魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~ 作:G-3X
それでは今回も楽しんでいただけたら嬉しい限りです。
ではでは。
メルトの言っていた事を、信用して良いのかどうか。
その答えは、今はまだ出ていない。
だけどその言葉が真実だったとしたら、放って置く事は出来ないというのが、正直なところだ。
『奴らが言う通り、姫路嬢が狙われているとしたら、姫路嬢の所在を知っておく必要があるが……』
「まさか、このタイミングで出かけてるなんてな」
俺とメカ犬は、互いに視線を合わせて溜息を吐く。
今、俺とメカ犬が居る場所は、姫路ちゃんの家の玄関先。
先程まで俺は、姫路ちゃんのお母さんと話していたのだが、どうやら俺達が来る少し前に、出掛けてしまったらしいのだ。
姫路ちゃんの話では、どうも学校の友達と、海鳴デパートに買い物に行ったらしい。
一人で行動している訳では無いし、目的地が人通りの多い場所という話なので、相手が強引な手段を実行に移そうとしていない限りは、安全な筈だ。
でも、その安全はメルトの言った言葉が真実ではなく、森沢教授が姫路ちゃんに対して、手段を択ばない強行に及ばないというのが前提とした上で、成り立っている。
だが、それとは別に、もう一つの疑念があるのだ。
オーバーとメルトが俺達の前から去ったその後、すぐに消失してしまったのだが、海鳴デパートの付近でホルダー反応が確認されたのだ。
なので、ホルダー特務課は、新たな情報が入るまで待機。
現場の探索には、ヤスが向かっている。
そして俺とメカ犬は、万が一の為にこうして姫路ちゃんの安全を確保する為に、ここまで来たのだが、空振りで終わってしまった訳だ。
「取り敢えず、俺達も海鳴デパートに行ってみるか」
『うむ。その方向には確か、今はヤスが向かっている筈だしな。途中で合流出来るかも知れん』
「ああ、チェイサーさんに頼んで移動すれば、そんなに時間も掛からない筈だしな」
俺はメカ犬と、これからどうするかの算段を話し合った後、次の目的地を海鳴デパートに決めて、移動を開始した。
ここ最近は連日でホルダーの出現が相次ぎ、外出を控える人も多いと言われているが、海鳴デパートは今日も多くの買い物客達で賑わっている。
その中には、小さな三人の女の子達の姿もあり、今はデパート内の小規模な軽食店で、ジュースとケーキを囲み、談笑に興じている姿もあった。
「ちょっと遅くなっちゃったけど、ドラマのヒロイン役お疲れ様。姫ちゃん」
「お疲れ様~」
ポニーテールの女の子を中心に、右側の席に座った、ショートカットのボーイッシュな女の子が音頭を取り、反対の左側に座ったボブカットのフリフリなレースのゴシックな服の女の子が、緩い口調で続き、惜しみない拍手を送る。
「えへへ、ありがとうね。芽衣ちゃん。それに絵馬ちゃんも」
姫ちゃんと呼ばれたポニーテールの少女は、月刊海鳴の特別企画の特典ドラマで、見事に一般の応募枠からヒロインの座を射止めた姫路に他ならない。
そして姫路の両脇を固める二人の女の子は、姫路の通う学校のクラスメートであると同時に、一番仲が良い友人達である。
ボーイッシュなショートカットの女の子は、田中 芽衣《たなか めい》。
もう一人のゴシックなボブカットな女の子が、前田 絵馬《まえだ えま》。
この三人は家も近所で、小学校に入る前の幼稚園時代からの縁で、学校の外でも一緒に遊ぶ機会が多い。
今日もこの三人で集まり、海鳴デパートで買い物をしていた訳だが、もう一つの目的は、姫路の主演するドラマ撮影が無事に終わった事を祝う会も兼ねていた。
まあ、そうは言っても小学生だけの集まりで、早々大きなパーティーなど出来る筈もなく、こうしてデパート内の小さな軽食店でのお茶会が精々ではあるのだが、それでも友人が労ってくれるというのは、主賓である姫路としても、嬉しかったりする。
「来月発売の、月刊海鳴の特別付録に、ドラマのDVDが付いてくるんでしょ? 絶対に買って視てあげるわよ」
芽衣は目の前のショートケーキの上に載ったイチゴを、フォークの先で突き刺しつつ、宣言した。
「そう言えば~一緒に共演した主人公役の人がぁ、同じ年の男の子だったんだよねぇ。どんな感じの子だったの~?」
そんな芽衣のマイペースな話題を皮切りに、絵馬が間延びした緩い口調で、姫路に今回の集まりの発端である、ドラマに関係した質問をした。
「え!? ど、どんな感じって……その、優しくて強くて……あの、か、格好いい人……だったよ」
姫路は、絵馬の質問で、具体的に一人の少年を思い浮かべて、頬を朱色に染めながら、恥ずかしそうに呟く。
彼女が、こうなってしまうのは、仕方が無い事だろう。
何せ、姫路はこの海鳴市の平和を守る、大の仮面ライダーファンと自他共に認める、少し個性的な感性を持つ少女なのである。
しかも、偶然とは言え、その仮面ライダーの正体である少年を知り、しかも一緒にドラマで共演を果たしたのだ。
現状での恋愛感情を含むものなのかは、姫路本人もまだ分かってはいないが、憧れの続ける人だという事に変わりない。
そんな人物を明確に想像してしまったのだから、恥ずかしくなってしまったとしても、仕方が無い事だろう。
だが、この誤解を招きかねない反応を、正しく理解出来る人は中々いない。
当然ながら、姫路の友人である二人も、その反応を見て、友人に少しばかり早すぎる春が来たのだなと、半分は優しく見守り、もう半分は目の前の可愛い存在を弄りたいという欲求を秘めた瞳で見詰める。
「あれ~あたしは、どんな人なのか聞きたかっただけなんだけどなあ~」
「ふふん、姫ちゃんも恋する女の子になったんだね。私は嬉しいよ」
「な!? ち、違うよ!? 純さんはそんなんじゃなくて! ただ憧れの存在っていうか……仮面ら、じゃなくて、その……と、兎に角違うんだからね!?」
絵馬と芽衣に、にやけ顔で言われながら、姫路は両手を振りながら否定するのだが、その姿は照れ隠しとしか見えない。
お店の中で騒ぐのは関心しないが、こういったやり取りも、日常を彩る一部である。
だが、そんな日常には似つかわしくない、絹を裂く様な悲鳴が、何の前触れも無くこの場に響き、日常は脆くも崩れさった。
「な、何? 今の声!?」
店内の中にまで響く、その悲鳴に驚き、芽衣が驚愕の声と共に、ガラス張り店内から、外の様子を窺がう。
「逃げろおおおおおおお! 怪物が出たぞおおおおおおおお!」
そんな叫びをあげながら、デパートのスタッフが出口に向かって逃げて行く人達を誘導する。
「あ、あたし達も~急いで逃げた方が良いんじゃないかなぁ……」
「そうね!」
「芽衣ちゃん、絵馬ちゃん。あっちで誘導してるみたいだから、あの列に並んでここから離れよう」
突如起こった事態に、表情を不安で歪ませながら、絵馬が逃げようと言い、芽衣がそれに頷き、姫路は避難経路に二人を誘導する。
流石にデパートで、怪物騒ぎが過去に二回も起こったとあってか、他の系列デパートと比べても、スタッフによる緊急時対応の熟練度はかなり高く、逃げて行く客達の混乱も、最低限に抑えられていた。
しかし、その高レベルな避難も、理不尽な力の前では、時として無力になってしまう。
「こっちに怪物が接近しているそうです! お客様の皆さん!焦らず子供やご老人の方、怪我をしている人を優先的に……なんだ!?」
通信機を片耳に当てつつ、拡声器で危険が迫っている事を知らせるスタッフの声だったが、その声は途中で、壁を崩す破壊音によって、中断されてしまう。
崩れた壁の向こう側から現れたのは、人間とは違う異形の姿。
平均的な成人男性と変わらない背丈だが、その全身を覆う緑の鱗が人とは違う存在だという事を、如実に示している。
そして肉食の爬虫類を思わせる、鋭い瞳と牙。
一言でこの異形の存在を表すとするのならば、ワニをそのまま人間の様な二足歩行に進化させた姿とでも言えば良いだろうか。
自身の身長と差ほど変わらない、大きな尻尾を引き摺りながら、怪物は崩れた壁の残骸を踏み潰しつつ、歩を進める。
怪物、ホルダーの出現によって、不安と恐怖が、一気に爆発して、叫びながら多くの人がホルダーの脅威から逃げようと、がむしゃらに走り出す。
そんな事になってしまえば、身長の低い子供等は、すぐに人の波へと飲まれてしまう。
それは、この避難誘導の中に混じっていた姫路達も、例外では無かった。
「きゃっ!?」
荒々しく流れる人の波にバランスを崩し、三人の中でも、見るからに体を動かす事が苦手そうな絵馬が躓いてしまう。
「絵馬ちゃん!」
「早く立って逃げるよ!」
躓いた絵馬を助ける為に、芽衣が駆け寄り、姫路が助け起こす。
しかし、その間にホルダーは姫路達の目の前に接近しており、既に逃げる時間は残されてはいなかった。
だが、天はこの三人を見捨ててはいなかったのである。
「だああああああ!」
一人の青年が叫びながら、横から飛び蹴りを決めて、姫路達に手を掛けようとしたホルダーを吹き飛ばしたのである。
「あ!」
自分たちのピンチを救ってくれた一人の青年を見て、姫路が思わず声をあげてしまう。
何故ならば、その青年に見覚えがあったからだ。
自分の尊敬する仮面ライダーの正体である少年が、アルバイトをする喫茶店で共に働いていたのを見た事があったからだ。
確かその時、この青年は知り合いには、こう呼ばれていた筈だ……。
「……ヤスさん?」
「早く逃げな、嬢ちゃん達!」
既に腹部にはベルトを巻いていた青年、ヤスは姫路達に逃げる様に促す。
「あ、ありがとう御座います。ヤスさん! 行こう芽衣ちゃん、絵馬ちゃん」
「うん、あんがとねオジサン!」
「えっとありがとう~ですぅ」
姫路達は助けてくれたヤスにお礼を言いながら、他の逃げる人達に混じってこの場を離れる。
「オジサンって……俺まだ高校生なんだけどな」
そんなに老けて見えるのかな俺……。
と、芽衣の言葉に傷つきながらも、気を取り直して蹴り飛ばしたホルダーが、起き上がってくる姿を見据えて、その手にカードデッキを掲げる。
「念の為に、こっちに来て置いて良かったぜ。こいつがあの灰色の奴が言ってた通り、姫路の嬢ちゃんを狙ってたのかは知らないが、この街で好き勝手にさせるかよ! 変身!」
ヤスは最後に叫ぶと同時に、カードデッキを、ベルトの中心に嵌め込む。
『アクセス・リンク』
ベルトから音声が響き、ヤスの目の前に光の文様が浮かび上がり、その光がヤスの身体と重なる事で、白い全身鎧の様なボディーと、緑の複眼が特徴的な仮面ライダー、プロトアクセスへと、変身を遂げる。
「しゃあっ!」
自らに気合を入れる為に短く叫ぶと同時に、ファイティングポーズを取ったプロトアクセスは、ホルダーに向かって駆け出して、拳を繰り出す。
起き様に殴り掛かったプロトアクセスの拳が、ホルダーの頬を捉える。
続け様に、プロトアクセスは、回し蹴りを放つのだが、ホルダーの方も、何時までもただ攻撃を受け続けるだけの存在ではない。
ホルダーが大きく身を捩ると、その大きな尻尾が、プロトアクセスの放った回し蹴りと、激しく衝突する。
「うわっ!?」
両足が地に付いているだけ、ホルダーの方が姿勢が安定していたのか、プロトアクセスの方が、衝撃によって吹き飛ばされてしまう。
そして更に、ホルダーが大口を開けると、綺麗に並ぶ鋭い牙が、散弾銃の様に次々と発射されて、プロトアクセスや、付近の地面に当たると同時に、小規模な爆発を引き起こしていく。
「こ、このっ!?」
威力は其処まで大きくないのだが、連続で爆発していく中、プロトアクセスは身動きが取れないでいる。
しかも、ホルダーの抜け飛んでいく牙は、止めど無く生えてくるので、弾切れでこの攻撃が止む事は期待できそうにない。
「な、何か反撃できる手は……ん!?」
何とかこの状況を打開しようと、ホルダーの攻撃に耐えながら、プロトアクセスが周りを見ていると、ある事に気付く。
「……いい加減にしろ!」
プロトアクセスは、カードデッキから一枚のカードを抜き放ち、ベルトの右側のスリッドにそのカードを通す。
『アクア・リンク』
ベルトから音声が響くとほぼ同時に、プロトアクセスは自身の右手に向かって手を翳す。
プロトアクセスが手を翳したその先には、ホルダーが壁を壊した事によって共に壊れてしまった水道管から絶え間なく流れ続ける水。
一時的にその水をコントロールする事に成功したプロトアクセスは、その水の塊を自身の目の前まで移動させて、ホルダーが放ち続ける牙から身を守る為の盾にした。
次々と水の中に飛び込んで行く、ホルダーの牙は、爆発する事無く水中でその形を保ち続ける。
「このままお返しするぜ!」:
大量の牙を吸い込み続ける水の塊を操り、プロトアクセスは、ホルダーに水の塊をぶつけた。
そうすれば、当然ながら水の塊はその形を失い、その水の中に蓄えられていたホルダーの牙が連鎖的に爆発を引き起こして、ホルダーの鱗の防御を超えて、それなりのダメージを与える事に成功する。
更に勝利の女神は、プロトアクセスに味方したのか、耳に届く激しいサイレンの音。
そのサイレン音の正体は、ホルダーの発生通報を受けて、駆け付けたE2の駆る専用バイク、マシンドレッサーⅡのものだ。
「ヤス君!」
すぐにマシンドレッサーⅡを降りて、プロトアクセスの傍に駆け付けたE2。
「待ってましたよ、長谷川さん」
声を掛けて来たE2と並びつつも、プロトアクセスは爆発のダメージにふらつくホルダーに対して、警戒を解く事は止めない。
自分の攻撃によって自滅する事を、ホルダーのプライドが許さないのか、まだ爆発によって、鱗から若干煙があがっているのにも関わらず、E2とプロトアクセスに向かって、大きな尻尾を振りながら駆け出した。
「ふん!」
だがホルダーの拳が届くよりも先に、E2がホルスターから専用銃である、ESM01を抜き放ち、ホルダーを狙い撃つ。
E2の放った弾丸を身体中に浴びて、火花を散らすホルダーに対して、一気に距離を詰めたプロトアクセスが、再び近接による格闘戦を仕掛ける。
先程とは違い、硬い鱗に相当のダメージを受けたホルダーは、プロトアクセスの攻撃を受けて、着実にダメージを重ねていく。
「はあああああ!」
プロトアクセスとホルダーが戦っている間に、後ろに回って距離を詰めていたE2がホルダーの尻尾掴んで、力の限り振り回す。
「ヤス君、今だ!」
「は、はい!」
E2がホルダーの動きを封じている間に、一歩引いたプロトアクセスが、再びカードデッキから一枚のカードを抜き放ち、ベルト横のスリッドへと通す。
『リンク・チャージ』
ベルトから発生した光が、右拳へと集約され、何時でもその一撃を放てる様に、プロトアクセスは身構える。
「ライダーパンチ!」
プロトアクセスが放った必殺の拳が、無防備なホルダーの腹部へと突き刺さる。
その一撃が、勝負を決する攻撃となり、ホルダーは大きな爆発を引き起こす。
ホルダーの爆発した後には、二人のライダーと、気絶したオレンジのエプロンを身に着けた男性。
このエプロンの男性が、ホルダーの素体となった人物で、間違い無い。
「やったね」
「どうもです」
戦いに勝った事を確信して、E2がプロトアクセスの肩を軽く叩く。
プロトアクセスも恐縮ですとばかりに、頭を下げたのだった。
確かに、この場での戦いには勝ったが、まだ二人は気付いていない。
この戦いそのものが、ホルダーに対して有力な戦力を持つ者の身動きを封ずる為の手段だったという事に……。
「二人とも、何処にいっちゃったんだろう?」
ヤスの助けもあり、海鳴デパートから逃げる事が出来た姫路だったが、流石にホルダーの直接の脅威に晒された混乱は大きく、逃げている間に、芽衣達とは逸れてしまった。
「よう。こんなとこで会うなんて、奇遇じゃねえか」
そんな姫路に対して、気安く掛けられた声。
「あ、どうもこんにちは!」
挨拶に反応した姫路は、声のした方に振り向くと、笑顔で返事をする。
その姫路の対応から、声の主に対して、一切の警戒は見られない。
それは知り合いだからという理由もあるが、それ以上にこういった荒事が起こっている時には、とても頼りになる人物だと、認識しているからだ。
だが、その認識は間違っている。
いや、間違ってはいなかった。
ただその情報は、既に過去のものとなっていたのだ。
おそらく多くの事情を知る、姫路の知る少年が、この人物と姫路が会っていると聞いたならば、すぐに離れろと叫んでいた事だろう。
しかし、それを指摘出来る人物は、少年に限らず、この場には誰も居ない。
だからこそ、姫路は、この声の主に対して、無防備に接してしまう。
「なんか向こうで、騒ぎにでもなってるのか?」
「そ、そうなんですよ! 海鳴デパートにホルダーが出たんです! それでヤスさんが危ないところを助けてくれたんですけど……」
「ヤスなら強いから、心配いらないだろ。それよりも、ちょっと嬢ちゃんに頼みたい事があるんだよ」
「私に頼みたい事ですか?」
「ああ、俺の知り合いが、嬢ちゃんと話したいらしくてな。面倒だと思うがちょっと、一緒に来てくれねえかな」
「えっと、今は友達と逸れてしまったんで、合流してからでも良いですかね?」
「……出来れば、今からでも一緒に来て欲しいんだが、まあ、友達が心配な気持ちも分かるからな。良いぜ、一緒に探してやるよ」
「ありがとう御座います……鳥羽さん!」
姫路はまだ知らない。
この声の主、鳥羽と共に行動する事が、先程のホルダーと相対する以上に、危険かもしれないという事を……。