魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~   作:G-3X

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少し間を置いてしまいましたが、後編を更新致します。

今回も楽しんでいただけたら、嬉しい限りです。

そして読者様の参加イベントも、多くの募集を頂き、ありがとうございます。

最終日にかなりの数の投稿がありましたので、お返事をするのにもう少々のお時間が掛かるかと思いますが、実際にその番外のお話を投稿するのは、秋頃を予定しております。

当選者の発表は次回になるかと思います。

メッセージで送っていただいた皆様全員にお返事をしたいところではありますが、数が多く難しいので、この場で改めて、多くのお便りを、お送り頂きありがとうございますと言わせていただきます。

ではでは。


第49話 正義の味方? を捕まえろ!【後編】

「本当にこの作戦で、大丈夫なのか……」

 

『そうは言うが、何もしないよりは可能性がある分、まだましというものだろう』

 

俺の言葉に対して、メカ犬が前向きな姿勢の答えを返す。

 

まあ、何もしなければ、可能性はゼロな訳で、それを思えば何かしらの行動に移すというのは、それだけで限りなくゼロに近い可能性に変わりは無いとしても、少しは高くなるというものだろう。

 

「この作戦は僕も心配だけど、取り敢えず今は見守ってみようよ」

 

更に長谷川さん……いや、今の姿はメタルイエローのボディーが特徴的なE2が、俺とメカ犬の話を聞いて、意見を口にする。

 

かく言う俺も、今の姿はメカ犬がベルト状態で腹部に巻き付き、メタルブラックボディー、つまり、シードに変身している状態だ。

 

その上で、俺とE2は警察署の玄関先が見える、電柱の裏に隠れて、様子を覗っていた。

 

先程、愚痴を零してしまった俺ではあったが、良く考えてみればまだ俺達はマシな役目を貰った方だと言えるかも知れない。

 

本当に辛い立場にあるのは、恵理さんが考えた作戦の実行部隊に選ばれた彼、彼女達の事なのだろう。

 

俺はそっと、警察署の玄関で作戦を実行している皆に、視線を送る。

 

「はっはっはっ! この子供達を無事に返して欲しければ、えっと……お、お金とかいっぱい用意するんだな!」

 

「き、きゃー助けてー」

 

「誰かー正義の味方がー来てくれればー」

 

見ていて、その努力に涙が零れそうになる。

 

恵理さんの考えた作戦とは、怪物が確実に現れる場所である、この警察署の前で囮作戦を展開しようというものだった。

 

キャスティングを順番に紹介すると、まず悪役に鳥羽さん。

 

その人質役が、アリシアちゃんと姫路ちゃんである。

 

当然ながら恵理さんは監督と演出を担当しているので、恵美さんと一緒に署内から指示を送っているので、この場には居ない。

 

なので、鳥羽さん達の耳には、恵美さんの私物から借りた小型の通信用インカムが装着されている。

 

現場の状況も、E2の仮面の小型カメラによって、リアルタイムで視聴されているので、無駄に準備は万端だと言えるだろう。

 

しかし、これで本当に怪物の興味を惹けるのかというのは、別問題だ。

 

鳥羽さん達の精一杯の犠牲……じゃなかった、努力は認めるのだが、あまりにも露骨過ぎるというのは、誰でも分かる。

 

そもそも本当の犯罪者が、好んで天敵である警察官の本拠地の一つである、警察署の前で犯罪に走るのは皆無であるし、行き来する警察の人達も、鳥羽さん達の傍を通り過ぎる度に、笑顔で会釈をしたりと、全てがグダグダとなっていた。

 

「早く要求を呑まないとこうだ!」

 

「きゃあー」

 

「わー」

 

しかも、鳥羽さんは鳥羽さんで、途中から演技をする気すら無くしたのか、アリシアちゃんを肩車した上で、姫路ちゃんの両腕を掴んでの低速ジャイアントスイングと、人間アスレチック状態である。

 

遊んで貰っている二人も、とても楽しそうで何よりだ。

 

この状況で、作戦が成功すると考える方が、無理というものだろう。

 

でも、俺のそんな予想に反して、事態は新たな進展を見せる事となる。

 

「其処までだ悪党め! この俺が居る限り、全ての悪は許さないぞ!」

 

場違いに気合の入った怒声が響く。

 

その声の方に視線を移すと、簀巻きにされた男を横に置き、仁王立ちして鳥羽さんに指を示す、異形の姿。

 

異形の姿は、明るい黄緑の表皮を持っており、口元は動かないが、人の唇に形状と近く、その瞳は赤い二つの大きな複眼それは一見すると、元が飛蝗を模していると分かるせいか、昭和の仮面ライダーの造詣を何処となく彷彿させた。

 

『……間違いなくホルダーだな』

 

いや、確かにメカ犬が言う通り、ホルダーではあるけれども、その事実を口にするよりも先に、色々と突っ込むべき事がある様な気がするのだけど。

 

「フハハハ! 俺を許さないと言うのであれば、どうするつもりかな?」

 

鳥羽さんはそんな突っ込みどころが満載なホルダーの登場にも、動揺を見せる事なく、演技を続けて見せる。

 

両腕は所謂、マッスルポーズで、其々の腕には人質役であるアリシアちゃんと姫路ちゃんがぶらさがって、縦横無尽に人間アスレチックな鳥羽さんを堪能していた。

 

その姿はどう見ても、日曜日に子供達と遊ぶ、お父さんと、そのお父さん懐く娘達にしか思えない。

 

「くっ! 人質を取るとは卑怯な奴め!」

 

あのホルダーには、子煩悩パパにしか見えない鳥羽さんが、どんな凶悪犯に脳内変換されているのだろうか……。

 

「取り敢えず、そろそろ行こうか。板橋君」

 

「ええ」

 

どうしてあの状況で、恵理さんの作戦が成功しているのか、納得は出来ないが、相手が予定通りの反応を見せているのならば、それに沿った行動を続けるのがセオリーだろう。

 

俺はE2の言葉に頷きつつ、鳥羽さんの動向に警戒するホルダーの傍へと、移動を開始する。

 

「ちょっと話を聞かせてもらって良いかな?」

 

「え? え? 何で俺に手錠を!?」

 

ホルダーの肩に手を置くと同時に、ナチュラルに手錠を掛けたE2にホルダーは驚愕の声を上げた。

 

「まあ、話は署で聞くからさ」

 

俺もその話に乗って、ホルダーを連れて、署内へと誘導する。

 

こうして、この世界に手錠を掛けられて連行されていく、異形の集団という、シュールな光景が展開されたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと、お名前は田辺 仁《たなべ ひとし》さんで間違い無いですか?」

 

「はい……」

 

ここは、海鳴署内の取調室。

 

其処でE2の仮面だけを取り外した長谷川さんが、黒縁メガネの男性に確認を取り、その男性……田辺さんが、静かに頷いた。

 

田辺さんは、海鳴大学に通う学生さんであり、先程俺達が連行したホルダーの正体である。

 

「それで、どうしてお前は、ホルダーになって、ヒーローの真似事なんてやってんだよ?」

 

田辺さんの簡単なプロフィールを、長谷川さんが聞き出した後、面白そうだからという理由だけで、同席した鳥羽さんが、出前のカツ丼を食べつつ、核心を突く質問を口にした。

 

ちなみにどうして鳥羽さんが、カツ丼を食べているのかというと、別に取調室だからという刑事ドラマのテンプレを再現する為では無く、恵理さんの作戦を成功させた事による成功報酬なのである。

 

なので、他の協力者である、アリシアちゃん達も、今頃は別室でカツ丼を食べているだろう。

 

正直に言ってしまえば、俺もこんな所に居ないで、別室でのんびりとカツ丼を食べたいところだが、ホルダーが関わっている以上、そんな呑気な事を言ってもいられない。

 

だからこそ、今もシードへの変身は継続した状態で、こうして取調べにも同席しているのだ。

 

この取調室の中に居るのは、この話の中心であるホルダーこと、田辺さんと、シードに変身中の俺と、仮面以外は今もE2のフル装備状態の長谷川さん、そしてカツ丼を貪る鳥羽さんである。

 

本当ならば、恵美さんもこの場に居た方が役職としては正しいのかも知れないが、大人しくホルダー化を解いて、話をする姿勢を見せている田辺さんは、今も暴走プログラムを所持したままであり、何時その感情が暴走して、誰かに襲い掛かったとしても不思議ではない。

 

そういった可能性が高く、安全を保障する事が出来ないので、この場に残って居るメンバーは、必然的にホルダーへの対抗手段となる力を有するライダー三人だけとなっていた。

 

「お、俺はヒーローの真似事をしてるんじゃなくて、本物のヒーローを目指しているんです!」

 

鳥羽さんの言葉に対して、予想以上に田辺さんが過剰な反応を示した。

 

ここまで田辺さんが過剰な反応を示す意味を、俺は……前世の頃の俺は何となくだが理解出来たかも知れない。

 

きっと田辺さんは、憧れているのだと思う。

 

悪と戦う、正義の味方という存在に。

 

幼い男の子が持つ、憧憬の一つとして仮面ライダーを含む、ヒーローの様に戦い、大きな力を振るいたいといった気持ち。

 

それは前世の頃の、幼い俺にもきっと同じ事が言えただろう。

 

だからこそ、分かる。

 

その純粋な気持ちは、尊くもあり、とても危いものなのだと。

 

幼い子供の視点から見れば、ヒーローの物語とは、常に勧善懲悪に見えてしまう事が殆どであり、物語としても、それはきっと正しい事なのだろう。

 

でも、人の正義は一つじゃない。

 

人の数だけ、正義の形もあるのだと、今の俺は思う。

 

明確に悪い事をしている人は実際に居るし、どんな事情があったとしても、それを擁護しようとは、俺も思いはしないが、自分の信じる正義だけが、絶対の正義なのだとも、考える事は出来ないんだ。

 

それでも俺は、自分の信じる正義を貫かなければならないと同時に、自分の正義を妄信して、そこで思考を止めちゃいけない。

 

これは、きっと俺は答えの出す事の出来ないものなのだと……そう思う。

 

だけど、それでも答えを探し続けるのを、止めてはいけない……。

 

田辺さんがヒーローを目指そうとする意思自体は立派なものであって、間違いでは無いと思うけど……それでも何か、田辺さんの言葉に俺はモヤモヤとした印象を受ける。

 

「君の気持ちはとても尊いものだ。だけど、君の持っているその力は、持ち続ければ、君の望まない結果を迎える事になるんだ。だから、手遅れになる前に、その力を手放してほしい」

 

俺はこれ以上、田辺さんを刺激しない様に、暴走プログラムを手放してほしいと説明した。

 

……だけど。

 

「何でそんな事を言うんですか? 俺はただ正義の為に、皆さんと同じ様に戦いたいだけなんですよ! それなのに、どうしてそんな事を言うんですか!? 彼方なら……正義の味方で、本物のヒーローの彼方達なら! 俺の気持ちを分かってくれると思ったのに!」

 

「正義の為ねえ……田辺って言ったか。なあ、お前の言う正義って何なんだ?」

 

田辺さんの反論に対して、鳥羽さんが一つの質問を投げ掛ける。

 

「は? 正義が何かって? そんなの簡単な事じゃないですか! 悪い事をする事が悪であり、正しい行いを成すのが正義! 子供でも分かる単純な事じゃないですか」

 

「そうか、それが田辺の言う正義なんだな」

 

鳥羽さんは田辺さんの言う、正義の定義を聞き、静かに頷く。

 

「な、何か問題でも?」

 

「いや、何も問題なんて無いさ。それがお前の信じる正義なら、それは間違っちゃいない」

 

確かに鳥羽さんが言う通り、田辺さんの言った正義は一つの分かり易い答えと言える。

 

けれどその答えが、不変のものだとは、言い切る事も、俺には出来そうにない。

 

「問題が無いなら、別に俺がこの力を持ち続けても構わないですよね!? これからも、悪を根絶やしにする為に、頑張りますから!」

 

「いや、田辺の心意気は買うが、そいつは駄目だ。お前の為にも、そんな力はとっとと手離しちまえ」

 

田辺さんの抗議の声も、鳥羽さんは一蹴してしまう。

 

俺も暴走プログラムの事を考えれば、鳥羽さんの言っている事に賛成なのだが、少し言い方が厳し過ぎる気がする。

 

何か、鳥羽さんなりに、考えがあるのだろうか。

 

「この力は、俺が正義を貫く為に必要な力なんです! だから俺は絶対にこの力を手放したりなんかしないし、俺ならこの力を使いこなせる!」

 

「最後まで話を聴けって。もし、お前が本当に……」

 

「もう、貴方達の許可なんて必要無い! 俺は、俺の意思でこの力を使って正義を貫く!」

 

鳥羽さんが何かを言い掛けたところで、田辺さんが叫び、全身が発光し出す。

 

『不味い!? ホルダー化するぞ!』

 

ベルト状態のメカ犬が、注意の声を発した時には、既に時遅く、田辺さんは再びホルダー化してしまう。

 

だけど、事態は更に混迷を極めていく。

 

取調べ室の壁を突き抜けて、見覚えのある光の球体が、ホルダーの身体へと吸い込まれて行ったのである。

 

「ここで試練の光って、タイミングが悪すぎるだろ!?」

 

きっと、感情を爆発させた田辺さん……ホルダーに引き寄せられたのだとは思うが、それが分かっていたとしても、俺は愚痴を零さずにはいられない。

 

「がああああああああああ!」

 

試練の光を体内に取り込んだホルダーは、叫ぶと同時に、取調室の壁を突き破って外へと逃走してしまう。

 

「急いで追いかけましょう!」

 

逸早く動いた長谷川さんが隅に置いていたE2の仮面を手に取り、ホルダーが作り出した横穴から飛び出して行き、俺と鳥羽さんも、すぐにその後を追って、穴から外へと飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試練の光の力によって強化されたホルダーの脚力は、相当なものとなっていた。

 

不幸中の幸いというべきか、ホルダーは表の街道を使い逃走を続けているおかげで、見失う事無く追いかけ続ける事が可能となっている。

 

俺は呼び出したチェイサーで、その横を併走するマシンドレッサーⅡと、サイドアクセラーを駆る、E2とアクセスの三人で、ホルダーの後を追いかけ続けていたのだが、流石に試練の光によって強化されたホルダーが相手となると、簡単に追いつく事は出来そうにない。

 

だけど、この逃走劇は意外な形で、終わりを迎える事となる。

 

少し前まで、かなりの速度で走り続けていたホルダーだったのだが、徐々に速度が落ち始め、少し開けた広場と言える場所に辿り着くと、そのまま足を止めてしまったのだ。

 

何とか追い着いた俺達は、チェイサーさん達、バイクから降りて、ホルダーと向き合う。

 

改めてホルダーの姿を見てみると、試練の光の影響を受けてなのか、その姿が若干ながら変わっていた。

 

基本的な飛蝗を模した部分に違いは無いのだが、昆虫の様な明るい黄緑の表皮の上に、鈍い鉛色のプロテクターが装着され、足も全体的に太くなり、明らかに極力が強化されているのは、間違い無いだろう。

 

「待ってましたよ。ライダーの皆さん。俺は本物の正義のヒーローになります。ですから俺を否定する貴方達は悪! 悪は滅ぼすのが、本当の正義!」

 

ホルダーはその言葉を合図に、俺達に向かって駆け出す。

 

どうやらホルダーは、試練の光の影響と暴走プログラムの二重の影響下に晒されて、完全に理性を失い、自分の願望しか残されてはいない様だ。

 

『来るぞ!』

 

ベルトから響くメカ犬の注意の声に、気付かされる必要も無く、俺達はホルダーに対して身構える。

 

「おりゃっ!」

 

まずはアクセスが、先陣を切り正面からホルダーに殴り掛かり、俺もその後に続き、ホルダーへと接近戦を仕掛けて行く。

 

その後ろでは、E2がホルスターから、専用銃であるESM01を引き抜き、銃口をホルダーへと向ける。

 

「二人とも、横に飛ぶんだ!」

 

「頼むぜ刑事さん!」

 

「長谷川さん!」

 

後ろから響くE2の声に反応して、俺とアクセスは、急いで横へと飛び退く。

 

更に俺とアクセスは、その際の駄賃として、ホルダーに対して同時に蹴りを入れておくのも忘れない。

 

俺達が飛び退いた直後、E2の射撃が容赦無くホルダーを狙い撃つ。

 

蹴られた為にバランスを崩したホルダーに、避ける術も無く、身体中から火花を散らすが、試練の光によって強化されたホルダーには其処まで高いダメージは与えられてはいない様だ。

 

「楽しくなってきたじゃねえかよ!」

 

硝煙の中でも悠然と歩き出すホルダーに向かって、アクセスが嬉々として立ち向かう。

 

「どうも生半可な攻撃じゃ、効かないみたいだね」

 

「だったら、一気に最大戦力で勝負しましょう」

 

アクセスが、ホルダーの注意を引いている間に、短く打ち合わせをした俺とE2は、互いに頷き、急いで準備を開始する。

 

俺はベルトからタッチノートを引き抜き、操作を始め、E2も腕のEブレイクのボタンを連続で押し始めた。

 

『コール・ガイア』

 

『コール・ダイバー』

 

『コール・ライガー』

 

『コール・フェザー』

 

タッチノートを操作し続ける事により、俺はメカ竜、メカ海、メカ虎、メカ鳥をこの場へと呼び寄せた。

 

『マスターフォルム』

 

音声が響くと同時に、俺はタッチノートを再びベルトに差し込む。

 

両手両足にリング状の突起が生成され、更に呼び寄せたメカーズ達が、アタッチメントパーツに良く似た腕輪の形状となり、メカ竜が右腕、メカ海が左腕、メカ虎が右足、メカ鳥が左足へと、それぞれ装着されていく。

 

黄金色に輝く追加装甲が、俺の身体に装着される。

 

『ブレイクモード』

 

Eブレイクから機械音声が響くと同時に、チェイサーさんのすぐ傍にに止めていたマシンドレッサーⅡの座席後部に備え付けられたバックパックが開き、その形を変形させ、銀色の戦闘用飛行機となり大空へと舞い上がり、更にE2へと向けて、今度は急降下していく。

 

E2の下へと降り立った戦闘機は幾つものパーツへと分離して、E2の全身へと装着されていった。

 

メタルイエローの上にシルバーパーツが重なり、背中と手足には戦闘機の際にもあった大型バーニアが装着される。

 

マスターフォルムとなった俺とE2Bは、アクセスと今も戦い続けているホルダーに向かって駆け出した。

 

「はあっ!」

 

「たあっ!」

 

俺が拳を叩き込めば、その横からE2Bが、タイミングを僅かにずらしつつ、ホルダーの腹部へと蹴りを叩き込む。

 

流石に強化された俺達を前に、ホルダーも無傷ではいられずに仰け反り、その隙を突いてアクセスが顔面に膝蹴りを見舞い吹き飛ばす。

 

「決めるなら今だぜ! お二人さん!」

 

アクセスの声を合図に、俺とE2Bは、素早く次の行動へと移る。

 

「行くよ、板橋君!」

 

「ええ。こんな悪夢はここで終わらせましょう!」

 

俺は右腕のメカ竜のレバー部分を引き、E2Bも腕のEブレイクのボタンを押す。

 

『ガイアチャージ』

 

『ブレイクエンドチャージ』

 

互いに響く音声の後に、右足へと集約されていく光。

 

「それじゃあ、長谷川さんも一緒に言ってくださいね」

 

「へ? 一緒にって、もしかして何時も板橋君が言ってる……あの、あれかい?」

 

『こういうのは勢いだぞ、長谷川殿!』

 

数瞬だけ俺の誘いに対して、躊躇いを見せるE2Bだったけれど、メカ犬の言葉に促されるままに、頷いてくれたので、俺はE2Bの動きに合わせて構えを取る。

 

そして俺達が同時に放つ言葉は、これしか無い。

 

「「こいつで決めるぜ!」」

 

俺とE2Bは、同時に言い放ち、地を蹴り上空へと舞い上がり、光の集約された右足を突き出す。

 

「「ライダーダブルハイパーキック!」」

 

放たれる最大威力の一撃。

 

だが、その攻撃が、決まるよりも早く、ホルダーは体勢を立て直し、避けるどころか飛び上がり、先程も見せた凄まじい脚力から繰り出される飛び蹴りが、俺達に向かって放たれた。

 

期せずして、真っ向からの一撃勝負となったが、ここで止まる訳にはいかないし、衝突は避けられない。

 

お互いの正義をかけて、ぶつかる凄まじい一撃が、大きな爆発を引き起こす。

 

俺とE2Bは一瞬の硬直から、一気にホルダーを突き抜けて、地面に着地する。

 

後には爆発の中から、気を失った田辺さんが落下し、地面に叩き付けられる前に、下に待機していたアクセスが抱き止めた。

 

そしてホルダーではなくなった田辺さんの身体から抜け出た試練の光は、タッチノートの中へと吸収される。

 

どうやら、今回の試練の光も、本体では無かった様だ。

 

まあ、兎に角、これで今回の事件も解決したと言って良いだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最初に断っておくが、翠屋はお洒落な喫茶店だ。

 

桃子さんのお手製のお菓子を始めとした、軽食は普通にメニューに載っているのだが、現在俺が食べているカツ丼の様な、丼物がメニューに書かれている筈が無い。

 

まあ、高町家の皆さんなら、メニューに無くても頼めば普通に作ってくれそうな気もするけれど、そういった野暮な突っ込みは無しにして頂きたいと、思う次第である。

 

そして、どうして俺がカツ丼を食べているのかという疑問なのだが、事件の翌日である今日。

 

今回の報酬を恵理さんが翠屋でアルバイト中だった俺に持って来たので、こうして休憩中に食べているのだ。

 

ちなみに恵理さんは、これから記事を纏める仕事があるそうなので、カツ丼を渡してくれた直後、すぐに翠屋を後にした。

 

報酬がカツ丼なんて、安過ぎるだろうという意見もあるかも知れないが、恵理さんが厄介事に関しての対価で、まともな報酬を受け取る事は、稀な話だし、こんなタイミングで持ってくる位は、些細な話である。

 

それに作られた料理には、何の罪も無いし、どうせなら暖かい内に食べたいというのが、正直な気持ちだ。

 

という訳で、喫茶店で場違いだと理解しつつも、カツ丼を食べていた俺だが、店の扉から入ってくる見知った顔を見て、俺は意識をカツ丼から、その人物へと向けた。

 

「いらっしゃいませ」

 

ホールに出てウェイターをしていたヤスが、少し引き攣り気味な営業スマイルで挨拶する。

 

ヤスがこんな対応を見せる相手は、一人しかいない。

 

「よう板橋。美味そうなもん食ってるな」

 

「鳥羽さんは昨日も食べてたでしょ……まあ、一口くらいなら良いですよ」

 

俺はそう言って、店内に入ってきた鳥羽さんと、短い挨拶を交わし、食べかけのカツ丼を鳥羽さんの前に持ってくる。

 

「お、良いのか? そんじゃ遠慮無く貰うぜ」

 

鳥羽さんは、差し出したカツ丼の一番端の小さなカツを一切れ摘み、口の中に放り込む。

 

そう言えば、カツ丼を食べている鳥羽さんを見て思い出したのだが、昨日、取調室で田辺さんと話していた時に、何を言い掛けていたのだろうか。

 

「ご馳走さん、それとヤス!」

 

「は、はい!?」

 

「こいつをやるよ」

 

カツを食べ終えた鳥羽さんは、何を思ったのか、ヤスを呼び寄せて、ある物を投げ渡した。

 

それは、鳥羽さんがほぼ常に持ち歩いているアタッシュケース。

 

「あとこれもだ」

 

更にそう言って、鳥羽さんがヤスへと投げ放ったのは、緑色の四角いカードケース……。

 

鳥羽さんが、ヤスに何を渡したのかは、すぐに理解出来た。

 

だけど、どうしてそうしたのかが理解出来ず、何も言葉が見つからない。

 

そんな俺や、ヤスを尻目にして、鳥羽さんは俺の耳元まで顔を近付けて、何でもない世間話をする様な口調で、呟いた。

 

「悪いな板橋。俺ってばこれから、お前や刑事さんの敵になると思うからさ」

 

「は? それって……」

 

俺がその言葉の真意を問い質すよりも先に、鳥羽さんは俺に背を向けると、じゃあなと片手をひらつかせながら、呼び止める暇も無く、去って行った。

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