魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~   作:G-3X

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映画版 仮面ライダーシード シークレットエピソード プリンセスメモリアル【後編】

「もう少しで船外に出るから頑張って!」

 

「わ、分かったのじゃ」

 

俺とエミリー様とメカ犬は部屋を出てから数分間走り続けた事で、もう間も無く出口に着こうとしていた。

 

そしてここに到達するまでの間に、やはり誰かと鉢合せする等という事も、起こらなかった。

 

これは益々もって怪しい・・・

 

「ちょっと待って!」

 

俺は出口を前にして立ち止まる。

 

『如何したマスター?』

 

俺はポケットからタッチノートを取り出してある操作をした後直ぐにしまって再び走り出す。

 

「悪いなメカ犬」

 

『何をしていたんだマスター?』

 

「一応の保険をかけといただけだ」

 

走りながら会話を交わした俺達は、今度こそ出口を目指して走る速度を上げた。

 

再び走り始めてから、さほど時間も掛からず、俺達は出口へと辿り着いた。

 

時刻は既に夜の十一時を過ぎており、あたり一面は闇の覆われていた。

 

あたりに人が居ない事を確認しようとした所で、俺達を隠してくれる筈の闇が突如光の濁流に飲まれる。

 

俺達が居る場所を中心に船着場に設置されていた大型のライトが全て点灯し、まるで昼間のような明るさを生み出したのだ。

 

「待っていたよ。板橋君」

 

光の先から俺を呼ぶ声が聴こえた。

 

その声の主は光の中からゆっくりと此方に近づいてくる。

 

その男は顔に幾重もの古傷を持つ、歴戦の戦士だった。

 

「・・・黒澤さん」

 

その声の主は黒澤さんだった。

 

恵理さんの携帯に入っていた情報で知った事だが、この人は幾つもの戦地で戦い続けて来た本物の兵士だ。

 

出生は謎で、赤ん坊の頃に孤児院の前で捨てられていた事と、十六歳までその孤児院に居た事までは分かったが、その後行方不明になり、四年後に所在を知る事が出来た時には、既に各地の戦場を転々としていたらしい。

 

そして今もこの人は、この場所で戦いにその身を置こうとしている。

 

「しかし、私が予想していたよりも随分と早く来たものだね。身体の方はもう大丈夫なのかい?」

 

まるで俺が来るのを確信していた様に話を進める黒澤さん。

 

「・・・まさか!?黒澤さん。あなたもしかしてわざと・・・」

 

俺の脳裏にある可能性が浮かぶ。

 

「今となってはどうでも良い事だ。この場に私と君が居る・・・今はそれだけ分かっていれば良い」

 

黒澤さんはそう言うと右手を上げる。

 

それを合図にしたのか、ライトの光の先から二十体を超える、街で戦った時と同タイプのホルダーが姿を現せた。

 

「まずは今の君が私と戦うに相応しいコンディションか、こいつ等を使って確認させてもらおう」

 

完全に俺達は囲まれてしまった。

 

そして黒澤さんの号令が掛かろうとしたその時、空中からけたたましいまでのジェット音が鳴り響いた。

 

『お待たせ~マスター!』

 

空中からオッサンボイスが聴こえて来る。

 

「ナイスなタイミングですよチェイサーさん!」

 

俺はもしもの時の保険として、陽動に出ていたチェイサーさんをホバーモードにして、上空で待機して貰っていたのだが、どうやらこの選択は間違いではなかったようだ。

 

俺は下に降りて来たチェイサーさんに素早くエミリー様を乗せる。

 

「早く純も乗るのじゃ!」

 

チェイサーさんに乗ったエミリー様が俺に手を差し伸べて来るが、俺はそれを首を横に振り拒絶する。

 

「ごめん。まだやらなきゃならない事があるから」

 

やるべき事を成すまで、俺はこの場を離れる訳にはいかない。

 

「何故じゃ!?純はもう十分頑張ってくれたじゃろ!?命がけで我を助けてくれたじゃろう!?」

 

確かにここまでやったのだから、逃げたって良いのかも知れない。

 

正直な所、俺は今この場に居る事すらも恐怖している。

 

でも・・・

 

「約束しただろ?エミリー様の国を救うって」

 

俺はまだこのお姫様の願いに答えを返さずに居た。

 

だからこの場で答える。

 

はっきり言って俺が国を救うなんて柄じゃないし、そんな大層な器は持ち合わせては居ない。

 

俺はただのへタレ転生者だ。

 

だけど俺は・・・

 

「俺は仮面ライダーだからさ!」

 

エミリー様に今自分に出来る最高の笑顔を見せてから、チェイサーさんに安全な所まで上昇してもらった。

 

その姿を見送ってから、俺は一度だけ深呼吸をしてこの場に共に残っている相棒に話しかける。

 

「そういう訳だから・・・力を貸してくれよ。相棒!」

 

『当然だ。ワタシは相棒だからな!」

 

俺は周りのホルダーを見据えながら、タッチノートを取り出し、ボタンを押す。

 

『バックルモード』

 

隣に居たメカ犬が音声が流れると同時にベルトに変形して、俺の腹部に自動的に巻きつく。

 

「変身」

 

俺は音声キーワードを入力して素早くタッチノートをバックルの窪みに差し込んだ。

 

『アップロード』

 

ベルトを中心に俺の全身を白銀の光が包み込み、俺の姿を一人の戦士へと変化させる。

 

光が飛散した後に現れたその姿はメタルブラックのボディーに四肢に伸びる銀のラインと額のⅤ字型の角飾り。

 

二つの大きな赤い複眼が、凄まじいまでの存在感を放つ。

 

「残ってくれて嬉しいよ。さあ、思う存分戦おう!」

 

黒澤さんはそう言うと上げた右腕を前に振った。

 

それを合図に俺を囲んでいたホルダー達が一斉に駆け出した。

 

「派手に決めるぜ相棒!」

 

『うむ!』

 

短く会話を交わした俺達も、駆け出し目の前のホルダーに拳を叩き込む。

 

更に横から後ろからと迫り来るホルダーの攻撃を捌きながら、カウンターをお見舞いしていく。

 

『フォルムを換えるぞ!』

 

メカ犬のアドバイスがベルトから聴こえる。

 

「ああ!」

 

俺はその声に答えながら、ベルトの右側をスライドさせて、緑のボタンと黄色のボタンを続けざまに押す。

 

『スピードフォルム』

 

『スピードロッド』

 

ボディーカラーをライトグリーンに染め上げながら、専用武器であるスピードロッドを握り締めて、近くに居るホルダー達にロッドによる連撃を喰らわせる。

 

「はっ!」

 

俺は近くのホルダーに軒並みロッドの一撃を打ち込んだ後、スピードフォルムの身軽さを生かして高いコンテナの上に飛び乗り、再びベルトの右側のボタンを押す。

 

『サーチフォルム』

 

『サーチバレット』

 

ボディーカラーをスカイブルーにしながら、右手に握ったサーチバレットの銃身を、下に居るホルダーに向けて引き金を引き、発射される光弾が容赦なくホルダー達に直撃していく。

 

しかし撃ち漏らしも出てくるので、コンテナの下から這い上がろうとするホルダーが増えてくる。

 

俺は三度ベルトの右側のボタンを押しながら、下の地面へと舞い戻る。

 

「たあ!」

 

『パワーフォルム』

 

『パワーブレード』

 

飛び降りながらボディーはクリムゾンレッドに染め上がる。

 

地面に着地した俺は、赤い刀身の剣を両手で握りながら、近くのホルダー達を次々に切り伏せていく。

 

「どうやら板橋君のコンディションは問題無いみたいだね」

 

パワーブレードを振るう俺の近くに黒澤さんが近づいて来た。

 

「・・・変身!」

 

左腕を胸の上に当てながら黒澤さんがその言葉を放つと同時に、左腕の腕輪を中心に薄紫色の光が発生して、その姿を変質させる。

 

変わり果てたその姿は、昆虫の甲殻を彷彿とさせる赤黒いボディーと額の長い二本の触角に黄色の複眼。

 

黒澤さんはこの姿の自分を仮面ライダーデビルと名乗っていた。

 

その姿を変えた黒澤さんが俺に殴りかかる。

 

「ぐっ!」

 

俺はその一撃をブレードで受けながら後退する。

 

パワーフォルムでさえこの威力を御しきれないということは、あのデビルという姿のパワーは相当なものである。

 

「さあ、決めようじゃないか。私と板橋君の、どちらの仮面ライダーが強いのか!」

 

そう宣言した黒澤さん・・・いや、デビルは再び俺に拳を振るう。

 

「くそ!」

 

俺は拳を掻い潜りながらブレードで切りかかるが、デビルはバックステップ後ろに下がってその一撃を避けきる。

 

更に追撃をかけようと前に出ようとするがそこに両脇から二体のホルダーが襲い掛かってくる。

 

咄嗟に迎撃体勢を取るが、その隙を突かれて一気に距離を詰めてきたデビルの蹴りをまともに喰らってしまい、吹き飛ばされる。

 

「うわ!?」

 

吹き飛ばされて直ぐに二体のホルダーが追撃を仕掛けてくるが、俺は痛みに耐えながら、パワーブレードを振るい何とか切り伏せる。

 

「うっ」

 

しかしダメージが未だに抜け切らず、思わず片膝を付いてしまう。

 

『大丈夫かマスター!?』

 

ベルトからメカ犬の俺を心配する声が聴こえてきた。

 

「ああ・・・まだまだ行ける」

 

俺は心配させまいと立ち上がりながら、考えを巡らせる。

 

一対一の戦いなら、パワーフォルムが一番有利に戦えそうだが、生憎俺の相手は現在複数居るのだ。

 

どれだけ力が強くても機動力皆無じゃ、あのレベルの相手をしながら同時に他の相手と戦うのは、かなりの無理がある。

 

本来なら多数を相手にするのはスピードフォルムが一番だろうけど、今度はパワー不足で倒しきれるのか怪しくなってくる。

 

なら今の俺が出来る手段は・・・

 

「・・・メカ犬。あれをやるぞ!」

 

俺は決意を決めてメカ犬に話しかける。

 

『む?マスター。あれとは・・・まさかあれの事か!?』

 

メカ犬が驚きの声を上げる。

 

それもそうだろう。

 

一応の説明聞いてあるが、実戦で使うのはこれが初めてな上に、他のフォルムとはその概念からして離れている物なのだ。

 

ぶっつけ本番で何処まで使えるのか、全くの未知数なのである。

 

「ああ、あれだ」

 

『しかしこの場でいきなり使うのはリスクが高いぞ』

 

「しょうがないだろ?今この状況をどうにか出来そうなのはあれしかないんだからさ」

 

これは賭けだ。

 

確かに危険は伴うかもしれないが、今はやるしかない。

 

『分かった・・・行くぞマスター!』

 

「ああ!」

 

俺はベルトの右側をスライドさせて、黒いボタンを押した。

 

『ベーシックフォルム』

 

音声が流れると同時に全身が光に包まれてボディーカラーがメタルブラックへと変化する。

 

このフォルムはシードの全フォルムの中でも、最もバランスの良い能力を有しているが、このフォルムにも一つだけ、特殊な能力が存在している。

 

その能力が、今この場で必要なのだ。

 

俺は更に続けて黄色のボタンを押す。

 

『ベーシックファントム』

 

音声が流れると同時に、大量の光がベルトから発生する。

 

その光はやがて人型を形成し、その光を飛散させた。

 

光の中から現れたのは、もう一人の仮面ライダーシードである。

 

正確には瞳の色が灰色な部分とベルトの後ろに溝がある以外はだが・・・

 

『上手くいったなマスター』

 

メカ犬の成功を喜ぶ声が聴こえる。

 

ただし、俺のベルトからではなく、俺の隣に居るもう一人のシードからだ。

 

しかも俺の肩に手を乗せてくる。

 

この能力が基本形態のベーシックフォルムが持つ特殊能力のベーシックファントムだ。

 

他のフォルムでは武器に変換する能力を、分身体を作製する事に使い、その分身体の制御をメカ犬が遠隔操作で行う。

 

時間制限等もあるし、この能力を使っている間は、メカ犬本体は俺のベルトにいるが、遠隔操作で分身体を操っている為、その間の直接的なサポートが出来なくなるが、単純に味方が増えるのは心強い。

 

「俺があいつの相手をする。メカ犬は他の奴らの足止めを頼むぞ!」

 

俺はデビルを指さしながら、隣のシードの姿をしたメカ犬に指示を出す。

 

『うむ。任せろ!』

 

メカ犬はそう言いながら、戦う構えを取る。

 

「それじゃあ行くぞ!」

 

俺も構えを取り、戦う態勢を整える。

 

『負けるなよマスター!!!』

 

「分かってる!!!」

 

俺達はそれぞれの成すべき戦いをする為に走り出した。

 

「はあ!」

 

俺は右拳を目の前のデビルに振るう。

 

「ふん!」

 

しかし攻撃は捌かれてしまい、お返しとばかりに蹴りを放ってくる。

 

「おわっと!?」

 

目前に迫る蹴りを俺は紙一重でかわしながら、追撃を受けないように警戒しながら、二歩程後ろに後退する。

 

この人、やっぱり強い!

 

さっきからお互いに攻撃をしては避けての繰り返しである。

 

やっぱり本物の戦場で戦ってきた相手に、俺の我流で挑むのには限界があるって事なのだろうか・・・

 

「ふふふ・・・やはり君は強いな」

 

お互いに警戒を解かず構えながらも、デビルが俺に話しかけてきた。

 

「何でこんな状況で笑ってるんですか?」

 

俺はその笑みの意味を知りたいと思い、質問をする。

 

「楽しいからに決まっているじゃないか。強い敵と戦う・・・それ以上の喜びが何処にある?」

 

それが当然とばかりに返事を返してくる。

 

「それは誰かの日常を壊してでもするべき事ですか!?」

 

俺は言葉と共に前蹴りを繰り出す。

 

「そんな事は私の知った事ではない!」

 

俺の前蹴りを避けながら、答えるデビル。

 

「それでは逆に聞くが、君は何故その力を振るう?力とは争いその物だ!その力を君は戦い以外に使うのかね!?」

 

今度は俺に拳を振るいながら、質問を投げかけてくる。

 

俺はその拳をかわしきれずに後方に吹き飛ぶ。

 

「・・・力とは理不尽な物だ。力の無い者は意見を言う権利すらない」

 

俺はその声を聴きながら考える。

 

俺がこの力を手にしたのは、全くの偶然だ。

 

最初は力その物を否定していた位だ。

 

少しだけ・・・

 

少しだけだが俺は先程の言葉に共感を持つ事が出来る。

 

確かに力は理不尽だ・・・

 

どれだけ大切にしていても、どれだけ守ろうとしても、力が及ばなければ全てを根こそぎ奪われていく。

 

だけど・・・

 

そんな力だけが全てなんだろうか?

 

俺にはとてもそうは思えない。

 

本当の力ってなんだろうか?

 

そんな事・・・

 

俺に分かる筈無いけれど・・・

 

これだけは言える。

 

「俺は諦めない・・・」

 

「ん?」

 

俺は痛む身体を持ち上げながら、目の前の理不尽に言い放つ。

 

「確かにあなたの言う通りかもしれない・・・弱い人は大切な物を何も守れない・・・けれど!」

 

人の強さはそんな単純なものなんかじゃない!

 

人は其々に自分だけの強さを持っている。

 

もしもその人達が、理不尽に日常を奪われそうになったのなら・・・

 

「俺が守る!」

 

強さの意味は一つじゃない!

 

誰かの力が足りないのなら補えば良いんだ!

 

だから俺はこの力で、理不尽な力から皆の日常を守りたい!!

 

「俺の力は守るための力だ!!!」

 

俺は叫びを上げて、バックルからタッチノートを取り出し、全体図を表示させると、右拳の部分をタッチして再びバックルに差し込んだ。

 

『ポイントチャージ』

 

ベルトから光が発生して、右腕のラインを通じて、拳に光が集約する。

 

「良いだろう・・・その勝負受けて立とう!」

 

俺の様子を見てそう言うと、デビルの右腕にも薄紫色の光が集約していく。

 

俺達は互いに向かい合いながら構えを取る。

 

そして視線が合わさった時、同時に駆け出した。

 

「「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」

 

駆け寄った俺達は互いの右拳振りかざし己の出来る力の全てを叩き込んだ。

 

「「ぐうううううううううう!!!!!!」」

 

俺達の拳は火花を散らし、どちらも引かないという意思表示を相手に見せ付ける。

 

「力だ!!力こそが全てだああああああ!!!!」

 

デビルの力に更なる力が入る。

 

「ぐっ!?」

 

俺の拳が少しずつ押し戻される。

 

「守るための力!?そんなものはただのまやかしだ!!!現に君はその守る者の為に一度私にやられているのだからね!!!!!」

 

更に俺の拳は押し戻される。

 

「・・・確かにそうかも知れないけど・・・守る何かがあるからこそ・・・強くなれる力だってきっとある!!!!!!!」

 

俺は左手でバックルからタッチノートを取り出して、全体図を表示して、身体の四肢にタッチして再び差し込んだ。

 

『ポイントチャージ』

 

『ポイントチャージ』

 

『ポイントチャージ』

 

『ポイントチャージ』

 

俺の四肢に光が集約する。

 

特に右腕は更なる輝きを放ち始める。

 

「うをおおおおおおおお!!!!!!」

 

俺は一気にデビルの拳を押し戻し吹き飛ばす。

 

吹き飛ぶデビルに俺は更なる追い討ちをかける。

 

左の拳を打ち込み、怯んだ所で、左右から連続で蹴りを一発ずつ叩き込む。

 

「ライダーラッシュ!!!」

 

俺は最後に一際大きな輝きを放つ右拳を喰らわせた。

 

その一撃を喰らったデビルも流石に今の一撃には耐えられなかった様で、爆発を引き起こした。

 

爆発の中から出てきたのは右拳ゆっくりと引いていく俺と、地面に横たわる黒澤さんだった。

 

「・・・君の勝ちの様だな・・・」

 

普通ならやられたらその場で気絶する筈なのに、この人は・・・本当に歴戦の戦士なんだな。

 

「最後に一つだけ聞きたい・・・次に目が覚めた時には・・・君の事を・・・忘れているかも知れないからね・・・」

 

「・・・何ですか?」

 

「・・・君が一番守りたいものは・・・何なんだい?」

 

俺が一番守りたいもの・・・

 

「それは・・・絆って奴かもしれません」

 

「・・・絆?」

 

「俺にも上手く言えないんですけど、俺が今日ここで戦ったのは友達の為です。それに・・・」

 

俺の脳裏に浮かぶのは一人の幼馴染の女の子だった。

 

「俺に戦う勇気をくれたのも、大切な友達だったから・・・」

 

世界を守るとか、そんな事は出来ないと思うけど、俺は守りたいと思う・・・

 

せめて俺の大切な何かを・・・

 

「・・・ありがとう・・・そ・・れが・・・君の・・・つ・・よ・・・さ・・・・」

 

黒澤さんはそれだけ言うと深い眠りに着く様に、その意識を手放した。

 

「終わったのか・・・っと」

 

俺は全ての事が終わって力が抜けたのか、崩れ落ちそうになる。

 

『おっと!』

 

しかしそのまま倒れる事は無く、誰かに支えられた。

 

支えてくれたのは、俺と同じ姿をした仮面ライダーだった。

 

「・・・悪いな・・・相棒」

 

『気にするな。良く頑張ったなマスター』

 

メカ犬はそう言うと俺を支え起こした。

 

何とか自分の足で立ちながら俺は確認を取る。

 

「所でお前がこうしてるって事は他のホルダーは?」

 

『うむ。全員倒しておいたから心配するな』

 

メカ犬の答えを聞いた後、あたりを見渡すとあちらこちらに気絶した男達が転がったいた。

 

「・・・流石だな」

 

これで取り敢えず俺達の役目は大体片が着いた。

 

後はTさんがガルドを捕まえれば・・・

 

そこまで考えた所で、Tさんとガルドが乗っている筈の船から爆発が起きる。

 

「な、何だ!?」

 

更に爆発は連続で起こり、俺達が近くに居た場所の船体の一部が吹き飛ぶと、その中から一人の人物が、此方に吹き飛ばされてきた。

 

俺はその人物を咄嗟に受け止めたのだが、その人物は、

 

「Tさん!?」

 

護衛隊の武装とは違う何処かの軍服の様な服を着ており、右手にはSF映画に出てくる様な近未来チックな銃が握られているが、確かにTさんだ。

 

素人目に見た所では、致命傷になりそうな傷は見られないが、それでもボロボロである。

 

「気をつけろ・・・奴は・・・ガルドは・・・狂ってる・・・」

 

Tさんが俺にそう呟いた後に、船体から更なる爆発が起きて、その中から一人の男が出てくる。

 

短い金髪に猛禽類の様な鋭い眼光の男。

 

「ガルド!?」

 

それがこの男の名前であり、この事件の真の黒幕である。

 

ガルドは周りを見回した後に、溜息を一つ吐き俺達を睨み付けてきた。

 

「管理局の犬だけではなく、仮面ライダーまで居たとはな・・・おかげで俺の計画は台無しだ・・・」

 

「計画?」

 

俺の呟きが聴こえたのか、ガルドは語り始める。

 

「シルバーライトの王になる事を皮切りに、島で俺の忠実な兵士を量産して世界を俺の住みやすい世界に変えようと思っていたのに・・・なのにだ!!!管理局も仮面ライダーも俺の邪魔ばかりする!!!!!」

 

怒りの咆哮を上げるガルドから、緑色の光が立ち上る。

 

「メカ犬・・・これってまさか!?」

 

『うむ!どうやらガルドもホルダーだったという事のようだな』

 

つまりガルドの意識は既にホルダーに侵食されていたって事か?

 

緑色の光は更に輝きを増し、そして飛散する。

 

そしてその光の後に居たのは・・・

 

「嘘だろ!?」

 

体長が30mを超える巨大な蟹の様な生物が浮いていたのだ。

 

『どうやら人並み外れた欲望が、ホルダーの姿に多大な影響を及ぼしたようだな・・・』

 

メカ犬が冷静に分析するが、そんな落ち着いている場合じゃないだろ!?

 

蟹の様なホルダーはハサミの中に何かのエネルギーのような物を溜め込み始める。

 

『不味いぞマスター!早く避難しなければ・・・』

 

メカ犬がそこまで行った所で、集められた光が発射されて辺り一帯をを吹き飛ばす。

 

俺達もそれに巻き込まれ、力無く倒れ伏す。

 

もう限界なんて、とっくに超えているのだ。

 

そこにあんな滅茶苦茶な奴なんて反則も良い所である。

 

俺はここまで良くやった。

 

流石にこれ以上は・・・

 

「なにやっとるのじゃああああああ!!!!!!!!」

 

意識を手放そうとしたその時、俺の耳に一人の少女の声が響いた。

 

「・・・エミリー・・・様」

 

チェイサーさんの上に乗った俺の友達のお姫様が俺に叫んでくる。

 

「純は仮面ライダーなんじゃろううううううう!!!!!仮面ライダーはこんな所で諦めてしまう奴なのかああああああああああ!!!!!!!!!!」

 

そうだ・・・

 

思い出した・・・

 

過去に画面越しに見た彼らの事を・・・

 

彼らはどんなにピンチになろうとも諦めなかった・・・

 

ピンチになる度に、自らを奮い立てて最後まで戦い抜いた・・・

 

今の俺に、そんな彼らと同じ名を名乗る資格があるのだろうか・・・

 

俺は確かめるように指を一本ずつ動かしていく・・・

 

大丈夫だ・・・

 

動く・・・

 

・・・俺はまだ戦える!!!!

 

「・・・まだ動けるか・・・相棒?」

 

俺は隣で倒れている仮面ライダーの姿のメカ犬に声を掛ける。

 

『・・・うむ。ワタシは大丈夫だ・・・』

 

メカ犬の方も、何とか動けるらしい。

 

「立つぞ・・・」

 

『うむ・・・』

 

俺達は立ち上がる。

 

満身創痍ではあるが、まだ負けてはいないのだ。

 

たとえ勝ち目が限りなく低くても、勝利を信じて戦い抜く・・・

 

それが・・・

 

仮面ライダーだ!!!

 

『恐らく奴に小手先の攻撃は通用しない・・・最大の一撃で勝負を掛けるぞ!』

 

「ああ!」

 

俺はタッチノートを引き抜く。

 

「ちょっとくすぐったいぞ」

 

俺はそう言いながら、メカ犬に背中を向かせて、ベルトの後ろの溝にタッチノートをスライドさせる。

 

『ロード』

 

音声が流れると同時に、メカ犬の操る分身体の右足に光が集約する。

 

そして俺は再びタッチノートをバックルに差し込む。

 

『アタックチャージ』

 

その音声と同時に俺の右足に光が集約する。

 

俺とメカ犬は視線を交わし同時に構えを取る。

 

「『こいつで決めるぜ!!!』」

 

俺達は同時に飛び上がり、両者の輝く右足をホルダーの一点に向けて最大の一撃を放つ。

 

「『はあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!』」

 

二人の輝く右足が火花を散らしながら、巨大なホルダーの甲羅に少しずつ亀裂をつけて行く。

 

「『いっけえええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!』」

 

俺達の気合の咆哮と共に右足に纏う光は強まり、亀裂は広がり遂には貫き貫通する。

 

その身体を貫かれた巨大ホルダーは、地響きを起こすほどの叫びを上げて爆発を巻き起こした。

 

そして爆発跡地には、気絶したガルドの姿があった。

 

俺は巨大ホルダーの最後を確認した後、バックルからタッチノート引き抜き、右の小さなレバーを引っ張った。

 

『ロードアウト』

 

音声が流れると、隣に居た分身体は消えて、ベルト状態だったメカ犬も元の犬型に変形した。

 

そして俺の全身は光に包まれ仮面ライダーの姿から、元の板橋純の姿に戻る。

 

「終わったな・・・今度こそ」

 

俺はそれだけ言うと地面に大の字でぶっ倒れた。

 

流石に限界である。

 

もう指一本動かせそうに無い・・・

 

『本当に良くやったなマスター』

 

隣に居たメカ犬が俺に話しかけてきた。

 

俺は大の字で夜空を見ながら短く返事を返す。

 

「ああ・・・」

 

こうして夏休みが明けて、初めてのホルダー事件は無事に幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

○エピローグ

 

 

あの日から二週間という時間はあっという間に過ぎていった。

 

平凡な日常だったかと聞かれると、答えに苦しむ部分もあるが、それでも楽しい毎日を過ごすことが出来た事だけは確かである。

 

エミリー様は約束通り、次の日からもなのはちゃん達とお昼にはお弁当を食べ、休日にははやてちゃんも一緒になって海鳴市の色んな場所に遊びに行った。

 

他にもクラスに仲の良い友達が出来たようで、俺は本当にこのお姫様の日常を守る事が出来たんだなと実感できた。

 

ただその楽しかった日々も今日で一旦終わりを迎える事となる。

 

「皆・・・我を送り出してくれて本当に感謝するのじゃ」

 

俺達は現在飛行場に来ている。

 

昨日をもって、エミリー様の留学期間は終わり、これから国へ帰らなければ行けないのだ。

 

「またきっと会えるよね」

 

「今度は私たちが遊びに行ってあげるわよ」

 

「休みの日にしか、あんまり遊ばれへんかったけど、私たちは友達やで」

 

「絶対にまた会えるよ!エミリーちゃん!!」

 

俺達はエミリー様を見送る為に皆でここに来たのである。

 

ここまで車で乗せてきてくれた恵理さんには素直に感謝している。

 

その恵理さんは、子供達とは別にサバスチャンと別れの挨拶を交わしているのだが。

 

あ!

 

何かサバスチャンが叩かれた。

 

一体どういう関係なんだろうかあの二人は?

 

そして俺はと言うと・・・

 

「もう怪我の具合は良いんですかTさん?」

 

「ああ、何時までも寝てる訳には行かないしね」

 

最後にガルドを無力化した後、Tさんの仲間だという女性が現れて、ガルドの身柄を拘束していったけど、大丈夫なんだろうか?

 

「あの・・・ガルドはあの後どうなったんですか?」

 

「ガルドは昨日まで、この街で拘束していたけど、漸く組織のメンバーがやってきて然るべき場所に送られたよ」

 

「そうですか・・・」

 

ガルドの所在は分かったのだが、黒澤さんの姿は、俺の身体が動くようになった時には船着場から煙の様に消えてしまっていた・・・

 

黒澤さんは執拗なまでに力に固着していたけど・・・

 

もしかしたらあの人にも、何か守りたい大切な何かがあったのだろうか・・・

 

「板橋君には本当に感謝しているよ」

 

「Tさんはこれからどうするんですか?」

 

潜入調査で護衛隊に入隊していたって事は、このまま例の組織に帰るのだろうか。

 

「後片付けがあるからね。シルバーライト島でそっちの件を早く終わらせて、知り合いに預けている妹を迎えに行くよ」

 

「妹がいるんですか?」

 

「ああ、可愛い盛りでね。何時か板橋君にも会わせてあげるよ」

 

Tさんは爽やかな笑顔を見せる。

 

「楽しみにしてます」

 

俺がTさんと会話をしていると、

 

「お~い純!!!!!何時までTと話しておるのじゃ!!!我にも挨拶をせんか!!!!!」

 

エミリー様からのお呼び出しが掛かった。

 

「ご指名みたいだよ?ヒーロー君」

 

Tさんが茶化しながら言ってくる。

 

「そうみたいですね・・・それじゃあお元気で」

 

「うん」

 

俺は短くではあるがTさんに別れの挨拶をした後に、エミリー様の元に走る。

 

「ごめんね。待たせちゃったみたいで」

 

「全くその通りじゃ!純とはもっと話したい事があったと言うに、もう殆ど時間が無いではないか!!!」

 

「本当にごめん」

 

確かに殆ど時間は無いようで、サバスチャンもTさんも別れの挨拶を済ませてエミリー様を遠くで待っているようだ。

 

「仕方ないのう~」

 

エミリー様は溜息を一つ吐くと、真剣な眼差しで俺を見た。

 

「ありがとうなのじゃ」

 

真剣な表情から出てきた言葉は、お礼の言葉だった。

 

「純のおかげで我は幾つものかけがえの無い物を守る事が出来た・・・何度礼を言っても言い足りぬ」

 

「いや、その日にお礼は何度も聞いたから、今更改まって言わなくても・・・」

 

「それでの・・・このままでは我の気が済まぬから、純には我の大切な物を進呈しようと思うのじゃ・・・」

 

エミリー様はそう言うと俺に一歩近づいてくる。

 

「いや、何かくれるってのは嬉しいんだけど、そんなに大切なものなら受け取れないよ!?」

 

仮に幾つもある物だったとしても、高価なものだったら、逆に萎縮してしまいそうである。

 

「大丈夫じゃ。荷物にもならぬし、一度誰かにやれば奪われる心配も無いものじゃ」

 

エミリー様はそう言ってまた一歩近づいてくる。

 

「だから遠慮無く受け取るのじゃ」

 

そう言って近づいてきたエミリー様の姿は遂に俺の視界から完全に消えてしまう。

 

代わりに俺の唇に、何か柔らかい感触が生まれる。

 

時間にすれば数秒の事だったのだが、その時間はやけに長く感じられた。

 

唇に感じていた感触が無くなると同時に、再びエミリー様の表情が視界に入る。

 

「え、エミリー・・・様」

 

目の前に居るお姫様は頬を桜色に染めながら、

 

「我が純に送るプレゼントは・・・忘れられない思い出じゃ!」

 

そう言うとエミリー様は走り出していった。

 

そしてサバスチャン達の傍に着いてから一度だけ振り向き、

 

「もう様は付けなくて良いからのー!!!」

 

それだけ言うとエミリーさ・・・エミリーちゃんはターミナルの奥へと二人を引き連れて去っていった。

 

俺が手を振り見送っていると・・・

 

「はっ!?」

 

後ろから凄まじい殺気を感じた。

 

後ろを振り向くと、なのはちゃん達四人が俺に殺気を放ちながら、笑顔を貼り付けていた。

 

「ど、どうしたの皆?」

 

「・・・ねえ純君」

 

代表してなのかなのはちゃんが俺に声を掛けてきた

 

「な、何かな?」

 

俺が聞き返すと今度は四人で・・・

 

「「「「ちょっとお話しよっか?」」」」

 

俺は言い知れぬ恐怖を感じて、全速力で走り出した。

 

俺は生存本能に従い、全力全開で走り続ける。

 

何か後ろからかなりの罵詈雑言の嵐が聞こえて来るが、一体何が彼女達の怒りの琴線に触れたのだろうか?

 

俺は全力で思考を巡らせて一つの結論に辿り着く。

 

まさかなのはちゃん達!!!!

 

ユ○なのか!?

 

そうなのか!?

 

確かにはやてちゃん辺りは怪しいなと思う事が多々あるけど!?

 

そう言えばエミリーちゃんは将来お姉さまって素で言われそうなタイプだったからな~。

 

俺が一人納得しながら走っているとタッチノートから、

 

[『マスター!街でホルダーが暴れているぞ!直ぐに来てくれ!』]

 

メカ犬の通信が入ってきた。

 

ただでさえ今は忙しいっていうのに・・・騒動ってのは連続で起こるものなのだろうか!?

 

 

 

 

今日の海鳴は、そんなに平和じゃないが、海の向こうの友達が居る国はとても平和だ。

 

 

 

                                         完

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