魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~ 作:G-3X
ではでは。
「やはりここまで追って来たか。歓迎するぞ仮面ライダー」
黒いローブを羽織った男は、大樹から俺と鎧武の方へと振り向き、開口一番にそう告げた。
目深に羽織ったローブで、顔こそは見えないが、その台詞とは裏腹に、全身から殺気が漲っている事は分かる。
「あんたが純の言っていたディアスか?」
「俺がディアスだと言えばそうだ。しかし違うと答えれば、違うかもしれない。それよりも君が本物の鎧武か。君の写し身には世話になったからな、シードと共に全ての世界を終わらせる終幕への立会人として、歓迎しよう」
鎧武の言葉に、黒いローブを着た男が大仰な身振りをしながら返す。
だがそれよりも、この男は幾つか気になる事を言っていた。
その中でも、気になる事が一つ。
「それはあんたの言葉遊びか?」
もしもそうじゃないとしたら……。
「言葉遊びか。確かにそうかも知れないな。しかし俺は嘘というものが嫌いでね。だから君達を騙してはしても、嘘の情報を流しはしなかっただろう?」
まるで芝居がかった言い方ではあるが、その中に一つだけ情報があった。
嘘を言っていないというのは、ただの方便なのかもしれない。
だが、こんな大それた事を行う力があるにも関わらず、今までの戦いでも何処か回りくどさを感じてはいた事から、奴は何かしらの制約を己か、この計画そのものに掛けているのではと思えてしまう。
『お前は……』
ベルト状態となっているメカ犬が、小さな声で呟く。
後半は何を言っているのか、シードに変身している俺でさえ聞き取れない程に、小さな声ではあったが、それでも何となくだが、言いたい事は理解出来た。
しかし、それを言葉にすべきなのか、という躊躇いが俺の中にある。
だからこそ、メカ犬も、声に出す事を躊躇ったのだろう。
「四つの世界の楔が覚醒した事によって発生された巨大なエネルギー。それをこのヘルヘイムの木に蓄積する事によって、特別な果実を宿す。本来であれば人が手にする事も叶わぬ、強大な力が秘めたその果実があれば、全ての世界を破壊する事も容易い」
ローブの男がそう言うと同時に、周囲に突風が巻き起こり、気付けば先程まで木の根元に居た筈のローブの男は、光輝く果実を実らせた枝の隣に浮いている。
その光景は、ヘルヘイムの森に来てからネックレスを通して見た、光景と瓜二つだった。
本能から訴えかける危機感。
しかしそれと同時に、俺は一つの矛盾に気付く。
ネックレスを通じて、見た光景はディアスが過去に辿った記憶の筈だ。
つまり、ディアスは一度、あの果実を手にしているという事になる。
ならどうして、同じ事を繰り返すのか?
まだ、俺の知らない事実が、其処にあるのかも知れない。
でも今は、そんな考察をしている場合じゃないんだ。
あの果実を、使われたら全てが終わってしまうかもしれない。
「さあ、そろそろ始めようか! 世界の終幕を飾るプロローグを!」
だが現実は無情だ、俺達が止める間も無く、果実はローブの男によって、枝から毟り取られてしまう。
でも、まだ全てが終わった訳じゃない。
『あの果実を使われる前に、攻撃を仕掛けるぞ!』
メカ犬に言われるまでも無く、俺と鎧武はローブの男に向かって攻撃を仕掛ける。
まずは俺が先行して、スピードフォルムの身軽さを活かして、木へと飛び上がり手に持っていたスピードロッドをフードの男に向け、投げつけた。
『ジンバーレモン』
その間に後ろから、音声が聞こえるが、今は後ろに注意を割いている暇は無い。
俺の投げ放ったスピードロッドは、目測を誤る事無く、フードの男に向かって飛んでいくが、果実を持っている手とは反対の手を翳すと、またしても突風が起こり、明後日の軌道へと逸らされてしまう。
「まだだ!」
しかし投げ放ったスピードロッドが、当たらない事は、最初から想定内。
俺達が攻撃に移るまでと、果実を使わせないだけの僅かな時間が稼げればそれで良い。
俺はそのままの勢いで、特攻を仕掛ける。
「くっ!?」
だがその捨て身の特攻すらも、この不可視の風で、押し返されてしまう。
「任せろ!」
しかし戦っているのは俺だけじゃない。
突風で身体をとばされながらも、俺は後ろから聞こえる心強い声に反応して、何とか体勢を整える。
そんな俺の横を、黄色い光の矢が通過して、ローブの男へと迫っていく。
流石にあの光の矢までは、突風で軌道を逸らす事は出来なかったらしく、確かにフードを突き破った。
だが、突き破ったのは黒いローブのみ。
本命である筈の中身は何処にも無く、矢の一撃を受けて、風穴の空いたローブ。
「外したみたいだな」
何とか無事に着地した俺の横に、鎧武がそう悔しそうに言いながら、近づいて来た。
「そうみたいですね」
俺はそう言いながら、視線を主の居を失ったローブから、鎧武に移す。
改めて見ると、鎧武の姿が先程のものから変わっていた。
具体的に言うと、まるで陣羽織の様な黒を貴重としたレモン柄のプロテクターを上から装着した感じで、更に手には赤いメカニカルな弓を持っている。
きっと先程の光の矢を放ったのも、あの弓なのだろう。
「元気で何よりだ」
それは意識の外側。
俺達の背後から、聞こえる声。
振り向けば其処に居たのは、何処か見覚えのある男の顔。
それもその筈だ。
年齢こそは違うが、俺が最初にネックレスを通して見た少年とだぶる。
もしもあの時の少年が、あのまま成長して大人となったのだとしたら、今の様な顔立ちに成長しているかもしれない。
「……ディアス」
思わず呟く俺に対して、目の前の男は、口の両端を吊り上げる。
「さっきも言っただろう。俺はディアスだと言えばディアスで違うと言えばディアスじゃないってさ」
まただ。
何なんだ、さっきもした、この言葉遊びみたいなやり取りは?
ネックレスを通じて見た事で知った、過去に手に入れている筈の果実。
それをもう一度手に入れようとする矛盾した行動と、要領を得ない言葉遊びの様にも思える台詞。
この森に来てから、もしかしたらと思っていた。
それはきっと、メカ犬も気付いていただろう。
「……あんたは誰だ?」
俺は意を決して、この謎の真実を知る為に、可能性を口にした。
「な、何を言ってるんだよ!?」
唐突に言った俺の台詞に、鎧武は困惑しているが、それも仕方ないだろう。
俺だって、今まで目の前に居る、この男が黒幕であるディアスだと、信じて疑っては居なかった。
だけど、それじゃ過去から今へと続く道筋が成り立たない。
どうして、一度は手に入れたものを、もう一度求めたのか?
ただ単に必要だったからなのかも知れないが、あの言動に嘘が無いのだとしたら、答えは一つ。
「紘汰さん。俺達の前に居る男は、確かに今回の件の黒幕です。だけどあの男は、時守の番人ディアスじゃない!」
紘汰さんの疑問に俺は、キッパリと断言する。
「君が違うと言うならば、俺はディアスではないな。だがそれは少しだけ違う。やっぱり俺はディアスでもあるんだからさ」
俺の断言を肯定しながら、もう一方ではその言葉を否定する。
「あー! もー! 意味がわかんねえ!」
ディアスでは無く、だけどディアスでもあるという、矛盾のやり取りが続き、ついに鎧武が叫びながら、頭を掻き毟った。
「こ、紘汰さん!? 大丈夫ですか?」
「あ、ああ。良くは分からないけど、ようはあの男の持ってる果実を取り上げれば良いんだよな!」
どうやら、深く考える事は諦めたらしいが、鎧武のシンプルなその答えは、間違ってはいない。
「ハハ! 乱暴な意見だが、それも真理だな。その考え方は俺も嫌いじゃない」
意外な事に、鎧武の考え方に、男が同意の意思を示す。
「……良いだろう! このまま全てを終わらせるのは興醒めだと思っていたしな。一つゲームをしようか」
『ゲームだと?』
そして、更に意外な展開は続く。
何と、明らかに優位な立場になっている筈なのに、俺達にチャンスを与えようと言うのである。
「どういうつもりだ?」
「ハハハ! ただ余興のゲームに付き合ってくれと言っているだけさ。それに何も出来ずに、世界が終わるというのも、君達ライダーも納得出来ないだろう」
果実を手に入れたという事から来る余裕なのか、それともまだ何か企みがあるのか。
どちらにしても、俺達にとっては願ってもないチャンスだ。
「ルールは簡単だ。俺と戦って勝てば良い。シンプルで分かり易いだろう? 勝者への景品はこの果実」
男はあまりにもシンプルな戦いという名のゲームのルールを告げると、果実を懐にしまい、優雅に佇む。
『来るぞ二人とも!』
メカ犬の注意を促す声に、俺と鎧武は頷きながら、身構える。
「……変身」
男は静かに呟く。
次の瞬間、男の全身は光に包まれて、その姿を人の姿から異形へと変えていく。
「そ、その姿は!?」
俺は男の変化した姿に驚き、思わず声を上げる。
全体的に緑の生物的な表皮と、赤く鋭い小さめの二つの複眼。
その姿は、俺の記憶にある姿そのものだった。
「あの姿は……アナザーアギトか」
アナザーアギトは、仮面ライダーアギトの劇中で登場したもう一人のアギトである。
どうしてこの男が、アナザーアギトに変身出来たのかは理解出来ないが、今までのコアを思えば、そのコアを作り出した本人が、ライダーに変身出来ないとは言えない。
「さあ、ゲーム開始だ!」
アナザーアギトはそう言い放ち、俺達に襲い掛かってくる。
「ふんっ!」
「くっ!」
飛び込み様に振るわれるアナザーアギトの拳と蹴りの連続に対して、俺と鎧武は咄嗟に迎撃体勢を整える。
叩き込まれる一撃は、かなり重い。
そして、動きもコア以上に戦い慣れていると分かる程の、熟練振りだ。
幾ら二人掛りだとしても、少しでも油断すれば、一気に戦いの流れすらも持って行かれてしまいそうである。
このアナザーアギトに変身した男は、本当は何者なのか。
それも確かに気にはなるが、今はそんな事を追及している暇は無い。
「せっかくのゲームなんだ! もっと俺を楽しませてくれ!」
俺と鎧武に攻撃を仕掛けつつ、アナザーアギトは、笑いながら防戦を強いられている俺達を挑発してくる。
その様子は狂喜に支配されている、とでも言うべき危うさすら感じさせた。
「このまま好きにさせるかぁ!」
だが、ここで防戦一方のままで終わる俺達では無い。
鎧武が叫ぶと同時に、持っていた弓を使い、アナザーアギトを押し返す。
「今なら!」
俺もその瞬間に自由になった僅かな時間を逃さず、ベルトの右側をスライドさせて、青いボタンと黄色のボタンを連続で押していく。
『サーチフォルム』
『サーチバレット』
音声が響くと同時に、ライトグリーンのボディーは、澄み渡る青空の如き、スカイブルーへと変わり、その右手には生成されたこのサーチフォルムの専用武器である銃、サーチバレットを握り、躊躇無く銃口をアナザーアギトへと向けて引き金を引いた。
発射された光弾が、鎧武が押し退けた事で、後ろへと下がるアナザーアギトに当たる事で火花を上げ、更に後ろへと後退させる。
鎧武の攻撃が、俺が反撃をする時間を作り出し、更に俺のサーチバレットの銃撃によって作り出した新たな時間が、今度は鎧武が反撃へと転じる時間を作り出す。
『カチドキアームズ』
その耳に響く音声と共に、目線を鎧武に向けると、最初のオレンジロックシードを使った時よりも仰々しいオレンジの甲冑を纏い、その音声にの続きも、いざ出陣! エイエイオー! と、かなり気合の入った台詞が流れる。
だがそれ以上に印象的なのは、背中に差された二本の大きな旗。
かつて、太鼓の鉢を背中に装着したライダーは見た事があっても、流石に旗を装着したライダーは見た事が無い。
「はああああああっ!」
あまりの見た目のインパクトに、俺が場違いな事を考えている間、鎧武は背中の装着した二本の旗を抜き放ち、それを武器にして、アナザーアギトへと猛攻を仕掛けていく。
俺もそれを黙って見ている訳にはいかない。
もう一度ベルトの右側をスライドさせて、今度は黒いボタンと、黄色のボタンを連続で押す。
『ベーシックフォルム』
『ベーシックファントム』
サーチフォルムから、メタルブラックのボディーとなるベーシックフォルムになると同時に、ベーシックファントムでメカ犬が操る分身体を作り出し、俺はその分身と共に、鎧武の横を駆け抜けていく。
「紘汰さん!」
「応!」
駆け抜け際に俺が声を掛けると、鎧武が短くその声に答えを返して、持っていた旗を手放す。
俺と分身体は駆け抜ける間際に、鎧武が手放した旗をリレーのバトンを受け取るかの様に握り締めて、更なる追撃をアナザーアギトへと仕掛けた。