魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~   作:G-3X

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第十一話 努力の先にあるものは【前編】

「大丈夫?すずかちゃん」

 

俺はすずかちゃんに、確認する。

 

「うん、平気だよ」

 

すずかちゃんは俺の質問に、笑顔で答えてくれた。

 

特に痛みは感じている様子も無いので、本当に大丈夫なのだと思う。

 

「きつかったら遠慮無く言ってね。出来るだけ痛くないようにするからさ」

 

見た感じ大丈夫だとは思うのだが、我慢しているだけという可能性も少なからずは存在するので、俺は念を押す様に、もう一度だけ、確認した。

 

「あっん・・・」

 

確認をする時に、俺が多少動いた為か、すずかちゃんの声の調子が少しだけ変わる。

 

何故俺が動く事で、すずかちゃんが反応するかというと、俺とすずかちゃんが、限りなく密着している為だ。

 

一緒に本を読む時等は、何時も寄り添う様な形になるが、今はそれ以上に・・・言ってしまえば今の俺達は一つに繋がっているのである。

 

だからどちらかが動けば、もう片方が何かしらの影響を受けてしまうのは、仕方の無い事なのだ。

 

「やっぱり、何処か痛かった?」

 

すずかちゃんの反応を見た俺は、再度安否を確認する。

 

「大丈夫だよ。ちょっとくすぐったかっただけだから・・・」

 

すずかちゃんはそう言った後、頬を桜色に染めながら、何処かモジモジとした動きを開始した。

 

現在密着状態である俺は、その動きに確かに、相手に動かれるとくすぐったいなと感じながら、質問する。

 

「突然モジモジしだして如何したの?」

 

「う、うん・・・何か今頃になって純君とこんなにくっ付いてるのが恥ずかしくなってきちゃって・・・」

 

恥ずかしそうに言ったすずかちゃんは、羞恥で頬を赤く染めながら、上目遣いで少しだけすずかちゃんより背の高い俺を見上げてくる。

 

まあ、確かにこれだけ密着というか、繋がっている状態では、すずかちゃんみたいに奥ゆかしく控えめなタイプの人は恥ずかしいと思うのも無理はないのかも知れない。

 

しかも目の前でこんな反応をされてしまうと、何だか俺まで恥ずかしくなってきてしまう。

 

「そ、それじゃあ少し動くよ?」

 

このままでは場が持たないと判断した俺は、次のステップに移行するために提言した。

 

「う、うんそうだね」

 

すずかちゃんもこの恥ずかしい空気には耐えられないと感じたのか、俺の案に同意の意志を示す。

 

「それじゃあ、早速練習しよっか!」

 

「うん!」

 

俺とすずかちゃんはゆっくりと歩幅を合わせながら、長めの手拭いで繋がれている、俺の右足とすずかちゃんの左足を同時に前に出す。

 

季節は今も残暑が厳しい秋。

 

俺とすずかちゃんはもうじきやってくる運動会の本番に向けて、出場種目である二人三脚の特訓を開始したのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は皆にお知らせと、話し合って貰いたい事がありま~す」

 

私立聖祥大附属小学校の一室の教卓で、我らが担任にして、独身・天然・自称20代の真里子先生が俺達生徒達に対し、緩やか~な宣言をした。

 

今の時間は本日の授業が終了し、残すはこのHRのみであり、この時間が終われば、学生ならば余程の事情が無ければ、誰もが望むであろう放課後が待っているのだ。

 

そんな中で話し合いを要求するのだから、余程の内容でなければ、このクラスの生徒達は納得しない事だろう。

 

それというのもこの真里子先生は、普段は仕事に対して真面目なのだが、稀にその天然を発揮して、俺達を困惑させるのである。

 

一学期にはHRの時間に如何して自分に彼氏が出来ないのか、そして作るには如何すればいいのかを、マジ討論する様に言ってきたのだ。

 

その提案をしてきた前日に合コンで失敗したらしいからというのは、本人談である。

 

そもそも教師が合コンに参加した上に、それを自分の受け持つ生徒に話すのはどうかと思うが・・・

 

小学一年生にして、このクラスメイト達は空気を読む能力に長けており、この様な個人的で正直どうでも良いような議題にも、真剣に対応した経緯がある。

 

他にも例を挙げれば限が無いのだが、兎に角俺も含め、このクラスの生徒は全員この天然教師の奇行には随分と慣れているのだ。

 

そしてそんな俺達の共通認識としては、この状況からだと、普通に行事連絡をする場合と変な頼み事をするのかは、確率的に半々なので、取り敢えず今は様子を見守るというのが、セオリーである。

 

俺達は普通の議題であってくれと祈りながら、真里子先生の話の続きを黙って聴く。

 

「中には知ってる人もいると思いますが、もうすぐこの聖祥大附属小学校で、運動会が催されます」

 

真里子先生の今回の議題はこの発言から判断出来る通り、まともな物だった様だ。

 

クラス一同はホッと胸を撫で下ろした。

 

「あなた達一年生はこの学校の運動会は初めてだろうから、簡単な説明をするわね」

 

俺達が大人しく聴いている事を確認しながら真里子先生が運動会の説明をしていく。

 

運動会等は学校によって多少の差異はあるものの、何処の学校も似たり寄ったりなもので、この学校もその例に漏れる事は無かった。

 

真里子先生の話を要訳すると、この学校では赤組と白組に分かれて、得点を競うらしい。

 

この時のチーム分けなのだが、これはクラス対抗になる為、このクラスの全員とその上の学年は少なくても全員味方になる。

 

それ以外は毎年くじ引きで、混合チームになるので、くじを引くまではどのクラスが味方、もしくは敵になるのかは、分からない仕様になっているのだそうだ。

 

そして真里子先生が言っていた今回俺達が話し合う事だが、この運動会で参加する個人競技に誰がエントリーするのかを決めて欲しいという事なのである。

 

まあ、そうは言っても俺達一年生が参加できる個人競技は、上級生と比べると制限もあり数が限定されてはいるが・・・

 

例えば騎馬戦や障害物競走等の体格差が出てしまう物には出られないのである。

 

騎馬戦は学校によっては廃止されている所もある程に危険だし、障害物競走は逆に小さい俺達では素通り出来るレベルになってしまったり、上級生に合わせるとクリア不可能な物が出てきたりと、バランス調整が難し過ぎる為、参加出来ない様になっていたりするのだ。

 

そういった訳で、俺達は全学年参加の全体競技以外にはあまり出れる種類は無かったりする。

 

大抵が道具を使わない50メートル走や、体格差で勝負の優劣が決まらない借り物競争だったりになってくる。

 

話し合いは順調に進み、俺の参加する競技も無事に決まった。

 

俺は決まったのだが・・・

 

「それじゃあ行くよ!」

 

「うん!」

 

「私は何時でも良いわよ!」

 

なのはちゃんのやけに気合の入った言葉に、すずかちゃんとアリサちゃんも、負けないほどに気合の入った返事を返す。

 

今なのはちゃん達は、自分達が参加する競技の出場枠を賭けた、真剣勝負に挑もうとしている。

 

何故この様な事態になったかと言うと、始まりはなのはちゃんの一言だった。

 

どの競技に出場するのか迷っていた俺に、なのはちゃんが一緒に参加しようと持ち掛けてきたのである。

 

その競技は二人三脚だった。

 

この学校では、勝負を公正にする為か、二人三脚は男女一組のペアが参加条件になっているそうなのだ。

 

道具を使う競技で二人三脚は、一年生の俺達が参加出来る数少ない競技でかなり人気がある。

 

なのはちゃんもそこに魅力を感じたのか、男子の俺に一緒に参加しようと言ってきたのだろう。

 

まあ、なのはちゃんの場合は運動が苦手という事もあり、一人で走るよりは勝機が見出せると考えたのかもしれない。

 

特に断る理由も無いし、丁度出場枠も後一枠分空いていたので、俺となのはちゃんでエントリーしようとした所で待ったの声が掛かった。

 

その声を発したのは、聖祥大附属小学校一年生の美少女三人組(最近新たに一名加入された)の二人であるすずかちゃんと、アリサちゃんだった。

 

如何やら二人も二人三脚に参加したいらしい。

 

現在其々の参加競技と出場者を、真里子先生が黒板に書いているのだが、それを見ると残るエントリー可能な競技は、二人三脚が一枠と、借り物競争だけしか残されていなかった。

 

二人ともどうせ参加するのなら、面白そうな方に出たいらしく、二人には借り物競争よりも二人三脚の方が面白そうに思えたらしい。

 

俺は個人的には借り物競争の方が楽しそうな気がするのだが、女の子の思考回路とは、全く分からないものだ。

 

ここで異論を唱えたのが勿論なのはちゃんである。

 

二人が待ったの声を掛けなければ、そのまま参加競技が決まったのだ。

 

ならばこの反応も当然の事だと言えるだろう。

 

しかしこれに更なる異論を唱えるすずかちゃんとアリサちゃん。

 

話は収拾が着かず、混迷を呈したその時、その様子を見ていた真里子先生が一つの提案を提示した。

 

その提案とは・・・

 

「「「ジャンケンポン!!!」」」

 

平和的であり、かつ確実に公平な決着を着ける事が出来る、ジャンケンだった。

 

そしてこの勝負を見事に制したのは、

 

「・・・私の勝ちみたいだね」

 

すずかちゃんが、なのはちゃんとアリサちゃんに勝利宣言した。

 

こうして俺とすずかちゃんがペアで二人三脚に、なのはちゃんとアリサちゃんが借り物競争が今回の運動会における参加競技に決まったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう~。少し休憩しよっか?」

 

今日の練習を始めてから、一時間程経った頃、一旦立ち止まり、息を整えながら俺はすずかちゃんに提言した。

 

「うん。そうだね」

 

すずかちゃんも少し疲れ始めていたのか、俺の提言に肯定の意思を示す。

 

この時期の聖祥大附属小学校では、放課後のグラウンドと体育館が運動会の練習用に開放されており、俺とすずかちゃんは放課後のグラウンドで二人三脚の練習をしていた。

 

「もうすぐ運動会も本番だね」

 

休憩の為に、グラウンドの隅の木陰に移動し座っていた俺に、同じく隣で座っていたすずかちゃんが言ってきた。

 

「うん。こうして見ると、本当にもうすぐなんだって実感出来るよね」

 

すずかちゃんの言葉に頷きながら、俺は校庭の中心部を見る。

 

校庭の中心部では、競技の練習をしている生徒達以外に、運動会の実行委員をしている上級生達が、運動会本番に向けて、設営準備を行っている。

 

参加競技を決めて、練習を始めてから一週間が過ぎ、遂に週末は運動会本番を迎えるまでに迫っていた。

 

「何だか私、今からドキドキしちゃうな」

 

すずかちゃんも校庭の様子を見ながら、運動会本番が近づいていると実感したのか、俺にそんな事を言ってくる。

 

今日まで出場種目を決めてから、毎日練習に励んでいた事もあり、すずかちゃんも緊張してきたのだろう。

 

日々の努力を誰かに見せる機会は、様々な場面で訪れるものではあるが、運動会というのも間違い無くその一つである。

 

こういった場面では誰もが、多かれ少なかれ緊張するものだと俺は思うが、かく言う俺も結構緊張していたりする。

 

「俺もそうだよ」

 

俺はすずかちゃんの言葉に同意の答えを返す。

 

その後も俺とすずかちゃんは他愛の無い雑談をして休憩を続けた。

 

「私はもう十分休めたけど、純君は大丈夫?」

 

実際に休憩していたのは数分程だったが、すずかちゃんは元気良く俺に言ってきた。

 

すずかちゃんは見た目こそおっとりとした癒し系に見えるが、これで学年一のパワフルガールなのである。

 

先程の練習でも、体力的に疲れたというよりは、力をセーブしながら走っていた為の気疲れといった方が正しいのだ。

 

俺も毎日のようにお隣の人外パワーを所有するシスコンお兄様に木刀片手に追い掛け回されている為か、同年代ではあり得ない体力を有しているが、それでもすずかちゃんのパワーには驚かされるものがある。

 

まあ、それを分かった上でも、男の子って奴は女の子の前では強がりたいものなのだ。

 

俺もやっぱり男な訳で、幾ら自分より圧倒的に強いといっても、女の子が同じ事をやって平気そうにしているのに、自分が弱音を吐くのは躊躇われる。

 

「うん。俺も大丈夫。そろそろ練習をさい「きゃああああああああああああ!?」な、何だ!?」

 

立ち上がり練習を再開しようとしたその時、校庭の方から、女の子の悲鳴が聞こえた。

 

慌てて声のした方向に視線を向けると、上級生と思われる女子生徒が座り込んで震えていた。

 

恐らく先程の悲鳴は彼女のもので間違い無い筈だ。

 

だが何故彼女は突然悲鳴を上げたのか、その答えは震える彼女のすぐ先に存在していた。

 

その存在を認識して悲鳴を上げた彼女のすぐ近くに居た生徒の一人が、彼女と同じようにその存在に対して新たな悲鳴を上げる。

 

「怪物だあああああああああああ!?」

 

その声は、校庭全体に響き渡り、学校は瞬く間にパニックに陥った。

 

それは悲鳴の通り、人の姿をしていなかった。

 

しかもその存在は一体ではなく二体存在していたのである。

 

一体目は黄色い毛並みに黒い斑の入った模様と、猫科を思わせる顔立ちをしていた。

 

二体目の方は全身が黒い毛並みであり、一体目と若干顔質は異なるものの、似ている見た目だ。

 

例えるのならば、豹と黒豹である。

 

そう・・・

 

あいつ等は、俺が知る限りホルダーと見て間違い無い。

 

でも如何して学校にホルダーが突然やってきたんだ?

 

俺が疑問を抱き悩んでいると、騒ぎを聞きつけてやって来た先生達が、生徒の避難誘導を開始する。

 

「じゅ、純君私達も直ぐに避難しよう!」

 

隣に居たすずかちゃんが、校庭の様子を慌てた様子で見ながら、俺に言ってくる。

 

その間にも二体のホルダーは、何故か校内の設置途中である運動会に関するものばかりに狙いを定めて破壊活動を開始した。

 

その様子を見ながら俺はある事に気付いてしまった。

 

「・・・すずかちゃんは先に安全な所に行ってて」

 

俺は呟く様にすずかちゃんに言った。

 

「ど、如何して!?」

 

こんな時にそんな事を言うのは、不自然極まりないだろう。

 

勿論すずかちゃんも、突然こんな事を言う俺に異論を発するが、俺は無言である一点を指さす。

 

そこには破壊活動を続けるホルダーの近くで、最初に悲鳴を上げた女子生徒が未だに身動き出来ずに居た。

 

「あの人を助けなくちゃ・・・」

 

先生達は他の生徒の避難で手一杯で、あの女子生徒の存在に気付いていない。

 

気付いていたとしても、女子生徒を助けに暴れるホルダーの真っ只中に、躊躇無く生身で飛び込める人間はそう多くは居ないだろう。

 

「如何して・・・純君が助けに行かなくちゃ行けないの?・・・危なすぎるよ」

 

如何して俺がこんな事を言ったのかを察してくれたすずかちゃんだが、それでも尚俺がこの場で向かうのはおかしいと言ってくる。

 

正直言って俺も怖い。

 

特に今はタッチノートも練習の邪魔になる為、教室に置いてきてしまった為に、メカ犬と連絡を取ることすら出来ない。

 

それでも俺は気付いてしまったし、何とかしなくちゃって考えてる。

 

今は彼女に関心を示す事無く、設備の破壊を続けるホルダーだが、何時その牙を彼女に向けてもおかしくないのだ。

 

だから俺は今の自分に出来る最大限の事をしたいと思う。

 

「・・・大丈夫」

 

俺はすずかちゃんの両肩に軽く手を乗せて、向き合いながら、諭す様に問い掛ける。

 

「すずかちゃん。今は急がなくちゃいけないんだ。先生達は他の生徒達の非難で精一杯だし、この場で気付いてるのは多分俺だけだ。」

 

「でも・・・」

 

「大丈夫!」

 

尚も反論しようとするすずかちゃんに俺は出来る限りの笑顔で言う。

 

「・・・純君はズルイよ・・・」

 

有無を言わせない俺のやり方に、怒りを覚えたのか、すずかちゃんが頬を膨らませながら、少しキツイ視線を向ける。

 

「絶対・・・怪我しないでね・・・」

 

すずかちゃんはそれだけ言うと、俺から離れて先生達が生徒を避難誘導している場所へと走り出す。

 

その後姿を目で追っていると、すずかちゃんは一度だけ振り向いて俺に言った。

 

「純君のわがままを聞いてあげたんだから、後で私の言う事も何でも一つ聞いてね?」

 

その言葉に一瞬面食らったが、俺は何とか頷く事で、すずかちゃんに返事を返す。

 

俺の返事にすずかちゃんも満足した様で、今度こそ本当に避難場所へと駆け出して行った。

 

「・・・さてと、それじゃあ行くかな!」

 

俺はすずかちゃんが避難場所に向かうのを確かめてから、自分自身に気合を入れて、走り出した。

 

目指すは、現在も破壊活動を続ける、二体のホルダーがいる校庭の中心部だ。

 

中心部にまでやってくると、流石にホルダーの力の異常さが良く分かる。

 

こんなものを突然何の前振りも無く、目の前で見せ付けられたりすれば、身動き出来なくなるのは当然と言えば当然と言えよう。

 

「大丈夫ですか!?」

 

俺はホルダーの暴れる近くで震えている上級生の女子生徒に、肩を手で軽く揺すりながら話しかける。

 

すると今までの放心状態が解けたのか、その目に精気を取り戻していく。

 

「わ、私は今まで何を?」

 

「立てますか?」

 

「え、ええ・・・」

 

「ここは危ないですから、早く逃げて!」

 

女子生徒は、正気を取り戻したものの、未だに現状が把握しきれていない様で、俺の指示に従いながら、この場を立ち去っていく。

 

「さてと、それじゃあ俺も・・・っ!?」

 

言いかけた所で、後ろから殺気を感じた俺は、咄嗟に己の身を捻りながら前方に転がった。

 

その直後に後ろから轟音が鳴り響く。

 

後ろを振り向けば、先程まで俺のいた位置の地面が抉れていた。

 

その現象を引き起こした原因と殺気の正体に俺は直ぐに気付いた。

 

黒い毛並みのホルダーが、俺に殺気を放ちながら、その右腕に大量の砂を付けているのだ。

 

何故か知らないが、ホルダーが俺に対して敵意をむき出しにしている。

 

先程まで人には興味を持たず、設備の破壊に集中していた筈のホルダーが何で急に!?

 

さっきまでここに居た女子生徒と性別は違うものの、俺は変わった格好はしていない。

 

学校指定の体操着。

 

それだけだ。

 

唯一無理にでも一つ挙げるのであれば、二人三脚に使う手ぬぐいを休憩中の間、俺の肩に巻きつけていた位だが、それ以外は強いて違いを言う事等、出来はしない。

 

これ以上考えても答えは出るはずも無く、ホルダーが再び俺に襲い掛かる。

 

咄嗟に避けた事で、未だに動く体制を整える事が出来ずにいた俺は、避ける事も出来ずに目の前に迫るホルダーの一撃を正面から喰らうことになると確信したその時・・・

 

「ほばっ!」

 

黒い巨大な塊が俺に迫り来るホルダーに突っ込み、見事に吹き飛ばした。

 

その黒い塊の正体は、

 

『危ない所だったわねマスター』

 

乙女口調なおっさんボイスの新宿二丁目ライダーバイクのチェイサーさんだった。

 

「な、何でチェイサーさんがここに!?」

 

俺は呼んでいない筈のチェイサーさんがいる事に驚きの声を上げる。

 

『ワタシが呼んだのだマスター』

 

チェイサーさんの座席シートの上から声が聞こえてくる。

 

俺がそこに視線を向けると、全身メタリックシルバーなあいつが居た。

 

「メカ犬!」

 

『受け取れマスター!』

 

メカ犬は俺に何かを投げて寄越す。

 

それを掴み確認すると、教室に置いてきた筈のタッチノートだった。

 

「何でメカ犬がタッチノートを?」

 

俺はタッチノートを確認しながら、手渡してきたメカ犬に質問する。

 

『ホルダー反応が、マスターの学校付近で出たので連絡を取ったのだが、応答が無くてな。もしやと思いタッチノートの場所に来てみたのだ。何時ホルダーが現れるのか予測出来ないのだから、これからは常に手元に置いてくれよマスター』

 

如何してタッチノートを持っていたのか、説明したメカ犬は最後に説教をプラスして、現状説明を終了した。

 

「悪かった。これからは気をつけるよ」

 

俺はメカ犬に素直に謝りながら、受け取ったタッチノートを開く。

 

『本当に頼むぞ』

 

メカ犬はそう言いながら、チェイサーさんから飛び降りて、俺の隣にやってくる。

 

それを確認した俺は、開いたタッチノートのボタンを押す。

 

『バックルモード』

 

音声が流れると同時に、隣にいたメカ犬が銀色のベルトに変形して、俺の腹部に巻かれる。

 

「変身」

 

音声キーワードを入力した俺は、バックル中央の窪みに、タッチノートを差し込んだ。

 

『アップロード』

 

すると俺の全身を白銀の光が包み込み、俺を一人の戦士に変える。

 

メタルブラックのボディーカラーに、銀のベルトから四肢に伸びるラインと、額に輝く同色のV字型の角飾り。

 

二つの赤い複眼が、その存在を最大に引き出している。

 

「仮面ライダー!?」

 

俺の変身を目撃した、チェイサーさんに轢かれなかった方の、黄色い毛並みのホルダーが驚愕する。

 

「さてと・・・派手に行くぜメカ犬」

 

『うむ』

 

俺はメカ犬にそう言いながら、ホルダー目掛けて駆け出して行った。

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