魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~   作:G-3X

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第二話 動き出したかもしれない運命【後編】

俺は今、自室で一つの謎に挑んでいる。

 

「これって結局何なんだろ?」

 

学校の帰り道で拾ったこのオモチャ?の正体を探るため、俺は試行錯誤を繰り返していた。

 

まずは汚れを綺麗に拭き落とす。

 

これでもしかしたら今まで目視出来なかった部分に、新たな発見をする事が出来るかもしれないからだ。

 

しかしこの作戦は失敗に終わった。

 

確かに見栄えは良くなったが、期待した様な変化は現れなかったからだ。

 

次にボディの溝部分を調べてみる。

 

最近のオモチャは完成度の高いものが多く、繋ぎ目などを上からはめ込み式のパーツ等で上から被せて隠すなんて事もするので油断できない。

 

暫くいじり倒してみたが、これも駄目だった。

 

だがこの犬型オモチャ?俺の力では動かせないが変形機構を備えている様なのだ。

 

それと使われている材質なのだが、見た目に反して軽いのだが、恐ろしいほどに頑丈だという事が分かった。

 

試したわけではではないがハンマーを振り落としても平気そうな程だ。

 

他にも思いつく限りの事を試みたんだがこれ以上は何も分からなかった。

 

とりあえず犬のオモチャはここまでにして次にこいつが抱えていたゲーム機?の様な物体を調べてみる事にした。

 

もしかしたらこれはこのオモチャ?のコントローラーという可能性もあるので期待大だ。

 

とりあえずサイズは丁度手のひらサイズで形状は俺の居た前世で流行っていたタッチペンがついた某ゲーム機と同じくらいだ。

 

形状も酷似している。

 

違いはボディの中央に見たことの無いロゴマークがついている事だ。

 

何処と無く英語のOか数字の0を変形させた様に見える。

 

マークの部分だけが黒で後の色は犬形オモチャ?と同じメタリックシルバーだ。

 

折りたたみ式になっていたので俺はそれを開いてみる事にした。

 

中には二つの大きめなスクリーンが取り付けられておりその両脇に幾つかのボタンが取り付けられていた。

 

ますます持ってあの某ゲーム機の様だ。

 

違いはタッチペンが無い事とボタンの形状だろうか?

 

俺は取り合えず適当にボタンを押してみることにした。

 

こういう類の物の起動スイッチは大抵が端に付いたレバーか、押しにくそうな小さなボタンなので、それを重点的に探してみる。

 

すると案の定、ボディの右側にそれらしき小さなレバーを見つけた。

 

俺は早速そのレバーを動かしたのだが、どうやら予想は的中したようで、先程まで黒一色だった画面が白い光を帯びた。

 

そこまでは予想の範疇だったんだが、そこから先は俺の予想を遥かに超えていた。

 

突然見たことの無い文字の羅列と、少なくとも日本人には発音が出来そうに無い機械的な音声が、テープの早送りをしているように聞こえてきた。

 

俺はその光景に言葉を漏らした。

 

「何なんだよこれって?」

 

俺が言葉を発した直後更に変化が起きた。

 

突然音声が聞こえなくなり画面に羅列された記号は俺の見知らぬ記号から、見慣れた日本語が五十音順に流れ始める。

 

『アラタナオンセイキコウヲシュトクイタシマシタ』

 

今度はゲーム機?から俺にも分かる言葉で機械的な音声が聞こえてくる。

 

『マスターニンショウガリセットサレテイマス。アラタニマスターセッテイノトウロクヲオネガイシマス』

 

言っている言葉の意味は良く分からないが様はこの音声の指示に従って操作をすれば良いって事なんだろうか?

 

『ジュンビガデキマシタラガメンノシタブブンニユビヲオシアテテクダサイ』

 

指紋認証が付いてるのだろうか?

 

俺は結構ハイテクなオモチャ?何だなと思いながら声の指示通りに人差し指を画面にくっ付ける。

 

『マスターシンキトウロクガカンリョウイタシマシタ。ゲンザイスベテノシステムガダウンシテイマス。

ゲンジョウサイキドウカノウナノハバディーシステムノミトナリマスガサイキドウイタシマスカ』

 

その音声が流れた後に下の画面にハイとイイエのマークが出てきた。

 

何かのシステムを起動させるかの確認てことだろう。

 

俺は迷わずハイを選択した。

 

『ニンショウカクニンシマシタ。コレヨリバディーシステムノサイキドウヲオコナイマス』

 

その音声が流れた後今度はさっきまで動く様子すらなかった犬型のオモチャ?が突然動作確認する様に間接部分を順番に動かし始めた。

 

その動作を暫く続けたあと更に音声が流れた。

 

『サイキドウヲカクニンイタシマシタ。イチブメモリーニハソンガミラレマスガドオサカクニンオヨビホカノシステムハイジョウアリマセン。コレニテショキドオササポートプログラムヲシュウリョウイタシマス』

 

動いたので次は操作説明かなと思ったんだがそのまま終わってしまった。

 

この後どうすれば良いんだろうと思いながら、俺は先程間接を動かしまくっていた犬のオモチャ?を見つめる。

 

『君がワタシのマスターか?』

 

今喋ったかコイツ?

 

落ち着け。

 

クールになるんだ板橋純。

 

これはきっとそういう音声が幾つか録音されてる物なんだよきっと!

 

『聞いているのか?マスター』

 

あれ?可笑しいな?

 

今このメタリックわんちゃんが俺の行動を観察して理解した上で、語りかけてきたように聞こえたんだが…

 

俺きっと疲れてるんだな、これは疲れから来る幻聴に違いない。

 

『言っておくがこれは幻聴ではなく紛れも無い現実だぞマスター』

 

俺の考えてる事まで読まれた!

 

『いやさっきから声に出ているぞマスター』

 

突っ込まれた上に駄目出しまで食らったよおい!

 

これは認めざるおえない様だな。

 

良いだろう。

 

俺のへタレ転生者の全力全開をこのメカドックに見せ付けてやるぜ。

 

「え~メタリックカラーのお犬様。私ただの何処にでも居る様な、しがない一般市民なのですがいったいどういったご用件なので御座いましょうか?」

 

『気合を入れていたわりには物凄い低姿勢だなマスター』

 

うるさい!

 

なめるなよ!

 

こうやって瞬時に低姿勢になる能力が無ければ、俺は今頃お隣のシスコンお兄様に亡き者されている事間違い無しなんだからな!

 

確かに恭也君は手加減してくれるだろうけど、所詮はライオンがハムスターと戯れる様な力関係なんだぞ。

 

ライオンからすれば少し触った程度のつもりでも、ハムスターからしたら命を失いかねない一撃になるんだからな。

 

わかったか?このスクラップ駄犬が!

 

『ああ了解した。取り合えずマスターが現状パニックに陥っていることは理解した。ワタシはマスターに危害を加えたりしないから、まずは落ち着くことから始めようかマスター』

 

 

 

 

 

 

 

「さて、落ち着いた所で質問したいんだけどさ」

 

あれから十分ほどしてようやく正気を取り戻した俺は、取り合えず言葉というコミニュケーションによりこの謎の物体の真実を探るべく質問を開始した。

 

『取り合えずこれ以上突っ込みはしないが、答えられる範囲で答えようマスター』

 

「お前は何者なんだ?どうしてあんな道端で倒れてたんだ?」

 

『悪いが記憶メモリーの一部が現在閲覧不可能なため、すべての問いに答えられないがわかる範囲の説明でも良いだろうか?』

 

「ああそれで頼む」

 

俺の答えを聞いたメカ犬は一度首を立てに振ると了解したといって説明を始めた。

 

『まずワタシはこの世界で作られた存在ではない』

 

まあそこら辺は何となく納得できる。

 

明らかにこの世界の技術水準を越えている気がするからなコイツ。

 

『マスターの言葉で言う所の別次元からワタシはやって来た。やって来た理由なのだがまずはワタシの造られた経緯を説明させてもらおう』

 

「造られた経緯?」

 

『ワタシが造られた世界ではこの世界とは比べ物にならないほどに科学技術が発達していた。それと同時にこの世界には少なくとも…表向きには存在を証明されていないある技術が栄えていた。』

 

ある技術?

 

『それは身体エネルギーの技術転用。マスターの世界における気功やオーラ等と言われる物だ。ワタシのいた世界ではそれを科学技術と組み合わせて全く新しいシステムを完成させた。そのシステムの名はコンタクトフュージョンシステム、人間と機械の完全な融合だ』

 

俺は質問することも忘れて聞き入った。

 

メカ犬も質問が無いなら先に進めるぞと話しを再開する。

 

『このシステム瞬く間に世界中に広まった。それも当然のことだろう。このシステムを使えば誰でも超人的な力を得られる上に其々に異なった特殊な能力が得られるからな。このシステムのおかげでワタシの世界は更に発展した』

 

「それって良い事なんじゃないのか?」

 

そんなにいい世界なら、なんでこの世界にわざわざこのメカ犬がやって来たのかが分からない。

 

旅行にでも来て持ち主とはぐれたんだろうか?

 

『問題はここからだ。ここまでの出来事は全て仕組まれた罠だった。システムのコア部分の設計を行なった科学者は二人いたのだがその一人がシステムの中にあらかじめ暴走プログラムを仕込んでいたんだ』

 

「暴走プログラム?」

 

『ああ、システムの起動には強い身体エネルギー、オーラが必要になるんだがそれは人の感情や想いなどに深く関わっている。特に重要視されているの人の願いだ。科学者はそこに目を着けた。願いは暴走を起こし発動させた人間の理性を奪い、歪んだ形でその力を使い始める。やがてそれは更に高純度のエネルギーを生み出すんだ』

 

「何だよそれ…」

 

『科学者の本当の狙いはその高純度なエネルギーだった。奴はそのエネルギーを回収して何かをしようとしている』

 

「何かって何なんだよ?」

 

『分からない。ただこのまま放っておけばとんでもない事になるのは間違いない。そこでワタシが造られた理由が出てくるのだ。ワタシの製作者はコア部分を設計したもう一人の科学者だ。ワタシは彼を博士と呼んでいた。博士は誰よりも早くシステムの異常に気付き、それに対抗する独自のシステムを完成させた。それがワタシだ。ワタシのシステムはコンタクトフュージョンシステムを元に造られて入るが似て非なる物だ。私のシステムだけが科学者の仕組んだ暴走プログラムを破壊することが出来る』

 

「ち、ちょっと待ってくれよ」

 

俺は慌ててメカ犬の説明に割って入る。

 

『どうした?マスター』

 

「いやその話しが本当かどうか別として、そんなプログラムを唯一お前だけが持ってるって言うんなら何でこんな別世界にいるんだよ?」

 

コイツの言っている事が真実なら、ますます持ってこのメカ犬がここに居るのはおかしい。

 

コイツがここにいる必然性が全く見当たらないんだ。

 

『その理由は簡単だ。科学者がマスターがいるこの世界にそのシステムを送り込んできたためだ。科学者は自分のいる世界のエネルギーだけでは不足と考え別次元に目を着けた』

 

「それがこの世界って事か?」

 

『その通りだ。博士はそれを知り、ワタシをこの世界に送り込んだんだ』

 

「じゃあその博士は今何処にいるんだよ。当然この世界に来てるんだろ?」

 

『残念ながら答えはNOだ』

 

「何でだよ。それっておかしくないか?」

 

絶対におかしいと思う。

 

唯一対策を立てられるのがその博士だけならば、このメカ犬と一緒に現場に来るのが確実だと思うんだが?

 

『それは無理なんだ。我々の世界では確かに次元を越えるシステムが実験的に完成してはいるが、生身の人間はその時空移動に耐えられない。だから機械であるワタシが単独でこの世界にやって来たのだ』

 

話は何となく分かったがどうにも納得できない部分がある。

 

とりあえず今は分かる部分だけを聞いてみよう。

 

「お前がここに居る理由は分かったよ。それで何で道端で倒れていたんだ」

 

『すまないが其れは分からない。ワタシはこちらの世界に送られた直後からマスターに再起動して貰うまでの間システムがダウンしていたので情報が無いんだ。恐らくは次元を越える際の衝撃でメモリーの一部がショックを受けたのだろう。何分実験的な部分が未だに多いからな』

 

「それじゃあ次の質問なんだけどさっきから俺のことマ『キンキュウケイホウキンキュウケイホウ…』何だ?」

 

突然ゲーム機?から警報みたい音と音声が響きだした。

 

『どうやらこの近くでシステムが発動した様だなマスター』

 

「発動ってさっきの話の奴か?」

 

『ああそうだ。急ぐぞマスター』

 

「急ぐって何処にだよ?そもそも何で俺が…」

 

『詳しい場所はそのタッチノートに乗っている。それに説明している時間は無いぞ』

 

タッチノートっいうのはこのゲーム機?の正式名称だろうか?

 

俺は取り合えずメカ犬の言う通り二つ折りされているそれを開いて確認してみた。

 

「おい、この場所って…」

 

その場所は今日なのはちゃん達がお稽古をしている筈のピアノ教室だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は今全力全開で自転車を走らせている。

 

『そこを右だマスター』

 

「わかってるよ!」

 

自転車の前かごに収まっているメカ犬が道案内をしてくれる。

 

一応大体の道は把握しているが今は一分一秒が惜しい。

 

なのでメカ犬に目的地までの最短距離を計算してもらって自転車ですっ飛ばしているわけだ。

 

『後200mで目的地だ気を抜くなマスター』

 

答えてる余裕は今の俺には無い。

 

そんだけ必死なんだよこっちは!

 

「何だよ、何なんだよこれ…」

 

それは正に惨状って言葉を表していた。

 

建物の至る所が重機の突撃でも食らったかのように抉られている。

 

周りには怪我をして蹲っている人や、それを助けようとするレスキュー隊の人に、逃げ惑う人達とそこかしこから漂う消炎の匂いで混乱を呈していた。

 

「うわああああああああああ」

 

この惨状の中、俺の目の前に文字通り人が吹っ飛んできた。

 

現実離れした光景に一瞬俺の頭がフリーズするが、何とか再起動させて吹っ飛んできた人を助け起こす。

 

吹っ飛んできた人は警察官だった。

 

「大丈夫ですか?一体何があったんですか?」

 

俺が警察官を助け起こしながら理由を聞きだすと、警察官は途切れ途切れになりながらも話してくれた。

 

「…ば化け、化物が…女の子達を…」

 

警察官はそれだけを呟くと意識を失ってしまった。

 

メカ犬が言うには命の心配は無いそうなので、俺はレスキュー隊の人に後の事を任せて警察官が吹っ飛んできた方向に走り出した。

 

目的の場所にはすぐにたどり着いた。

 

そこでは先程の警察官と同じタイプの制服着た人達が一斉に銃を向けている。

 

その標的には既に何発もの銃弾が命中しているのだろう。

 

しかしそいつは微動だにせず、ゆっくりと歩を進めている。

 

そいつの姿は正に異形だった。

 

ベースは人間なのだが、それは明らかに人間とは一線を画していた。

 

成人男性程の身長で、全身が灰色の金属で覆われ頭部の形状は蜘蛛を模している。

 

この惨状は全て奴がもたらした物だということは俺にでも簡単に想像できた。

 

『間違いない奴が反応元だ』

 

メカ犬がおれの隣で確信を得たように頷く。

 

そうだ、すっかり頭から抜け落ちていたけど、コイツが居ればあのメカ蜘蛛を如何にかできるんだった。

 

「なあ、お前ならあいつを如何にかできるんだろ?それなら早く如何にかしてくれよ」

 

『わかったと言いたい所だが、ワタシだけでは無理だ』

 

「どうしてだよ!?」

 

俺は予想外のメカ犬の言葉に思わず声を荒げながら聞き返した。

 

『少し落ち着けマスター』

 

「…ああ。ごめん、怒鳴ったりして」

 

『話を続けるが、マスターの家でも話したとおり、ワタシは奴らの対抗プログラムではあるが、やはり根っこの部分は同一のシステムなのだよ』

 

「何が言いたいんだよ」

 

『奴らが最大限力を発揮するのは如何いう状態かわかるかマスター』

 

こんな時に謎掛けやっている場合じゃないんだが、メカ犬の雰囲気がそれを許してくれそうに無い。

 

俺は仕方なく、家でのメカ犬との話を思い出しながら導き出した答えを言う。

 

「えっと人間と機械の融合で…おい、それって」

 

『マスターの考えている通りだ。ワタシにも同じ事が言える』

 

「じゃあ早くそれをしなくちゃだろ?警察の人の誰かに頼めば一人くら『マスター』どうしたんだよ?」

 

『今この場でワタシと融合が可能な人間はマスターだけだ』

 

「何だってんだよそれ?俺みたいなガキが少しくらい強くなった所で如何にかなるのかよ?」

 

俺は思ったことをそのまま返してみた。

 

確かに俺にもヒーロー願望位ある。

 

前世でも大の仮面ライダーファンだったからな。

 

でもそれと現実は違う。

 

今必要なのはヒーローオタクではなく、あの怪物と真っ向から戦える存在だ。

 

決して俺みたいなへタレじゃない。

 

『正直わからない。だが、ワタシとマスター登録をしたのは君だ。君以外では融合することは出来ない』

 

「なら俺以外の奴と今すぐにマスター登録って奴をすれば済む話じゃないのか」

 

『それは出来ない。詳しい話をしている余裕は無いが、少なくともこの場では無理だ』

 

「何だよそれ…」

 

『怖いのか?マスター』

 

「怖いのかって?当たり前だろう!今のこの惨状を作った張本人と真っ向から戦えなんて死にに行けって言っている様なもんだぞ!」

 

俺はメカ犬に再度怒鳴りつけた。

 

勝手すぎる。

 

成り行きで一緒に来た俺に勝てるか分からない命懸けの勝負をしろだって?

 

ふざけているにも程がある。

 

『…すまなかったなマスター。確かにマスターには戦う理由も必要性も無い事だった』

 

「メカ犬…」

 

『ただ最後に礼を言わせてくれ。マスターがワタシを起動してくれなければ、ワタシはこの場に駆けつけることすら出来なかったかもしれないのだからな』

 

メカ犬はそう言って俺に一礼すると、蜘蛛の化物の居る場所に駆けて行った。

 

俺はそれを半ば放心状態で眺めていた。

 

心の中でこのままで良いのかという迷いと、死に直面する恐怖の感情がせめぎあって身動きが取れない。

 

やがて化物蜘蛛の頭にしがみ付いていたメカ犬や警官達も吹き飛ばされた。

 

化物蜘蛛は再び歩き始める。

 

鈍足だが確実にその向かう先には…

 

「いやああああああああああ」

 

聞きなれた女の子の悲鳴が聞こえた。

 

「ちょっとこっちに来るんじゃないわよ!」

 

アリサちゃんが近くに落ちている小石を投げつけながら牽制している。

 

「なのはちゃん…」

 

すずかちゃんは自分も怖いだろうになのはちゃんを抱きとめながら必死に気丈でいようとしている。

 

「・・・・・」

 

なのはちゃんは恐怖のあまり動けないでいるのか、震えながら僅かに唇を動かしている。

 

何なんだよこれは?

 

これはフィクションじゃないんだぞ?

 

何で俺の友達があんなわけの分からん化物に襲われなくちゃならないんだよ?

 

俺の中に迷いとも恐怖ともそして怒りとも違う言葉に出来ない感情が産まれた。

 

「…けて…たす…けて…助けてええええええええ純君!!!!!!!」

 

なのはちゃんの叫び声が木霊した。

 

何でなんだろう。

 

単純に強さで言うなら士郎さん達の方が圧倒的なのに、なのはちゃんはへタレの俺なんかを呼ぶんだろう?

 

俺はいつの間にか走り出していた。

 

さっきまであんなに頭の中がぐちゃぐちゃになっていて、一歩も動けなかった筈なのに、今は身体が羽みたいに軽く感じる。

 

そういえばこの感覚どっかで感じたことがあるな…そうだ。

 

俺が前世で、最後に何も考えずにトラックに突っ込んでいった時だった。

 

今思えば本当に無茶したよな。

 

結局それで死んだわけだしな。

 

でも、あの時ほど気持ちがスッキリした事も無かったけどさ。

 

俺は笑う状況じゃないと分かっていながらも唇が緩むのを止める事が出来なかった。

 

「おっ待たせー!!!!」

 

俺は渾身の力を込めて飛び蹴りを喰らわせる。

 

銃弾も効かないような化物だけど、バランス感覚はあんまり無い様で、子供の飛び蹴りでも何とかすっ飛んでくれた。

 

伊達に俺の脚力も、人外シスコンお兄様の襲撃をかわす為に鍛えられたわけではないみたいだ。

 

「純?」

 

「純君?」

 

「…純君なの?」

 

美少女三人組が、突然の展開にあっけに取られながら俺の名を呼ぶ。

 

そりゃビックリもするだろうな。

 

第一本来の俺は、こんな事をするキャラじゃ絶対にない。

 

「なのはちゃんが呼んでくれたから真っ先に駆けつけたんだよ」

 

とりあえず俺は軽口を叩いて見ることにした。

 

その台詞にアリサちゃんがバッカじゃないのと突っ込みを入れてきたのだが、その顔は笑顔だったのでいくらか恐怖を取り除くことは出来たのかもしれない。

 

「三人とも早く逃げて、ここは危ないからさ」

 

「確かにそうね。早くここから離れましょ」

 

俺の意見にアリサちゃんが肯定する。

 

なのはちゃんとすずかちゃんも無言だが頷いてくれた。

 

「え~と、悪いんだけど皆は先に逃げてくれるかな?」

 

「何でよ?こんなとこにいたら純も危ないわよ」

 

「そうだよ」

 

「何でそんなこと言うの純君」

 

三人が口々に抗議してくる。

 

当たり前だろう。

 

でも俺はここに残ってやらなきゃいけない事がある。

 

だからと言って今から三人に説明している時間も余裕ない。だから俺はそれっぽい事を言わなければいけない。

 

「実はここに来る途中で怪我をした警察官の人に頼まれたんだ。今ここに機動隊の人達が向かってるんだけどここに来た警察の人達は全員怪我で動けなくて詳しい場所に誘導できるのは怪我している警察官の人から誘導用の発信機を預かった俺だけなんだよ。だから俺は警察の人達をここまで誘導しないと」

 

勿論嘘だし、こんなんで騙されてくれるはず無いんだろうな。

 

「なによそれ?それが本当だと「大丈夫」しても…」

 

俺はアリサの返答を途中で強引に終わらせる。

 

本当にもう余裕が無いんだ。

 

「…本当に大丈夫なんでしょうね?」

 

「うん、大丈夫」

 

「はあー、分かったわよ。でも絶対に危ないことをするんじゃないわよ」

 

「当たり前だろ。俺は史上稀に見るへタレだぞ」

 

アリサちゃんを始め、三人とも笑っていた。

 

俺は三人がこの場所から遠ざかっていくのを確認すると、恐らく既にこの場所にたどり着いているだろう化物蜘蛛に声を掛ける。

 

「待たせたかな」

 

化物蜘蛛は無言でこちらに歩いてくる。

 

どうやらただ単に足が遅いだけらしい。

 

『マスター』

 

俺の足元にはいつの間にかメカ犬がやって来ていた。

 

「なあ、俺ならあいつと戦うことが出来るんだよな」

 

『ああ』

 

「俺以外じゃ駄目なんだよな」

 

『ああ』

 

「だったら力貸してくれよ…相棒!!!」

 

『ああ!!!』

 

俺の問いにメカ犬は答えてくれた。

 

この先のことは分からないが、少なくともこの瞬間は、この戦いの間だけは、俺達は一蓮托生のパートナーだ。

 

「で、どうすればいいんだ?」

 

『まずタッチノートを開くんだ』

 

俺は指示通りゲーム機?改めタッチノートを開く。

 

『次に左側の一番大きなボタンを押すんだ』

 

指示通りにボタンを押すとタッチノートから音声が流れる。

 

『バックルモード』

 

「うを!!?」

 

隣のメカ犬が突然変形し始めた。

 

そしてメカ犬は見事に銀色なベルトになり、自動的に俺の腹部に巻かれた。

 

『次はタッチノートを閉じて音声キーワードを入力して、そのままバックルの中央の窪みに差し込むんだ。それで融合が完了する』

 

「音声キーワード?」

 

『マスターの好きな言葉で構わない。今は未設定になっているから、今回使った言葉を正式採用する』

 

好きな言葉か…

 

それなら俺にはあれしかないだろう。

 

正直俺なんかが使って良いのか迷いもするが、いや…だからこそ俺はこの言葉で、少しだけ彼らの勇気を分けてらうんだ。

 

俺はタッチノートを閉じて、目の前の化物蜘蛛に掲げながらキーワードを口にする。

 

「変身」

 

キーワードを口にしてから、俺はメカ犬の指示通りに、バックルの中央部にタッチノートを差し込んだ。

 

『アップロード』

 

差し込んだ瞬間に俺は白銀の眩い光に包まれた。

 

そして次の瞬間その場に居たのは板橋純という人間ではなく一人の戦士だった。

 

「何じゃこりゃ?」

 

俺の初変身の最初の台詞はこれだった。

 

丁度自分の姿が見えるガラスがあったので確認してみたのだ。

 

全体的にボディはメタルブラックで覆われており、そこにバックルを中心として、銀色のラインが四肢に伸びている。

 

頭の額部分には同じく銀色でV字型の角飾りが取り付けられており、両目の部分には昆虫のバッタを模した様な大きな赤い複眼がある。

 

「これ、どこの仮面ライダーだよ?」

 

『仮面ライダー?特にこの状態での名称は無いのだが中々良い響きだな。良し、この形態の時はこれから仮面ライダーと名乗ろうマスター』

 

メカ犬の奴は、何か仮面ライダーという単語が気に入ったらしく勝手に決定してしまった。

 

まあ…別に良いんだけどさ。

 

「あ~メカ犬。一つだけ聞きたいんだけども良いか?」

 

『何だマスター敵は目の前に居るんだぞ。手短にしてくれ』

 

「俺って一応小学一年生なんだけどさ。何で変身したら大人サイズになってんの?」

 

これがテレビの中での話だって言うんならまだご都合主義で納得も出来るんだけど、実際に体験した俺としては物凄く自分の身体が心配なんですが。

 

『マスターこれは装着ではなくて融合した状態なのだ。マスターと融合する際に遺伝子データを読み取り最もマスターが力を発揮できる身体データを擬似的に再現している』

 

「つまりどういうことだよ?」

 

『この姿の身長は若干の差異は出る可能性はあるが、約十数年後のマスターの姿ということだ』

 

もはや今日は驚きの連続過ぎて驚く気もうせた。

 

「はあ、とりあえず納得したよ」

 

おふざけはここまでにして、ここからは真面目にいってみよう。

 

それじゃ、とりあえずやってみますか。

 

「いくぜメカ犬。サポート頼むぞ」

 

『了解だマスター』

 

俺は全速力で化物蜘蛛に駆け寄り、その速度を乗せたまま右拳を叩き込む。

 

拳銃には蚊がさした程のリアクションもしなかった化物蜘蛛が、初めて痛みという感情を垣間見せた。

 

この攻撃で俺は完全に敵と見なされて、蜘蛛も反撃をして来るが、俺はそれをことごとく避けきった。

 

『マスター本当に戦うのは初めてなのか?素人の動きには見えないぞ。特に攻撃の裁きかたなど秀逸だ』

 

メカ犬が賞賛するが、俺からしてみればこれくらいは出来て当然のことだ。

 

攻撃の裁き方が下手だったら俺は今頃お隣さんのシスコンお兄様に殺されている。

 

というか今日の俺って今の所、恭也君のおかげで生き残ってる?

 

感謝して良いのか恨めば良いのか分からなくなってきた。

 

「うおおおりゃああ!!!」

 

俺は化物蜘蛛の攻撃をかわした瞬時に、カウンターで蹴りを叩き込んで吹き飛ばした。

 

『そろそろけりを着けるぞマスター』

 

「けりを着けるってどうやってだ?」

 

『暴走したシステムと素体となった人間を分離させてプログラムだけを破壊する。今からやり方を説明するから指示通り頼む』

 

「分かった」

 

俺がメカ犬の声に頷くと、メカ犬は説明を始めた。

 

『まずはバックルからタッチノートを取り出して開くんだ』

 

俺はメカ犬の指示にしたがって、バックルからタッチノートを引き抜いて開いた。

 

「開いたぞ。次はどうすれば良い?」

 

『次は画面左の緑色のボタンを押せ』

 

指示通りにボタンを押すと、下の画面に俺の全体図が表示された。

 

『所でマスターはキックとパンチどっちの方が得意だ?それと右利きか、左利きか?』

 

「どっちかと言えば蹴りかな、あと一応は両利きだぞ。それがどうかしたか?」

 

『それなら取り合えずキックでいいだろう。マスター、画面の右足部分をタッチした後、もう一度バックルにタッチノートを差し込んでくれ』

 

「あ、ああ、分かった」

 

俺は取り合えずメカ犬の言うがままに操作して再度タッチノートをバックルに差し込んだ。

 

『ポイントチャージ』

 

差し込んだ瞬間に電子音声が聞こえてきた。

 

同時にバックルから白い電気の様な物が流れて、それがボディの銀色のラインを通って右足に集約する。

 

光を纏った右足が物凄く熱い。

 

『その右足を思い切り叩き込むんだマスター。それで決着が着く。所謂必殺技といった所だ』

 

なるほど、必殺技ね。

 

それじゃ、ご期待に添えないとな。

 

「こいつで決めるぜ」

 

俺は化物蜘蛛を視点にして大きくジャンプした。

 

「ライダーキック」

 

右足から放たれる光を纏いながら、俺は急降下して全力全開の蹴りを叩き込んだ。

 

化物蜘蛛は爆発四散してその場所には、気絶したスーツを身に纏った初老の男性がいた。

 

恐らくこの人が化物蜘蛛の素体になった人なのだろう。

 

とりあえず呼吸はしているので心配は無さそうだ。

 

安心して周りを見渡すと男性以外にもう一つ発見した。

 

「ビー玉?」

 

エメラルドグリーンに輝くそれは、二つに割れているものの確かにビー玉の様に見えた。

 

『それが暴走システムだ』

 

俺がそれに触ろうとした瞬間メカ犬がそう言い漏らした。

 

思わず視線をバックルに向けてしまったが、もう一度先程のビー玉に視線を戻すとそれは跡形も無く消えていた。

 

とにもかくにも、こうして俺の戦いは一先ず幕を閉じたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いを終えて俺が安全地帯に戻ってくると、三人組が俺に一斉に飛び掛ってきて抱きつかれた。

 

その後三人は心配したんだからと泣きまくってしまったので、俺は学校でしたように三人が泣き止むまで頭をなで続けた。

 

俺は今、なのはちゃんをおんぶしながら家路に着くため歩いている。

 

乗ってきた自転車があのドサクサに紛れて紛失してしまったからだ。

 

アリサちゃんとすずかちゃんは家の迎えが来るまで待つそうだ。

 

一緒に乗せてきてもらえばよかったとも思うのだが、我が家は二人の家と比べてここからそんなに離れてないし、道路の復旧作業が少し掛かるそうで結局徒歩になったのだ。

 

メカ犬は暫く現場に残って調べ物をしたいそうなので現在別行動中だ。

 

そしてなのはちゃんをおんぶしている理由なのだが、これは本日三つ目のお願いって奴だ。

 

なのはちゃんは俺の背中で気持ち良さそうに眠ってらっしゃる。

 

「全く、とんだ甘えん坊将軍なんだから、なのはちゃんは」

 

「…純君」

 

なのはちゃんが俺の名前を呼んだ。

 

不味い、もしかして起こしちゃったかな。

 

肩越しになのはちゃんの顔を覗き込むが、相変わらず規則正しい寝息を立てている。

 

「ただの寝言か」

 

俺はやれやれと再び前を向いて歩き出そうとした所、またしてもなのはちゃんの寝言が聞こえてきた。

 

「純君…大好きだよ…」

 

満開の花が咲く様な笑顔がそこにはあった。

 

「俺も大好きだよ、なのはちゃん」

 

心なしか、なのはちゃんの体温が少し上がった気もするが気のせいだろう。

 

恐らくは今をもって浴び続ける、夕日のせいに違いない。

 

俺はなのはちゃんを抱え直すと、またゆっくり家路に向けて歩き出した。

 

俺が仮面ライダーなんてなれるわけが無いって今でも思うけれど、それでも今日この笑顔を護りきったのは確かに俺なんだなって、少しだけ自身を持つことが出来た。

 

そんな気がする。

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