魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~   作:G-3X

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第十話 俺が執事で怪盗を追う!ちなみに主は・・・【後編】

俺が執事見習いを始めたことを、一番喜んだのはアリサちゃんの専属執事をしている鮫島さんだった。

 

今まで熱心に勧誘を続けてきた努力が、ついに実を結んだのだと、一筋の涙を流す程に・・・

 

更に鮫島さんは感極まったのか、俺は一週間だけの体験学習だと最初に言っておいたにも関わらず、俺を自分の後継者にすると言い出し、見習い兼アリサちゃんの専属第二執事の称号を頂いてしまった。

 

それだけならば良いのだが、鮫島さんの暴走は留まる事無く、見習い期間中はバニングス邸付近に建てられている社宅で暮らす様にと指示されたのである。

 

それは流石に色々な問題があるだろうし、第一に小学生が両親が居るのに一週間とはいえ、一人暮らしをするのは無理があると反論したのだが・・・

 

「良いわよ。頑張ってね純」

 

という母さんの二つ返事の了承により、許可が出されてしまった。

 

ただの天然なのか、それとも俺を信じてくれているからこそなのか。

 

個人的には後者であって欲しいと切実に願うが、正解は限りなく前者のような気がする・・・

 

まあ、そんな訳で、俺は肉体年齢が小学生にして、一人暮らしをする事になった。

 

平日は学校もあるので、執事の仕事は朝と夕方が主となる。

 

執事見習い初日に俺は、鮫島さんから執事とは何かを座学で学ぶ事となった。

 

俺は正直執事という仕事を甘く見ていたのかもしれない。

 

勿論仕事なのだから、大変な事もあるのだろうと思ってはいたのだが、執事の仕事とは俺の予想を遥かに超えていたのだ。

 

鮫島さんいわく、【執事とは奉仕のプロフェッショナルでなければならない】との事だ。

 

仕えるべき主が、何時如何なる時に、何を必要としても、迅速に対応出来る様に、常に執事は自身を鍛え準備を怠ってはならない。

 

身の回りのお世話は当然として、高い教養と、身体能力。

 

家事全般に始まり、あらゆる乗り物の操縦にその他諸々が出来なくては、一流とは言えないのである。

 

鮫島さんは俺に執事の才能があると言ったが、そんなにも過酷な事をこなせる才能は凡人の俺には皆無である。

 

俺は鮫島さんに如何して凡人である俺に、執事の才能があると言ったのか尋ねてみた。

 

すると鮫島さんは、確かに執事には幾多の才能と多大な努力が必要ではあるが、それ以上に大切な物があると言った。

 

その執事にとって最も大切な物とは、主を想う奉仕の真心なのだそうだ。

 

この真心がどんな才能よりも執事には必要であり、鮫島さんは俺に出会った瞬間にこの少年を一流の執事にしなければならないという天啓を受けたとか・・・

 

俺にそんな真心があるかどうかは自分では良く分からないが、鮫島さんに俺は如何見えたのだろうか?

 

まあ、ここまで色々言ってきた訳ではあるが、乗り物の免許を取得するのは、年齢制限があるし、専門知識を覚えるには一週間という時間はあまりにも短すぎる為、今回は俺の出来る範囲でアリサちゃんのお世話をする事で、執事の在り方を少しでも学ぶ事が課題となった。

 

座学で執事の心得を触りだけではあるが学んだ俺は、次にアリサちゃんの身の回りのお世話でするべき事を、今の俺にでも実行可能な部分で習い、早速次の日から実践する事になったのである。

 

今の俺に出来る事等、たかが知れたものであり、アリサちゃんの日常をサポートするぐらいしか出来ないのだが、俺はアリサちゃんの執事として二日目を終えた時ある事に気付いた。

 

仕事という事もあり、アリサちゃんに敬語を使って話していた以外は普段の俺と殆ど大差無かったのである。

 

大きく変わった事は、起こす相手がお隣のなのはちゃんから、ご主人様であるアリサちゃんに代わった位のものだった。

 

俺はこの事実をどう受け止めたら良いのだろうか・・・

 

ちなみにこの日、俺が起こしに行かなかった為か、なのはちゃんが遅刻した。

 

暫くの間は起こしに行けないって伝えたのだが、なのはちゃんの寝起きの悪さは筋金入りのようだ。

 

まあ、そんな感じで俺の執事&一人暮らし生活は、何気に変わり映えしないなという感想を抱きながら、数日が過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『つまりホルダーは、この三人の内の誰かという事だな』

 

「あの中にホルダーが居るならな」

 

俺は今社宅で自分に与えられた一室でメカ犬と作戦会議をしている所だ。

 

執事見習いになったのはホルダーを見つける為の潜入捜査であり、本気で執事を目指すつもりは、鮫島さんには悪いが今のところは無いのである。

 

今俺達は、この数日で行った其々の調査を報告し合い、ホルダーの正体に出来るだけの目星を着けようとしていたのだ。

 

俺はホルダーと戦った日に、バニングス邸内で働いていた従業員のシフト等、兎に角出来る限りの情報を集めた。

 

メカ犬は俺が内部で調査をしている間、夏休み前後を中心としたレディーマウスの動向を詳しく調べてもらっていたのである。

 

そして二人の情報を結び合わせた結果、バニングス邸内部の人間で犯行が可能であろう人物を三人にまで、絞り込む事に成功したのだ。

 

一人目の容疑者は、バニングス邸専属の庭師。

 

二人目の容疑者は、お抱えシェフの料理長。

 

三番目の容疑者は、最近雇われた新人のメイドさん。

 

集めた情報から、犯行時間にバニングス邸内部に居ながら、アリバイの無かったのが、この三人である。

 

「問題はこの中の誰かがホルダーと仮定した場合、誰がそうなのかって事だな・・・」

 

『うむ。一番手っ取り早いのは、身体調査でもして、暴走プログラムを所持しているかを確認する事だが・・・」

 

メカ犬の言う方法が実行可能ならば、確かに話は早いのだが、そんな事をするのは無理なのは分かっている。

 

せめて新たに犯行予告でも出してくれれば、やり様もあるのだが今の所は、これ以上の絞込みは出来そうに無い。

 

「相手がボロを出すまで、監視するしかないか?」

 

『うむ。それしか無いだろう』

 

古典的ではあるが、これからの作戦を監視作戦にする事が決定した。

 

こうして俺達の作戦会議は、一旦終わりを告げたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「手伝ってくれてありがとうね」

 

「いえ。これも見習いの勤めですから気にしないでください」

 

俺は掃除用具を抱えながら、お礼を言うメイドさんに返事を返す。

 

「まだ小さいのに確りしてるわね純君は。お姉さん感心しちゃうわ」

 

「そんな事無いですよ」

 

俺とメイドさんは互いに爽やかな笑顔で笑う。

 

今俺が会話をしているこのメイドさんは、作戦会議で容疑者の一人に上がっていた新人のメイドさんで名前は葉山瞳《はやまひとみ》さん。

 

綺麗な黒髪で腰まで届きそうな髪が印象的な、大和撫子を彷彿させる女性である。

 

昨日の作戦会議の結果、俺達は其々分担して相手を監視する事に決定した。

 

そして俺が担当する事になったのが、今目の前にいる瞳さんなのだ。

 

ちなみにメカ犬は、身体の小ささを有効活用して調理場に潜入し料理長を、残る庭師は、チェイサーさんがホバーモードで空から監視している。

 

「でも私のお手伝いなんてしてて良いの?純君のお仕事はアリサお嬢様のお世話だって聞いたけれど・・・」

 

「ああ、それなら大丈夫です」

 

アリサちゃんは今日なのはちゃん達四人でやる事があるとかで、男の俺には着いて来ないように言われているのだ。

 

何をするのかは知らないが、元々女の子のグループの中に男の俺が一人混じっている方が変なのである。

 

女の子だけで会話をしたい日も当然あるのだろう。

 

「今日は女の子だけで遊ぶみたいで俺はお留守番なんです。だから気にしないでください」

 

「あら、そうなの」

 

俺と瞳さんはその後も時折雑談を交わしながら、邸内の清掃活動を続けた。

 

掃除をしながら思うのだが、今の所俺には瞳さんがホルダーとは到底思えないのである。

 

三人の中では唯一の女性であり、ホルダーの正体がレディーマウスだとしたら、この人が一番怪しいと思っていたのだが、全くと言って良い程に、そんな素振りを見せはしない。

 

まだ油断は出来ないが、俺はこの人はホルダーじゃないのではと考え始めている。

 

「ねえ。純君にちょっと聞きたい事があるんだけど良いかな?」

 

バニングス邸内で、瞳さんが担当する掃除場所を全て回り終えた頃、瞳さんが俺に質問をしてきた。

 

「純君はどうしてこの歳で執事見習いになろうと思ったの?」

 

瞳さんの表情からは興味津々という感情が読み取れる。

 

まあ、普通に考えれば、基本的には平和な日本で年齢一桁の子供が、本格的に職業訓練していたら、大抵の人が興味を持つだろう。

 

俺が執事見習いを始めたのはホルダーの正体を探るためなのだが、勿論正直に言う訳にもいかない。

 

「え~とそれは・・・」

 

「それは?」

 

前のめりで聞いてくる瞳さんに言い逃れは出来そうに無いと感じた俺は・・・

 

「・・・それが必要だと感じたからです」

 

流石に詳しい事は言えないが、重要な部分を言わなければ大丈夫だろうと考えた俺は、やはり正直に答える事にした。

 

「・・・如何して必要だって思うの?」

 

俺が真面目に答えた為か、雰囲気が少しだけ変わったと思ったのだろう。

 

瞳さんからも、少しだけ真面目な雰囲気が出ている気がする。

 

「・・・それは言えません。でも俺はここでやらなきゃならない事があるんです。こんな答えじゃ納得して貰えないかも知れないですけど、今はこれ以外に言い様も無いんで・・・」

 

「・・・そう」

 

瞳さんは俺にそう一言だけ返した。

 

「こんな答えで納得してくれるんですか?」

 

「ええ。だってこれ以上聞いても純君が困っちゃうだけでしょ」

 

瞳さんは微笑みながら言う。

 

「それに純君・・・とっても良い目をしてたから」

 

「目・・・ですか?」

 

「とっても澄んだ目をしてる。何か強い決意を持ってるような・・・純君はそんな目をしてるよ」

 

瞳さんはしゃがみ込んで、俺と視線を合わせてから、両手で俺の頬を包み込み、一心に俺の目を覗き込んでくる。

 

「ひ、瞳さ・・・ん?」

 

俺は瞳さんに、流石に恥ずかしいので、放してくれる様に声を掛ける。

 

「あの人と同じ目をしてる・・・」

 

しかし聞こえていないのか、瞳さんは独り言の様に話続ける。

 

「私にもやらなきゃならない事があるんだ・・・あの人の意志を継ぐ為に、何より私自身がそうしたいって望んでるから・・・」

 

話がよく見えないのだが、瞳さんにもやらなきゃならない事があるらしい。

 

単純に考えればメイドの仕事なのだろうけど、俺にはどうも違う事を言ってる様に思える。

 

暫くすると、瞳さんは俺の頬から手を放してくれた。

 

「・・・ごめんね。純君の目が私の知ってる人に凄く似てたから・・・」

 

そう言って瞳さんは、呆ける俺を置いてその場を去って行った。

 

その日の夜。

 

バニングス邸で、レディーマウスからの予告状が発見された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『これはチャンスだぞマスター』

 

社宅の俺の部屋で、第二回になる作戦会議を開始すると、メカ犬が開口一番にそう口にした。

 

予告状が発見されたその日、バニングス邸は大騒ぎとなった。

 

レディーマウスから予告状が来たのだから、騒ぎになるのは当然の事なのだが、一番の問題はその予告状には【最も大切な物を頂く】の一文だけが書かれており、何を盗むのか明確には記載されていなかったのである。

 

これにより、バニングス邸の警備は、最高レベルまで引き上げられる事となった。

 

俺とメカ犬は二十四時間見張っていた訳では無かったので、分からなかったのだが、チェイサーさんは予告状が発見される時間まで、庭師の監視を続けており、ホルダーかどうかは兎も角、庭師が今回の予告状をバニングス邸に置いていない事だけは証明された。

 

確定では無いが、これで容疑者は暫定的に、料理長かメイドの瞳さんのどちらかに絞り込まれたのである。

 

「チャンスってどういう事だよ?」

 

『うむ。予告状には次の日の夜七時に来ると書かれていたのだろう』

 

「ああ」

 

確かにメカ犬の言う通り、犯行の予告時間は夜七時と書かれていたそうだ。

 

『ならばワタシ達もその日の夜はバニングス邸で、レディーマウスが来るのを待ち伏せるぞ』

 

メカ犬が言うことは最もオーソドックスな作戦であるが、その作戦に賛成するには一つだけ解決しなければならない事がある。

 

「待ち伏せをするのは良いんだけど、あの広いバニングス邸の何処で待ち伏せるんだよ?」

 

予告状には何を盗むのかは、書かれていなかったのである。

 

何処で待ち伏せるかで、下手をすれば逃げられる危険性も出てきてしまうかもしれない。

 

『その事だが、ワタシに一つ心当たりがある』

 

「心当たり?」

 

『実はアリサ嬢に、家で最も高価な物は何なのかを聞いて置いたのだ』

 

メカ犬がアッサリと言い放つ。

 

一体何時の間にアリサちゃんに、そんな事を聞いたんだろうかこいつは・・・

 

『そういう訳で次の作戦は、待ち伏せで行くぞマスター』

 

こうして俺達の第三の作戦はバニングス邸での待ち伏せ作戦に決定したのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当にここに来るのかな?」

 

俺はバニングス邸の、とある部屋の近くの庭で身を伏せながら、呟いた。

 

とある部屋とは、アリサちゃんの両親の部屋の事である。

 

幸か不幸か、部屋の主であるアリサちゃんの両親はとても忙しい人達で、この日も海外に居るらしい。

 

そのアリサちゃんは、今日は危険かも知れないという事で、すずかちゃんの家にお泊りに行っている。

 

しかもそれに便乗したのか、なのはちゃんとはやてちゃんも一緒にお泊りをするそうで、すずかちゃんの家では、現在パジャマパーティーが開催されている事だろう。

 

所で俺が何故こんな場所で、待機しているのかというと、それなりの理由がある。

 

メカ犬の話ではバニングス邸で最も高価な物が、この部屋にあるんだそうだ。

 

それはアリサちゃんのお母さんのティアラである。

 

アリサちゃんが言っていたそうなのだがそのティアラは高価であると同時にとても思い出深い品なのだそうだ。

 

「・・・守りたいよな」

 

その思い出が何なのかは、俺のあずかり知らない所ではあるが、誰にとっても大切な思い出とはあるのである。

 

それを盗むなんて許せる筈が無い。

 

左腕に着けた腕時計で時間を確認すると、現在の時刻は午後六時五十分を回っている。

 

犯行予告の時間まで後十分も無い。

 

俺が時計から目を離し部屋の近くを確認した時、人影が動くのを見つけた。

 

今の時期は残暑が厳しいながらも、空が暗くなるのは随分と早くなっており、何の光源も無しでは、かなり近づかなくては顔を確認する事すら出来ない程である。

 

ライトを持っていない様なので、警備員では無さそうだ。

 

俺はタッチノートを取り出し、別の場所で待機している、メカ犬に連絡を取る。

 

「聞こえるかメカ犬」

 

[『如何したマスター。まだ犯行予告の時間ではないが、何かあったのか?』]

 

「ああ、怪しい人影を見つけたから、これから後を追ってみる!」

 

[『分かった。ワタシも直ぐに行くから気をつけろ!』]

 

「了解!」

 

俺はタッチノートの通信を切り、謎の人影を追って走り出した。

 

その人影は建物の近くで不審な動きをしている。

 

「そこで何をしているんだ!?」

 

俺はライトを付けてその人影に当てながら叫ぶ。

 

メカ犬が来るまでにはもう少し時間が掛かるが、変身出来なくても多少の時間ならば稼げるかも知れないと考えた俺は、思い切って声を掛けたのだ。

 

「!?」

 

突然ライトを浴びた人影が此方に振り向く。

 

その正体は・・・

 

「瞳さん!?」

 

そこに居たのはメイド服を着た女性である瞳さんが居た。

 

やはり瞳さんがホルダーだったのかと俺が思ったその時・・・

 

『キンキュウケイホウキンキュウケイホウキンキュウケイホウ・・・』

 

タッチノートから警告音が鳴り響く。

 

それと同時に、俺の近くの壁にひびが入る。

 

「危ない!!!」

 

それを見た瞳さんが、俺を抱え込みながら、その場から離れる。

 

その次の瞬間、先程まで俺の居た場所には、無数の崩れた瓦礫が降り注いだ。

 

もしも俺があの場所に居続けたとしたら、今頃は大怪我では済まない事態に陥っていたかも知れない。

 

「どうやら当たりみたいね・・・」

 

瞳さんが何やら呟きながら瓦礫のさらにその先を見据える。

 

その先に居たのは人外の化け物と言うに相応しい姿をした存在が居た。

 

一言で表すのであれば、二足歩行の巨大なネズミ。

 

間違い無く、以前ワニのコジローが飼われていたお屋敷で遭遇したホルダーだった。

 

俺は瞳さんがホルダーではないかと疑っていたのだが、どうやらそれは間違いだったらしい。

 

「ごめんね純君。君は私が必ず守るから、少し下がっててね」

 

瞳さんは俺にそう言うと、抱えていた俺を解放して、ホルダーを睨み付けながら、一歩前に出る。

 

「やっと見つけたわよ。偽者さん」

 

「ん?」

 

ホルダーに指差しながら啖呵を切る瞳さんに、ホルダーが反応した。

 

「何だいこのメイドさんは?」

 

「あなたね!最近レディーマウスの名を騙って、悪さをしているっていうのは!?」

 

「突然何を言い出すんです貴女は?私は正真正銘レディーマウスですよ。第一仮にそうだとして、どうして貴女は私が偽者だと分かるんですか?」

 

「それはね・・・」

 

瞳さんはホルダーに言葉を返しながらスカートに手を入れる。

 

「本物がここに居るからよ!!!」

 

スカートの中から瞳さんが取り出したのは、鞭だった。

 

慣れた手つきで鞭を振るう瞳さんは、そのままホルダーに鞭の一撃を浴びせ様とするのだが・・・

 

「ふん!」

 

ホルダーは自身の尻尾を瞳さんが扱う鞭の様に操り、その一撃を防いでしまう。

 

この一連の出来事に驚き続ける俺だが、一番驚愕したのは、瞳さんがホルダーの攻撃をした時に言った言葉である。

 

それが真実であるならば、瞳さんは本物の・・・

 

「なるほど・・・貴女が本物のレディーマウスだったという訳ですか。道理で私が偽者だと分かる筈です」

 

ホルダーが俺の思っていた事を口にする。

 

「そういう事よ。良くも人の名前を使って好き放題やってくれたわね」

 

「それはすみませんね・・・でもその心配も今日までの話ですよ」

 

「ふざけないで!」

 

瞳さんはホルダーの言葉に激昂し、再び鞭の一撃を繰り出す。

 

しかしその攻撃はまたしても、ホルダーに届く事は無かった。

 

ホルダーは先程も鞭の一撃を防いだ自らの尻尾を使い、鞭を絡め取ってしまったのである。

 

「きゃっ!?」

 

自身の手から鞭が無理やり奪い取られた事で、瞳さんは手を傷めたのか、後ろに後退した。

 

「ふざけて等いませんよ。何せ今日から私が本物のレディーマウスになるんですからね」

 

瞳さんは俺を庇う様に、手を広げながら後ろに下がっていく。

 

そしてホルダーが、お遊びはここまでだとばかりに、襲い掛かろうとしたその時、俺の良く知る声が聞こえて来た。

 

『遅くなってすまないなマスター』

 

その声の主は頭上から、俺の横に降って来て、見事に着地を決める。

 

「何処言ってたんだよお前は?」

 

俺はメカ犬に遅いぞと文句を言う。

 

『それなのだがマスター、先程からの違和感に気づかないか』

 

遅れてやって来たメカ犬はそんな事を言い出した。

 

「違和感?」

 

『周りには大勢の警備員がいる上に、こんなにも大きな音を立てているというのに誰も来ないだろう』

 

メカ犬に言われて俺も気付く。

 

確かにこんな大騒ぎをしているのに誰も来る気配が無い。

 

「如何いう事だよ?」

 

『これが奴の能力だ。恐らく奴の能力は認識阻害で間違い無いだろうな』

 

「認識阻害って、チェイサーさんも使ってる奴と似たようなのか?」

 

『原理は違うが、似たような物ではあるな。奴の場合は自分から一定距離を置いている相手からの存在を隠蔽できる様だ。逆にその範囲の内側に居る相手には何の効果も無い様ではあるがな』

 

「じゃあメカ犬が遅くなったのは・・・」

 

『マスターが張り込んでいた場所を中心に、奴の能力の範囲の内側に入るまで、しらみつぶしに探していたのだ』

 

如何やらメカ犬も相当苦労してここまで来てくれたらしい。

 

「ねえ、純君・・・それって何なの?」

 

瞳さんがメカ犬を未知の生物を見る目で、指差しながら俺に質問してくる。

 

そういえば最近ここで働き始めた瞳さんは、メカ犬を見るのはこれが初めてだった筈だ。

 

俺がどう説明しようか考えていると、

 

『始めまして。ワタシはオモチャ会社の新製品の(以下略)』

 

メカ犬がもはや持ちネタのギャグになりつつある例の説明を開始した。

 

「それは取り敢えず、今はいいから・・・」

 

仕方なく俺はメカ犬に軽く突っ込みを入れて黙らせる。

 

「え~と、こいつの事を一から説明すると長くなるんで、俺の相棒だって思ってくれれば良いです」

 

俺は簡潔にメカ犬の説明を済ませる。

 

「相棒?」

 

まあ、こんな説明では余計に分からなくなるであろう。

 

瞳さんも頭の上に大きな?マークを浮かべている様な想像が容易に出来そうな程に、困惑した表情を見せている。

 

「君達・・・何時まで私を無視しているんですか?」

 

今まで突然のメカ犬の登場により、放心していたホルダーが、我に返った様で、俺達に指摘して来た。

 

確かに何時までも無視する訳には行かない様だ。

 

「それじゃあ行くかメカ犬」

 

『そうだなマスター』

 

俺とメカ犬は一歩前に足を踏み出す。

 

「ち、ちょっと!危ないわよ!?」

 

俺達の突然の行動を見て、瞳さんが慌てて声を掛ける。

 

その声を聞いた俺は、瞳さんに答えを返す。

 

「大丈夫ですよ」

 

「純君?」

 

「俺が今ここに居るのは、この為なんですから」

 

俺はそれだけ言うと、ポケットからタッチノートを取り出して開く。

 

「やるぞメカ犬!」

 

『了解だマスター!』

 

メカ犬と声を掛け合いながら、俺はタッチノートのボタンを押す。

 

『バックルモード』

 

隣のメカ犬は音声が流れると同時にベルトに変形して、俺の腹部に自動的に巻かれる。

 

「変身」

 

俺は音声キーワードを入力して、素早くタッチノートをバックルの窪みに差し込んだ。

 

『アップロード』

 

白銀の光が俺の全身を包み込み、その姿をメタルブラックの戦士に変える。

 

「「仮面ライダー!?」」

 

俺の変身シーンを見た瞳さんとホルダーが同時に驚きの声を上げる。

 

驚くのも無理は無いと思うのだが、今この場に居る全員が、仮面ライダーにホルダーとレディーマウスなんていう普通の人が居ない状況なので、自分の事を棚に上げてそこまで驚くのは、失礼じゃないかと思ってしまうのは、俺のわがままなのだろうか?

 

『また逃がしては面倒だ。一気に迫るぞマスター!』

 

何気に意気消沈している俺にメカ犬が声を掛けてくる。

 

「ああ、分かってる!」

 

俺は気を取り直しながら、ベルトの右側をスライドさせて緑のボタンと黄色のボタンを続けざまに押す。

 

『スピードフォルム』

 

『スピードロッド』

 

ボディーカラーは鮮やかなライトグリーンに変わり、俺の右腕にはこのフォルムの専用武器であるスピードロッドが握られる。

 

「それじゃあ派手に行くぜ!」

 

俺はロッドを振るいながら素早く接近してホルダーに連撃を打ち込んでいく。

 

「ぎゃ!?」

 

ホルダーは俺の素早さに対応出来ないのか、俺の連続攻撃をまともに喰らい吹き飛ぶ。

 

「くそ・・・」

 

ホルダーはまたしても逃走を図る為に立ち上がろうとするが、それを許すほど俺達は甘くない。

 

『逃げる気だぞマスター!」

 

「させるか!」

 

俺はバックルからタッチノートを引き抜き、スピードロッドの溝にスライドさせる。

 

『ロード』

 

音声が聞こえた事を確認した俺は、再びタッチノートをバックルに差し込む。

 

『アタックチャージ』

 

ベルトから発生した光が右腕のラインを通り、スピードロッドの先端に集約する。

 

「こいつで決めるぜ」

 

俺は集約した光の先端をホルダーに向けて、全力で走り出す。

 

「スピードロッド」

 

全力で走る事で得た力の全てを収束させて、最高の突きをホルダーに食らわせる。

 

「ダッシュ・エア・プッシュ」

 

高速で繰り出された突きを喰らったホルダーはそのまま爆発した。

 

爆発跡に居たのは、コック姿の男性だった。

 

その男性には見覚えがあった。

 

「ホルダーの正体は料理長だったんだな・・・」

 

こうして今回の怪盗騒ぎは無事に幕を閉じたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以外にも早くホルダーの事件が解決したので、俺がこれ以上執事見習いをする必要は無いのだが、周りはそんな事情は知らないので、翌日も俺は朝から仕事の為にバニングス邸に訪れていた。

 

まあ、昨日はアリサちゃんがお泊りの為、すずかちゃんの所に行っているので、あまりする事は無さそうなのだが、恐らくメイドさんが一人居なくなっているであろうから、そのフォローが出来ればと思い来て見みた訳だ。

 

俺がバニングス邸の敷地内に入ると・・・

 

「おはよう純君。昨日は大変だったわね」

 

「ええそうですね。昨日は本当に・・・って瞳さん!?」

 

そこにはメイド服を着た瞳さんが居たのである。

 

「ど、如何して瞳さんがここに居るんですか!?」

 

「如何してって私はここで雇われてるメイドなんだから、ここに居るのは当然でしょ」

 

瞳さんは当然とばかりに言う。

 

俺はその態度に本気で驚愕している。

 

てっきり俺は、偽者が居なくなった事でここに居る理由が無くなっただろうから、何処かに居なくなるのだとばかり思っていたのだが・・・

 

その事を言うと瞳さんは微笑みながら、

 

「私も最初はここに来た目的は、この付近に偽者が出る事を突き止めて、いずれ狙われそうなここで潜伏してただけなんだけどね・・・」

 

そう言いながら瞳さんは、以前俺にした様に、しゃがみ込んで俺の頬を両手で包むと、耳元で囁いたのである。

 

「私ね。純君に凄く興味が出ちゃったから、暫くはここに居ることに決めたんだ」

 

それから瞳さんは何も無かったかのように、俺を解放して今日もお仕事がんばるぞ~等と言いながら去って行った。

 

俺は暫くその光景を見ながら固まっていたのは、致し方無い事だろう。

 

今日の海鳴は女性の謎を垣間見つつも、それなりに平和である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○オマケ

 

「ただいま~」

 

俺が一週間の執事見習いを終えて自宅に帰り、玄関を開けた時、俺の目の前に信じられない光景が広がっていた。

 

「「「「お帰りなさいませご主人様」」」」

 

メイド服を着たなのはちゃん達が、玄関でお出迎えをしたのである。

 

その日の俺は・・・

 

・・・これはまたの機会に話す事としよう。

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