魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~   作:G-3X

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第十一話 努力の先にあるものは【後編】

「はっ!」

 

俺は一気にホルダーとの距離を詰めて、拳を叩き込む。

 

「ぐう!?」

 

ホルダーもまさか俺が仮面ライダーだとは思っていなかったのであろう。

 

唖然としていた所を強襲された形となり、俺の拳をまともに喰らい、吹き飛ぶ。

 

更に俺が吹き飛んだ黄色の毛並みを持つホルダーに、追撃を仕掛けようとしたその時、後ろから殺気を感じた。

 

『後ろだマスター!』

 

殺気を感じたと同時にメカ犬の声を聞いた俺は、後ろを確かめる事無く、前方に駆け出そうとした身体を無理やり側転させる。

 

その直後に先程まで俺が居た場所に轟音が響く。

 

振り向くとそこに居たのは、先程チェイサーさんに吹き飛ばされた黒い毛並みのホルダーだった。

 

「がああああ!!!」

 

ホルダーは雄叫びを上げると、凄まじい勢いで、俺に突っ込んでくる。

 

俺はホルダーの突進を右腕を添えて、受け流しながらカウンターの蹴りを繰り出す。

 

「ぐるあああ!!!」

 

黒い毛並みのホルダーと戦っている間に、黄色の毛並みのホルダーが態勢を整えた様で、俺と黒い毛並みのホルダーの間に割って入り、俺に攻撃を仕掛けてくる。

 

「二対一で素手はキツイか!?」

 

二体のホルダーによる波状攻撃を、何とか捌きながら、ベルトの右側をスライドさせて、緑色のボタンを押す。

 

『スピードフォルム』

 

音声が流れると同時に、全身を光が包み、メタルブラックのボディーカラーをライトグリーンに染め上げていく。

 

「はあ!」

 

俺は身軽になった自身の特性を利用し、その場から跳躍する事で、ホルダー達と一旦距離を取る。

 

跳躍しある程度の距離を取った俺は、再びベルトの右側をスライドさせて、黄色いボタンを押した。

 

『スピードロッド』

 

発生した光を掴むと、それは一つの形を成し、スピードフォルムの専用武器であるスピードロッドへと、その姿を形成する。

 

俺はロッドを構えながら、再びホルダー達に向かって駆け出す。

 

「おりゃあああ!」

 

十分にホルダーに接近した俺は、上段に構えたロッドを振り下ろし、黒い毛並みの方のホルダーに一撃をお見舞いする。

 

「ぐるあああ!!!」

 

俺が黒い毛並みのホルダーに攻撃を仕掛けた次の瞬間、もう一体の黄色い毛並みのホルダーが俺の背後から襲い掛かってきた。

 

『マスター!』

 

「ああ!」

 

メカ犬が何を言いたいのかを瞬時に理解した俺は、ロッドを持つ手を先端に持ち替えて、弧を描く様に振り回して、正面のホルダーを警戒しつつ、背後のホルダーに対しても牽制する。

 

二体のホルダーはロッドの攻撃範囲から逃れる様に下がると、何故か自身の身体を小刻みに震わせ始めた。

 

「何のつもりだ?」

 

その様子を見ながら俺は疑問を口にする。

 

『気をつけろマスター!奴等は、何か仕掛けてくるつもりだ!』

 

メカ犬に言われるまでも無く、俺はロッドを構えて、臨戦態勢を崩さずに、二体のホルダーを見据える。

 

ホルダー達の様子を伺いながら、仕掛けてこないのであれば、此方から攻めてみるかと、考えたその時、ホルダー達に激しい変化が起きた。

 

「な!?」

 

二体のホルダーがまるで細胞分裂で増殖するかの様に、増えていくのだ。

 

その数は四体、八体、十六体と急激に増えていく。

 

どういう仕組みかは知らないが、これ以上放っておく訳には行かないと思い、俺は一番近くにいた増殖するホルダーの一体に攻撃を仕掛ける。

 

「たあ!」

 

俺のロッドによる一撃がホルダーに命中する。

 

いや、した筈だった。

 

「ふあ!?」

 

しかしその攻撃は、ホルダーにダメージを与える所か、まるで何の感触も無いままに空を切る。

 

その直後に俺の背後に衝撃が走る。

 

「ぐあ!?」

 

突然の衝撃に倒れこみながらも、受身を取って素早く体勢を立て直すと、そこには先程の衝撃の正体であろう、拳を突き出したホルダーの姿が見えた。

 

「くそ!」

 

俺は反撃するべく、ロッドを構えるが、そこに増殖したホルダーの内、四体が俺に向かってくる。

 

「邪魔だ!」

 

気合と共にロッドで一閃するが、先程と同じ様に、攻撃がすり抜けてしまう。

 

「が!?」

 

攻撃した次の瞬間、今度は右の頬に痛みが走り踏鞴を踏む。

 

何とか踏み止まり、左を向けばそこにはやはり俺に攻撃を仕掛けたであろうホルダーの姿があった。

 

そのホルダーに対し反撃を試みようとするが、またしても増殖した複数のホルダーが此方に向かってくる。

 

「何度も『待つんだマスター!』メカ犬?」

 

俺が再び襲い掛かるホルダー達に攻撃しようとしたその時、メカ犬が待ったの声を掛けてきた。

 

『恐らく攻撃を仕掛けても無駄だ』

 

「確かにそうかも知れないけど、攻撃しないとこっちがやられるだろ?」

 

先刻から俺の攻撃が、全てすり抜けてしまっている事は、分かってはいるが、それでも攻撃しなければ相手の攻撃を受けるのは此方なのである。

 

こんな討論をしている間にも、多くのホルダーが此方に迫って来ている。

 

「くっ!」

 

俺は近くまで駆け込んできた数体のホルダーに迎撃体勢を取るが、メカ犬が再び叫ぶ。

 

『動くなマスター!』

 

その声に俺の動きが一瞬硬直してしまう。

 

そのために、攻撃をするタイミングを完全に逃してしまい、数体のホルダーが俺の目前まで接近する。

 

もはや避ける事さえ出来ないと悟り、次の瞬間来るであろう衝撃を覚悟するが、その衝撃が訪れる事は永遠に無かった。

 

俺の攻撃をすり抜けたのと同じ様に、今度は俺の身体をすり抜けて行ったのだ。

 

『やはりそういう事か』

 

先程の出来事に俺が驚愕する中、メカ犬が一人納得した様に言う。

 

「どういう事なんだよ?」

 

俺は一人で納得しているメカ犬に説明を求める。

 

するとメカ犬はいつもの様に解説をし始めた。

 

『あのホルダー達は別に増えた訳では無い。増えた様に見せているだけだ』

 

「増えた様に見せているだけ?」

 

『うむ。マスター、周りを良く見回してみろ』

 

メカ犬の言う通り、俺は多数のホルダーが闊歩する校庭の様子を見てみる。

 

其処には縦横無尽に走り回るホルダーや、何故か何も無い所に拳や蹴りをするホルダー他にも統一性の取れない動きを見せるホルダーが大量に見受けられたのだ。

 

「・・・まさか!?」

 

その様子を見ていた俺はある事に気付いた。

 

『如何やらマスターも気付いた様だな』

 

「ああ」

 

メカ犬の言いたい事が俺にも分かった。

 

『奴等の本体はあくまで二体だけだ』

 

「他の姿は多分・・・過去の姿を投影して見せているって所か?」

 

『うむ』

 

如何やらこれが奴等の能力らしい。

 

「だから俺の攻撃がすり抜けたって事だな」

 

答えが分かれば当たり前の事である。

 

其処に実体が無いのだから、俺が幾ら攻撃した所で届く筈が無い。

 

『カラクリは分かったが、問題はどうやって本体を探り当てるかだな』

 

メカ犬がこれからの方針を考え始める。

 

「それなら俺に一つ考えがある」

 

ネタが分かった為、頭が冷えたのか、俺に一つの解決策が浮かんだ。

 

『本当かマスター?』

 

俺の言葉にメカ犬が質問を返す。

 

「ようは本体に攻撃が届けば良いんだろ」

 

『うむ。確かにその通りだが、如何する気だマスター?』

 

「まあ、ここは俺に任せてくれ」

 

俺はメカ犬にそう言ってから、スピードフォルムの跳躍力を生かして、限界まで飛び上がる。

 

かなりの高さまで飛び上がった俺はベルトの右側の青いボタンと黄色いボタンを続け様に押す。

 

『サーチフォルム』

 

『サーチバレット』

 

光に包まれると同時に、ライトグリーンのボディーはスカイブルーに変わり、俺の右手には専用武器である銃型武器のサーチバレットが握られる。

 

俺はそのままバックルからタッチノートを取り出して、サーチバレットの溝にスライドさせた。

 

『ロード』

 

音声が流れる事を確認した俺は、タッチノートを再びバックルに差し込む。

 

『アタックチャージ』

 

ベルトから発生した光が右腕のラインを通り、サーチバレットの銃身に集約される。

 

「こいつで決めるぜ」

 

俺は光輝くサーチバレットを地上に向けて自分自身の身体を回転させて行く。

 

「サーチバレット」

 

俺は回転運動をしながら引き金を引いた。

 

「シューティングサークル」

 

数珠繋ぎに連結された光弾が、まるで激しく降りしきる雨の様に校庭に降り注ぎ、校庭全体に落下する。

 

勿論校庭に居た全てのホルダーはこの攻撃に飲み込まれた。

 

「よっと!」

 

俺は校庭全体に攻撃が届いた事を確認しながら、無事地上に着地した。

 

『全く、考えがあると聞いた時は何をするのかと思ったが、これほど無茶な事をするとは思わなかったぞマスター』

 

着地した直後にメカ犬が感心半分、呆れ半分という具合で話しかけてくる。

 

「でもこれなら本体にも攻撃が届くだろ?」

 

俺はメカ犬に軽く言葉を返す。

 

『・・・うむ。確かにその通りではあるがな』

 

メカ犬と会話を交わしながら、俺はホルダーがどうなったかを確かめるために、あたりを見回す。

 

校庭全体を攻撃した為に大量の砂が舞い上がり、暫くの間視界を塞いでいたが、それもすぐに風に流されて行き、問題無く周りの景色が見える様になった。

 

すると早速新たな発見をした。

 

校庭の真ん中で、恐らく俺と同年代と思われる男の子が気絶していたのである。

 

戦っている間周りに人の姿は見当たらなかったので、この男の子がホルダーの素体だったのだろう。

 

うつ伏せで気絶しているので顔は確認出来ないが、俺が着ている体操服を着ているので、この学校の生徒で間違い無い。

 

俺は気絶している男子生徒に近づいて、顔を確認する。

 

「え!?」

 

気絶した男子生徒の顔を確認した瞬間、俺は驚きの声を上げた。

 

『如何したマスター?』

 

俺の様子を怪訝に思ったのか、メカ犬が声を掛ける。

 

「如何したって・・・そりゃこの顔を見れば驚きもするだろ」

 

その顔は俺の良く知る顔だったのだ。

 

というか、クラスメイトの一人だったのである。

 

この男子生徒の名前は稲葉一樹《いなばかずき》。

 

俺と同じ一年生でクラスメイトでもある。

 

「まさか稲葉君がホルダーだったなんて・・・」

 

気絶した稲葉君を見ながら俺がそう呟いていると、

 

『妙だぞマスター』

 

メカ犬が俺に話し掛けてきた。

 

「何が妙なんだよ?」

 

『ワタシ達が戦っていたホルダーは二体だった筈だ。ならばこの素体の少年の他にもう一人気絶した者が居なければおかしいだろう』

 

俺はメカ犬に言われ校庭を見回す。

 

確かに稲葉君以外に倒れている人所か、誰一人として居なかった。

 

「これってもしかして・・・」

 

『うむ。あのドサクサに紛れて逃げた様だな』

 

如何やらこの事件は、まだ終わりを迎えるには早い様である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『着いたわよマスター』

 

チェイサーさんが目的地に着いた事を、俺に知らせてくれる。

 

「ありがとうチェイサーさん」

 

俺はチェイサーさんにお礼を言って、身体に固定されたワッカを外してもらい、シートから飛び降りた。

 

『本当にここに居るのか?』

 

俺が着地した直後に、メカ犬も俺の横に着地すると、辺りを見回しながらそう告げる。

 

「ああ、稲葉君が言っていた事を信じるなら、ここに居る筈だ」

 

俺達は今、現在は廃墟となり、立ち入り禁止の看板が立てられている廃ビルの前に居る。

 

「行くぞメカ犬」

 

『うむ』

 

短く会話を交わした俺達は、立ち入り禁止の看板を無視して、廃ビルの中へと入っていく。

 

中に入り階段を上り、屋上に辿り着くと、其処には予想通りの人物が居た。

 

「やっぱり来たんだな板橋君・・・」

 

屋上の隅で景色を眺めていたその人物が、俺に背を向けたまま喋り始めた。

 

「ああ、稲葉君から君なら何かあったらきっと、ここに来るだろうからって聞いたからね」

 

その人物は、景色を見るのを止めて、此方に振り向く。

 

その人物は、稲葉君と同じく俺のクラスメイトの男子生徒である。

 

「ホルダーの正体は木村君だったんだな」

 

木村真《きむらまこと》。

 

それがこの少年の名前だ。

 

メカ犬の能力で強制的に暴走プログラムと分離された素体の人間の、ホルダーだった間の記憶は特殊なケースを除けば全て失われてしまう。

 

俺が校庭で倒したホルダーの素体となった稲葉君も例に漏れず、ホルダーだった間の記憶は失われていた。

 

だけどその直前までの記憶はあるのだ。

 

だから俺は気絶していた稲葉君を起こして、何かヒントはないかと、最後に残っている記憶の部分を尋ねたのである。

 

稲葉君は言っていた。

 

秘密基地で、緑色の球体を二つ見つけて、その場に居た友達と其々手にしたのだと。

 

その友達が木村君だったのだ。

 

更に緑の球体、暴走プログラムを見つけたという秘密基地がこの廃ビルなのである。

 

稲葉君の話では、二人は何かあった時は、必ずこの場所にやってくるのだそうだ。

 

そして木村君は決まって屋上からの景色を眺めるらしい。

 

俺はその話を聞き、木村君はここに来るんじゃないかと思いやって来たのだが、予想は見事に的中した様だ。

 

「板橋君がここに居るって事は一樹君が喋ったんだな」

 

木村君は俺を睨み付けながら、苦虫をかんだ様な表情を見せる。

 

「木村君。如何してあんな事をしたんだ?」

 

俺は木村君に質問を投げ掛ける。

 

「如何してだって?そんなもの決まってるだろ・・・僕は運動会が大嫌いだからさ!」

 

答えている間に感情が高ぶったのか、最後の方は叫ぶ様な言い方に変わっていく木村君。

 

「嫌いだからってあんな事をするなんて・・・」

 

暴走プログラムのせいで、理性の枷が外れているとはいえ、あの破壊活動はやり過ぎだ。

 

「板橋君は良いよな。運動が得意だもんな。でも僕や一樹君みたいに運動が苦手な奴に運動会なんて必要無い行事なんだよ!」

 

そういえば、稲葉君も木村君も男子の中では、かなり運動が苦手だった。

 

それで運動会を無くそうとあんな事を・・・

 

「だから僕達は運動会を無くそうと思った。でも誰かを傷つけるつもりなんて無かったから、運動会で使う道具を全部壊してやろうって一樹君と計画を立てたんだ」

 

木村君はそう言うと、ポケットからある物を取り出した。

 

「すごいよねこれ。何にも努力しなくても、これがあれば運動が苦手な僕でも凄く早く走れるし、力だって大人よりずっと強くなるんだ!板橋君なら分かるよね?だって板橋君は仮面ライダーだもんね」

 

緑色の球体、暴走プログラムを嬉しそうに眺めながら、木村君が俺に言う。

 

なるほど・・・

 

木村君の話からすると、あの時俺に以上な殺気を放っていたのは、本当に肩に巻いていた手ぬぐいが原因だったらしい。

 

確かにこれも運動会で使う道具だもんな。

 

でも今はそれよりも、木村君に言いたい事がある。

 

「木村君。それは所詮紛い物の力だよ。それで凄い力を手に入れたとしても何も変わらない」

 

力を手に入れたとしても、その力の使い方を間違えば、それはただの暴力にしかならない。

 

「そうかな?これがあればどんなに努力したって出来ない事が出来る様になるんだよ?僕みたいな奴がどんなに努力したって出来ない事は出来ないし、如何にもならないんだからさ。使える物を上手く使わなくっちゃ」

 

木村君は俺に、どんなに努力をしても無駄な事はあると言った。

 

それを聞いた俺は・・・

 

「・・・本当にそうかな?」

 

「ん?」

 

俺は木村君と視線を合わせながら、ゆっくりと喋りだす。

 

「だからその力で運動会を無くそうとしたのか?」

 

「ああ!そうだよ!僕みたいのがどんなに努力したって勝てる筈が無いんだから、僕は自分に出来る事をしようとしただけさ!」

 

真面目な努力が無駄?

 

「木村君・・・無駄な努力なんて俺はこの世に無いと思うよ」

 

確かにどれだけ努力をしたとしても、それが必ず実を結ぶとは限らない。

 

失敗して挫折して、泣きたくなる事だって、落ち込む事だってある筈だ。

 

だけど・・・

 

「人は生きている限り、努力し続ける生物だって俺は思うよ」

 

努力は人の持つ可能性だって俺は思う。

 

今は出来なくても、続けていけばそれが出来る様になるかもしれない。

 

たとえ出来なかったとしても、その努力はその人の大切な財産になって、新しい自分にしか出来ない何かを始められる。

 

「木村君だって今から頑張れば、運動会で一位を取れるかも知れないだろ?」

 

「そんなのただの奇麗事だろ?僕は騙されない!」

 

俺の言葉に木村君は、暴走プログラムを握り締める。

 

それと同時に木村君の全身が緑色の光に包まれて、黒い毛並みを持つ黒豹を模した様な姿をしたホルダーへと変わっていく。

 

「行くぞメカ犬・・・」

 

俺はタッチノートを取り出して開きながら、隣のメカ犬に合図を送る。

 

『うむ』

 

木村君の言う通り、確かに俺が言ってる事は奇麗事でしかない。

 

でも、だからこそ・・・

 

「やる前から諦めるよりも、俺は努力すれば出来るかも知れないっていう可能性を信じたい!」

 

俺は叫びながらタッチノートのボタンを押す。

 

『バックルモード』

 

隣のメカ犬は銀色のベルトに変形すると、自動的に俺の腹部に巻きつく。

 

「変身」

 

音声キーワードを入力した俺はタッチノートをバックルの中央部の窪みに差し込んだ。

 

『アップロード』

 

音声が流れると同時に、俺の全身を白銀の光が包み込み、俺の姿をメタルブラックの仮面ライダーへと変えていく。

 

木村君が変化した黒豹の姿を模したホルダーが身構える。

 

それに合わせ、俺も間合いを伺いながら、臨戦態勢を取った。

 

暫くは、互いに相手を見据えながら間合いを図っていたが、それは次の瞬間終わりを告げる。

 

「があああああ!!!」

 

先に動いたのはホルダーの方だった。

 

「はっ!」

 

俺は勢い良く突進を仕掛けてきたホルダーの勢いを利用して、カウンターの拳を叩き込む。

 

「ぐっ!?」

 

その一撃を正面から喰らったホルダーは後方に吹き飛ぶが、すぐに立ち上がりその身体を小刻みに振るわせ始める。

 

『不味いぞマスター!また姿を投影してくると面倒だ!』

 

その様子を見ていたメカ犬が俺に忠告する。

 

「ならこっちも分身だ!」

 

俺はそう言いながら、ベルトの右側をスライドさせて黄色いボタンを押す。

 

『ベーシックファントム』

 

ベルトから大量の光が発生して、その光が人型を形成していく。

 

それは俺と若干の違いがあるものの、メタルブラックのボディーを持つ、まさに仮面ライダーだった。

 

若干の違いは赤い筈の複眼が灰色な事と、ベルトの後ろに溝がある位である。

 

これが基本フォルムであるベーシックフォルムの持つ能力。

 

ベーシックファントムだ。

 

「それじゃあ時間稼ぎは任せたぞメカ犬」

 

俺は光が形成した分身体に話しかける。

 

『任せろマスター』

 

すると分身体から、メカ犬の声が聞こえて来た。

 

この能力を使っている間は、メカ犬が遠隔操作でこの分身体を動かしているのだ。

 

メカ犬は俺の頼みを快く聞き入れると、勢い良く小刻みに震えるホルダーに駆け寄り、投影を阻止する為に攻撃を仕掛ける。

 

俺はその隙にバックルからタッチノートを引き抜き開くと、全体図を表示して右足部分をタッチして、再びバックルにタッチノートを差し込んだ。

 

『ポイントチャージ』

 

ベルトから発生した光は、右足のラインを通り俺の右足に集約される。

 

『今だマスター!』

 

俺の準備が整うとほぼ同時にメカ犬が俺に叫ぶ。

 

見ればメカ犬は丁度ホルダーに右拳を叩き込んだ直後であり、吹き飛ばされたホルダーが痛みで苦しんでいた。

 

その様子を見た俺は跳躍する為に構えを取る。

 

「こいつで決めるぜ」

 

そして俺は跳躍して、ホルダーに向けて光が集約された右足を突き出す。

 

「ライダーキック」

 

必殺の一撃が見事にホルダーに直撃して爆発を引き起こした。

 

爆発跡に居たのは、勿論素体となった木村君が気絶していた。

 

俺は気絶している木村君に、聞こえていないと分かった上で話しかける。

 

「木村君・・・やるだけやってみようよ。きっとその方が木村君の為になるって俺は思うからさ・・・」

 

目を覚ませば今日の事を全て忘れていると分かってはいる。

 

だけど・・・

 

それでも願わずにはいられない。

 

どうせやるのなら全力で挑みたいって思うし、それで木村君の中で、何かが変わるかも知れないって思うから・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホルダーによって破壊された運動会の設備だが、他の近隣の学校から借りることが出来たので如何にかなった。

 

むしろそれ以上に苦労したのは、俺がサーチバレットで校庭に作ったクレーターの方だった。

 

学校側は教師生徒問わず、修復に参加してくれる人を緊急募集した。

 

面と向かって謝る訳に行かなかった俺も勿論参加して、心の中で何度も平謝りしながら、スコップ片手に作業に順じた。

 

そのかいあってか、何とか無事に運動会を開くことが出来る事と、相成ったのである。

 

「頑張れ木村君!」

 

俺は大声で声援を送る。

 

現在行われている競技は50メートル走だ。

 

目の前では木村君が必死に走っている。

 

あれから木村君と稲葉君は残り少ない時間の中で出来る限りの努力をした。

 

皆が運動会を開くために必死に頑張る姿を見て、やる気になってくれた様だ。

 

この運動会の50メートル走では五人で一組として走る事になる。

 

稲葉君は既に走り終えており、順位は四位だった。

 

「稲葉君も頑張ったんだから木村君も頑張れ!!!」

 

俺は更に大きな声を出して応援する。

 

今の木村君の順位は五位だ。

 

でも四位との差はほんの僅かであり、徐々にその距離を木村君は縮めて来ている。

 

ゴールが迫る中、木村君が四位の生徒に追いつきそして・・・

 

【「次は二年生の50メートル走に移ります」】

 

実行委員の女子生徒のアナウンスが校庭に響く。

 

一年生の50メートル走が全て終わり、一年生は旗を持っている実行委員に先導されながら、校庭中央のトラックの内側から移動を始める。

 

木村君は四位の旗を持った実行委員の生徒に誘導されていた。

 

二人とも一位を取る事は出来なかった。

 

でも努力をした結果この順位になったからなのか、二人とも凄く良い笑顔をしていたと俺は思う。

 

その後も競技は順調に進んでいった。

 

俺とすずかちゃんが参加した二人三脚は残念ながら二位という結果に収まった。

 

途中までは一位だったのだが、途中で手ぬぐいが破れてしまったのである。

 

急いで破れた部分を結んで応急処置をしたのだが、結局一位は逃してしまったのだ。

 

こればかりは時の運というものもあるのだから仕方ない。

 

それよりも問題は借り物競争だった。

 

この借り物競争も50メートル走同様に五人一組で競争するシステムになっていた。

 

二十メートル程は普通に走る事になるのだが、その地点には借りる物が書かれているカードの入った箱が五つ置かれている。

 

出場者は好きな箱から一枚だけカードを引きそこに書かれているカードを借りて残り30メートルの距離を走破するのだ。

 

借りる物は、物であったり人であったりと、結構なバリエーションに富んでいる。

 

走る速さも大切だが、それ以上に運が試される競技なのだ。

 

まずアリサちゃんだが、アリサちゃんが引いたカードに書かれていた内容はオモチャだった。

 

アリサちゃんは何を思ったのか、一般観覧者用の席に向かったかと思うと、其処からとんでもない物を借りてきたのである。

 

俺はその借り物を見て思わず噴出した。

 

それは太陽の光に照らされて、輝くメタルシルバーのボディーを持つフルメタルドッグこと我が板橋家の家族であるメカ犬だったのだから。

 

メカ犬を抱えながらアリサちゃんは見事に一位でゴールしたのだが、本当の問題はここからだった。

 

ゴールした後に待機していた先生が、借りた物がカードの内容と一致しているかチェックするのだが・・・

 

『だから何度も言っているだろう。ワタシはオモチャ会社の新製品で(以下略)』

 

黙っていれば良いものを、メカ犬は懇切丁寧に待機していた先生に説明し始めたせいで、オモチャと分類するべきか緊急会議が行われる事になってしまったのだ。

 

結果を言えば、本人?がオモチャだと言っていることもあり今回に限り認められる事になったのだが、次は無いと先生から厳しく注意されていた。

 

次はなのはちゃんなのだが、なのはちゃんの引いたカードは木刀だった。

 

普通に考えれば運動会に木刀持って来る奴なんて居る筈がない。

 

しかしなのはちゃんは迷わず高町家が揃う応援席に向かうと、恭也君が立ち上がり、当然の様になのはちゃんに木刀を差し出した。

 

なのはちゃんはそれを嬉しそうに受け取ると、余裕でゴールした。

 

小学一年生の女の子が運動会で木刀を持って走る・・・

 

とんでもなくシュールな光景である。

 

そもそもこのカードを作成した奴は、何を考えて木刀なんてワードを選択したのか、疑問に思ったのはきっと俺だけでは無い筈だ・・・

 

ちなみに順位は借り物がかなりの短時間で手に入ったので三位となった。

 

その後も競技は滞り無く進み、昼の休憩時間を迎えた。

 

「それじゃあここに座ろっか純君」

 

「そうだね」

 

俺はすずかちゃんに案内された木陰で、ビニールシートを広げると、そこに二人で腰を下ろした。

 

「純君。約束のあれ。持って来てくれたよね?」

 

隣に腰を下ろしたすずかちゃんが俺に言ってくる。

 

「うん、一応約束だからね」

 

俺はそう言ってビニールシートの上にお弁当箱を置いた。

 

すずかちゃんの言う約束とは、ホルダーが学校の校庭に現れた時に交わした後ですずかちゃんのわがままを何でも一つだけ聞くというものだった。

 

そしてすずかちゃんが要求してきた内容が、運動会の日に俺が作ったお弁当を二人で食べるという事だった。

 

本当は皆で食べた方が美味しい気がするのだが、これは俺の事を配慮してくれたからだと思う。

 

流石に皆の前で、普段しない手作り弁当を披露するのは、それなりの抵抗を感じる。

 

俺は心の中で、ここまで配慮してくれたすずかちゃんの優しさに感謝しながら、弁当箱の蓋を開ける。

 

「本当に初めて作ったの純君?凄く美味しそうだよ」

 

弁当箱を覗き込んだすずかちゃんが感想を述べる。

 

お弁当箱は色鮮やかであり、作った俺も我ながら美味しそうだと思った。

 

俺も前世では一人暮らしをしていたので、それなりに自炊は出来るのだ。

 

しかし所詮は食べれれば良いという男料理ばかりだったので、母さんから、徹底的にお弁当の盛り付け方を教わったのである。

 

如何やらすずかちゃんも気に入ってくれた様で、頑張って良かったと素直に思えた。

 

「あ~ん」

 

すずかちゃんは何を思ったのか、頬を桜色に染めながら突然俺に向かって口を開く。

 

これはあれか?

 

食べさせろと言う意思表示なのか?

 

俺は困惑しながらも、弁当箱の中から玉子焼きを箸で摘み、すずかちゃんの口に運んだ。

 

玉子焼きをゆっくりと租借したすずかちゃんは、

 

「美味しいよ!」

 

と笑顔で感想を言った。

 

「それじゃあ今度はこれが良いなぁ~」

 

すずかちゃんは次に食べたい物を指名すると、再び口を開けて催促してくる。

 

「分かったよ」

 

俺はすずかちゃんの指示通り、箸でおかずを摘み、すずかちゃんの口に運んで行く。

 

こうして俺達の、運動会当日のお昼は過ぎて行った。

 

今日の海鳴は運動会日和の快晴で、ゆったり平和だ。

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