魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~ 作:G-3X
今回も楽しんでいただけたら嬉しいです。
ではでは。
PS
念の為に、今回はBL? 要素が入りますと苦手な方の為に明記しておきます。
……果たして需要あるのかなこれ……(悩)
「余所見してる暇は無いぜ!」
ミルファとユーノがホルダーと対峙している様子に気を取られていた隙を突かれ、アクセスの拳が僅かに回避の遅れた俺の頬を掠める。
『油断するなマスター!』
「くっ!」
メカ犬に言われるまでも無く、そんな余裕を持って戦える相手では無い事は、重々承知しているのだが、どうしても二人の安否が気になってしまい、アクセスとの戦いに集中する事が出来ない。
「早くあの二人を助けに行きたいんだろ? だったら本気で来いよ板橋」
なおも激しい攻防を繰り返す中で、俺の心中を悟ってか、アクセスが挑発してくるが、癪な事に言っている事は正しい。
「……鳥羽さん。どうしてこんな事をするんですか!?」
「前にも言っただろう。俺がこうして戦ってるのは、それが仕事だからだってな。雇い主の意向が変わったからそれに従ったってだけさ」
このままアクセスのペースで戦い続けてはいけないと考え、俺は互いの拳を交えつつも、質問を投げ掛けるが、その答えはとてもシンプルなものだった。
「雇い主って……森沢教授の事ですよね? あの人は何をしようとしてるんですか!?」
「さあな。俺もただ雇われた身で戦ってるもんでな。教授が何を考えてるかまでは知らないぜ。そんなのを考えるよりも、強い奴と戦えるってだけで、俺としては満足出来る職場だからな」
自分から質問をしておいて何だが、少なからず鳥羽直樹という人物を知る身としては、そう言うと最初から思っていたので、何も不思議は無い。
ただ、それで納得出来るかというと、話は別だ。
鳥羽直樹という人物は、確かに好戦的な性格だけど、それだけじゃない。
少なくとも俺は、今まで多くの戦いを共に潜り抜けてきた一人の戦友として、鳥羽直樹が誰かの不幸を喜ぶ様な人間ではないと信じている。
「だったら、だったらどうして、ヤスにベルトを託したんですか!?」
「その方が面白そうだったってだと思ってな……ただ、それだけの話だ!」
俺の叫びに応えるアクセスの返答は、相変わらずだが、俺の言葉に……ほんの少しだけ、声の調子が変わった。
それは一瞬の隙。
時間にすれば一秒にも満たないその隙でも、アクセスとの戦いにおいて、その一瞬の隙は大きなチャンスとなる。
「はあっ!」
「くっっ!?」
俺はアクセスが繰り出す拳を潜り抜け、逆に拳を叩きつけて後退させる事に成功する。
『今だマスター!』
「OK!」
メカ犬の声に応えて、俺は素早くベルトの右側をスライドさせ、黄色いボタンを押す。
『ベーシックファントム』
ベルトから響く音声と共に、大量の光が溢れ、分身体を生成する。
『ここはワタシに任せて、マスターはミルファ達の場所に向かえ!』
「頼むぞメカ犬!」
俺は分身体を操るメカ犬に、アクセスの相手を任せて、俺はミルファ達を助ける為に急ぐ……のだが。
「お、俺が少し眼を離していた間に……何があったんだ?」
ホルダーの相手をしていたミルファとユーノから、アクセスとの戦いで、意識を逸らしていた間にどうやらとんでもない事態となっていた様だ。
時間は少しだけ遡り、シードとアクセスが交戦している間、この夜の公園の中では、もうひとつの戦いが繰り広げられていた。
「ロックシューター!」
正面からホルダーに駆け寄りながら、ミルファが呪文と共に杖を振るい、その先端から光弾が放たれ、ホルダーへと向かっていく。
当然ながら、ホルダーは正面から放たれた魔法を避けるが、ミルファの放ったこの魔法の真価は、その先にある。
「軌道変更よプリズム!」
『任せるのじゃ!』
ミルファの指示に従い、デバイスであるプリズムが魔法に干渉して、光弾の行き先を捻じ曲げる。
真っ直ぐに放たれた魔法による一撃は、本来ならばホルダーに避けられて、そのまま後方へと飛んでいく筈であったが、プリズムによって軌道が変わり、ホルダーの方にUターンして飛び、ホルダーの身体では無く、足下の地面に着弾した。
「きゃあ!?」
死角の外から、足場を奪われた事によって、ホルダーが野太い声で乙女な悲鳴を上げて倒れ込む。
「どうよ! 直接の魔法は効かなくったって戦えるんだから!」
倒れ込むホルダーを見て、ミルファが胸を張る。
確かにミルファは、ホルダーの不意を突き、最初の一手を制した。
しかし、魔法を主体とした戦闘を基本とする魔導師であるミルファでは、魔法攻撃に強力な耐性のあるホルダーと戦うには、相性が悪すぎるのは覆す事の出来ない事実である。
「あんまり舐めるんじゃ無くってよ!」
その証拠に、ホルダーには特にダメージも無く立ち上がり、パステルカラーの布を両手から伸ばし、ミルファへと襲い掛かる。
「させない!」
しかし、その攻撃がミルファに届く事は無かった。
ユーノが叫ぶと同時に、ホルダーの足下に浮かんだ魔方陣が、ホルダーの足を持ち上げて、ホルダーの攻撃をミルファから逸らす。
「ナイスアシスト!」
「油断しないで。また来ますから!」
ウインクをしつつ感謝するミルファを、ユーノが嗜める。
「ただのリトルレディかと思ったら、中々やるじゃないの! アターシも本気でいかなくちゃね!」
この二人のやり取りを見て、琴線に触れたのか、ホルダーはユーノが足下に出現させた魔法陣を足場にして、飛び上がりミルファへと襲い掛かった。
『回避じゃ!』
「うん!」
プリズムの注意を促す言葉に頷きながら、ミルファがその場から飛び退く。
「それで避けたつもりかしら!」
しかし、今度はホルダーの方が予想外の行動に打って出る。
ホルダーは両腕からパステルカラーの布を、ミルファにでは無く、ユーノへと向けて放ったのだ。
「私じゃなくて、ユーノの方に!?」
「え?」
ミルファが気付いた時には既に遅く、ミルファへの攻撃を予想してサポートに備えていたユーノは、自分に攻撃が向いた事に驚きの声を上げる。
咄嗟に自分へと、魔力の障壁を張ろうとするユーノだったが、時は既に遅く、ホルダーの放ったパステルカラーの布が、ユーノの全身に絡みつく。
「は、外せない!?」
絡みついた布を必死に外そうとするユーノだが、ホルダーの放った布がただの布切れな訳が無く、どんなに足掻こうとも布の先端が解れる様子すらない。
「あら? リトルレディかと思ってたけど……どうやらアナータも、アターシと同じ、真の乙女の様ね……良いわ! アターシが素敵にコーディネイトしてあげるわん!」
ホルダーが言い放つと同時に、ユーノに巻き付いた布が、激しく発光して、ユーノの全身を包み込み、そして光が弱くなりユーノの姿が、再び肉眼でも見る事が可能となったその時……。
「……え?」
ユーノは自分の姿を見て、思わず声を上げてしまう。
それも仕方がない事だろう。
何故なら今のユーノの姿は、アリシアの女子制服から、どういう訳か、純白に輝くウェディングドレス姿になってしまっていたのだから。
俺の頭がおかしくなったと言われたとしても、否定出来ない事が起こっていた。
少し見ていない間に、どんな戦いの経緯を辿り、こんな状況となったのか。
何故かユーノは、花嫁衣装を着て、茫然自失としていた……。
「オーホホホホホホ! どうかしらアターシの能力は!」
高笑いを上げて、自信満々に言い放つホルダー。
どうやら、ユーノが花嫁衣裳となったのは、あのホルダーの能力らしい。
「えっと……相手の着てる服を違う服に着替えさせるのが、あのホルダーの能力なのか?」
『うむ……ホルダーが使う能力は、確かに素体となった人物の思考や特技に反映され易いが、ただ着替えさせるという安直な能力になるとは考え辛い。他にも何か特殊な作用があるかも知れん』
思わず呟いた俺の疑問の声に、アクセスとの戦闘中だというにも関わらず、態々意識の一部をベルトに戻してまでメカ犬が答えを返してくれたのだが、その分析は、不吉なフラグとしか聞こえない。
そして残念な事に、この不吉なフラグは、現実のものとなってしまう。
「じ、純!」
突如として、花嫁衣裳のユーノが俺を呼ぶと、白いブーケを靡かせながら、俺に向かって走りだし、胸の中に飛び込んできた。
「お、おわっ!?」
下手に避ける訳にもいかず、俺は飛び込んできたユーノを抱き留める。
普段の状態ならば、身長差も殆ど無い俺とユーノだが、今はシードに変身した状態で、平均的な成人男性と変わらないので、自然とお姫様抱っこをする形となってしまう。
「ど、どうしたんだユーノ?」
「僕にも良く分からないんだけど、何だか純を見たら、ドキドキしてきちゃって、気付いたらこうなっちゃってて……でもね、純に抱きしめられていたら、もっとドキドキが止まらなくなってきちゃったんだ……どういしよう、僕……病気なのかも」
切なげな瞳で俺を見詰めながら、ユーノが俺を見上げる。
いや、これって多分……。
「これがアターシの能力! 名付けてラブファッショナブル! アターシのデザインした服に着替えた人はね、気になっている相手へのラブな感情が抑えきれなくなるのよん!」
俺とユーノのやり取りを見ていたホルダーが、自身の能力を自慢げに説明し始めるのを見て、俺はやっぱりそういう事かと、納得した。
「え!? でもそれってユーノが純の事を本気でって事じゃ……」
だがここで、ホルダーの説明を聞いて、ミルファが俺達を見ながら、持っていた杖をその場に落として、信じられない何かを見る目をしながら、口を両手で覆う。
「いやいやいや! これって恋愛感情とかじゃなくて、ただ気になってる人に対しての感情が抑え切れなくなってるだけだと思うから!」
何か良からぬ誤解が生まれそうだと察した俺は、一気に捲し立てる。
ユーノが気になっている人が俺だというのも、考えてみれば当たり前の話だと俺は思う。
元は異世界に居る筈の人物であるユーノがこうして俺の家に訪ねて来たのにはそれなりの理由がある筈だ。
本当ならば、その理由も、ミルファの住むアパートに着いたら説明してもらえる手筈だったのだが、それまでの間は、話す相手である俺が一番の気になる相手だというのは、当然と言えるだろう。
「そういう訳で、ちょっとの間だけユーノを頼む」
「え、ええ……」
まだ疑惑の視線を向けてくるミルファに、俺はユーノを預けて、この元凶を作り出した相手であるホルダーに向かって駆け出す。
「早く戻ってきてね! 僕、待ってるから!」
背中から、黄色い声援? が聞こえて来た気がするが、後ろを向かなくても、背後から厳しい視線が突き刺さってくるのを確かに感じていたので、俺は急いでホルダーに攻撃を仕掛ける。
「あらん? 今度は彼氏君がお相手してくれるのかしらん?」
「誰が誰の彼氏だ!?」
冗談とも本気とも取れないホルダーの言葉に突っ込む様に、俺は拳を叩き付ける。
当然だが、突っ込みを入れてみたけれど、その答えを聞く気は最初から無いので、拳と蹴りの連撃を繰り出して、一瞬の隙も与えない様に、心掛ける。
「ウフフ! 中々やるわね。 ならアターシも本気でお相手してあげるわよん!」
だけど、俺の連続攻撃でも、ホルダーから余裕を奪う事は出来ず、不敵な笑いを零す。
何というか、俺の知り合いにこういう手合いのバイクな姐さんがいるせいなのかもしれないけど、あの野太い声と乙女な口調を重ねられてしまうと、底の見えない凄み感じてしまう。
「させない!」
更に何かをされる前に、俺は今よりも攻撃速度を速めようとするが、それよりも前に、ホルダーの身体が……いや正確に言えば、ホルダーの身体に纏うパステルカラーの布が発光現象を起こす。
「こ、この光は……気を付けて! あのホルダーはもう試練の光の強化を受けてるわよ!」
「何だって!?」
ユーノが俺の方に行くのを必死に押さえつけながら飛ぶ、ミルファの注意の声に、俺が驚いている間にも、光はホルダーの身体に変化を与えていく。
「フー! これが本当のアターシの力よん!」
変化を終えたホルダーは、マッスルポーズを決める。
元から布の隙間から隠し切れない程に見えていたマッチョなボディーはその一切の遠慮を捨て去り、表舞台へと踊り出た。
つまり、ボディービルダー的な肉体が、国内クラスから世界クラスへとバージョンアップしたのである。
「この筋肉ダルマ!」
「この究極の美が分からないなんて、まだまだお子様ね」
今まで以上に力を込めて俺は拳を叩き込むが、試練の光の力によって高められた力なのか、俺の拳はホルダーの手によって簡単に弾かれてしまう。
「相手が力押しで来るなら、こっちも力押しで行く!」
ホルダーに弾き飛ばされながらも、俺はベルトからタッチノートを引き抜き操作を開始する。
『ガイアコール』
タッチノートから音声が響いてから、少しの間を置いて、手乗りサイズのメタルレッドドラゴンこと、メカ竜が俺に向かって駆け寄って来る姿が、俺の視界に入る。
『お待たせですマスター!』
「行くぞメカ竜!」
『了解です!』
メカ竜の承諾を得て、俺は更にタッチノートを操作していくと同時に、ベルトの右側をスライドさせて、赤いボタンを押して、ベーシックフォルムからパワーフォルムにフォルムチェンジをしておく。
『スタンディングモード』
メカ犬がベルトへと変形するのと同様に、タッチノートを操作する事によって、アタッチメントパーツにメカ竜を変形させた俺は、アタッチメントパーツを掴み取り、ベルトの左側をスライドさせて、その溝部分に、アタッチメントパーツを差し込んだ。
『パワー・ガイア』
音声が流れた直後、俺を囲む様にメタルレッドの追加パーツが周囲に展開されて、全身へと装着されていく。
「あら、また随分と格好良い感じになったわねん」
「こんな悪夢はここで終わらせる!」
パワーガイアになった俺を見ても余裕な態度を崩さないホルダーに、俺は正面から勝負を仕掛ける。
ホルダーも見るからにパワータイプという事は明らかであり、俺の挑戦をホルダーも真正面から受け取った。
「くっ!」
「ふん!」
俺とホルダーは互いに両手を正面からぶつけて、腰を落として、全ての力を前に向ける。
其処に技術は必要無い。
ただあるのは、純粋な力の勝負。
シードの全フォルムの中でも、単純な力という点に関して言えば最強フォルムであるパワーガイアだが、ホルダーとの力比べは拮抗していた。
それはつまり、このホルダーの力がそれだけ高いという事の証明でもある。
考えてみれば、このホルダーは試練の光によって起こった能力の変化を意識的に操作していたのだ。少なくとも今まで相手をしてきた試練の光の力を得たホルダーの中に、そんな真似をしてくる相手はいなかった。
つまり、このホルダーはそれだけ他のホルダーとは各が違うという事だ。
「見かけ倒し倒しじゃないわね……アターシの本気とやり合えるなんてス・テ・キ!」
「ひぃ!」
ホルダーはドクロ顔な筈なのに、どういう原理なのか、ウインクをしたという現象と、野太い声と吐息に、俺は拒絶反応を起こして、ホルダーの手を離しそうになるが、何とか耐える。
今までの全ての戦いにおいて、ある意味でこのホルダーは最強かも知れない……何か生理的に戦い難いんだもの!
「純! 頑張って! 僕……純が勝つって信じてるから! 純が勝ったら……その、僕が……キ、キ……ス……して、あ、あげるから……」
ウェディングなお嫁さんとなったユーノが俺を応援してくれる。
それ自体はとても嬉しいのだが、後半は小声で何を言ってるのか、良く分からなかった上に、今もこの戦いに花嫁さんが乱入しない様に、羽交い絞めにして押さえてくれているミルファが、どういう事か、俺とユーノを交互に見ながら凄い顔をして見てくるのが、非常に気になる。
しかも、その奇怪な行動を行いながら、切っ掛けはあの時なのかしらと、何度も呪詛の様に呟き続けているが怖い。
「ウフフ……やっぱりアターシの見立てに間違いは無かったわねん。あの子はかなりの逸材よ! 是非とも、アターシの弟子にして立派な乙女にしてあげたいわ!」
ホルダーがユーノを見つつ、何だか良く分からない事を言っているが、俺の本能がそれはユーノの為にも、そして今後の俺の為にも絶対に阻止しろと訴える。
「……させるかよ!」
「あ、あら? あら? あら!?」
先程まで拮抗していた押し合いの均衡は、俺の新たな覚悟によって遂に終わりを迎え、腕の力だけで、ホルダーを持ち上げる事で決着がつく。
「だああああああああああ!」
ホルダーを持ち上げた俺は、そのまま力任せに投げ飛ばし、間髪入れずにベルトの右側をスライドさせて黄色いボタンと、左側のアタッチメントパーツのレバー下にあるボタンを同時に押す。
『パワーブレード』
『ガイアブレイガン』
右手と左手にパワーブレードと、ソード状態のガイアブレイガンを生成した俺は、双剣を構えて投げ飛ばしたホルダーに追撃を仕掛ける。
まだ吹き飛ばされた衝撃が抜け切らず、ふらついているホルダーに追いついた俺は、両手の剣を連続で斬りつけ、最後に二振りの剣をクロスさせて一気に叩き付けて、もう一度ホルダーを吹き飛ばす。
『な、何だか鬼の様な気迫を感じるんですけど……今がチャンスですよマスター!』
「ああ!」
メカ竜の声に応え、俺はこのホルダーとの戦いを終わらせる為の一手を打つ。
一旦パワーブレードの刃を地面に突き刺してから、俺はガイアブレイガンのソード状態を解除してから、もう一度、引き抜いたパワーブレードの柄の溝部分に、ガイアブレイガンを装着する。
『ジョイントアップ・ガイアブレード』
俺がガイアモードとなる時と同様に、音声が流れて、パワーブレードの周囲にメタルレッドの追加パーツが次々と装着されて、巨大な赤い大剣が完成する。
巨大な大剣であるガイアブレードを背中に背負いながら、俺はアタッチメントパーツのレバーを思い切り引く。
『マックスチャージ』
ベルトから発生した光が、四肢へと連なる銀のラインを伝い、ガイアブレードへと注がれる。
「こいつで決めるぜ」
俺は激しく光放つガイアブレードを構えて、ホルダーに向かって駆け出す。
「ガイアブレイカー!」
ホルダーへと肉迫した俺は、腰を落とした状態から、必殺の一撃を放ち、この一撃をまともに喰らったホルダー衝撃破で吹き飛びながら大きな爆発を引き起こした。
爆発した後には、何というか、凄い感じの人が倒れていた……。
本職はプロレスラーかボディビルダーですかと質問したくなる程の見事な筋肉の上半身裸な上に、下は黒いビキニパンツ。
更にその顔は見事に整えられた顎鬚と、濃いめの化粧……。
うん、見無かった事にしておこう。
俺は全て無かった事にして、アクセスと分身体が戦っている場所へと急ぐ。
ついでに、倒したホルダーから抜き出た試練の光も外れだったらしく、ミルファが杖から伸ばした魔力刃で切り裂いていた。
「大丈夫か!? メカ犬!」
『うむ! そろそろ分身体の限界だったのだ。後は頼むぞ』
二人が戦っている場所に辿り着くには、一分も科掛かる事無く走って追いついた俺が、今もアクセスとの戦いを続けていた分身体に話し掛けると、メカ犬がそういうとほぼ同時に、分身体が光の粒子となって消えていった。
まだ分身体が出ていられる時間は余裕である筈なのだが、消えてしまった事から、相当に激しい戦いを繰り広げたのだろうと容易に想像が出来る。
「良い暇潰しが出来たな。さてと、このまま第二ラウンドと行きますか」
しかしアクセスにはまだ余力が充分な様で、首を軽く動かしながら、俺に向かって歩いて近付いて来る。
俺は何時でも戦える様に、ガイアブレードを構えるが、ここで俺とアクセスの間に、空から割って入る影の存在が両者の間を遮った。
その影の正体は、蝙蝠型のホルダー。
見覚えがあるその姿は、加山が変貌したホルダーで間違い無い。
「目的は達しましたから引きますよ。陽動お疲れ様です」
「俺としては、このまま残業しても良いんだけどな」
「個人的には、それも良いと思いますが、まずは回収したデータを教授に届けるまでがお仕事ですからね」
「それを言われちゃ、しょうがないわな。という訳で悪いな板橋。今日はこれでお開きだわ」
アクセスとホルダーは、何度か会話を交わすと、俺達が会話に入る間もなく、結論を出してしまう。
更にアクセスが、俺に普段の調子でそう話し掛けながら、ベルトに嵌め込まれたカードケースから、一枚のカードを抜き出して、ベルト横の溝にスライドさせる。
『シャインリンク』
響く音声とほぼ同時に、海鳴大学でも使った眩い光によって周囲が包まれて、視界が回復した時には、既に二人の姿も消えていた。
『ホルダー反応も消えている。完全に逃げられたな』
「まあ、一戦した後に、二対一っていうのも厳しいからな。今回は見逃してくれたって思っておこう」
『そうですよ先輩』
メカ犬に俺とメカ竜は、慰めの言葉を投げ掛けつつ、変身を解く。
俺の姿は、シードから元の姿に戻り、メカ犬とメカ竜も、其々にベルトとアタッチメントパーツから、手乗りフルメタルアニマルに変形した。
「じゅーーん!」
「え? がほっ!?」
俺は自分の名前を呼ばれ、声のした後ろに振り向くと、ほぼ同時に予想外の衝撃に襲われる。
その衝撃の正体は、お嫁さん姿のユーノ。
というか、何でホルダーを倒したのにユーノが戻ってないんだ?
そもそも、ユーノはミルファが抑えてくれてた筈じゃ……。
というところまで考えたところで思い出す。
そういえば、ホルダーを倒した直後に試練の光の処理に向かっていた気がする。
『さっきのホルダーは強敵でしたからね。どうやらまだ能力の影響が抜け切っていない様です』
冷静に分析して律儀に教えてくれるメカ竜には悪いが、そんな事をしている暇があるならば、助けて欲しい。
気のせいでもなんでも無く、ユーノの顔が俺の顔に近付いてきているんですけども!
「式は、海の見える教会が良いよね。それと子供は二人と、犬も飼いたいなぁ」
『待て! 犬ならばワタシが既に居るぞ! こう言っては何だが、そんじょそこらの犬よりもワタシは優秀だぞ。お手の基本技から始まり、ベビーシッターまで出来る自信がある』
ユーノが言っているのは花嫁衣装を着ている影響なのか、いや物理的に俺とユーノで子供はあり得ないからな。
それとメカ犬は、突っ込みどころが違うだろう。
何で飼い犬アピールしてるんだよ!?
「幸せにしてね……ダーリン」
俺が心中で突っ込み乱舞をしていたら、ユーノが耳元で甘い言葉を囁き、その直後、何やら頬に湿った暖かい感触がした。
「ち、ちょっとまって……」
止めようとする俺の声も聴かず、行動が大胆になっていくユーノ。
そして何時の間に装着しなおしたのか、メカ犬は背中にビデオカメラを背負って、メカ竜がレンズのピントやアングル細かく修正しながら、俺とユーノを撮影し始める。
その後、ユーノが正気を取り戻したのは、約10分後の事だった……。