魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~ 作:G-3X
「待て!!!」
青年が叫びを上げながら、駅の連絡通路と思われる場所を走る。
青年の年齢は恐らく、十代後半から二十代前半といったところであろう。
とても端正な顔をしており、今の様に血相を変えて、走ってなどいなければ、かなりの好感が持てるであろう事は間違いない。
しかし今それを青年に指摘したとしても、青年は走る事を止めはしない筈だ。
それというのも、
「待てと言われて待つ奴が居るかよ!!!」
青年が走る方向の前方から、青年に返事を返す声が聞こえる。
その声の主は人語を喋るものの、人間の姿をしていなかった。
一番近い形で表すとするのであれば、平均的な成人男性サイズの赤黒い蜘蛛である。
その蜘蛛の様な怪物が、人間同様に二足歩行で、青年から逃走を続けているのだ。
青年の走る目的は、この蜘蛛の怪物を追う事だったのである。
「そこまでだ!」
何時まで続くのか終わりの見えなかった、青年と怪物の逃走劇は新たな介入者の登場により、終焉を迎える。
その新たな介入者は、蜘蛛の怪物の進行方向に立ち塞がり、その退路を断つ。
新たな介入者も、人間の姿をしてはいなかった。
全体的に青系色の身体で、二本の短い角がある。
「良くやったぞ!テディ!!!」
後方から走る青年が、青い方の異形に声をかける。
テディというのは、如何やらこの新たな介入者の名前の様だ。
「くっそ……」
蜘蛛の怪物は、前方と後方を塞がれた事により、退路を断たれたと悟り苦々しく、声を出す。
破れかぶれとばかりに、後ろを振り向いた蜘蛛の怪物は、青年に向かい突っ込む。
しかし青年は慌てる事無く、冷静に蜘蛛の怪物の突撃を回避して、すれ違い様に、足を引っ掛けて転倒させる。
「ぐは!」
そのあまりにも見事な一連の動作に、蜘蛛の怪物は哀れにもバランスを崩して、床に頭から崩れ落ちる。
青年はその隙に、前方で退路を塞いでいたテディの隣に移動した。
「流石だな。幸太郎!」
テディは青年、幸太郎の先程の行動を見て、賞賛の声を浴びせる。
「話は後だ。行くぞ!」
幸太郎はそう言って、己の腰に一本のベルトを巻きつけた。
ベルトの中央には、Tのイニシャルを斜めに描いた様なマークが入っており、その脇には複数の小さなボタンが縦一列に並んでいる。
幸太郎はベルトを巻きつけると、右手に黒い手のひらサイズの定期入れの様な物を取り出す。
「変身」
その言葉と同時に、幸太郎は手に持った定期入れの様な物を、ベルトの中央にセタッチする。
『ストライクフォーム』
ベルトから機械的な音声が上がり、幸太郎の全身に張り付く様に、鎧とも言えそうな藍色の何かが、付着していく。
更に電車のレールの様な装甲が、上半身を覆い、最後に頭部が赤く三角に尖ったサンバイザーの様な物が装着される。
青年の名前は、野上幸太郎《のがみこうたろう》。
そして彼の今の姿は電王。
正確には、仮面ライダーNEW電王である。
「テディ!」
NEW電王に変身した幸太郎が、指を二回鳴らすと、隣に居たテディが軽く飛び上がり、藍色の銃剣に変形して、NEW電王の右手に収まる。
テディは幸太郎と契約している、ターミナルで生まれた、人工の派遣イマジンなのだ。
「そこのはぐれイマジン!お前がターミナルの保管庫から盗み出した物を、返してもらうぞ!」
テディが変形した銃剣、マチェーテディを蜘蛛の怪物、スパイダーイマジンに向けて突きつけながら、NEW電王は言い放つ。
「誰がそう言われて、はいそうですかと返すか!!!」
立ち上がったスパイダーイマジンは、NEW電王に返答すると同時に、口から糸をNEW電王に向けて、射出する。
「ちっ!」
スパイダーイマジンが射出したその糸を、NEW電王は紙一重で回避し、スパイダーイマジンに近づくべく、走り出す。
尚も連続で糸を射出するスパイダーイマジンだが、NEW電王はその糸をマチェーテディの刀身で裁きながら接近していく。
「はあ!」
ある程度接近した所で、マチェーテディの銃口を、スパイダーイマジンに向けて、光弾を発射する。
光弾は見事にスパイダーイマジンに命中し、吹き飛ばす。
「今だ!」
NEW電王は定期入れの様な物、ライダーパスを取り出し、変身したときの様に、ベルトの中央にセタッチする。
『フルチャージ』
ベルトから流れる音声と共に、右手に持つマチェーテディの刀身にエネルギーが蓄積されていく。
「はあああああ!!!」
大きく飛び上がったNEW電王は、気合の咆哮を上げながら、未だによろめく地上のスパイダーイマジンに向けて、必殺技であるカウンタースラッシュを喰らわせる。
スパイダーイマジンは、抵抗する間も無く、NEW電王が繰り出すマチェーテディの一撃で、一刀両断され爆発四散した。
爆発すると同時に、青い色をした鍵の様な物が空中に舞い上がる。
それを視界に捕らえたNEW電王が、落ちてくるそれを掴もうとしたその時である。
目の前に突如影が生まれ、NEW電王とそれの間を遮ってしまう。
「何だ!?」
驚きの声を上げるNEW電王のすぐ近くに、突如生まれた影の正体が居た。
「封印の鍵……確かに頂いた」
全身を黒いローブで包んだ人物が、鍵を掴みながら言い放つ。
「そうはいくか!!!」
NEW電王はすぐさま取り戻す為に行動を開始する。
今黒いローブで全身を包む謎の人物が掴んでいる、封印の鍵と言われている物こそが、NEW電王がターミナルの駅長に取り返す様に、依頼されていた物なのだったのだ。
何が何でも取り戻そうと、走り出そうとした時、NEW電王の至近距離で爆発が起こる。
「ぐっ!?」
明らかにローブの人物とは別の場所からの攻撃で、一瞬怯むNEW電王。
爆煙を振り払い、ローブの人物が居た場所に辿り着くNEW電王だったが、その場所には既に誰も居なかった。
「……逃げられたか」
辺りを確認したNEW電王はそう呟きながら、腹部のベルトを外し、幸太郎の姿へと戻る。
それと同時に銃剣のマチェーテディから、通常のイマジン状態に戻るテディ。
「如何する?幸太郎」
テディがこれから如何するべきか意見を求める。
「取り敢えず、ターミナルに戻って報告するぞ」
幸太郎はテディにそう答えると、踵を返して、走ってきた道を戻り始めた。
「もしかしたら、この事件。爺ちゃん達の協力も必要かも知れない……」
ターミナルに戻る道中で、幸太郎はそう呟き零した。
この戦いは、ほんの序章にすぎなかった。
この事件により、二つの世界の、出会う筈の無かった仮面ライダー達が、邂逅を果たす事となる。
今……時間を超え、時空を超え、全てを超えた新たな戦いが始まろうとしていた……