魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~ 作:G-3X
今月中の更新はこれで最後となるかと思いますが、楽しんでいただけたら嬉しいです。
聞き覚えのある声のした方向に振り向くと、予想通りの人物が目の前に居た。
シアンと黒色を基調とした、カラーリングのボディー。
前世の頃はもとより、少し前に士さんが俺の居た世界に来た時にも、二度に渡って出会い頭に襲われたのだから、忘れる訳が無い。
「海東さん!?」
「海東!?」
「えっと……二人の知り合い?」
目の前に現れた海東さんが変身しているディエンドに、俺達は三者三様の反応を見せる。
『また襲い掛かって来るのではあるまいな……』
それから少しの間を置き、メカ犬が不吉な言葉を口走る。
本当に有り得そうだから、言わないでくれ。
俺もディエンドを見た瞬間に、凄く身構えたんだからさ。
「まあ……知り合いではあるか」
「そうですね。確かに知り合いと言えば、俺達の知り合いではありますけど」
取り敢えず、俺とディケイドは、警戒を続けながらも、ウィザードの質問にそう返事を返す。
俺達の反応を見て、ウィザードは、どんな知り合いだよと、溜息交じりに肩を竦めるが、仕方が無い。
何せ海東さんという人物は、時と場合によっては、本当に何の躊躇も無く、敵になったり味方になったりと、独自の信念だけで動く人なので、その立ち位置が常に分からない人なのだから。
「おいおい。酷いな二人とも。せっかく久し振りに会ったっていうのにさ」
ディエンドが、俺とディケイドの態度を見て、軽い反応を見せるが、既に変身した状態でこうして俺達の前へと現れた以上、ただ世間話に来たと言われても、信じる事は出来そうに無い。
「何の用だ? 海東」
「もしかして、また俺の持っているっていうお宝を狙って来たんですか?」
警戒を解く事無く、士さんに続き、俺は質問をぶつけてみる。
「う~ん……まあ、少年君が持っているお宝にも興味はあるんだけれど、今日はそっちじゃ無いよ」
そう言いつつ、ディエンドは視線を、俺からディケイドの方へと向けた。
「僕が今、一番欲しいお宝は、士が持っている、魔法石の方さ」
「狙いはさっきのライダーもどきと一緒って事か」
ディエンドの言葉を聞き、ウィザードも、そう呟きつつ俺達と同様に警戒の構えを取る。
ライダーもどきとはさっきまで戦っていたライオトルーパーの事を言うのだろう。
あれも、公式ではちゃんと仮面ライダーとしてカウントされては居るのだが、その役割が思い切り戦闘員という感じが強いので、態々この場で否定するのは止めておく。
それよりも今、問題とするべき事は、ディエンドの狙いが魔法石という事だ。
もしも、ディエンドに魔法石を奪われて、違う世界に持って行かれたら、楔の役目を失ってしまう。
それだけは、容認する事は出来ない。
「海東さんは、この魔法石が、どういった意味を持つ物なのか、分かっているんですか?」
ちゃんと説明すれば、納得するのではないか。
そんな薄い希望を胸に抱き、俺はディエンドに問い掛ける。
「ああ、知っているよ。これがディアスの狙いだって事もね」
「海東さんはディアスを知ってるんですか!?」
「ここに来る前に、会って来たからね。そんな事よりも、早く僕にそのお宝をくれたまえ」
ディアスと直接の面識があったという事実も驚くべき事だか、ディエンドはこの魔法石が何を意味するのかを分かった上で狙っているという事が、判明してしまった方が今は拙いかも知れない。
何故ならば、それは完全な対立を意味しているのだから。
「悪いが、この魔法石を渡す訳にはいかないな。代わりにその辺に落ちてる綺麗な石でも持って帰れ」
当然ながら、そんなディエンドの要求を叶える筈も無く、答えを突っぱねるディケイド。
ただ、挑発する事はこのさい仕方ないとしても、落ちてる石を代わりしろというのは、あんまり過ぎる気がする。
「ふぅ……交渉決裂だね」
ディケイドの返答を、俺達の総意と受け取ったのだろう。
一つ溜息を吐いた後、ディエンドは三枚のカードを取り出して、専用の銃型武器でもあるディエンドライバーを展開させて、差込んでいく。
それが意味する事を嫌という程に知っている俺とディケイドは、急いでディエンドの居る場所へと駆け寄ろうするが、時は既に遅く、容赦無くディエンドライバーの引き金は引かれてしまう。
『カメンライド……ブレイド! ヒビキ! キバ!』
引き金を引いた瞬間に、ディエンドライバーから音声が流れ、銃口から幾重もの光が照射されると、それは人の形を成したシルエットとなり、そしてそのシルエットはオリジナルの姿を模した、三人の仮面ライダーへと変化する。
トランプのスペードを模した頭部と、銀と青を基調とした、古代の戦士を彷彿とさせるプロテクターを纏う、仮面ライダーブレイド。
陽の輝きを受けて、光沢を放つ紫の鬼は、仮面ライダー響鬼。
蝙蝠を模したその造詣は、古から人々に恐れられて来たヴァンパイアが、現代に現れたのだと錯覚させてしまう、ファンガイアの王が纏う鎧でもある、仮面ライダーキバ。
通常であれば、一堂に会す事が稀である筈の平成ライダーが、デイエンドの持つカードの力によって一時的に作られたものとは言えど、こうして並び立つのは、一人の前世から続くライダーファンとしては、中々に壮観な光景だ。
だが、この場面に感動している暇は無い。
既にディエンドの指示を待たずに、召喚された三人のライダーは、俺達を攻撃するべく、駆け出していた。
劇中でも使用頻度がかなり高い、ブレイドの持つ剣、ブレイラウザーを抜き放ち、ブレイドはウィザードへと斬り掛かる。
更に響鬼とキバが、今もシードへとカメンライドした状態のディケイドと、メカ犬が操る分身体に向かって、突っ込んで行く。
……という事は、俺が相手をするべき相手は、自ずと一人に絞られる。
「考えを改めてもらう事は出来ませんか? 海東さん」
俺は目の前で銃口をこちらへと向けるディエンドに対して、もう一度考え直してくれないかと、言葉を投げかける。
「残念だけど、そういう訳にはいかないね。僕は狙ったお宝を逃しはしない」
返答と共に、引き金を引くデイエンド。
その答えを既に予想していた俺は、引き金が引かれる直前に、横へと飛んでいた。
直後、先程まで居た地点に浴びせ掛けられた弾幕が、火花となって地面を焦がすが、それに恐怖している暇すらも惜しい。
距離を開けたまま戦うのは、此方に不利である。
だからと言って、サーチフォルムで同じ土俵で戦っても、有利に戦えるとは限らない。
幸いにも、ディエンドは既に三人のライダーを召喚しているので、メカ犬達が召喚されたライダー達を倒さない限りは、新たに召喚される心配は無く、更なる召喚をされて、戦いに横槍を入れられるという事は皆無。
ならば、ここはディエンドの攻撃を無力化すれば、勝機がある筈だ。
更なる銃撃による追撃を避けつつ、俺はベルトの右側をスライドさせて、赤いボタンを押す。
『パワーフォルム』
音声が響くと同時に、メタルブラックのボディーは、クリムゾンレッドへと染まる。
だが、これだけでは終わらない。
ただでさえ避ける事が厄介な、ディエンドの攻撃に対して、敏捷性で劣るパワーフォルムを選択した事には、それなりの意味がある。
「自分から的になってくれて助かるよ」
「くっ」
ディエンドの言う通り、パワーフォルムとなった俺は、ただの的となりディエンドらいバーから放たれる銃弾の餌食となってしまう。
だが、これも勝つ為の布石なのだ。
痛む身体に鞭を打ち、俺はベルトからタッチノートを引き抜き、操作を開始する。
『ダイバー・コール』
タッチノートから音声が流れてから、殆どの間を置かず、空からふよふよと、青いメカニカルな手乗りイルカが襲来する。
『呼ばれて、アタイ参上! なんだわさ~』
こっちへ来たメカ海が、誰のモノマネをしたのかは、あえてスルーしようと思う。
「頼むよ。ウミちゃん!」
『任せとくんだわさ~』
相変わらずの間延びした答えを聞き、俺は更にタッチノートを操作していく。
『スタンディングモード』
手乗りイルカの状態から、アタッチメントパーツへと変形したメカ海を手に取り、俺はタッチノートを再びベルトに差し込んでから、続いてベルトの左側をスライドさせて、その溝部分へとアタッチメントパーツを差し込んだ。
『パワー・ダイバー』
クリムゾンレッドの上に、メタルブルーの分厚い追加装甲が展開されて、それが同時にディエンドライバーから放たれる弾丸に対しての盾ともなる。
そして展開された装甲は、俺の全身へと装着されていく。
無事にダイバーモードとなる事に成功した俺は、ディエンドの居る方向へと向かって、ゆっくりと歩を進める。
それをディエンドが簡単に許す事は無く、更なる銃撃を浴びせて牽制を図るが、俺はその攻撃も無視して、しっかりっとした足取りで、ただただ前を目指して歩くのを止めない。
シードの全フォルム中でも、一番高い防御力を誇るパワーフォルムに加えて、防御力を大幅に強化するダイバーモードを合わせたのだから、今の俺の耐久力は、かなりのものとなっている。
それこそ、ディエンドライバーから放たれる通常攻撃ならば、素のままでも耐えられる程にだ。
ここまで硬い相手に対して、突破口を開くにはどうするべきか。
それをディエンドが実行しない訳が無い。
しかし、それこそが、俺の狙いでもある。
「こうなったら仕方ないね」
そう言って、ディエンドは一枚のカードを取り出して、展開したディエンドライバーへとセットした。
『ファイナルアタックライド……ディ、ディ、ディ、ディエンド!』
自身を表すロゴマークの入ったカードをセットした事により発動するディエンドの必殺技。
音声が流れると共に、ディエンドの前方に複数の半透明のカードがターゲットを捕捉し、メカ犬達と戦っていた召喚されたライダーである、ブレイド、響鬼、キバもその一枚へと還元される。
「ここだ!」
俺は、そのタイミングに合わせて、アタッチメントパーツのレバーしたにあるボタンを押す。
『パワーアックス』
ベルトから発生した光で生成された、パワーダイバーの斧型の専用武器、パワーアックスを握り締めつつ、俺は更にアタッチメントパーツのレバーを引く。
『マックスチャージ』
ベルトから発生した大量の光が、パワーアックスの刃に纏われると同時に、ディエンドがディエンドライバーの引き金を引き、銃口からカードのエネルギーが込められた巨大なビームが俺に向かって放たれる。
「ダイバークラッシュ」
その極太のビームに向けて、俺はパワーアックスを振り下ろす。
「くううううううううううううっ!」
パワー・ダイバーの能力を持ってしても、凄まじい威力を誇るデイエンドの放つ一撃が俺の身体を襲うが、それでも、この一撃は根性で耐え切らなければならない。
「こっのおおおおおおおおおおおおおっ!」
俺は半ばヤケクソに叫び、パワーアックスの刃を返して、無理矢理にビームの軌道を逸らせ、どうにかこの一撃を耐え切って見せる。
「す、凄いね。少年君」
かなり強引で、無理な手段を実行したせいなのか、敵であるディエンドから、若干引き気味に、賛辞の言葉を送られるが、今はそれを気にしている場合ではない。
だから俺は、乱れた息を整える間も惜しみ、辛うじて残った肺の空気を全て吐き出す勢いで叫ぶ。
「確保おおおおおおおおおお!」
この俺の叫びを合図にして、二人のシードがディエンドへと飛び掛る。
通常のシードとの違いを挙げるとするならば、一人は複眼が灰色で、もう一人はベルトがディケイドライバーだという事。
つまりメカ犬が操る分身体と、カメンライドしたディケイドだ。
元々は、召喚されたライダー達によって足止めをされていた彼等ではあるが、ディエンドが必殺技である、ファイナルアタックライドを使用すると、召喚されたカードは基本的に、元のカードへと戻る。
俺はその時は、狙っていたのだ。
「は、離したまえ」
何とか振り解こうとするディエンドではあるが、流石に二人のライダーに同時に羽交い絞めにされれば脱出は困難だろう。
そして俺も、息を整えつつ、ディエンドへと接近して、羽交い絞めになっているディエンドの手から、ディエンドライバーを奪い取る。
ここで一番の悪手は、ディエンドを逃がしてしまう事だ。
ディエンドには、かなり厄介なインビジブルという、カードがある。
もしもこのカードを使われれば、俺達は簡単に逃走を許す事となり、また機会を見て襲われる事となるだろう。
既にこれで三回も襲われているので、これ以上は勘弁してほしい。
「それじゃあ、仕上げはこれで」
俺がディエンドライバーを奪った事を確認すると、今度はウィザードが此方に近付き、ディエンドに一つの指輪を嵌めて、自身のベルトの黒い手形マークに、その指輪を添える。
『スリープ』
ウィザードのベルトから音声が聞こえると同時に、どうやら新たな魔法が発動した様だ。
どうしてそんな事が分かるのかというと、理由は簡単な事だ。
なにせ……。
「Zzz……」
発動させると同時に、今まで振り解こうと足掻いていたディエンドが急に大人しくなり、静かな寝息が聞こえて来たのだから……。