魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~ 作:G-3X
『フルチャージ』
NEW電王がライダーパスを、ベルトの中央にセタッチさせると、ベルトから音声が流れ、エネルギーが右手の銃剣の刀身へと集まりだす。
「たあああああああ!!!」
そして一気に駆け出したNEW電王は、気合を込めた一閃のもと、三体のホルダーを必殺の一撃により、斬り伏せる。
三体のホルダーはその斬撃を喰らい、砂へと帰っていった。
「ふう~。これでもう大丈夫だよ」
相手を倒した事を確認し、安堵したNEW電王は、此方に振り向きながら、安心させる様な声色で話しかけてきた。
恐らくは俺の事を、ただ巻き込まれただけの、子供だと思っているのだろう。
NEW電王は俺に、一言告げた後、そのまま立ち去ろうとするが、俺の立場としては、ここで彼等を黙って返す訳には行かない。
「あの、幸太郎さんとテディさんですよね?」
帰り際に発した俺の言葉により、背を向けて歩き出していたNEW電王の動きが止まり、再び俺の方に振り向く。
「如何して俺達の名前を?」
普通に考えれば、本来居た筈の時間軸では無く、自分を知る者は居ない筈の状況で、己の名前を言い当てられれば、さぞかし驚く事だろう。
現に表情は確認できないが、俺に質問してきたその声質から、動揺している事が、窺い知れる。
「話は移動しながらにしましょう。もしかしたら俺の友達が狙われている可能性があるんです」
俺はそう言って、アリシアちゃんが逃げていった方向を、指差しながら移動を開始した。
出来ればゆっくりと事情を説明したい所ではあるが、先程のホルダー達は明らかにリニスを狙っていた。
その理由に何となくではあるが、俺は心当たりがある。
もしも俺の推測が、当たっているのだとしたら、一刻も早く、アリシアちゃん達と合流しなければならない。
それに加え、俺の世界でネガタロスが、率いていた模造品から作り出したホルダーの数を考えると、この近辺で活動していたホルダーがあれだけとは、到底思えない。
如何にも嫌な予感がするのだ。
俺は未だ動揺を見せる、NEW電王に簡単に事情を説明しながら、アリシアちゃんが逃げていった方向を目指して走り出した。
夕方の住宅街を今、一人の仮面ライダーが走っている。
……俺を小脇に抱えながら。
まあ。効率を重視するのであれば、当然の結果であろう。
ただでさえ大人と子供の体格差がある上に、幸太郎さんの方は、現在進行形で、常人を遥かに超えた身体能力を持つ、仮面ライダーに変身中なのだ。
そんな相手と並走する等、短距離走の記録保持者でも不可能である。
急いでいる状況下であるならば、こうなってしまうのは最早《もはや》自然の摂理なのだ。
そうでも言っておかないと、今の俺とNEW電王の姿は、あまりにも滑稽に見えてしまうだろう。
「それじゃあ君は、爺ちゃんの協力者って事か」
「はい。時の狭間で、デンライナーから落ちて逸れてしまいましたけど」
俺と幸太郎さんは、互いの事情を説明しながらアリシアちゃんの後を追っていた。
幸太郎さんの話によると、やはり最後の封印の鍵は、この世界にあるらしい。
俺のいた世界に良太郎君達がやってくる頃と同じくして、幸太郎さん達も、別のルートで此方に封印の鍵を探しに来ていたのだそうだ。
「でも君の言っている事が本当だとしたら「前方から何かが来るぞ」ん?」
俺の推測を聞いたNEW電王が返事を返そうと話している途中で、今も銃剣状態で、背中に背負われているテディさんが、俺達に報告してくる。
その言葉に反応し前を見てみると、一匹の山猫が此方に走ってくるのが見えた。
「リニス!?」
俺はその山猫の名前を呼んだ。
リニスは俺達の目の前までやってくると、何かを訴える様に、何度も鳴き続ける。
今日一日見ただけだが、リニスが、これ程に鳴くのを見たのは、初めてだった。
その異常な行動を続けるリニスを見て、再び嫌な予感が俺の脳裏を過ぎった次の瞬間、俺の予感は最悪な形で現実になってしまったのである。
「全く、手こずらせるなよ。小娘が」
「放しなさいよ!」
リニスが、やって来た方向から、新たにやってくる集団。
その先頭には、あのネガタロスが居た。
しかも嫌がるアリシアちゃんの腕を掴みながら、引きずる様にして、多数のホルダー達を従えながらである。
互いを認識出来る距離まで、やって来たネガタロスは、その場で立ち止まり、俺達に話しかけてきた。
「おい、お前達。そこに居る猫を、いや、猫がしている首輪に付いている物を渡せ」
淡々と要求を述べてくるネガタロス。
その要求を聞き、俺の推測が真実へと変わっていく。
「やっぱりこれが、最後の封印の鍵だったんだな」
俺の言葉に、ネガタロスは、含み笑いをしてくる。
「その通りだ。早くそれを渡せ。渡さなければ……」
「痛い!?」
恐らくは、ネガタロスがアリシアちゃんを掴む手の力を強めたのだろう。
痛みに顔を歪めながら発せられた、アリシアちゃんの悲痛な声が聞こえてくる。
「止めろ!!!」
俺はその光景を見て、一瞬だが、我を忘れて怒りの咆哮を上げる。
「なら早くしろ」
これは警告なのだろう。
渡さなければアリシアちゃんは……
もうこのまま奴に、封印の鍵を渡す以外に手は無いのかと、俺が考え始めたその時、俺は腹部に違和感を感じた。
俺を小脇に抱えているNEW電王の指が、俺の腹部で細かく動いているのだ。
何かと思い、その動きに意識を集中させると、それは文字を書いているのだという事が理解出来た。
俺はその文字の全てを読み取り、視線だけをNEW電王に向ける。
その視線に対して、NEW電王は一度だけ、首を縦に振った。
「分かった。鍵を渡すから、アリシアちゃんには絶対に危害を加えるな」
俺はそう宣言して、NEW電王に小脇から降ろして貰い、リニスを抱き上げると、首輪に付いていた琥珀を取る。
「同時に交換と行こうか。その方が後腐れ無いだろ?」
素直に要求に従う俺を見て、機嫌良さそうに提案してくるネガタロス。
此方から提案しようとした事なので、向こうから言ってくれたのは、不幸中の幸いである。
「それじゃあ、そっちに投げるぞ?」
ネガタロスがアリシアちゃんを放す態勢を整えるのを確認した俺は、ほぼ同時に掴んでいた琥珀を放物線を描く様に投げ放つ。
そしてネガタロスも、放物線を描きながら、自らの手に飛んでくる琥珀を確認して、アリシアちゃんを開放する。
その時、NEW電王が動いた。
背中の銃剣を抜き放ち、俺が投げ放った琥珀目掛けて投擲する。
俺は既にNEW電王が銃剣を抜き放つと同時に走り始めていた。
銃剣は空中でテディさんの姿に戻り、ネガタロスの手に収まる前に、琥珀をキャッチする。
「受け取れ!」
テディさんはそう言うと、掴んだ琥珀を俺に投げ返す。
俺はそれを受け取りながら、未だ突然の出来事に頭が追いついていかない様で、俺達の様子を見ているアリシアちゃんの手を掴み、逆走する。
それと交代するかの様に、ネガタロス目掛けて駆け抜けていくNEW電王。
「な!?」
あまりにも流れる様な流れに、驚愕の声を上げたのはネガタロスだ。
当然の事ながら、先程までの全ての動作を瞬時に判断して出来る程、俺は機転の利く人間ではないし、幾ら知識で知っていたとは言え、ほんの数刻前に出会ったばかりの彼等と、言葉のやり取りも無しに連携出来る訳も無い。
全ては幸太郎さんの作戦である。
俺の腹部で動かしていた指の動きを読み解く事で、先程の作戦を一方的に受け取るだけだったとはいえ、意思の疎通が取れたのだ。
その上ネガタロスが、油断からなのか、此方の作戦を実行しやすい条件を出してくれたお陰で、作戦は恐ろしい程に上手くいったのである。
NEW電王が戦闘を開始したのを確認した俺は、この場をNEW電王に任せ、鍵とアリシアちゃんを連れて、住宅街を抜ける為に、全力で走り出した。
何とか住宅街を抜け出した俺達は、海岸まで辿り着いた。
これが普通の犯罪者に追われているという事ならば、人ごみの多い場所に行くのが、良いのだろうが、奴等はそんな事お構いなしに、暴れ回るであろう。
無関係の人達を巻き込む訳にもいかない為、選択したのが、この場所だったのだ。
確かに敵に発見される可能性は高いが、それは同時に味方に見つけてもらう場合も同じ事である。
「鬼ごっこはそこまでだ」
走る俺達の前方に、突如現れてそう告げる。
その声を発したのは、NEW電王と戦っていた筈の人物、ネガタロスである。
いや、正確には違う。
恐らくNEW電王との戦いで変身したのだろう。
ソードフォームの電王に酷似した姿であるネガ電王となっていた。
その足元には、下敷きにされたNEW電王。
やはり幾らNEW電王といえども、多数のホルダーとネガ電王を、同時に相手にするのは、無理があった様である。
一歩一歩着実に近付いて来るネガ電王から守る様に、俺はアリシアちゃんとリニスを後ろに庇う。
「さあ、早く渡せ。そうすれば……そうだな、お前の後ろに居る小娘の命ぐらいなら、助けてやっても良いぞ?」
俺に最後の慈悲を見せるかの様な、発言をするネガ電王。
はっきり言って、奴の言う事等、信用出来る筈もない。
しかし現状は、俺に選択出来る余地を残して等居ないのである。
俺だけならば最後まで、抵抗するだろうが、後ろには恐怖で震えているアリシアちゃんが居るのだ。
アリシアちゃん達は、巻き込まれただけで、本来ならばこんなに怖い思い等せずにすんだ筈だ。
これ以上彼女達を、苦しめる訳には行かない。
「……分かった。その代わり、俺の後ろに居るこの子達には、絶対に手出しするな」
俺は握り込んでいた琥珀を、ネガ電王に放る。
「……純お兄ちゃん」
この光景を見ていたアリシアちゃんが、俺に話しかけてきた。
「如何して、私の事をそこまでして守ってくれるの?私は妹でも何でも無いのに……」
恐怖に震えながらも、疑問を呈するアリシアちゃんに、俺は今思っている事をそのまま口にする。
「守りたいからだよ」
「え?」
「俺は確かにアリシアちゃんの兄じゃない。ただの他人だ」
実際俺達は出会ってから、まだ一日も経っていない。
「でも俺はアリシアちゃんを、命懸けで守りたいんだ」
理屈じゃない。
ただ俺は目の前の脅威から、彼女を今の俺に出来る全てを賭けて守りたいんだ。
今の俺は何の力も無い、ただの無力な子供に過ぎないかもしれない。
それでも俺は……
「ずるいよ……純お兄ちゃんは……」
アリシアちゃんはそう言って、俺の手を握る強さを強めた。
「感動的なシーンですまないが、俺からも一つ良いか?」
俺が投げ渡した琥珀を確認していたネガ電王が、突如俺とアリシアちゃんの会話に、割って入ってくる。
「悪人は約束を破る。良く覚えておくと良い」
そう言い放ち再び俺達に近付いてくるネガ電王。
こうなる事を予感していた部分は確かにあるが、嫌な意味でベタ過ぎだ。
だが、ベタな事も悪いばかりではない。
ネガ電王が、足を一歩前に踏み出したその時、俺の耳に聞き慣れた電車の発車音が聞こえて来た。
誰かがピンチの時、ヒーローが現れるのも、またベタなのである。
上空に光が生まれ、そこから飛び出して来たのはデンライナーだ。
更に前面のハッチが開き、デンバードに乗ったソードフォームの電王が、此方に向けて射出される。
「行くぜえええええええええ!!!!!」
電王はそう叫びながら、飛んで来て、そのままネガ電王に突撃を慣行した。
その間に下りてきたデンライナーが、俺達のすぐ近くで停車し、扉が開く。
『マスター!!!』
中から一番に出てきたのは、メカ犬である。
『無事だったのだなマスター』
俺のすぐ隣までやって来たメカ犬が安堵の声を漏らす。
本当に心配性な相棒ではあるが、その気持ちが何よりも嬉しいと感じるのも事実だ。
「心配かけたな相棒」
他のメンバー達も次々に降りて来て、俺に一言声をかけた後、海岸で倒れているNEW電王を助け起こしていた。
「のわあああああああ!?」
無事合流する事が出来て、安堵した瞬間、モモさんの悲鳴と爆発音が聞こえて来た。
爆発音がした先に視線を移すと、中破したデンバードと此方に吹き飛ばされてくる電王、そして爆煙の中から悠然と出てくるネガ電王。
電王は爆発の衝撃で変身が解除されてしまった様で、良太郎君の姿に戻ってしまう。
「良太郎君!」
俺の居た場所のすぐ近くに、放り出されたのを見た俺は、すぐに駆け寄り、助け起こした。
「ぶ、無事だったんだね」
自分が吹き飛ばされながらも、俺を見て最初に出た言葉は、あまりにも良太郎君らしい言葉だった。
「すいません。ネガタロスに全ての鍵が……」
今の俺には、謝罪する事しか出来ない。
もう少しだけでも時間を稼げれば、奴に鍵を渡さなくてすんだかも知れないと思うと、余計に俺のした事に後悔の念が浮かぶ。
「もう過ぎた事はしょうがないよ。それよりも、今僕達に出来る事を全力でしよう」
そう言って良太郎君は、手を差し出してきた。
俺はその手を見て思う。
画面の中で彼は、何度も困難に立ち向かい、そして乗り越えてきた。
彼にとっては、今この瞬間もきっとそうなのだ。
自分に出来る事をやろうとしている。
「はい!」
俺はその手を握り返し、力強く答えた。
後悔する事は、終わった後でかまわない。
俺が今すべき事は、ただ一つ!!!
「貴様等……絶対に許さんぞ!!!!!!」
激昂したネガ電王が、その手から黒く光る幾多の模造品を投げ放ち、ホルダーの姿へと変質させる。
ホルダー達は、未だ戦いの準備も出来ていない俺達に襲い掛かろうとするが、俺達の間に突如として銃弾が連射され、ホルダー達の動きを牽制した。
「俺達も忘れてもらっちゃ困るな?」
声のした方向に振り向くとそこに居たのは、
「Tさん!!!」
「侑斗!!!」
俺と良太郎君が、その名を呼ぶ。
銃を構えたTさんと、アルタイルフォームのゼロノスがそこに居た。
これは役者が揃ったという事なのだろう。
連続で起こる一連の出来事に、一人置いて行かれているアリシアちゃんに、俺は今の気持ちを伝える。
「アリシアちゃん。俺は確かにずっと一緒に居る訳には行かない存在かも知れないけど、この瞬間を……君を守るよ。俺がそうしたいって望むから」
そう言ってから俺は、ネガ電王と、ホルダー達に向き直る。
「行くぞメカ犬!」
「こっちも行くよモモタロス!」
俺と良太郎君が、互いのパートナーを呼ぶ。
『「任せろ!」』
頼もしい相棒達の答えを聞きながら、俺はタッチノートを取り出し、良太郎君はベルトを巻きつける。
『バックルモード』
『ソードフォーム』
其々のボタンを押す事で、メカ犬が銀色のベルトに変形し俺の腹部に巻きつき、良太郎君のベルトからはメロディーが流れる。
俺達は一度互いに向き合いながら、頷きそして力ある言葉を口にした。
「「変身」」
俺はタッチノートをバックルに差込み、良太郎君は、ライダーパスをベルトの中心にセタッチする。
『アップロード』
『ソードフォーム』
モモさんが良太郎君の身体に吸い込まれる様に消え、全身にスーツを纏っていく。
俺の全身も白銀の光に包まれて、その姿を戦う為の戦士へと変えていった。
今ここに並び立つのは、板橋純と野上良太郎ではなく、己の大切にするものを守る二人の戦士である。
「「俺達、参上!」」
その言葉が、この戦いの始まりの合図となった。