魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~   作:G-3X

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第十五話 自分らしい強さ【後編】

銃の引き金を絞るメルトに対して、俺はベルトの右側をスライドさせて緑のボタンを押した。

 

『スピードフォルム』

 

音声が流れると同時に、メルトが引き金を引いた銃口から、弾丸射出される。

 

俺の周りには、暴煙がたち込めて、辺りの様子が確認出来ない程だ。

 

「……今のを避けきるとは中々の速さだな」

 

メルトは呟きながら、煙が舞う方向とは、逆に銃身を向ける。

 

「そりゃどうも」

 

その先に居るのは、ライトグリーンに輝くボディーの仮面ライダー、つまりスピードフォルムの俺だ。

 

何とか間一髪で、フォルムチェンジに成功した俺は、スピードフォルムの特性である身軽さを駆使して、如何にか難を逃れた訳である。

 

軽口を叩いてはいるが、内心かなり焦った。

 

俺はそれを悟らせない様に注意しつつ、右側のベルトを再度スライドさせて、黄色いボタンを押す。

 

『スピードロッド』

 

音声が流れると同時に、ベルトから発生した光が、このスピードフォルムの専用武器であるスピードロッドへと、その姿を変えていく。

 

「お前が来てるって事は、あのホルダー達もオーバーが言っていた【作戦】に関係あるんだな?」

 

スピードロッドを構えながら、俺はメルトに質問する。

 

「ふん。私が素直に話すとでも思っているのか」

 

『ならば無理矢理にでも、聞きだすまでだ!』

 

メカ犬が啖呵を切る事で、俺とメルトの戦いが開始される。

 

「やれるものならば、やって見せるがいい!」

 

そう言いながら、メルトは連続で弾丸を撃ち出して、俺との距離を取ろうとする戦法を取ってきた。

 

俺はその弾丸を避けながら、時にはロッドを使い、薙ぎ払いつつ、何とか接近を試みる。

 

以前戦ったオーバーとは反対に、メルトは距離を取った戦いを得意としているみたいだ。

 

これは一度に両者と戦う事になったら、不味いかもしれない。

 

出来るならば、ここで奴だけでも倒したい所だ。

 

「はあああああ!!!」

 

俺は強引に突っ込み、何とかメルトの懐に飛び込む。

 

「甘い!」

 

だが今度は、メルトの拳が、俺に牙を向く。

 

「ぐっ!?」

 

咄嗟にロッドを盾にして、直撃だけは回避するが、折角縮めた距離が、再び離されてしまう。

 

「私を遠距離だけと侮ると痛い目を見る事になるぞ?」

 

「御忠告どうも……」

 

メルトが俺に再び銃口を突付けながら、言ってくる。

 

俺はそれに冗談交じりに答えながら、ロッドを構え直すが、正直な所かなり動揺していた。

 

流石に一筋縄では行かないと思ってはいたけれど、予想以上だ。

 

直撃では無かったとはいえ、ロッド越しに衝撃を受けた腕に、いまだダメージが残っている。

 

距離を取って戦えば、あの高威力の銃を如何にかしなければいけないし、距離を詰めて接近戦を仕掛ければ、先程の拳と一戦交える事になる……本当に厄介な相手だな。

 

「ふん。取り敢えずここまでのようだな」

 

「何?」

 

臨戦態勢で、何時戦いが再会されてもおかしく無いこの状況下で、メルトが意外な事を呟く。

 

「うがああああああ!!!!」

 

メルトが呟いた直後、赤い毛並みのホルダーがもう一体のホルダーの拘束を解き、何処かに走り去ってしまう。

 

それに一瞬でも気を取られたのがいけなかった。

 

もう一度メルトに目を向けると、先程までいた筈の場所から、その姿を消していた。

 

「居ない!?」

 

『奴等はとんでもなく逃げ足が速いな』

 

俺は驚きの声を上げ、メカ犬は悔しげに言葉を漏らす。

 

「純の旦那!後ろです!!!」

 

ヤスが突如叫び声を上げる。

 

何事かと振り返ると、青い毛並みのホルダーが、ゆっくりと俺に近づいてきていた。

 

咄嗟にロッドを構えて、戦闘態勢を整えるが、何処か様子がおかしい事に気付く。

 

如何にも戦闘の意思が感じられないのである。

 

一体如何いう事かと、ホルダーの動きを、注意深く観察していると、ホルダーの全身から、くすんだ銀色の光が、発せられて、その姿を元の人間の姿に戻した。

 

「雅人!?」

 

ホルダーから元の人間に戻ったその姿を見たヤスが、その人物の名前を呼ぶ。

 

そう。

 

青い毛並みのホルダーの正体は、先程ゲームセンターに居た来人君の兄、照屋雅人だったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、もう一体のホルダーの正体は、来人君だったんですね」

 

「はい。如何かお願いします!弟を……来人を止めるのに協力して下さい!」

 

俺の質問に答えた雅人君は、深く頭を下げながら、懇願してきた。

 

「しかし兄弟揃って、何でそんな事になったんだ?」

 

俺と雅人君の会話を聞きながら、ヤスが疑問を口にする。

 

「……実は来人は、二ヶ月程前から酷いイジメを受けていたみたいなんです」

 

少しだけ躊躇いを見せつつも、雅人君は、俺達にゆっくりと説明をし始めた。

 

来人君は、先程までいた中学生達に、イジメ受けていそうだ。

 

最近までそれを来人君本人が、隠していた為、家族の誰も気が付かなかったそうなのだが、一週間程前から急に来人君の様子が変わったらしい。

 

今まで気の弱かった来人君が、暴力的になったのである。

 

ご両親は反抗期だろうという事で、片付けたらしいのだが、雅人君は如何しても納得出来ず、個人的に調べて回った。

 

イジメの件は、その調べる過程で知ったらしい。

 

その事を本人に問い質した所、来人君が灰色の怪人、メルトから暴走プログラムを譲り受けた事を聞いた。

 

勿論すぐにそれを捨てる様に、雅人君は言ったのだが、それを来人君が聞き入れる事は無かった。

 

何度も説得したが、その答えは変わらず、やがて事態は急変する。

 

来人君の性格だけで無く、その肉体にも、急激な変化が訪れたのだ。

 

つまりホルダー化である。

 

ホルダー化により、来人君の考えは、今までイジメを受けた事への復讐をすることへとシフトしていった。

 

そして数日前、ついに一人目の被害者が出る事になる。

 

その時は、雅人君が必死に止めたという事もあり、被害者はホルダー化した来人君に驚き、階段から足を踏み外した為の怪我が元で、入院を余儀無くされた。

 

結果的には来人君が、直接手を下す事にはならなかったが、次は無い……

 

このままでは弟である来人君が、過ちを犯す事になってしまう。

 

そんな思い悩む雅人君の前に現れたのが、来人君に暴走プログラムを授けた灰色の怪人メルトだった。

 

メルトは、来人君を止めたいのであれば、同じ力を持てば良いと言って、雅人君にも同じ物を渡したのである。

 

最初こそ戸惑いを見せた雅人君だったが、確かにそれ以外今の来人君を止める術は無いと、思い至り暴走プログラムをその手に取った……

 

『解析が完了したぞマスター』

 

雅人君が話終えたのとほぼ同時に、メカ犬が声を上げる。

 

メカ犬は、雅人君が話している間、雅人君の持っていた灰色の球体である、暴走プログラムの解析を続けていたのだ。

 

「それで如何だったんだメカ犬?」

 

『うむ。それなのだが……少年、確か雅人と言ったな』

 

「は、はい」

 

メカ犬は、視線を雅人君に向けて話しかけ、それに戸惑いながらも雅人君は何とか返事を返す。

 

『雅人は今回初めてホルダー化したのではないか?』

 

「……そうです」

 

『最初に言っておく。これ以上ホルダー化するな。このままホルダー化し続ければ、すぐに正気を失う事になるぞ』

 

「如何いう事だよ?」

 

俺はメカ犬の発言に、疑問を持ち、解説を求める。

 

確かにホルダー化を続ければ、その人の理性が失われていくと、以前言ってはいたが、それは個人差があるものの、それなりの時間が掛かった筈だ。

 

『マスター。このプログラムを解析して分かったのだが、これは従来のプログラムとは、明らかに違う性質を有している』

 

「違う性質?」

 

『うむ。今までのプログラムは、時間をかける事で、保持者との最適化をしてきたのだが、これはその過程を無視して、強制的にホルダー化を図るものだ。それと同時に使用した者の意識をも、短時間で崩壊させる』

 

今までのプログラムとは違う、即効性が高められたシステム……奴等はこれを使って、何をしようとしているんだ?

 

「……それでも俺は、弟を、来人を助けたいんです。その為なら、俺は如何なっても構いません!」

 

「弟が大事だっていうのは分かるが何で其処までして?」

 

メカ犬の忠告を聞き、それでも尚、来人君を救いたいという雅人君の覚悟を聞き、ヤスが疑問を口にする。

 

「今の俺があるのは、来人のおかげなんです。俺は道場主の息子なのに、あんまり強くなくて、負け続けて落ち込んでいた時、自分は身体が弱くてあまり激しい運動が出来なくて、見てるだけでも辛い筈なのに、何度も俺を励ましてくれたんです……凄いねって、お兄ちゃんは凄く強いから次は絶対勝てるからって」

 

雅人君は、強い意志と覚悟を秘めた瞳で、俺達に話し続ける。

 

「俺はその言葉に、何度も勇気付けられました。だから今度は俺が、来人を助けたいんです!あの優しかった来人に戻って貰いたいから!」

 

『……覚悟は変わらないのだな?』

 

メカ犬が雅人君を見詰めながら、一言だけ確認する。

 

それに対して、雅人君は一度だけ力強く頷いた。

 

『一回だ。後一回だけならば、ホルダー化しても、暴走する事は無いだろう。そして弟を助けた後は、すぐに暴走プログラムをワタシに渡せ。良いな?』

 

雅人君の熱意に負けたのか、メカ犬は溜息交じりに告げて暴走プログラムを雅人君に渡した。

 

「話は纏まったみたいですけど、どうやって奴等の居場所を特定するんですか?」

 

大体の話が纏まった所で、ヤスが俺に質問してきた。

 

確かにタッチノートで、ホルダー反応を察知する事は出来るが、結局は後手に回る事になってしまう。

 

恐らく辿り着いたとしても、メルトが待ち構えているだろうから、一筋縄に行くとは、到底思えない。

 

何とかして先手を打ちたいが、如何にかならないものだろうか?

 

「あの……俺に一つ、提案があるんですけど」

 

俺がこれから如何動くべきか、悩んでいた所で、雅人君が控えめに手を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方の海鳴公園に、一人の小学生の男の子がやって来る。

 

そして公園内の奥に、目的の人物達を視認した男の子は、其処に向かおうと歩みを進めようとしたその時、

 

「悪いけどそれ以上は先に進ませないぞ」

 

「来人!もう止めるんだ!」

 

公園にやってきた男の子、来人君の進行方向に、俺と雅人君が立ち塞がる。

 

「……如何して僕がここに来るって分かったの?」

 

俺と雅人君を見た来人君が、不思議そうに聞いてきた。

 

『それは彼等に聞いたのさ』

 

遅れて俺の隣に来たメカ犬が、説明を開始する。

 

メカ犬が向けた視線の先に居るのは、ヤスの指示でこの場から避難している、来人君をイジメていた中学生達だ。

 

俺達は雅人君の提案で、必ず狙われるであろう、彼等を見つける事に目的を絞ったのである。

 

ここ最近まで、来人君の周辺を独自に調べていた、雅人君が居たからこそ、実行出来た作戦だ。

 

「邪魔しないでよお兄ちゃん」

 

「駄目だ来人!今お前がしようとしている事は、今までお前をイジメて来た奴等がしていた事と同じなんだぞ!」

 

「だから何?お兄ちゃんはあいつ等を許せって言うの?僕は嫌だよ!それに僕は何も悪くない!全部あいつ等が悪いんだ!だから僕はあいつ等を絶対に許さない!!!」

 

雅人君が何とか来人君を説得しようと試みるが、その思いは届かない。

 

「……如何しても止めないって言うのなら、俺を倒してから行け!」

 

「お兄ちゃんがその気なら、僕も容赦しないよ!」

 

照屋兄弟は、互いに灰色の球体を取り出して、全身をくすんだ銀色の光で包み込む。

 

光が飛散して、その場に居たのは、姿の酷似した、色違いの二体のホルダーだった。

 

二体のホルダーは、互いの意志を貫く為に相手に攻撃を仕掛ける。

 

『マスター。ワタシ達がやるべき事は……』

 

「ああ、分かってる」

 

俺は二人の兄弟の互いに賭けた意志を貫く為の戦いから、視線を逸らしてタッチノートのボタンを押す。

 

『バックルモード』

 

音声が流れると同時に、ベルトに変形するメカ犬を腹部に巻きつけながら、俺は辺り一体に聞こえる様に叫ぶ。

 

「おい!居るんだろメルト!」

 

俺の声は、夕暮れの公園に虚しく鳴り響く。

 

「ふん。如何やらばれていたらしいな」

 

何の前触れも無く、脇の木陰から灰色の怪人メルトが、その姿を現す。

 

「お前の相手は俺だ!あの二人の邪魔は絶対にさせない」

 

俺は雅人君に頼まれていた。

 

もしも戦う事になったその時は、自分自身の手で、大切な弟を止めさせてほしいと。

 

だから俺は、その邪魔をする奴を足止めする。

 

「変身」

 

変身の為のキーワードを言いながら俺は、タッチノートをバックルに差し込む。

 

『アップロード』

 

音声と共に白銀の光が俺の全身を包み込み、その姿をメタルブラックの仮面ライダーへと変える。

 

「メルト!お前の相手は俺だ!」

 

変身を完了させた俺は、何時でも戦える様に身構える。

 

あの二人の邪魔は絶対にさせない!

 

「ふん。その必要は無い」

 

メルトは、俺の言葉を一蹴すると、左手を広げて、ホルダー化して戦い続けている照屋兄弟に向けた。

 

その行為を止める間も無く、唐突に異変が訪れる。

 

「うあ!?」

 

「が!ぐ!?」

 

左手を突き出されたその瞬間に、ホルダー化した二人が苦しみ出したのだ。

 

「一体何をしたんだ!?」

 

俺にはメルトが手を広げただけにしか見えなかったが、奴が何かをしたのは間違い無いだろう。

 

その広げた左手を下げさせる為に、俺は叫びながら攻撃を仕掛ける。

 

だがその攻撃は、メルトに届く事は無かった。

 

俺とメルトの間に割って入り、攻撃を妨げる者が現れたからだ。

 

「「ぐるるるるる……」」

 

野獣の様な唸り声を上げながら、先程まで苦しんでいた筈の二体のホルダーが、俺の前に立ち塞がる。

 

『馬鹿な!?暴走状態に入っている上に、それを外部から制御しているだと!?』

 

ホルダーの豹変に対して、メカ犬が驚愕の声を上げる。

 

「オーバーが言っていただろう。私達はホルダーを超えた存在。全てのホルダーは私達の意のままに操る事が出来る」

 

二体のホルダーに守られながら、メルトがとんでもない事実を俺達に告げた。

 

「さあ行け!仮面ライダーを倒して見せろ!」

 

メルトの号令と共に、二体のホルダーが、襲い掛かる。

 

赤い毛並みのホルダーは、地面に落ちている木の枝を拾うと、その拳に力を込めた。

 

するとその小枝が、突如変化を起こし、巨大な斧へと変わった。

 

「何だって!?」

 

『物質変換か!?』

 

先に突っ込んできた青い毛並みのホルダーの攻撃を裁きながら、後ろで武器を生成するその姿に、俺とメカ犬は驚きを隠せない。

 

青い毛並みのホルダーと交互に、今度は赤い毛並みのホルダーが斧を片手に、驚異的な斬撃を繰り出す。

 

「ぐう!?」

 

あまりにも突然な事態に、俺はその波状攻撃を避けきる事が出来ず、吹き飛ばされる。

 

「はははははは!!!脆いな。人の心とは本当に脆い!!!」

 

その光景を見ながら、メルトが嘲笑う。

 

人の心が脆い?

 

それは……

 

「違う!!!!!」

 

俺は立ち上がりながら、メルトの言った言葉を否定する。

 

「人の心は確かに脆いと思える時があるかもしれない……だけど人は!大切な何かを守ろうと心に決めた時、何処までも強くなれる!!!」

 

俺は自分が初めて変身した時の事を思い出す。

 

その脳裏に蘇るのは、大切な絆。

 

俺はその絆を守りたいと願ったからこそ、この力を受け入れた。

 

そして今この場には、もう一人、大切絆を守るために、己の全てを賭けた人が居る。

 

「くだらんな」

 

俺の言葉を一蹴して、メルトはホルダー達に、俺の息の根を止めるように指示を出す。

 

その指示に従い襲い掛かる二体のホルダー。

 

俺は信じてる。

 

誰かを守りたいと願うその心が、何にも負けない奇跡を生むという事を……

 

「馬鹿な!?」

 

次の瞬間メルトが驚愕する。

 

それもその筈だ。

 

今俺の目前では、青い毛並みのホルダーが、赤い毛並みのホルダーが振り上げた斧を受け止めていたのだから。

 

「……助ける……俺が、来人を……」

 

雅人君が、途切れながらではあるが、己の覚悟を口にする。

 

「そんな馬鹿な事が起こる訳が無い!私の制御は完璧だった筈だ!?」

 

「人の強さを甘く見たからだ!」

 

信じられないという感じで叫ぶメルトに対して、俺は確信する。

 

「何だと!?」

 

「これも人の強さなんだよ!」

 

強さは単純な力だけじゃない。

 

誰かを思う、その心だって、確かな強さなんだ!

 

「心の強さ……はははははは!!!!!!!面白い!!!面白いぞ!!!これは研究のしがいがある!!!!」

 

急に感情を表に出したメルトは、歓喜の叫びを上げると、そのままこの場から去っていく。

 

『このまま行かせて良いのかマスター?』

 

「本当は良くないけど、今俺達がするべきなのは、あの兄弟を助ける事だろ」

 

俺はメカ犬に返事を返しながら、ベルトの右側をスライドさせて、黄色いボタンを押す。

 

『ベーシックファントム』

 

音声が流れると同時に大量の光が発生して、もう一人のシードを作り上げた。

 

俺は作り出したメカ犬が操る分身体に背中を向かせて、その背部のベルトに設けられた溝に引き抜いたタッチノートをスライドさせる。

 

『ロード』

 

俺は音声が鳴るのを確認しながら、再びタッチノートをバックルに差し込む。

 

『アタックチャージ』

 

俺と分身体の右足に光が集約する。

 

俺は一度だけ、ホルダー化した照屋兄弟を見つめながら呟く。

 

「悪夢はここで終わらせる」

 

次に俺と分身体を操作するメカ犬は、同時に構えをとる。

 

『「こいつで決めるぜ」』

 

その言葉を言った直後、二人同時に跳躍した。

 

光の集約された右足を其々の狙いに定めて、必殺の一撃を繰り出す。

 

『「ツインシードスマッシュ」』

 

必殺の一撃は、二体のホルダーを強襲して、爆発を引き起こした。

 

爆発が収まり、その場に居たのは、俺達と気絶した照屋兄弟だけだ。

 

ただの偶然なのか、気絶した照屋兄弟は互いの手を取りあっていた。

 

まるで二人の絆を確かめるかの様に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば、あの兄弟は如何してるんだ?」

 

「ええ、今は仲良く二人で空手道場に通ってますよ」

 

俺とヤスはゲームセンターで新作のレースゲームで対戦しながら、会話する。

 

結局先週は、ホルダーのせいで新作のレースゲームが出来なかった俺達は、改めて休日にこうしてゲームセンターにやって来た。

 

あの後、記憶が無くなったとはいえ、来人君がイジメを受けていた事までは覚えていた、雅人君が色々と動いたらしい。

 

ヤスも協力したそうで、加害者である中学生達は、その根性を叩き直す為にと、強制的に空手道場の門下に入ったそうだ。

 

親御さん達も反対する所か、喜んで入れさせてくれたので、もう同じ事を繰り返したりはしないだろう。

 

「あ!」

 

俺は唐突に、一つ疑問に思っていた事を思い出した。

 

ホルダー化していた時の来人君のあの目の事である。

 

あの目は、以前戦った、あの人の目と同じなのだ。

 

でも心配する事は無いだろう。

 

来人君には、雅人君という頼りになるお兄さんが居る。

 

あの兄弟ならこれからどんな事があっても、如何にかしていくに違いない。

 

「如何したんですか純の旦那?」

 

俺の表情が緩んでいる事に気付いたのか、ヤスが質問してくる。

 

「いや、何でも無いさ」

 

俺は軽く答えながら、レースゲームの続きに興じた。

 

『マスターらしいな』

 

それを傍で見ていたメカ犬が呟くが、俺は照れ隠しから、あえて聞かなかった事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲームセンターからヤスとメカ犬を、一緒に連れて帰って来て我が家が見えた頃、俺の家の前に四人の女の子が居た。

 

「あれ?如何したの、なのはちゃん達」

 

それは俺の友達でもある美少女四人組だった。

 

「如何したのじゃないよ!」

 

「うん!」

 

「最近純は付き合いが悪いのよ!」

 

「せやから、これから私達の遊ぼうな!」

 

開口一番にそう言うと、なのはちゃん達が、俺の腕を引っ張って、家の中に引き摺り込んでくる。

 

「純の旦那も大変ですね。メカ犬さん」

 

『うむ。だがあれも、マスターが言う所の絆なのだろうな』

 

他人事だと思って、好き勝手に言うヤスとメカ犬。

 

微笑ましそうに見てないで、助けてくれ!

 

今の俺は本気で腕が折れそうだ!

 

特にすずかちゃんなんて、手加減してくれているのかすら怪しい。

 

「痛い!痛いって!引っ張らなくても着いて行くから!」

 

俺は放してくれと叫ぶが、その要求は聞き入れられる事は無く引き摺られて行くばかりである。

 

 

 

今日の海鳴は、様々な絆に溢れて……やっぱり平和だ。

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