魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~ 作:G-3X
俺は前世の頃から、一度デンライナーを運転してみたいなと思っていた。
思っていたのだが……
「こんな命懸けの運転は嫌だああああ!!!」
『ほらマスター!叫んでる暇があるなら前を見て運転する!じゃ無いと死ぬわよ』
「今はデンライナーを動かせるのが、お前だけなんだから頑張れよ!」
俺の心からの叫びに対して、好き放題言ってくるチェイサーさんと、ソードフォームの電王。
「そんな事言ったって「次が来るぞ!!!」はいいいいい!!!」
言いかけた俺は、死にたくない一心で、ハンドルを切る。
ここまでの流れで理解して貰えると思うのだが、現在俺はデンライナーの運転をしているのだ。
以前にもデンバードを使わずに、マウンテンバイクで走った事が劇中であった事を思い出し、チェイサーさんを無理矢理デンライナーに仮付けする事で、何とか走行する事を可能としたのである。
本当は運転慣れしている電王メンバーの誰かと代わりたいのだが、チェイサーさんのマニュアル運転は、マスター登録している俺じゃないと出来ないそうなので、俺が運転しているわけだ。
今まではチェイサーさん自身が勝手に走っていたので、全く気付かなかったが、とんだ落とし穴である。
しかも現在チェイサーさんは、デンライナーと仮接続する為に、全ての機能を総動員させている為、無事にこの稲妻の嵐を抜けて、大陸のクリスタルに辿り着けるかは、全て俺の腕に懸かっているという無茶振りだ。
前世の頃でも、一応は免許を持っていたので、運転出来ない事は無いのだが、それも安全運転に限っての事である。
何とか今は、ベーシックフォルムに変身しているお陰で、様々な感覚が強化され対応出来ているが、不測の事態が起きた場合、それに対処出来るかは分からない。
そして不測の事態とは、そんな事を考えた時に限ってやってくる。
「おい!あれって……」
後部座席に座っていた電王が、何かを発見した様で、声を上げながら指差す。
辺りから降り注ぐ稲妻に気を配りながらも、俺が指が指し示す方角に視線を向けると、そこにあったものは、
「ネガデンライナー!?」
俺達が目指す大陸の更に上から、俺達の進行方向目掛けて、ネガデンライナーが落ちて来たのである。
何故こんな所に?と思うのは当然なのだが、今の状況はそんな事をのんきに考えている場合じゃない。
避けようにも、今進行方向を変えれば、稲妻の餌食になるし、このまま進めば間違い無く、ネガデンライナーと衝突する事になってしまう。
考えている間にも、ネガデンライナーは、容赦無く此方に向かって落下してくる。
一か八かこのまま特攻するしかない、という考えが俺の頭を過ぎったその時だ。
突如デンライナーの横から、新たな時の列車が現れる。
緑と黒を基本カラーとしたゼロライナーだ。
前頭部分には巨大なドリルが唸りを上げている。
そのままデンライナーを追い越したゼロライナーは、デンライナーお連結させて、更に加速していく。
最高速度に達したデンライナーとゼロライナーは、落下してくるネガデンライナーをそのドリルで粉砕しながら、一気に稲妻地帯を抜けて、大陸のクリスタル付近まで、到着した。
駆けつけて貰って助けてくれたのは、素直に感謝しているのだが、一つだけ文句を言いたい。
ゼロライナーはあの海岸からは離れた場所に停車してあると言うから、俺がデンライナーを運転する事になったのに、間に合うのならば、もっと早く言ってくれ!
しかし現状の俺は、そんな言葉を言う余裕すら無かった。
デンライナーの前方部分、つまり俺が今居る場所の屋根が開いて行く。
これってもしかして……
『それじゃあ行くわよマスター』
チェイサーさんの言葉で俺がこの先どうなるのか、理解してしまう。
俺と電王を乗せた状態で、射出されるチェイサーさん。
「やっぱりねえええええええええええ!!!!!!!!」
空中に放り出された俺は、そんな叫びを上げながら、チェイサーさんと電王と共に、クリスタルに突っ込んで行く。
クリスタルに大穴を開けて、そのまま最深部まで突き進む俺達の前に現れたのは、見た事も無い様な、装置の数々だった。
暫く進むと最深部に辿り着いた様で、チェイサーさんが停車する。
そこは祭壇を思わせる作りになっており、東京ドーム並の広さを誇っていた。
ドームの中心には光の柱があり、その中程には、三つの鍵がオーブに包まれている。
恐らくあれが侑斗さんが言っていた、この大陸全体にエネルギーを送る為の起動キーなのだろう。
「兎に角あれを壊せば、良いんだな」
電王が、俺と同じくオーブを見ながら、ライダーパスを取り出す。
「ですね」
俺も頷きながら、バックルのタッチノートを引き抜いてから、全体図を表示させて、右足をタッチする。
あのオーブに強い衝撃を与える事で、この暴走が収まるのであれば、今この場で俺達がやる事はただ一つだ。
電王はライダーパスをセタッチし、俺は再びタッチノートをバックルに差し込む。
『ポイントチャージ』
『フルチャージ』
互いのベルトから、音声が鳴り響き、発生したエネルギーが其々の足へと、集められていく。
「こいつで決めるぜ!」
「俺達の必殺技!」
俺と電王、二人の仮面ライダーが飛び上がり、光の柱に向けて、同時に右足を突き出す。
「「ダブルライダーキック!!!!!」」
二人の声が重なり、最高の一撃が繰り出される。
光の柱に守られていたオーブは俺達の放った衝撃で砕け散る。
着地した後に、辺りを見渡せば、その力を失うかの様に輝きを失っていく無数のクリスタルがあった。
『終わったな』
この大陸全体が、機能を停止させていくのを確認しながら、メカ犬が呟く。
「そうだな」
俺はメカ犬の呟きに、安堵の溜息を零しながら答えた。
こうして俺の本当に長い一日は、終わりを告げた。
「お別れなんだね……純お兄ちゃん」
「……そうだね」
あの戦いから翌日の早朝、海岸に停車されたデンライナーの前で、俺とアリシアちゃんは、別れの挨拶を交わしていた。
本来ならばすぐにこの場所を、去らなければいけない筈だったのだが、デンバードの修理や、大陸の再封印等もあり、徹夜となってしまい、気付けば朝を迎えてしまったのである。
侑斗さんとデネブさん、それにTさんは、一足早くゼロライナーで時を越えてこの場を去ってしまった。
現在は大陸も、オーナーが再封印した為、時の狭間の奥深くへと戻って行ったし、デンバードも、取り敢えずの修理は完了したので、後はこのまま帰るだけだ。
俺とアリシアちゃんが、今こうして話しているのも、本当ならば時の運行を妨げてしまう可能性があるので、いけないらしいのだが、今回だけは特別にという粋な計らいのお陰で、こうして会話をしている。
「また……会えるかな?」
瞳に一杯の涙を溜めながら俺を見つめるアリシアちゃん。
「それは……」
情けないが俺には何も約束出来ない。
世界が違う上に、恐らく俺とアリシアちゃんは、存在している時間そのものが、違っている可能性が高いのだ。
再び出会える可能性は、限りなく無いに等しいだろう。
だから俺は……
「アリシアちゃん。少し目を閉じてくれるかな」
「うん。良いよ」
アリシアちゃんは、素直に目を閉じてくれた。
それを確認した俺は、ズボンのポケットからある物を取り出して、アリシアちゃんの首にかける。
「純お兄ちゃん?」
「もう目を開けて良いよ」
俺の言葉に、目を開けてから、自身の首元を見るアリシアちゃん。
「これって……ネックレス?」
「俺にはこれ位しか出来ないから……」
俺がアリシアちゃんの首にかけた物は、誰が見てもただのネックレスに見えるだろう。
銀の細い鎖に、中央部分は、黄色の丸い宝石の様な物が一つ飾られている。
如何して俺がこんな物を持っているのかというと、理由は以外と単純なものだ。
戦いが終わった後に、メカ竜が俺に渡してきたのである。
何でも博士からの俺に対する餞別だそうで、お守りの様なものらしい。
貰い物を更に他の人あげるのは、失礼かもしれないが、今の俺がお守りになりそうな物で、あげられそうな物が、これしか思い浮かばなかったのだ。
「ありがとう……私大切にするから……絶対に純お兄ちゃんの事……忘れないから……」
アリシアちゃんの瞳からは、ついに大きな雫が零れ落ち、それと同時に抱きついてくる。
俺は自身の胸で泣き続ける、アリシアちゃんの頭を優しく撫でながら、その言葉に頷き続けるしか出来なかった。
その足元では、山猫のリニスが一鳴きする。
やがてお互いにどちらとも無く離れ、俺はデンライナーに乗り込む。
俺が乗り込んだ事で、扉は閉まり、ついに別れの時が訪れる。
さよならは言わない。
また何時か、出会える時が来る事を信じたいから……
「これで僕達もお別れなんだね」
「はい」
時の狭間を抜け、俺が居た時代の海鳴市へと戻った今、もう一つの別れの時がやって来た。
「テメエも犬にしては、やるじゃねえか……」
俺と良太郎君が別れの挨拶をしているその横では、モモさんが何と自分からメカ犬に話しかけていた。
『赤い者もな』
「あ、当たり前だろ……」
メカ犬の言葉に少し照れた素振りを見せるモモさん。
「力を貸してくれて、本当にありがとう」
コハナさんが改めて俺達に感謝の言葉を述べる。
「それでは僕は、署に戻って報告しなければならないので、これで失礼します」
俺達が別れの挨拶を交わす中で、長谷川さんは、そう言うと一足先に、デンライナーを後にした。
「純君。君に渡す物があります」
長谷川さんが出て行った直後、突然オーナーが、喋り出すと、俺の前までやって来て、ある物を手渡した。
それは何も描かれていない、一枚の白紙のカードだった。
「これは?」
「それは今回の君への報酬です。何時か役に立つ時が来るでしょうから、大切に手元に置いておくと良いでしょう」
オーナーは俺に意味深な言葉を告げる。
「はあ……」
この人のやる事は、如何にも分からないが、取り敢えず俺は頷き、受け取ったカードを、ポケットにしまった。
オーナーの話も終わり、俺がデンライナーを出ようとした時、電王メンバーの皆が俺に一言ずつ声をかけてくれた。
「また会おうね」
良太郎君が、
「それじゃあ元気で」
コハナさんが、
「今度は僕と釣りでもしよう」
ウラさんが、
「健康には気を付けや」
キンさんが、
「バイバ~イ!」
リュウ君が、
「さらばだ。新たなお供よ」
ジークさんが、
「また会える時まで」
幸太郎さんが、
「達者で」
テディさんが、
「またコーヒーを飲みに来てくださいね」
ナオミさんが、
「……じゃあな!」
そしてモモさんが、
「はい!また何時か……未来で」
俺は、電王メンバーの皆に別れを告げてデンライナーから、降りる。
俺達全員が降りた事を確認すると、デンライナーの扉は閉まり、発車音を辺りに響かせながら、走り出す。
やがて空中に大きな光が現れると、デンライナーの走る線路がそこまで延びて行き、吸い込まれる様に消えていった。
『行ってしまったな』
『不思議な方達でしたね』
『でも楽しかったわよね』
「ああ、そうだな……」
俺達は、デンライナーの消えていった空を見ながら、其々の言葉を口にした。
「さてと!取り敢えず俺達も帰るか」
何時までもこの場で呆けている訳にも行かないので、俺がそう言った瞬間、再び例のあのメロディーが聞こえて来た。
「まさか!?」
俺はもしかしてと思いながらも、空を見上げる。
『デンライナーだな』
メカ犬がその音の正体を口にした。
先程時を越えて、この世界から消えてしまった筈の、デンライナーが、今再び俺達の前に現れたのだ。
やがて俺の目の前で、停車したデンライナーの扉が開くと、中から出て来た良太郎君達に、俺達は半ば無理矢理引き摺り込まれる。
「如何したんですか一体!?」
揉みくちゃにされながらも、俺は何とか質問を声に出した。
「訳は後で説明するから、兎に角着いて来て!」
「また君達の力を借りたいのよ!」
俺の質問にそう早口で告げる良太郎君とコハナさん。
如何やら俺と彼らの冒険はまだ、もう少しだけ続くらしい。
「クライマックスで行くぜ!!!!」
モモさんの言葉で、再び走り始めるデンライナー。
今日の海鳴は、平和なのだが、如何にも別の時間はそうでも無いらしい。
しかし如何にかなる事だろう。
何せ今の俺達は、何時だって超・クライマックスなのだから!
電王編 完
オマケ
全ての戦いが終わり、俺がへとへとで家に帰ると、そこに待ち受けていたのは、やけに気合の入ったおめかしをした、なのはちゃん達だった。
そしてなのはちゃん達四人は、俺にこう告げる。
「「「「さあ、これからデートに行きましょう」」」」
……ヤバイ。
この事をすっかり忘れてた。
如何やら俺にとって、別の戦いが始まってしまった様だが、これはまた別の機会に話したい。
取り敢えず俺は、目の前の問題を解決する事から始めなければ、ならないのだから……