魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~ 作:G-3X
長く続いてきた戦記偏ですが、やっと終わりが見えてきました。
「これが、この世界に送り込まれたコアって訳か」
目の前の巨大な黒い球体を前に、周囲のライオトルーパーを蹴散らして、俺の近くへとやって来たディケイドが呟く。
「あの黒いのを壊しちゃえば良いんだよね?」
続いて、同じ様にライオトルーパーをガンモードのデンガッシャーで撃ち抜きながら、電王も横に並びコアを指で示す。
「……その通り、と言いたいですけど」
俺は電王、正確に言うのならば、リュウくんの言葉に、返事を濁してしまう。
それというのも、最終的にはそれしか方法が無いのだが、今までの経験則からコアを壊せば、残ったエネルギーが暴走を引き起こして、残留したエネルギーが続く限り、制御の利かない怪物を生み出し続けるという副産物がオプションで付いてくる事が、確定している。
それを思うと、あのコアを壊す事に、多少の躊躇を覚えてしまうのも、致し方ないだろう。
「あれを壊すと、後が大変なんだよ。リュウタロス」
俺が目の前のコアについて考えていると、今度は電王から良太郎君の、何処か疲れ気味な声が聞こえてきた。
良太郎君は俺と同じく、コアの暴走を何度も目にしているので、今の心境はきっと俺と同じと言えるだろう。
あの暴走を何度も目にしていれば、それだけで疲れた声が出てしまうのにも納得出来るというものだ。
「後が大変だとしても、あれを壊す事には変わりないんだろう?」
今までの俺達のやり取りを見ていたウィザードが、そう言いつつ持っていたソード状態の武器を、今度は銃の形に変形させ、その銃口をコアへと向ける。
『うむ。どちらにしてもワタシ達がコアの活動を完全に止めるには、こうするしかないのだからな。ただ早いか遅いかの問題だぞマスター』
「……ああ。確かにそうだな」
ウィザードに続き、メカ犬にも早くコアを壊す事を進められ、俺は考えを改める。
コアを破壊した際に生じる副次的な戦いは、面倒だとしか言えないのは今も変わらないが、確かにこのままにおして放って置くというのは不毛であり、破壊しない限りはコアの制御をディアスが維持し続けるという事なので、何をしでかしてくるのか分からない。
それを考えると、やはりここでコアは破壊しておくべきなのだろう。
意見が纏まったところで、ウィザードが、銃の引き金に掛けた指に力を入れる。
だが、ここでコアが予想外の動きを見せたのである。
「お前達が仮面ライダーか?」
この場に、新たな人物が現れて、俺達に話し掛けてきたという訳ではない。
だからと言って、俺を含む知っている誰かの声という訳では無かった。
ただ、その声が現時点で誰のものなのかは兎も角として、何処から聞こえて来たのかは、全員が理解していた……。
その声は、目の前にある黒い球体、コアから聞こえて来たのだと。
「コアって喋るのか?」
「いいえ。俺もこんな事は初めてです」
引き金に掛ける指はそのままに質問をしてきたウィザードに対して、俺は首を横に振りながら返答する。
今までは、無言を貫いていたし、コアを宿していた相手も目的意識がある事は分かったが、それは命令を与えられて、その通りに動く機械的なものという印象であり、個人的な意識を持って動いているとは、到底考えられなかった。
その考えは、今だって変わってはいない。
だとすれば、他に考えられる理由は……。
「大体分かった。お前がディアスだな?」
俺が行き着いた一つの考えを口にするよりも早く、ディケイドがそう宣言する。
その宣言は、俺の行き着いた考えと同じだった。
「……こうして話すのは初めてだったな。其処のライダーの言う通り、俺がディアスだ」
更に返された言葉によって、この声の主がディアスであるという事が確定する。
そうと分かったからこそ、俺は一番にこれだけは聞かなければならないと思い、口を開く。
「どうして……どうしてこんな事を?」
主語も何もない。
ただ憤りだけしか感じられない、咄嗟に口から出た言葉ではあったが、どうやらディアスには正しく伝わったらしい。
「これは、今ある全ての世界への復讐だ」
「復讐だと?」
「俺はこの世界の存在を許しはしない。こんな醜く脆い世界の為に、尊い者を犠牲とする世界が正しい等と誰が思うものか」
静かと淡々に話すその口調とは裏腹に、コアから聞こえるディアスの声には、その顔は見えなくとも、明確な怒りという感情が見える。
それも尋常ではない程の、個人に向けてではなく、世界全てに殺意を向けるという途轍もない狂気を内包する声。
今までの戦いで、幾つもの殺意を向けられて来た事はあったが、それとは似て違う……何か異質なものを感じるが、その正体までもは分からない。
ただ一つだけ分かっているのは、俺から見たディアスという存在は既に人としての何かが狂っているのだという、ただそれだけの事だけ。
しかし逆に考えれば、それだけでも警戒するには値するという事だ。
まあ、元から全ての世界を破壊する等という、本来ならば荒唐無稽な話を現実としてしまえる様な相手に対して気を抜くなんて事態は有り得ないが。
「さて、これまで俺が世界に放って来たライダーの諸君と話すに辺り、まずは感謝の言葉を送るとしようか。俺は君達ライダーに感謝している」
『感謝だと? 今までワタシ達は散々にディアスとやらの邪魔をし続けてきた筈だがな。恨まれる理由はあっても、感謝をされる理由は無いだろう?』
警戒を強める俺達に対して、何故か感謝の言葉を述べるディアス。
その言葉にメカ犬は、俺達を代表して、素直に感じた疑問を皮肉気に投げ掛けた。
「……ふふ。ふはははははは!」
少しの間を置き、質問を投げ掛けられたディアスが、楽しそうに笑い声を上げる。
心の底から楽しそうに笑うディアスであったが、俺達の立場としては、その様子に薄気味悪い寒気すら感じてしまう。
「……はは。いや、悪かったな。だが分かって欲しい。君達ライダーには、本当に感謝している。何せ俺の悲願を達成出来るのは、ライダーである君達が俺の思惑通りに動いてくれたのだからな」
「俺達が、思惑通りに動いていただと?」
「何を言ってんの? この黒い奴」
まるで手品の種明かしをするマジシャンの様に語りだすディアスに、ディケイドと電王も、疑問を口にせずにはいられないらしい。
その気持ちは俺やメカ犬も同じだし、黙ってディアスの次の言葉を待つウィザードだって同じだろう。
「俺の悲願を達成するには、少なくとも、四つの楔を覚醒させる必要があった。覚醒には大きなエネルギーが必要でな。お前達ライダーが俺の操るコアと戦う事によって発散された大量のエネルギーは、充分な量となり、全ての楔を覚醒させる事に成功した。改めて言おう、本当に君達の働きには、心から感謝している」
「ちょっと待て! 地球の本棚によると、全ての楔を破壊すると世界が崩壊するという事だった筈だぞ。どうして楔を覚醒させる事がディアスの目的に繋がるんだ!?」
ディアスが語る理由を聞いても、それでも納得のいかない俺は、半ば叫ぶ様に更なる疑問をぶつける。
まだ姿さえ見た事の無い相手を、信用する訳ではないが、その口振りからディアスが嘘を着いている様には思えない。
しかし俺には、地球の本棚に記された情報が間違いだとも思えないのだ。
仮にディアスが、フィリップ君と同様に地球の本棚にアクセスする能力を持っていたとしよう。
だが、それで閲覧をする事が出来たとして、その情報を意図的に改竄が出来るとは考え難い。
あれは、あくまで膨大な情報を検索、閲覧する場所で、人の力でどうこう出来はしない筈だ。
まあ、本棚自体が全てに対して万能とは言えないので、絶対とは言えないが、幾らディアスが特別に大きな力を持っていたとしても、地球の本棚にセキュリティーを置くのが限界だろう。
だがそうだとすれば、フィリップ君が気付かないとは思えない。
それに、もしもそんな事が出来るならば、こんな回りくどい事をしないで、力で捻じ伏せるだろう。
だがそうすると、後はフィリップ君が俺達に対して、嘘を付いていたという位しか思い浮かばないが、それこそ無いとしか言い様が無い。
誰も嘘を言っていなければ、全てが真実……そんな事がはたして有り得るのだろうか?
「戦いに多く貢献してくれた礼に、特別に教えよう。 確かに君達が道標としていた地球の本棚の情報は間違い無く真実だ。だが、真実の裏にこそ更なる本当の真実が隠れている。確かに全ての楔を破壊すれば世界は解れ、崩壊するだろうな。だが時結びの鎖は過去から未来に掛けて無限に存在している。そんな物を全て壊す事を現実に出来ると本気で思っているのか?」
「……それじゃあ、本当の狙いは、楔を破壊して世界の崩壊を誘発させる事じゃなくて、俺達を利用して四つの楔を覚醒させる事だったっていうのか!?」
「ふふふ……わざとターミナルに情報を流した後は、勝手にそちらが勘違いをしてくれたからな。中々に見ていて滑稽だったぞ。それに全てが嘘という訳では無いさ。過去から未来へと続く世界の全てを破壊するという点に置いては、本当なのだからな。ただし、手順がもっと効率的だというだけの話だ」
つまり、俺達はずっとディアスの掌の上で、踊らされていたという訳か。
だけど……いや、だからこそ理解出来ない事がある。
「どうして今、このタイミングで俺達にそれを教えるんだ?」
「単純な話さ。もう君達ライダーの利用価値が無くなったからだ」
俺の質問に簡単に答えるディアス。
だが、気軽に語る口調とは裏腹に、その台詞の内容は物騒としか言い様が無い。
「だからライダー諸君には、ここで退場して貰おう」
ディアスの、その言葉が合図だった。
先程までディアスの声を発し続けていた黒いコアの形状が、人間を模した形へと変化していく。
だが、その変化はただの始まりでは無かった。
空中にジッパーとしか表現出来ない物が突如として出現し、そのジッパーが開くとその内側の空間から、鋼で出来た黒色の、大の大人の上半身を丸々覆い込みそうな程はある、巨大なオレンジとしか言えない奇妙な物体がゆっくりと落ちて来たのだ。
更にその黒いオレンジは、人型へと形状を変えていく黒いコアの上にすっぽりと納まってしまったのである。
しかもそのオレンジは続け様に形状を変えていく。
その姿はまるで、戦国の世に多く見れたであろう鎧武者である。
「あれは……黒い色をした鎧武か?」
突如としてコアが変化を果たした鎧武者を見て、ウィザードが呟く。
「晴人さんは、あの鎧武者の事を知ってるんですか?」
「まあ、本人じゃないのは分かってるんだけどな、知り合いのライダーにあれとそっくりな奴に変身する知り合いが居るんだよ。あんな全身が真っ黒な訳じゃないけどな」
なるほど。
その知り合いが変身するのが、さっき呟いていた鎧武という、俺の知らないライダーな訳か。
ならば差し詰め、あの黒い鎧武者を便宜上で名付けるとしたら、ダーク鎧武とでもしておくべきだろう。
『来るぞ!』
俺の耳に響く、メカ犬の叫び。
それと同時に、腰に差された二振りの刀を手に、ダーク鎧武が俺達に遅い掛かる。
しかし、敵の攻撃はそれだけで終わりでは無かった。
更に空中に幾つも浮かぶ、無数のチャック。
それが続々と開き、中からこれまた俺が見た事も無い怪物達が、雨の様に降り注ぐ。
形状としては少しワームに近い、丸みを帯びた形状の鼠色をした怪物達。
流れとしては、コアの暴走の際と似ている気がするが、明らかに違う点が幾つもある。
まず第一に、まだ俺達はコアを破壊出来ては居ない。
そして、空中に出来たジッパーの中から出現する怪物達は、未だ終わりが見えない様に思える。
「くっ!?」
ダーク鎧武の攻撃を何とか避けながら、改めて俺は戦況を見るが、続け様の戦闘の疲労から考えても、今の戦力で、この広場を覆い尽くすまでの数の敵をどうにかするには、厳しい気がしてならない。
「……それでも、何とかしなくちゃならないんだけどさ!」
ディアスの話によって受けたショックと、この状況から弱気になりそうな心を、空元気としか言えない言葉で奮い立たせ、俺は残りの力の全てを、目の前のダーク鎧武にぶつけようとしたが、俺の拳がダーク鎧武に届くよりも先に、火花が足下へと散り、若干の距離が出来る。
「残りの体力は、ディアスを倒す為に取って置きたまえよ。少年君」
俺をこんな風に呼ぶのは、知っている限り一人しか居ない。
まさかと思い、声のした方向よりも先に、広場の中央に置いた椅子へ視線を向けるが、その椅子の上には、居るべき人物は座っておらず、役目を終えたロープが静かに鎮座するだけだった。
ならば、もうこの声の人物は確定と言える。
「……しっかりと縛っておいた筈なんですけどね」
「これでも僕は、狙ったお宝は逃がさない、トレジャーハンターだからね。縄抜けくらいはお手のものさ」
俺の皮肉にも、声の人物は軽く答える。
どうしてこの人は……横に並ぶディエンドは、何時も最後はこんなにも頼もしく見えてしまうのだろうか。