシンドレッサーⅡよ!」
長谷川は楽しそうに説明を続ける恵美を見て、少しだけ昔の事を思い出していた。
昔とは言っても、まだ一年にも満たない。
思い返せば、長谷川と恵美が初めて出会った日も似た様なやり取りを交わしたのだ。
ただ、その時の恵美の第一声が、パンツはどっち派だというのには、正直なところ、面食らったのは今となっては長谷川にとっても良い思い出である。
ここまでお膳立てをされて、やる気が起きない筈がない。
それは長谷川も例外ではなかった。
「あの……」
「うん? 何かしら長谷川君」
まるでサンタから貰ったクリスマスプレゼントを自慢するかの様な無邪気な笑顔で聞き返す恵美に対して、長谷川は言うべきかどうか数瞬だけ迷うが、それでもこれは言わなくてはいけない事だと思い直し、自らの言葉として紡ぎ出す。
「新しいE2の説明も必要だとは思うんですけど、肝心のエドの居場所に心当たりはあるんでしょうか?」
「……」
遠慮がちにした長谷川の質問に、恵美は笑顔のまま、彫像の如く固まった。
固まった恵美の反応を見て長谷川は、ああ、そこまでは考えていなかったんだな……と静かに悟る。
そうなると現状では、相手が動くのを待つしかないわけだが、そもそもエドワードが表立って動くという確証は何処にもない。
「エドを直接探すのは難しいかも知れないわね」
「だとすると、別の方向からアプローチを掛けるしかないかも……」
これからどうするべきか悩む二人だったが、その答えは意外な程に早く見つかる事となった。
「そういう事なら、俺に考えがありますよ」
ラボに響く長谷川でも恵美でもない、第三者の声。
その声の主は、二人も良く知っている銀色の機械仕掛けの犬を連れた一人の少年だった。
深刻な顔をして悩む二人を前に、俺は声を掛けた。
ある要件がありホルダー特務課に顔を出した当初、二人の姿が見えなかったので署内を探して回っていた所、署長さんに会い二人はラボの方に居ると聞き、こうしてやって来た訳だ。
そして俺が先程、意味あり気に言った台詞もその要件に起因している。
「考えがあるってどういう事かしら?」
「本当かい!? 板橋君!」
俺の発言に、恵美さんと長谷川さんがそれぞれ反応を示す。
『まあ、まずは落ち着いてまずはマスターの話を聞いてくれ。二人とも』
若干ながら興奮気味な二人に対して、俺の足元に居たメカ犬が素早く俺の肩へと飛び乗り、落ち着くように諭した。
雰囲気が落ち着いた事を確認しつつ、俺は話の続きを口にする。
「現状だと、確かに長谷川さん達が探してるエドワードって人を見つけるのは大変かも知れません。だけどそのエドワードって人は、確実に加山と繋がっている筈です」
探し人自身は確かに表側に出て来るとは今の情報だけでは、断言する事は出来ない。
だがその人物と関係している加山は、確実に動くと断言する事が出来る。
それは加山がこの海鳴市におけるホルダー関連の事件に大きく関わってくる可能性が高い為だ。
つまり俺達がするべき事は一つ。
「今、この海鳴市で新たにホルダーが関わっている事件が起きています。それを追っていけば高い確率で加山と遭遇すると思います……」
「つまり君が言いたいのは、加山と接触すれば、一緒に行動しているかもしれないエドも芋ズル式に引っ張り出せるんじゃないかって事ね?」
俺が言おうとした事を逸早く察した恵美さんが続きを話し、俺はその言葉に頷き返す。
「少なくても加山と接触出来れば、エドワードという人に関する何らかの情報を聞き出す事は出来るかも知れません」
不安要素だらけではあるが、少なくても完全に受け身の状態でいるよりは建設的だと言えるだろう。
「確かに板橋君の言う通り、このまま闇雲に探すよりはずっと良いと思いますけど、これだとどちらにしろホルダーが動くまでは何も出来ないのでは?」
長谷川さんが尤もな意見を口にする。
しかしその言葉に素早く反応する奴がいた。
何を隠そう、そいつは俺の相棒であり現在俺の肩に鎮座しているフルメタルなお犬様である。
『それならば心配無いぞ!』
自信満々に言い放つメカ犬。
このメカ犬の態度に、俺は深い溜息を吐き出す。
「今も、俺達に代わってホルダーの情報を集めてくれる奴等がいるんです。多分ですけど早ければもうすぐホルダーの方から行動を起こすと思いますから、俺達が動くのはそれからになるでしょう」
メカ犬に任せると、また延々と話し始めると簡単に予測出来るので、俺はメカ犬が開始しようとした説明を遮り、簡潔に説明した。
子犬に熊に鳥という一年にも及ぶ訓練を受けた異色なアニマル軍団を説明するのは、常人の意識ではする方もされる方も、精神的な疲労を被る事はまず間違いないだろう。
「どっちにしても今は待つ時って事ね」
恵美さんが言う通り、今は彼等からの連絡を待つ他にない。
若しくは俺が持つタッチノートに反応があるのを待つという手段もあるにはあるのだが、それも受け身の手段であるという事には変わりないだろう。
だがそんな俺の考えは杞憂に終わる事となる。
『キンキュウケイホウキンキュウケイホウキンキュウケイホウ……』
俺のポケットの中から、けたたましくタッチノートからの音声が響いた。
タッチノートに反応があった場所は、市街地から少し離れた路地裏。
「きゃあああああああああああああああああああああああ!?」
その奥から絹を裂く様な女性の悲鳴が響く。
「急ごう! 板橋君」
既にE2を装着した長谷川さんが、同じく既にシードへの変身を果たしていた俺を急かす。
俺が駆るチェイサーさんと、E2の新たなバイク、マシンドレッサーⅡが互いに激しいエンジン音を唸らせながら、反応元へと駆ける。
ちなみにE2は今までとは違う新しいスーツらしいのだが、外見的には特に変わった様子は見られない。
それを開発者である恵美さんに言ったところ、そんな事は無いから楽しみにしていると良いわよと笑顔で言われた。
一体何が今までのE2と違うのだろうと考えている間にも、俺の視界には必死な形相で逃げるOL姿の女性と、その女性を追うホルダーの姿。
『行くわよ~』
金色の獅子の様な姿のホルダーを前に、勢い良くチェイサーさんが突っ込む。
並大抵のホルダーであれば、チェイサーさんのバイクタックルで吹き飛ばしてしまうのだが、このホルダーはチェイサーさんのバイクタックルを正面から受け止めて見せたのだ。
だがそれでもチェイサーさんは止まらない。
「今の内に逃げて下さい!」
チェイサーさんとホルダーが押し問答をしているその間にE2が襲われていた女性を逃がす。
E2が女性を逃がした事を確認した俺は、チェイサーさんのハンドルを大きく切り、一旦この押し問答に終止符を打ち、バックスピンで距離を取って、E2のすぐ近くでチェイサーさんから降りる。
「板橋君!」
「来ますよ長谷川さん!」
E2が腰のホルスターからESM01を抜き放った時には、既にホルダーが此方へと距離を詰めていた。
俺は後方からの援護は、E2に任せて正面からホルダーを迎え撃つ為に身構える。
ホルダーが繰り出した拳を軌道をずらして、俺はカウンターとなる拳を逆に打ち込むが、ホルダーは御構い無しに連続攻撃を繰り返す。
『マスター!』
ベルトとなったメカ犬の声を合図に、俺はホルダーとの肉弾戦を中断して横に跳ぶ。
次の瞬間、E2が放ったESM01の弾幕が、ホルダーに当たり火花を全身から上げる。
「があああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
だがE2の攻撃は決定的なダメージとなったよりも、怒りを買ったらしく怒号とも言うべき雄叫びを挙げた。
「随分と硬いな」
『ならばパワーフォルムで行くぞマスター!』
怒りのままE2へと向かっていくホルダーへと対抗する為に、俺はベルトの右側をスライドさせて、メカ犬の言う通り赤いボタンと黄色いボタンを連続で押していく。
『パワーフォルム』
『パワーブレード』
メタルブラックのボディーはクリムゾンレッドへと染まり、ベルトから響く音声と共に発生した光は、俺の右手に集まり赤い刀身の剣を生み出す。
「行くぞ!」
『うむ!』
俺はE2の援護をするべく、パワーブレードでホルダーへと斬り掛かる。
流石にこの一撃をまともに受けると不味いと感じたのか、ホルダーは今まで相手をしていたE2を力任せに突き飛ばし、俺の放ったパワーブレードの一撃に対して防御の姿勢を取った。
「今です長谷川さん!」
だがここまでの動きは予想の範疇だ。
俺の呼び掛けに応える様に、ホルダーに突き飛ばされたE2は、その場で踏み止まり一気にホルダーへと距離を詰めて、ESM01を直接ホルダーの身体へと押し当てた。
「幾ら硬くてもこの距離で連続で撃ち込めばどうだ!」
E2はそう言いながらESM01の引き金を引く。
放たれた弾丸は、ゼロ距離でホルダーへと連続で炸裂した。
俺達の攻撃をものともしなかったホルダーだったが、流石にゼロ距離からによる連続射撃はかなり効いたのか後ず去る。
「はああああああああああああああああああ!」
その隙を見逃さず、俺はパワーブレードによる一閃をホルダーへと見舞い吹き飛ばす。
ホルダーを倒すのであれば今が最大のチャンスとなるだろう。
だが、今回はそれで終わらせる訳には行かない。
その意味をE2も知っているからこそ、俺達は意識を周囲に集中させる。
だからこそ気付く事が出来た。
この場に居る俺とE2とホルダー、それ以外の存在に……。