魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~   作:G-3X

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第48話 洞窟の主 【後編】

突如として現れたホルダーを一言で言い表すとすれば、二足歩行のモグラというのが、一番シックリとくる。

 

それと同時に、このホルダーがモグラに近い能力を有していると考えれば、この洞窟が短時間で作られたという事にも納得がいく。

 

だが今は、そんな事を悠長に考えている場合ではない。

 

俺となのはちゃん達を分断する様に現れたホルダーは、二人を正面にして腕を伸ばそうとしていた。

 

しかも突発的なホルダーの登場に驚いたのか、接近するホルダーに対して、二人はまったく動こうとはしない。

 

恐らく恵理さん達を連れ攫ったのも、このホルダーなのだろう。

 

だとしたら、次に狙うのは目の前にいる俺達だという事になる。

 

「止めろおおおおおおおおおおお!」

 

俺は咄嗟にホルダーの腕に跳び付くが、人の力を超えたホルダーは子供が一人圧し掛かった位ではびくともせず、逆に俺は壁際へと投げ飛ばされてしまう。

 

このまま壁に背中から叩き付けられたら、かなりのダメージを負う事となる。

 

それだけは避ける為に俺は、身体を無理矢理に捻って、天井部分を蹴り上げ、更に壁際を蹴って衝撃を可能な限り分散してから、地面に受身を取りながら転がって、何とか大怪我を負う事だけは避ける事に成功した。

 

これも天井部分が低かったからこそ出来た芸当ではあるが、もしもそうでなかったらと思うと、肝が冷える。

 

だがそんな恐怖体験をした事にも意味があった。

 

「二人とも早く逃げろ!」

 

俺はまだ天井と地面の区別も付かない状態のまま叫んだ。

 

僅かではあるが、稼いだこの時間はホルダーの気を引く為と同時になのはちゃんと姫路ちゃんが正気を取り戻すまでの時間稼ぎ。

 

別に気絶をした訳ではないし、ホルダーを目の前にしたのも初めてではない二人ならば、この僅かな時間でも動く事が出来る様になる筈だ。

 

それに俺がホルダーに飛び掛ると同時に、メカ犬がなのはちゃん達の居る方向へと走っていくのが見えたので、その辺りはあまり心配してはいない。

 

ならば俺が今するべき事は、少しでも長く、ホルダーの気を引き続ける事だ。

 

「こんのっ!」

 

俺は更に転がる身体を、地面に手を思い切り叩き付けて、その反動で飛び上がり、まだ視点の定まらない視界で、兎に角前を見る。

 

幸運な事にも、目に入ったのはホルダーの姿とメカ犬に誘導されて、洞窟の奥へと逃げていくなのはちゃん達。

 

ここでホルダーになのはちゃん達を追わせる訳にはいかない。

 

手頃な石を掴み、俺はホルダー目掛けて投擲した。

 

石を投げた位で、ホルダーにダメージを負わせるとは実行した俺も、最初から考えてはいない。

 

俺の狙いはあくまでホルダーの意識を俺に集中させる事である。

 

案の定、石をぶつけられたホルダーは俺に狙いを定めて。その体躯をこっちに向けてやってくる。

 

「ほら、こっちだぞ!」

 

俺はホルダーを誘導する為に、適当な石を拾い上げてホルダーに当てつつ、なのはちゃん達が逃げていった方向とは逆方向に誘導していく。

 

幸いな事にホルダーの移動速度は遅く、変身前の子供の姿の俺でも十分な距離を持って逃げる事が可能な為、出来るだけ遠くへと誘導していったのだが、思わぬアクシデントによって、それは頓挫してしまう。

 

「……まさかこんなところで行き止まりか」

 

俺は冷や汗を流しつつ、行き止まりの壁を背にして、ホルダーと対峙していた。

 

「このまま逃がしては……くれそうにないよな」

 

当然ながら、ここまで散々ホルダーを挑発しながら誘導してきたせいもあってか、ホルダーは両腕の長い爪を振り回して怒りを露にしており、俺がした事を子供のした無邪気な悪戯として許してくれるつもりは毛頭無いだろう。

 

「流石にこれは不味いかな」

 

何か現状を打開する術はないかと、足元に視線を向ける。

 

「ん? これって……」

 

タッチノートのパネルの明かりだけが頼りの暗い洞窟の中という事と、ホルダーに追われていて今まで気付かなかったが、俺の足元には今撮影中のドラマの脚本があった。

 

俺も撮影用に自分の物を持っているので、この脚本は、今は行方不明となっているスタッフの誰かの物だろう。

 

基本的に撮影に関わっている皆は、同じ物を持っているので、違う人の物だからと言って大きな違いは無いのだが、目の前に落ちている脚本の開かれたページには、赤いペンで書かれた撮影に関する変更点が書かれていた。

 

「ここに書かれてる内容が本当なら!」

 

その内容を信じるのならば、この状況でも何とかなるかも知れない。

 

俺は足元の脚本を拾い上げて、ホルダーへと突貫する。

 

ホルダーと生身で戦って勝てるとは最初から思ってはいないが、このホルダーの動きは鈍い。

 

つまり速さという一点においてだけならば、変身前の俺でも勝つ事が出来る。

 

手に持った脚本を丸めて、俺はホルダーの顔よりも少しだけ上に投げつけた。

 

それはホルダーの意識を少しでも上へと持っていく事を目的とした布石。

 

投げると同時にホルダーが上を向くのを確認した俺は、勢いもそのままにスライディングでホルダーの脇を滑る様に抜けていく。

 

「なっ!?」

 

だが俺のやろうとしていた事は、お見通しだったのか、ホルダーは上では無く、俺の方を見ていた。

 

考えてみれば、このホルダーが見た目通り、モグラと同質の力や能力を持っているのだとすれば、視界に頼らない感覚器官が鋭敏になっている筈だ。

 

そんな奴の隣を気付かれずに通り抜けようとするなんて、無茶な話である。

 

振り上げられるホルダーの鋭利な爪。

 

既に俺の意思で急な方向転換等は出来る筈も無く、自らホルダーの攻撃を受けに行く様な形となっていた俺だが……。

 

「悪い。遅くなったわ」

 

そんな場違いな暢気な声と共に、ホルダーは俺の視界から消えて、前方へと吹っ飛んで行った。

 

どうしてそんな事が起こったのか。

 

答えは簡単だ。

 

先程の声の主が、ホルダーの背中を蹴飛ばした為である。

 

「……待ってましたよ鳥羽さん」

 

俺はホルダーを蹴った人物である鳥羽さんに、声を掛けながら立ち上がりズボンの埃を手で払い、傍へと行く。

 

『無事だった様で安心したぞマスター』

 

更に鳥羽さんの足元にはメカ犬の姿。

 

「メカ犬! お前も一緒に来てたのか」

 

『うむ。なのは嬢達は無事に逃がしたぞ。ところでマスターは鳥羽殿がここに来た事に対して、驚かないのだな?』

 

「ああ、それはな……」

 

俺はメカ犬の質問に答える為に、先程投げた脚本を拾い、赤ペンで書かれた部分に指を示す。

 

其処には、脚本の内容を変えた部分。

 

本来ならば、このシーンでの撮影はシードとホルダーの戦闘場面だけの筈だったのだが、更に戦いの盛り上げを演出するのに、アクセスも追加するというものだった。

 

つまり、この場所での撮影現場では本来ならば来ない筈の人物。

 

鳥羽さんが急遽出演する事になり、この現場に来る事になったという事に他ならない。

 

「あんまりお喋りをしてる場合じゃないみたいだぜ。お二人さん」

 

俺がメカ犬に説明していると、鳥羽さんが手持ちのトランクを開けて、ベルトを出していた。

 

更に前方を見れば、蹴られて壁に激突したホルダーが、立ち上がろうとしている姿。

 

「……みたいですね」

 

状況を理解した俺は、ホルダーの方を向きながら、タッチノートを開く。

 

「行くぞメカ犬! 鳥羽さん!」

 

『うむ!』

 

「任せな!」

 

俺の声に、メカ犬と鳥羽さんが応える。

 

『バックルモード』

 

タッチノートを操作すると、音声が流れメカ犬が銀色のベルトへと変形して俺の腹部へと巻き付き、隣の鳥羽さんも手にしていたベルトを巻き付けて、緑色のカードケースを掲げる。

 

鳥羽さんと俺は、一度お互いに向き合い頷いてから、今から戦うべき相手に視線を合わせて、同時に力ある言葉を叫ぶ。

 

「「変身!」」

 

叫んだ直後、俺と鳥羽さんはそれぞれタッチノートと緑のカードケースを腹部のベルトの中央へと差し込む。

 

『アップロード』

 

『アクセスリンク』

 

俺と鳥羽さんの姿は光に包まれると共に、戦う戦士へと姿を変える。

 

「さあ、いっちよ暴れるか!」

 

逸早く、鳥羽さんが変身したアクセスが威勢良く気合を入れて、ホルダーへと攻撃を仕掛けていく。

 

その後を追って、シードへと変身した俺も、ホルダーに攻撃を開始する。

 

まず最初に、アクセスの拳がホルダーの顔面を捉えるが、あまり効いた様子は無い。

 

動きが鈍い分、他の能力が秀でているのではと思ってはいたが、どうやらこのホルダーは高い耐久力を持っている様だ。

 

ならば、その防御を突破する攻撃力で挑むのがセオリーだろう。

 

「一旦、下がってください鳥羽さん!」

 

俺はアクセスに下がる様に声を掛けると共に、ベルトの右側をスライドさせて、赤と黄色のボタンを連続で押す。

 

『パワーフォルム』

 

『パワーブレード』

 

メタルブラックのボディーはクリムゾンレッドへ染め上がり、ベルトから大量に発生した光は俺の右手の中で、今のボディーと同じ色の刀身を持つパワーブレードとなる。

 

爆発的に上がった攻撃力の全てをパワーブレードに乗せて、俺は正面からホルダーへ一撃を叩き込む。

 

だがその渾身の一撃ですらも、ホルダーの爪によって防がれてしまう。

 

「これでも駄目か!?」

 

「そのまま動くなよ板橋!」

 

しかし俺の、いや俺達の攻撃はここで終わるという事にはならなかった。

 

アクセスが飛び上がり、踵落としをパワーブレードの刀身へと叩き込んだのである。

 

パワーフォルムのパワーに、アクセスの踵落としの力が加わる事によって、その一撃は見事にホルダーの防御を突破して爪を砕き、ホルダーに斬撃を当てる事に成功した。

 

『このまま畳み掛けるぞマスター!』

 

俺とアクセスはメカ犬の声に頷き、ホルダーへと追撃を試みようとするのだが、それを遮断するかの様に、目の前に光の球体が出現する。

 

「またこんな時に試練の光か!?」

 

100パーセントの確率ではないが、高い確率でホルダーがピンチの時に出現する試練の光に、俺は分かっていながらも悪態をつく。

 

だがそれで現状が打開される訳ではない。

 

自身の体内へと試練の光を吸収したホルダーが、大きな変貌を遂げる。

 

パワーブレードで折った筈の爪は再生するどころか、巨大な鋼のドリルへとなり、全身も今までの試練の光を浴びて強化されたホルダーと同様に、鋼の武装を纏う。

 

試練の光によって大幅な強化を経たホルダーの両腕のドリルが唸りを上げて、地面に突き立てると、凄まじい土煙を巻き上げて地中へと潜ってしまった。

 

「本当にモグラみたいな奴だな」

 

土の中へと潜ったホルダーを見て、アクセスが呆れたと言わんばかりに、右手で頭を軽く叩くが正直な話、土の中を自在に進むホルダーと戦うのは至難の業だ。

 

『右から来るぞマスター!』

 

「おわっ!?」

 

「危ね!?」

 

メカ犬の叫びに辛うじて反応して、俺とアクセスがその場から飛び退いた直後、今まで居た場所の壁際からホルダーが地中を掘り進み、強烈な体当たりを繰り出していた。

 

「おいおい。洒落になってないだろ」

 

「確かにあの攻撃をまともに喰らったら、ひとたまりもないですね」

 

俺とアクセスは、ホルダーが攻撃を仕掛けた直後の惨状を前に肝を冷やす。

 

そんな俺達の心情など知る由も無く、ホルダーは再び地中へと潜ってしまう。

 

『何か対抗策を見つけ出さなければ拙いぞ』

 

メカ犬の言う通りではあるのだが、そう簡単に解決出来るのであれば苦労は無い。

 

しかし俺のそんな考えは、作戦という言葉とは無縁に思える一人の男によって打ち砕かれる事となる。

 

「へへ! ここは俺に任せておけ!」

 

本人に言うのは悪いとは思いながらも、考える前に身体が動くを地で行く鳥羽さん改め現状アクセスがカードケースから一枚のカードを抜き出して、ベルトの側面のスリッドにスライドさせる。

 

『グランド・リンク』

 

アクセスのベルトから音声が聞こえると同時に両手を地面に着けると、辺り一帯が振動して、局地的な地震を引き起こした。

 

以前にも鳥羽さんから聞いてはいたのだが、アクセスは先程も使ったカードを発動の触媒とする事によって、自然の一部を一時的にコントロールする事が可能らしい。

 

そしてさっきアクセスが使ったカードは、アクセスの周囲の地面をコントロール出来るカード。

 

つまりそれが意味する事とは……。

 

「見つけた! このまま引っ張り出してやるぜえええええええええええええ!!!」

 

アクセスが叫んだ直後、地震は止まり、直ぐ近くの地面が隆起したかと思うと次の瞬間、まるで噴水の様に、競り上がる土砂と共に、ホルダーが地面から吐き出された。

 

つまりアクセスは、カードの力で周囲の大地を自分のコントロール下に置いて、索敵と攻撃を行ったのである。

 

『今がチャンスだマスター!』

 

放り出されたホルダーを前に、メカ犬が叫ぶ。

 

確かにこれは戦いに決着をつけるチャンスだ。

 

「ああ! こんな悪夢はここで終わらせるさ!」

 

俺はタッチノートを引き抜き、パワーブレードの溝部分にスライドさせる。

 

『ロード』

 

音声が響くと同時に、俺は再びタッチノートをベルトへと差し込んだ。

 

『アタックチャージ』

 

ベルトから発生した光は、赤い刀身へと集約する。

 

「こいつで決めるぜ」

 

アクセスの功績によって、地中から強制的に吐き出されたホルダーに向かって、俺は走り出す。

 

「パワーブレード」

 

勢い良く腕を上段に振り上げ、超至近距離でパワーブレードを振り下ろす。

 

「ブレイクインパクト」

 

メカ竜達の力を借りずに使用出来る、全フォルムの中でも、最も高い威力を誇る必殺の一撃である衝撃波をゼロ距離で放ったのだ。

 

幾ら高い防御力を誇っていたとしても、これを無防備な状態で喰らって、ただで済む筈がない。

 

倒し切るまでは至らなかったが、試練の光によって強化されたホルダーの硬い装甲を砕く事には成功した。

 

「鳥羽さん!」

 

「応よ!」

 

俺の意図を瞬時に察したアクセスは、既に行動を開始している。

 

『リンクチャージ』

 

先程とは違うアクセスの拳部分の図柄の描かれたカードをベルトの脇のソリッドにスライドさせると同時に、アクセスのベルトから音声と光が発生して、右腕へと光が集約していく。

 

そして既に、アクセスはホルダーの懐へと飛び込んでいた。

 

「ライダーパンチ!」

 

アクセスの放った必殺の拳が、ホルダーへと突き刺さり、この洞窟内で爆発を引き起こす。

 

爆発が収まった後には、見覚えのある若い男性が気絶していた。

 

それもその筈である。

 

何故ならば、彼はシード役のスーツアクターを勤めている人だったからだ。

 

俺とアクセスは変身を解いて、改めてホルダーだったこの男性を見る。

 

「こいつは……」

 

何を思ったのか、鳥羽さんは気絶した男性の前まで行くと、男性の持ち物だと思われる直ぐ近くに落ちていた財布を拾い上げておもむろに中身を確認して、一枚のカードを取り出した。

 

「何かあったんですか?」

 

最初はきっとこの人の持ち物なのかを確認する為に、免許証でも見ているのだろうかと思ったのだが、そのカードを見た瞬間に普段は戦う際にすらあまり見せない険しい表情をしたので、俺は思わず何があったのかと聞き返していた。

 

「……ん、いや、何でも無いぜ。それより早く風間ちゃん達を探しに行こうぜ」

 

しかしそれもほんの少しの間であり、直ぐにいつもの調子に戻り気絶したスーツアクターの男性を背負い、洞窟の奥へと先に進んで行ってしまう。

 

俺はこの時、もっと鳥羽さんと話すべきだったのだと後になって後悔する事となるのだが、今の俺には知る由も無かった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

行方不明となっていた恵理さん達は、あの後無事に洞窟の奥で発見された。

 

幸いな事にスタッフの人達には誰も怪我は無く、その原因となってしまったホルダーでもあるシード役のスーツアクターさんは降板してしまったが、代役の人は直ぐに見つかり、撮影は再開された。

 

そしてこれは余談ではあるのだが、なのはちゃんと姫路ちゃんの間に流れていた謎の緊張感は、共にホルダーに襲われるという危機を乗り越えたのが切欠なのか、いつの間にか無くなっていたのである。

 

何かあったのかを聞いたが、2人とも揃って俺には内緒だと言うので、真相は謎だが……。

 

『さて、今度の撮影は学校での撮影になる訳だが』

 

外での撮影をほぼ全て終えて、後は舞台の一部である学校生活の描写を残すのみとなったのだが、久しぶりに時間に余裕が出来て翠屋でアルバイトに勤しんでいた俺に、メカ犬がカウンター席に鎮座しつつわざとらしく俺に聞こえる様に呟く。

 

「……メカ犬。それ位で止めておかないと、次は営業妨害って事で店から追い出すからな」

 

最初の内は無視していたのだが、流石に二時間も同じ事を繰り返されてはたまったものではない。

 

目覚まし時計のアラーム機能だってもっと使用者に優しい設定だというのに、このフルメタルな異世界出身の犬は文字通りエンドレスなのだ。

 

『だったら、許可をくれとワタシは何度も言っているのだがな』

 

「それこそ、俺だって何度も断ってるだろうが。絶対に撮影現場は俺の通う学校以外にしてくれって」

 

これも何度も繰り返した会話である。

 

『マスターの通う学校のイメージが、ワタシの書いた脚本のイメージが一番合っているのだ!』

 

「そんな事を言われても、無理なものは無理なんだよ」

 

ただでさえ人前で演技をするのは恥ずかしいのだ。

 

普段の生活基盤の一つである学校内で多くの知り合いが居る中で、演技しろというのは俺に悶死しろと言っている様なものである。

 

そんな事は、断固として阻止しなければならない。

 

『マスターがそこまで頑なに拒否しるのならば、ワタシにも考えがあるぞ』

 

これが最後通達だとばかりにメカ犬はそう言うと、カウンター席から飛び降りて、翠屋を出て行く。

 

その翌日の朝のHRで先生から、学校がドラマの撮影現場として使われる事が決定したという連絡を受けた。

 

一体何をしやがったんだメカ犬の奴……。

 

海鳴は今日も平和だが、自分の相棒が持つ謎の権力に俺は戦慄した。

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