魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~ 作:G-3X
今回も楽しんでいただけたら、嬉しいです。
それでは。
「今だヤス!」
ホルダーの居合の届く範囲に入る前に、俺は叫ぶ。
「了解!」
俺の叫びに応えて、後方に居たプロトアクセスが、ベルトに填め込まれたカードデッキから、一枚のカードを引き抜き、そのままベルトの側部の溝へと、引き抜いたカードをスライドさせる。
『グランドリンク』
音声がベルトから響くとほぼ同時に、プロトアクセスが、地面に手を着く。
その瞬間に、俺の真下の地面が隆起する。
同時にホルダーの日本刀が鞘から、一気に引き抜かれ、目で追うのも難しい程の剣速の居合いが放たれた。
もしも何の策も無く突っ込んでいれば、俺は今頃、上半身と下半身に分かれていたかも知れない。
だが、実際に俺の胴体が二つに分かれる事は無く、ホルダーの見事なまでの居合いを上から見下ろすという結果に終わった。
俺の代わりに真っ二つとなったのは、プロトアクセスの能力で、俺を上へと押し上げ隆起した地面である。
『今だマスター!』
「はああああっ!」
攻撃を放った直後で隙を見せたホルダーに対して、メカ犬が攻撃をするチャンスだと告げる。
俺はそのメカ犬のアドバイスに応える間も惜しみ、ホルダーの居合いによって崩れていく地面から、飛び出して、真上から踵落としを見舞う。
その攻撃にも防御態勢を取ろうとするホルダーだったが、後方からE2がESM01による射撃で、ホルダーの意識を逸らしてくれた。
E2の援護射撃を受けて、流石に防御の姿勢を崩したホルダーは、俺の踵落としをまともに脳天に受けた。
だけど、全身が鎧に覆われているだけあって、防御に秀でているのか、ホルダーはすぐに手にした日本刀を振り上げて、俺に反撃を仕掛けて来た。
「おわっ!?」
俺は咄嗟にその攻撃を、腕のライガーファングで受け止める。
ホルダーはそのまま刃を滑らせて、身体毎回転させると、遠心力で更に威力を増した剣を横から放つ。
「くっ!?」
あまりにも早い切り返しに、このままでは防御が間に合わない。
なので大体の目測を勘で補い、足のライガーファングを、予想される軌道上に置く。
その勘は当たった様で、ライガーファングに強い衝撃が届く。
しかし、その衝撃を片足で受け止めるのは難しく、直撃だけは避けられたが、その場で耐え切る事が出来ずに吹き飛ばされる。
吹き飛ばされている間に、ホルダーが更なる追撃を仕掛けようとしてくるが、E2の射撃による弾幕と、プロトアクセスが放った風の球体が、進行を妨害した。
その隙に俺は、地面に手を着き、身体を捻り強引に態勢を整える。
「純の旦那!」
「大丈夫かい? 板橋君」
ホルダーの動きに警戒しながら、プロトアクセスと、E2が俺に近付きつつ、声を掛けてきた。
「おかげ様で何とか。それよりも問題は……」
二人への感謝の言葉もそこそこに、俺はホルダーに視線を向ける。
そう、鎧による硬い防御と、日本刀による一撃必殺の攻撃力。
直接戦って分かったのだが、通常の攻撃はまだしも、あの居合いだけは不味い。
防御しようとしたり、此方が武器で斬り結ぼうとしても、それごと断ち切れる鋭さがある。
「なんか、見てるだけで凄い威圧感を感じますけど、あのホルダー何者なんすかね?」
「あのホルダーの正体は、目撃情報から分かってるよ」
ホルダーを見て、身震いするプロトアクセスの呟きに対してE2が、口を開く。
「あのホルダーの素体になった人物を知ってるんですか? 長谷川さん」
「うん。通報があった時に、大体の情報が集まったからね。何せホルダーになるところを、多くの人に目撃されたみたいだから」
俺の質問にも、E2はホルダーの動きを警戒しながら答える。
[「どうも、剣道の大きな大会中に、ホルダー化したみたいでね。その出場選手だったから、余計に周囲の目を集めたみたいよ。それで、急いで集めた目撃情報によると、あのホルダーの正体は、比村《ひむら》亮真《りょうま》。若干19歳にして、何度も剣道で上位の成績を残していると同時に、真剣による居合いの大会では、同年代では敵は居ないと言われた若き達人と呼ばれている男らしいわ」]
そしてE2の言葉の続きを、この戦いを別の場所でモニタリングしている恵美さんが、E2の内臓スピーカーを通して俺達に教えてくれる。
この話を聞いて、俺もあのホルダーの異様な強さと戦い方に納得する事が出来た。
だが、それは納得したというだけの話で、あのホルダーを攻略する方法が見つかったと言う訳では無い。
相手の攻撃を避けるという一点に尽くすならば、スピード・ライガーでいけばどうにかなるかも知れないが、それは避ける事が出来るというだけであり、あの鎧の防御力を突破する事は不可能だろう。
今のパワーフォルムの攻撃力を伴う、パワー・ライガーの一撃でも、殆どダメージを受ける事無く、反撃に出たのだから、生半可な攻撃では、囮の役目すら出来そうにない。
接近戦で活路が見出せないとするならば、残るは高火力に任せた遠距離攻撃だ。
この三人の中で、最も安定した遠距離攻撃が出来るのは、E2だろう。
プロトアクセスは、カードの能力で遠距離攻撃も可能ではあるが、基本は接近戦主体だし、俺もサーチフォルムになれば遠距離戦は可能だが、僅かな間と言えど、この中であのホルダーの剣速と近距離で渡り合える速度で動けるのは、俺しかいないので、俺がホルダーの注意を引き付ける必要がある。
俺の中で、戦い方の方針は固まったが……。
[「あのホルダーと接近戦は危険ね。やるとしたら、あの居合いと剣捌き以外の移動速度は遅いみたいだし、射程外から攻撃するのが良さそうだけど、問題はその攻撃をどう当てるか……」]
E2に搭載されたスピーカーから、別の場所でこの戦いを見ている恵美さんが、俺が先程考えたのとほぼ同じ戦術を明言するが、それはつまり、俺が感じた問題点も同時に思ったという事だ。
問題点はその一撃必殺の攻撃を、遠距離からどう当てるかという事である。
隙の少なく、射速の早いE2のESM01などなら、簡単に当てる事は可能だろうが、高火力を出そうとすれば、その所作で相手のホルダーに動きを気取られてしまう。
あのホルダーは、大きなダメージを受けないと言えど、ここまでの戦いで常に遠距離からの攻撃に強い警戒を示していた。
それはつまり、あのホルダー自身が、俺と恵美さんの考えた戦法を警戒しているという証明だ。
あのホルダーの鎧の防御を突破する、一撃必殺の遠距離攻撃を当てるには、その直前に相手の態勢を、大きく崩す必要がある。
だけど、その方法が見つからない。
「こうなったら、強引にでもマスターフォルムで……」
パワー・ライガー以外で、おそらく唯一速度と力で対抗出来そうなマスターフォルムになって、玉砕覚悟の接近戦を仕掛けようかと、俺がベルトのタッチノートに手を伸ばしたその時だ。
『ここはセッシャに任せて欲しいでゴザル!』
上空から、聞き覚えのあるゴザル口調が、俺の耳に響く。
声のした上空を見上げれば、青空を優雅に飛ぶ、メタルホワイトな厨二病を患う鳥。
『何で鳥ッチがここに居るジャン?』
一番に反応したのは、アタッチメントパーツ状態となっているメカ虎だった。
『だからセッシャの真名はアレキサンドル・メタルブレイカー・J・バードイーグルデリシャスグレート・リーサルグラビティー・スタンドアローン・エンドオブブレード「そんなのはどうでも良いから、任せろってどう言う事だよ? メカ鳥」流石にそんなの扱いは酷過ぎるでゴザルよマスター……』
また発作が始まりそうだったので、俺は遠慮無く、メカ鳥の台詞を途中でぶった切って、話を先に進める。
それに酷いと言われても、今は相手と膠着状態とは言え、戦闘中なのだから、長くなりそうな話は後にしておいてもらいたい。
『実は街でサムライが暴れていると聞いたので、急いで駆け付けたでゴザルが、マスター達が苦戦していた様なので、助太刀に参上したのでゴザル』
メカ鳥の話を要約すると、どうやらホルダー騒ぎとは関係無く、サムライが出たという噂を頼りに、野次馬根性でこの場所に来てしまった様だ。
『それで、任せろと言う事は、何か策があるのか?』
『出会った当初からマスターはセッシャに対してだけ、やけに厳しいと常々セッシャは……っは!? そうでゴザッた! こんなところで落ち込んでいる場合では無いでゴザルよ! サムライの必殺の剣技。セッシャとマスターの力を合わせれば破る事も可能でゴザルよ!』
メカ犬の言葉に反応して、妙な呟きを繰り返していたメカ鳥が、自慢げに宣言する。
俺とメカ鳥の力を合わせると言う事は、フェザーモードで戦えと言う事だろうが、数に物を言わせて、ごり押しをしろという事だろうか?
いや、数を出したところで、あのホルダーの斬撃を受ければ、一撃で分身体は消えてしまうだろう。
確かに数は力だろうし、時間稼ぎは出来るだろうが、あまり数を出して、一斉に攻撃を仕掛けてしまうと、今度は分身体でホルダーの姿が隠れてしまい、E2が後方から狙いを付ける事が難しくなる。
だからと言って、視界を確保出来る程の少数では、すぐにやられてしまう。
『研ぎ澄まされた一太刀に対抗出来るのは、同じく極限まで研ぎ澄まされた技だけでゴザル!』
「フェザーモードで、あの剣速に対抗出来る、研ぎ澄まされた技……そうか!」
俺は漸くメカ鳥の言っていた意味を理解して、ベルトの左側に着けたアタッチメントパーツを外して、手離すと、そのままメカ虎は、手乗りアニマルへと変形して地面に着地する。
『何だか良く分からんけど、後は鳥ッチに任せるジャン』
『任されたでゴザルよ!』
メカ虎と短く言葉を交わし、今度は俺の手の中にメカ鳥が飛び込んできたので、俺はタッチノートを操作して、メカ鳥をアタッチメントパーツへと変形させて掴み取る。
「こんな悪夢は、ここで終わらせる」
俺は再びベルトの左側をスライドさせて、アタッチメントパーツを差し込み、同時にベルトの右側もスライドさせて青いボタンを押した。
『サーチ・フェザー』
音声が響くと同時に、全身を覆っていたメタルグリーンの装甲が光に溶けていき、新たにメタルホワイトの追加装甲が装着され、俺自身のフォルムもクリムゾンレッドであるパワーフォルムから、サーチフォルムの特徴である、スカイブルーへと染め上がっていく。
サーチフォルムと、フェーザーモードによって相乗効果で高められた感覚が、俺の頭に様々な情報を絶え間なく注ぎ続ける。
言っては悪いが、このモードを長時間維持するのは、かなり辛い。
だからこそ、俺は勝負を急ぐ為に、ホルダーに向かって歩き出す。
「俺が、あのホルダーの居合いを何とかしますから、長谷川さんは今の内に準備をお願いします。ヤスもサポートを頼む」
「……うん。任せたよ板橋君」
「無茶だけはしないでください、純の旦那」
俺の行動を切っ掛けに、E2とプロトアクセスも、其々の役割を果たす為に動き出す。
後の事は二人に任せて、俺は今自分がすべき事に、全ての意識を集中させる。
既にホルダーの居合いの範囲ギリギリまで近付いた俺は、静かに両手を上下に間を置きながら重ねて、斜めに構えた。
ポーズ的には、少し前世で読んだ事のある少年漫画の頭が黒から金髪になると、とんでも無く強くなる人が放つ必殺光線を放った直後に似た、戦うには少し不格好なものとなっているが、この構えにも意味はある。
俺とホルダーは互いにその両手を斜めにした状態と、居合いの構えを保ちつつ、摺り足で間合いを詰めていく。
そして互いの手が届く、ホルダーの居合いの間合いへと俺が入った瞬間に、ホルダーの日本刀の持ち手を掴む手が動く。
全ての意識を集中して、俺は両手を動かす。
鞘から抜き放たれた日本刀が、神速とも呼べる速さで俺へと迫る。
通常ならば、それに気付いた時には、もう全てが終わった後の事だっただろう。
だが、今の俺の人の限界を超えた鋭敏な感覚が、研ぎ澄まされたその剣技を、眼で追う事を可能としている。
俺は静かに……だが力強く、目の前に迫る白銀の刃を、その両手で挟み込む。
全ての意識は、ただこの一瞬の刹那と言えるタイミングの為に。
一撃必殺の剣に対抗する為に、メカ鳥が俺に提案した方法。
それはあまり現実的な方法ではないが、古くから伝わる無手により真剣の一撃を破り得る技、真剣白刃取りだった。
通常であれば、鋭利な刃物を持つ相手に、素手でその武器を掴めと言っているのだから、かなりの無茶を言っているのが道理であり、その上に肉眼では捉える事すら難しい居合い、しかも達人級までに研ぎ澄まされた技に、この方法を使おう等と、命知らずな事を実行に移す者は皆無だろう。
それを可能としたのが、その達人級の鋭い刹那の剣技を上回る、フェザーモードによる感覚強化を用いた、集中力。
はっきり言って、内心では失敗したらどうしようという心配はあったが、それでも実際にフェザーモードとなって、これまでに無い集中をした瞬間に、全ての迷いは消えて、実際に行動する事が出来た。
もしかしたら、俺はフェザーモードによる恩恵で、疑似的にではあるが、世の達人が見ている刹那の世界を垣間見たのかも知れない。
たが、そんな感慨に浸かるのは後だ。
俺は見事に両手で挟み込む事に成功した日本刀を、力の限り大地に向けて叩きつける。
すると刀身の横から無理な力を加えられた日本刀は、呆気無い程に簡単に折れてしまう。
日本刀とは剣というカテゴリーに位置する武器としては、かなり脆い部類になるらしい。
時代劇等を良く見るとお侍さんが良く、日本刀による鍔迫り合いをしているシーンを見掛けるが、実際に日本刀が使われていた当初はそんな事をすれば、すぐに刃こぼれしてしまい使い物にならなくなってしまう場合が多かったので、刃同士をぶつけるというのはあまり無かったそうだ。
しかし、その脆さも全ては極限にまで一撃の鋭さを高める為の、代償と言える。
だからこそ、日本刀は今も芸術作品とさえ言われる見た目と共に、愛され続けているのかも知れない。
「長谷川さん!」
日本刀を叩き折った直後、俺は後ろに向かって合図を送り、フェザーモードの象徴とも言える背中の翼を広げて上空に飛び上る。
『ブレイクチャージ』
後ろを見れば、既にE2が黄色い光を放つESM03の銃口を、ホルダーに向けている姿があった。
放たれた黄色い輝きを放つ無数の弾丸の嵐が、日本刀を折られて無防備となったホルダーを襲う。
唯一の武器を失った上に、不意打ちとなったこの攻撃を避ける手段が、ホルダーにある訳も無く、まともにESM03による弾丸の嵐を受けたホルダーは、倒し切るまでには至らなかったが、相当のダメージを与える事は出来たらしく、その証拠に、鎧はそこらじゅうにヒビだらけだ。
そして、俺達の攻撃はまだ終わってはいない。
E2の攻撃が始まったその隙に、満身創痍となったホルダーの懐に、プロトアクセスが飛び込んでいた。
既に一枚のカードを手にしていたプロトアクセスが、ベルトのスリッドへと、そのカードを通してホルダーの身体に、そっと手を添える。
『グラビティー・リンク』
プロトアクセスのベルトから音声が響くと同時に、カードの効果が発動して、ホルダーの身体が上空へと舞い上がっていく。
あのカードには、色々と苦い思い出があるのだが、こうしてサポートに用いられている様子を見ていると、相手の動きを封じるには便利だなと、改めて思う。
『決めるなら今でゴザルよマスター!』
「ああ!」
俺はメカ鳥の声に応じて、上空にふわふわと浮かぶホルダーの更に上に陣取りつつ、ベルトの右側をスライドさせて、黄色いボタンを押す。
『サーチバレット』
光の粒子が形をを作り、俺の右手にサーチフォルムの銃型専用武器である、サーチバレットが生成される。
「こいつで決めるぜ」
俺はサーチバレットの銃口をホルダーに向けて、アタッチメントパーツのレバーを引く。
『マックスチャージ』
ベルトから発生した稲妻の様な光が、サーチバレットの銃口へと集約されていき、俺はその集められた膨大のエネルギーを撃ち出す為に、引き金を引く。
「ロックオンショット」
極限にまで集約された光の光線が、最早役目を終えたボロボロのホルダーの鎧を貫き、大きな爆発を引き起こす。
爆発の後、気を失った剣道の胴着姿の青年がゆっくりと下降していった。
「……流石に疲れた」
この戦いが終わった事を確認した俺は、誰に言うでも無く、静かに呟く。
戦いに集中している間は、あまり気にもしなかったのだが、このサーチ・フェザーの状態は、維持しているだけでも、精神をかなり消耗するので、多用は禁物だと、改めて思いつつ、皆が待つ地上を目指して下降を始めた。
「今回の騒動の発端なんだけど、やっぱり裏で、森沢教授が一枚噛んでいたみたいね」
そう言いながら、恵美さんが一枚の写真を俺に見せてきた。
見せてもらった写真には、はっきりと森沢教授と、先程まで俺達が戦っていたホルダーの正体である青年、比村亮真が談笑している姿が写し出されていた。
つまり、森沢教授は比村には個人的な接点があり、暴走プログラムを手にする機会があったという事を意味している。
今俺は、今回のホルダーの事件を解決した後、メカ犬とヤスを連れて、長谷川さんと恵美さんの拠点でもある海鳴署内にあるホルダー対策特務課にお邪魔して、警察側で調べた事件の大体の経緯を聞いていた。
だが、本題はここからだ。
「今回の件まではここまでとして、俺達をここに呼んだって事は、例の調べが付いたって事で良いんですよね?」
写真から恵美さんに視線を戻しながら俺が質問をすると、恵美さんは静かに頷いて見せた。
「一応は守秘義務もあるから、詳しい病名とかは、君達に説明する訳には行かないけど、森沢教授は……かなりの難病を患っているわ。それこそ、適切な治療をしても、先が長くは無いと医師の方が匙を投げる程に」
恵美さんは言ってから、どうにも今の感情を上手く説明出来ないと言った、複雑な表情を見せる。
今更では、恵美さんは森沢教授を恩師として慕っていたという話だし、胸中は複雑な筈だ。
でも、理由はそれだけでは無いだろう。
『うむ。その話を聞いているとまるで……』
「少しだけ、エドの事を思い出しますね」
メカ犬の言葉を紡ぐ様に、長谷川さんが小さな声で呟く。
このホルダー特務課に一時的に身を置き、E2のプロトタイプであるE1の装着者であると同時に、大学時代の恵美さんとの友人。
この場に居るメンバーも程度の差はあれど、ヤスを除けば、俺を含めて何かしらの接点があった人物でもある。
「今から思えば、エドを仲間に引き入れようとしたのは、森沢教授は全てを知っていたからかも知れないわね」
「そのエドって人の事は良く分からないんすけど、森沢教授は結局は何がしたいんですかね? 普通そんな大きな病気を抱えてるなら、俺達に正体をばらしてまで雲隠れするなんて変ですし……」
恵美さん溜息交じりに言った言葉に続き、ヤスが口にした台詞は、この場の誰もが思うところだった。
確かに、客観的に今の状況を見てみれば、森沢教授がこの時点で俺と表だって敵対する事は、何の企みがあるのかは知らないが、メリットよりもデメリットが大きい様に思える。
雲隠れするという事は、満足な治療を受ける事を放棄している訳だし、鳥羽さんを仲間に引き入れる為としても、自分が自由に動けなくなっては、行動し辛いだけでは無いだろうか?
あるいは、そのデメリットを帳消しに出来る程の何かがあるのか、若しくはそのデメリットを甘んじてでも焦って事を起こす必要があったのか……。
『キンキュウケイホウキンキュウケイホウキンキュウ……』
俺達が頭を悩ませていたその時、何の前触れも無く、タッチノートが警報音を響かせる。
「昨日に続いて、また一日に二回も……ってこれは!?」
ホルダー反応の場所を確認する為に、タッチノートのモニターした直後、俺は予想外の場所に反応がある事に驚愕した。
『マスター……』
それはメカ犬も同じだったらしく、俺に声を掛けつつ、既に周囲を警戒している。
何故、メカ犬がこの場で警戒態勢を取っているのか。
それはつまり、このホルダー反応が、今俺達が居る場所、海鳴署内から発生しているからに他ならなかった。
「少し、お邪魔するぞ」
「楽しそうな話をしてるみたいだから、僕達も混ぜてよ」
特務課のドアが開けられて、何でも無いかの様に俺達に声を掛けて来る、二人の新たなる来訪者。
それは藍色と灰色の二人組の怪人だった……。
最近は週に一度のペースで更新しておりますが、もしかしたら来週はお休みが取れないので、少し更新が遅れるかも知れません。