魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~ 作:G-3X
鴻上ファウンデーション。
俺は前世の頃に、仮面ライダーオーズの一話目までしか視聴する事は叶わなかった為に、、オーズに関係する大企業だとしか知らなかったが、どうやらWとの世界観は濃く繋がっているらしく、詳しい話をフィリップ君から聞き出す事が出来た。
そのお陰で、鴻上ファウンデーションは今、俺達が辿り着いたこの時代でもコアメダルの研究と、セルメダルの量産に、効率的な運用等と、様々な分野に手を出しているらしい。
そして今回、俺達が守るべき楔でもあるメダルも、鴻上ファウンデーションの研究施設内で厳重に保管されているのだそうだ。
つまりメダルの所在は、既に分かっているのだが、問題は俺達がどうやってメダルの保管場所まで辿り着くかという事である。
オーズの番組で流れていた情報と、フィリップ君から得た情報から察するに、鴻上ファウンデーションがただで例のコアの襲撃を受けたとしても、そう簡単にやられる事は無いだろうとは思う。
だけど、防ぎ切れるとまでも思えない。
やっぱり何かしらの手段で、メダルの保管場所まで行かなくちゃならないんだ。
「……だからって、これはどうなんだろうか」
『あまり大きな声で喋るとばれてしまうぞマスター』
思ったよりも大きな声で愚痴を言っていたらしく、俺は隣で同じく身を潜めていたメカ犬に注意を受ける。
俺とメカ犬が隠れている場所は、清掃員の人が良く使っている手押しカートの中。
「二人とも、もう少し声のボリュームを落として」
そして清掃用務員に扮した良太郎君が、俺とメカ犬が入ったカートを押しながら、声のボリュームを抑える様に、注意を促す。
知らない人が見れば清掃業務のお兄さんが、カートを押しながら独り言でも言っている様に見えるかもしれないが、これこそが俺達の考えた潜入作戦である。
少し荒すぎる作戦だとは俺も思うのだが、この作戦を立案したのは他でも無い。
俺はカートの中の隙間から、こっそりとその発案者に視線を向けると、どうやら俺の視線に気付いたらしく、その人物の雰囲気ががらりと変わる。
こっそりと俺が視線を向けたのは良太郎君。
だけど、この作戦を考えたのは良太郎君では無い。
正確には、良太郎君の中に居る存在だ。
気付けば良太郎君は、スタイリッシュな黒斑のメガネを掛けており、前髪からは青いメッシュが走っている。
「ふふ、僕が事前にたっぷりと調べておいたからね。この作戦で間違い無いよ」
自信満々に言い放つ良太郎君、いや正確に言うのであれば、良太郎君に憑依しているウラさんだ。
この時間に先に来たのはウラさんだった訳だが、ウラさんはこの時間でメダルの保管場所に行く為の手段を、色々と探っていたらしい。
その情報収集の結果で、俺達が最も確実にメダルの保管場所へと辿り着けると結論付けたのが、この作戦なのである。
ウラさんいわく、本来ならば社内の移動には、社員の持つIDカードが必要となるらしいが、唯一の例外として、普段から出入りしている清掃業者だけは、社員外の特別IDカードを受付で貰う事が出来るそうなのだ。
ちなみに、ウラさんがどうやってこの情報を入手したのかと言うと、近くを歩いていた若い営業マンに憑依して、受付嬢のお姉さんをナンパしながら得た情報である。
別に真似をしたいとも、俺が同じ事を出来るとも思わないけれど、まさにウラさんらしい、趣味と実益を兼ねた、見事な情報収集だと言わざる得ないだろう。
思ったよりも通路の人通りも多かった為、俺はウラさんの弁解に返事をする事もせず、黙ってカートの中に潜み続けていると、しばらくしてカートの隙間から、大きな白い扉が見えてきた。
『どうやら目的地まで、もうすぐの様だが、どうするのだ? マスター』
「いや、どうするって言われてもな。俺達は別にメダルを盗みに来た訳じゃないから……」
改めてメカ犬に指摘されて、俺は首を捻りながら、これからの事を考える。
ウラさんの情報に間違いが無ければ、俺達が目的とするメダルの保管場所は、あの白い扉の先な訳だが、あくまでもディアスの手から守るのが目的であり、欲しい訳でも無い。
これはフィリップ君から、地球の本棚で検索した内容を聞いたのだが、時結びの鎖は、各々の存在するべき時間にある事によって初めて意味を成す為に、安全の為にとデンライナーに持ち帰れば、楔が物体であった場合は、時結びの鎖としての効果を失ってしまうのだそうな。
だから俺達が持ち出す訳にはいかない。
だけど、狙われているメダルにすら近付けないのでは、それこそ何の意味も無くなってしまう。
「まあ、取り敢えず本物を拝ませて貰おうよ」
俺とメカ犬がカートの中で考え込んでいる事に気付いたのか、良太郎君に憑いたウラさんが小声でそう言うと、ドアの横の電子パネルのスロット部分に、受付で預かった件のカードを差し込んだ。
それと同時に、小さな電子音が鳴り、鍵の開く金属音が俺の耳にも届く。
保管庫となっている部屋の中は、入り口の白い扉とは違い、薄暗く何処かのSFみたいな円柱のガラスみたいな筒がズラリと並び、何かの透明な液体で満たされており、その中央に銀色のメダルが収められている。
何か明らかに、一般人に見せてはいけない様な、どこぞのSFチックな秘密の研究施設的な雰囲気を醸し出しているのだが、こうして清掃業者の人を簡単に受け入れるのだから、其処まで重要視されている場所という訳では無いのかも知れない。
まあ、若しくは一般人には見せたところで、どうにも出来ないだろうという、自信の表れかも知れないが……。
監視カメラを警戒して、良太郎君に隠れているカートごと押されながら、奥に進んでいくと一番奥に一際大きなケースが鎮座しており、その中央に金色に輝く一枚のメダルがあった。
他の銀色のメダルは、セルメダルだと俺でも理解出来るのだが、あの金色のメダルは何なのだろうか?
普通に考えれば、セルメダルで無ければコアメダルだと思うのだが、金色のメダルだなんて聞いた事も無い。
番組が放送される前から、赤、黄、緑、灰、青と、フィリップ君から事前聞いていた紫、橙色とも違う。
他にも例外的に、幾つかの種類の色のコアメダルが存在していたらしいが、やはり金色のコアメダルというのは、聞いた例が無い。
まあ、このメダルの正体はさて置き、きっと、いや、このメダルが時結びの鎖と考えて間違い無い筈だ。
「後はどうやってこのメダルを守るかだけど……何だ!?」
これからどうするべきか、思案を始めたその時だった。
ビルの中、全体に耳を劈く様な勢いの、サイレンが鳴り響く。
更に間髪入れずに、大きな爆発音と、大きな揺れが俺達を襲う。
当然ながら、俺を含むその場に居た全員が驚く。
だが、それも一瞬の事だった。
次の瞬間には、スピーカーから緊急避難警告と、多くの人の悲鳴。
そして銃撃音。
様々な音が、部屋の中からでも響いて来る。
『マスター!』
「ああ!」
俺はメカ犬が何を言いたいのか察して、二つ返事をしてから、カートの中から飛び出して金色のメダルが入ったケースを引っ掴む。
「取り敢えず、安全な場所まで移動した方が良さそうだね」
良太郎君に憑依したウラさんが、そう言って先導してくれるが、俺達がこの部屋を出るよりも早く、部屋の扉が開かれる。
「こいつ等は……」
部屋に入って来たのは異様な集団だった。
俺はその異様さに、思わず後退る。
まるでアジア系のホラー映画にでも出て来そうな、包帯をグルグル巻きにした集団。
その正体が分からなかったとしたら、本当にただのホラーだとしか言い様が無い。
奴等の正体は人の欲望を糧に生み出される、ヤミーの出来損ないとされる屑ヤミー。
こいつ等が正式に番組で登場した時には、既に俺の前世は終わりを迎えていた訳だが、設定の一部だけは情報として知っていたし、それに他の部分の足りない情報は、フィリップ君から色々と事前に聞き出しておいた。
地球の本棚に、感謝である。
「ここは僕が引き受けるよ」
そんな少しずれた事を考え始めていた俺に、良太郎君に憑いたウラさんがそう言うと、メガネを指で軽く位置を直しつつ、ベルトを腹部に巻き、ライダーパスを取り出す。
「変身」
ベルトの青いボタンを押して、流れるメロディーと共に、言うとライダーパスをベルトの中央にセタッチさせる。
『ロッドフォーム』
そうする事によって音声が流れ、良太郎君の身体が白と黒を基調としたプラットフォームの電王へと変わり、更にその上に展開していくアーマーが上半身を多い、最後に頭部へと、六角形のオレンジの複眼が特徴的な仮面が装着されて、上半身が主に青いボディーカラーに包まれた、ロッドフォームの電王となる。
「僕に釣られてみる?」
親指と人差指を軽く擦りながら、お決まりの台詞を言うと、電王は一気に屑ヤミー達へと駆け寄って勢い良く目の前の道を塞いでいる、一番前の屑ヤミーを蹴り倒す。
強い衝撃を受けたにも関わらず、メダルが零れ落ちないし、直接蹴りを受けた屑ヤミーが黒い霧となって消えてしまった事から、あの屑ヤミー達が、ディアスの送り込んだコアから生まれた存在だと見て、まず間違い無いだろう。
「今だ! 行くぞメカ犬!」
『うむ!』
俺は電王が作ってくれた隙を突き、メカ犬を連れて、急ぎ部屋の中から抜け出した。
不幸中の幸いにも、屑ヤミーの動きは、普通の人と比べても動きは鈍重で、逃げるだけならばそう難しく無い。
だけど、俺達の世界に来たコアが生み出していた以上に、数だけは多く、完全に包囲網を抜けるのは難しそうだ。
『逃げているだけでは駄目だ。こちらからも攻めるぞマスター!』
「確かにそれしか無いか……」
前の時とは違い、メダルという明確な物体を守る必要がある以上、出来ればメダルを持ち続けている間は戦いたく無かったが、このままではジリ貧だ。
なら、メカ犬の言う通り、ここは戦う事を選択するべきかも知れない。
俺はタッチノートを取り出して、メカ犬をベルトに変形させようとした、その時である。
「はあっ!」
直ぐ近くにまで近付いていた屑ヤミーの内の一体が、何者かによって殴り飛ばされた。
咄嗟に、そんな真似をした人物へと視線を向けると、その人は長めの木の枝に、まるで旗の様に柄物のパンツがぶらさげられていたのだった……。