魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~   作:G-3X

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第十六話 仮面ライダーVS仮面ライダー?【後編】

『初めましてと言うべきかな、恵美嬢。ワタシはメカ犬だ。オモチャ会社の新製品で(以下略)』

 

「は!嘘を言うんじゃ無いわよ!何処にあんたみたいな、高性能なオモチャがある訳?信じられ無いわね」

 

『それは恵美嬢の、認識が狭いだけなのではないか?』

 

「あら、言ってくれるじゃない。でもおあいにくさま!私はとっても、博識なのよ。そんな私が知らないって言ってるんだから、あんたはオモチャなんかじゃ無いわよ!」

 

『目の前に存在する、事実を認めず、あまつさえ否定するとは、嘆かわしい事だな……ワタシは恵美嬢のその脆弱なる精神に同情するぞ』

 

「何ですって!?」

 

恵理さんの部屋のリビングの真ん中で、恵美さんとメカ犬による、あまりにも熱いトークバトル聞きながら、俺は静かに溜息を吐いた。

 

何故恵美さんとメカ犬が、こんなガチンコトークを繰り広げているのかというと、その答えは至ってシンプルである。

 

恵理さん家の玄関前で、簡単な自己紹介を済ませた俺達は、外で話すのも何だから上がってと言う恵理さんのお言葉に甘えて、リビングにやってきたのだが、そこで恵美さんが、いきなり予想外の行動に出たのだ。

 

何と恵美さんは、道で会った時に聞こえたメカ犬の声をいまだに気にしていた様で、リビングに入るなり、俺の背負っていたメカ犬入りショルダーバックを強奪して、中身を開けてしまったのである。

 

そして当然恵美さんの視界に入ってくるのは、中身であるメカ犬。

 

もうそこからは、二人の独壇場である。

 

どうも恵美さんと、メカ犬は相性が宜しくなかった様で、ずっと互いの意見と主張を言い合いながら、討論を止めようとしない。

 

まあ、メカ犬はわざとやっている節が見え隠れしているが……

 

俺と恵理さんは、その光景を苦笑いしながら眺めるばかりである。

 

「何かごめんね。恵美が迷惑かけたみたいで」

 

一人と一匹の討論をBGMに、恵理さんが言う。

 

「いえ、お気になさらず、それより俺に頼みたい事って何なんですか?」

 

迷惑は普段から、姉である恵理さんのお陰で慣れてますという皮肉は、胸の内にそっと置いておいて、俺はここに来た目的を完遂させる為に、話を進める様に促す。

 

「実はその頼みたい事っていうのが、恵美についてなのよ」

 

恵理さんは、視線を目の前で激論を続ける、実妹である恵美さんに向けながら、話し始める。

 

恵美さんの話を聞いて、俺は驚きの連続だった。

 

まず恵美さん自身についてなのだが、恵美さんは既に大学を卒業しているそうなのだ。

 

なんでも、生まれながらにしての、生粋の天才だそうで、幼くして海外に留学。

 

9歳にして、あの有名な鳥的な名前の有名大学を主席で、卒業したというのだから、その天才振りは相当なものだろう。

 

ちなみに何故大学を卒業しているのに、セーラー服を着用しているのかというと、単なる趣味だそうだ。

 

まあ、そんな事は如何でも良いので、話を本題に戻すが、現在は日本のある研究機関で、極秘のプロジェクトに参加しているのだとか……

 

もうここまでの時点で、俺とは住む世界が違うと思うのだが、恵美さん自身についての話はただの前菜であり、メインはここからになる。

 

話によると恵美さんの研究しているプロジェクトの原型は、現状ほぼ完成しており、後は実地テストを行う段階にまで、来たらしいのだが、最大の問題が一つ発覚したらしい。

 

そのプロジェクトの概要も、発覚したという問題も、機密になるらしいので、恵理さんは知らないらしいのだが、恵美さんの話だと、仮面ライダー、つまり俺の協力が必要らしいのだ。

 

つまり恵理さんが、俺にしたい頼み事というのは……

 

「という訳で、恵美に協力してくれないかな純君?」

 

説明を終えた恵理さんは、俺を拝み倒してくる。

 

如何やら姉である恵理さんが、雑誌で仮面ライダーの独占インタビューをした事を知っていた恵美さんが、会える様に、アポを取ってくれる様に、頼んできたそうなのだ。

 

そういえば、さっき恵美さんが、ホルダーを仮面ライダーと間違えた時も、協力がどうとか言っていた気がする。

 

一体何をされるのかは、分からないが、解剖させろとか、マッドな要求で無ければ、別に俺は構わない。

 

問題はメカ犬だが、まあ……あの様子を見れば、心配する事も無いだろう。

 

「中々やるじゃないのあんた」

 

『恵美嬢こそ、その論理は賞賛に値するぞ』

 

本気でぶつかった事により、友情が芽生えたのか、今この時人種どころか、人と機械を越えた、確かな絆が生まれた。

 

恵理さんは、仮面ライダーが俺だという事は、恵美さんに黙ってくれていた様だ。

 

確かに恵美さんの様子を見ていると、正体がばれると、姉である恵理さん以上に厄介な事になりかねない気がする。

 

改めて黙っていてくれた、恵理さんに感謝だ。

 

その恵理さんが頼んできた用件は、頃合を見て、仮面ライダーに変身して、恵美さんの前に出れば、良いだろう。

 

一つの用事が、取り敢えず片付き、少しだけ肩が軽くなる感じがしたが、俺はそこで思い出す。

 

「あの、俺も一つ相談事があるんですけど……」

 

俺はここに来るまでに、新たに発生した相談事である、ホルダーの事を恵理さんに話した。

 

「……なるほどね」

 

話を聞いた恵理さんが、顎に指を添えて、考え込む。

 

「その相手の能力なんだけど、何か変わった動きとか、道具とか使ってたりしてたかな?」

 

考え込んだ後、恵理さんは、更なる情報を求めて、俺に質問する。

 

「えっと……あ!そういえば、パワーフォルムになる時に、雑誌を取り出してましたね」

 

俺はその時の事を思い出しながら、恵理さんに、新たな情報を提供した。

 

言われてみれば、確かにあのホルダーの行動は不可解だ。

 

もしかしたら、其処にあのホルダーの能力を解き明かすヒントが、隠されているのかもしれない。

 

「まあ、私も専門家じゃ無いから、きっとこれだ!何て無責任には言えないけど、戦っていた純君自身が、疑問に思ったって言うのなら、何らかの関係があるかも知れないわね」

 

「相談に乗ってくれて、ありがとうございます」

 

俺は恵理さんにお礼の言葉を述べる。

 

確かにここから先は、当事者である俺が、如何にかしなければいけない問題だ。

 

寧ろ話した事で、攻略のヒントになるかもしれない何かを掴めたのだから、相談して正解だったと言えるだろう。

 

『キンキュウケイホウキンキュウケイホウキンキュウケイホウ……』

 

俺がヒントを得た矢先に、タッチノートから、警報が鳴り響く。

 

「え!?何よこの音!?さっきも鳴ってなかった!?」

 

『む!』

 

警報を聴いた恵美さんが、辺りを見回しながら、驚きの声を上げ、それと対象的に、メカ犬は冷静に、何が起きたのかを静かに察した。

 

「あ、俺達お使いを頼まれていましたんで、そろそろ行きますね」

 

俺は既に常套句となっている言葉を言いながら、メカ犬を拾い上げて、ショルダーバックに入れると、なるべく自然に、恵理さんの部屋を出て行く。

 

何やら恵美さんの待ちなさいという声が聞こえて来たが、恵理さんが押さえ込んでくれている様で、追ってはこないみたいだ。

 

この隙にさっさと、退散させてもらおう。

 

「それじゃあ行くぞメカ犬!」

 

『うむ!』

 

玄関を出た俺は、メカ犬と短く言葉を交わすと、ホルダー反応を追って、現場へと走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホルダー反応があったのは、少し前に戦った場所と同じ場所で、俺達が辿り着いた其処には、クリムゾンレッドのライダーモドキなホルダーに、藍色の怪人、オーバーが待ち受けていた。

 

「待ってたよ仮面ライダー。途中で帰っちゃうから、もう来ないかと心配しちゃったよ」

 

「そりゃあ待たせたみたいで、悪かったな」

 

既にベーシックフォルムに変身している俺は、何処までも軽い口調で、言葉を吐き出すオーバーに対して、対抗するかの様に、軽口で返す。

 

『マスター。対峙したは良いが、何か対策はあるのか?』

 

俺とオーバーの会話に、メカ犬が割り込む。

 

「……いや、糸口は掴めたかも知れないけど、攻略法は全く、そっちはどうだ」

 

『ワタシも似たようなものだ。強いて言えば……』

 

「ん、何かあるのか?」

 

途中で言い淀むメカ犬に、俺は先を促す様に、言葉をかける。

 

『……何でも無い。今は無いものねだりをしていても始まらないからな』

 

メカ犬は自身の内だけで、自己完結させると、気合を入れ直す様に、一声叫ぶ。

 

『今は全力で戦おうマスター!!!』

 

「ああ!!!」

 

もとより、そのつもりだ。

 

俺はメカ犬の叫びに呼応して叫び、そのまま攻撃を仕掛ける為、ホルダー達に向かって走り出す。

 

今度はオーバーも戦いに参加してきて、二振りの刃が、俺に猛威を振るう。

 

「くっ!?」

 

俺はその攻撃を紙一重で裁きながら、頭の中で打開策を思案し続ける。

 

相手が二体以上で来るならば、スピードフォルムが最適かもしれないが、パワーフォルと同等の能力を持つホルダーに、ブレイクインパクトを防ぎきるオーバーに対して、決定打を決められるとは思えない。

 

考え方を変えるのであれば、サーチフォルムで、遠距離から仕掛けるというのも、一つの答えかもしれないが、距離を詰められたら、そこで終わりだ。

 

後はホルダーが現在真似ているパワーフォルムだが、これは多数を相手にするには、あまりにも不向きだ。

 

「なら俺が選ぶ手段はこれだ!」

 

俺はベルトの右側をスライドさせて、黄色いボタンを押した。

 

『ベーシックファントム』

 

音声が流れると同時に、ベルトから大量の光が発生して、メカ犬が操る分身体が形成される。

 

「暫くオーバーの足止めを頼む」

 

『うむ。ホルダーは任せたぞマスター』

 

俺とメカ犬は、会話を交わしながら、其々の相手と一対一に持ち込む為、行動を開始する。

 

メカ犬にオーバーの相手を任せた俺は、パワーフォルムに瓜二つのホルダーに突っ込む。

 

今のホルダーが、パワーフォルムと同じ能力を有しているのならば、相当に高い攻撃力と防御力を備えているだろう。

 

だがそれは逆に言えば、パワーフォルムの弱点である機動力の無さをも反映しているという事である。

 

そこを攻めない手は無い。

 

スピードフォルム程では無いが、ベーシックフォルムも、全フォルム中では、素早さは高い方だ。

 

勿論その速さは、パワーフォルムを大きく上回る。

 

「は!」

 

俺は打撃による攻撃は全て蹴りだけに絞り、当てたら即時距離を取る、もしも近づかれて、攻撃を受けた時は、相手の力を利用して、投げ飛ばすという戦法に切り替えた。

 

確かに能力は同じかもしれない。

 

だが俺とこのホルダーでは、決定的な差がある。

 

それは今まで戦ってきた経験だ。

 

今まで命懸けで戦ってきたからこそ、俺自身の能力の長所と短所は、嫌という程に把握している。

 

「おりゃ!」

 

何度目かの蹴りを喰らわせた後、ホルダーが再び例の動作を開始した。

 

雑誌を取り出して、その一ページを凝視し始めたのだ。

 

俺はその雑誌に注目する。

 

その雑誌は、この近隣の書店であれば、良く目にする、海鳴市住民には馴染み深い雑誌。

 

恵理さんが勤める海鳴ジャーナルが毎月販売している情報雑誌、月刊海鳴だった。

 

しかもホルダーが凝視しているページには、ライトグリーンの仮面ライダー、スピードフォルムの俺が大きく見出しを飾っている。

 

そしてホルダーの姿は再び変化を始めた。

 

クリムゾンレッドのボディーは、ライトグリーンに染まって行き、右手のパワーブレードの模造品も、スピードロッドの模造品へとその姿を変えていく。

 

「やっぱり、あの雑誌が怪しいな」

 

俺が呟く間に、スピードフォルムになったホルダーが、今までとは比べ物にならない程の速さで迫り来る。

 

ロッドを斜に構えて、そのまま打撃を放つが、それは俺の予想範囲内の行動だ。

 

「ふん!」

 

俺はあえて避けず、ロッドを掴む事だけに全神経を注ぎ、見事ロッドを捉える事に成功した。

 

パワーフォルムとは逆に、スピードフォルムは素早さが高くなる反面に他の力が低下する。

 

つまり単純な力技に持ち込む事が出来れば、必ず勝機があるのだ。

 

俺は力任せに、ホルダーのロッドを奪い取り、そのロッドで反対に連続の打撃をホルダーに喰らわせる。

 

そして吹き飛ばす際に、俺はホルダーの背中に収納されたある物を掠め取った。

 

俺の手に握られているのは、一冊の雑誌、先程までホルダーが凝視していた月刊海鳴だ。

 

ホルダーから奪い取ったロッドを投げ捨てた俺は、月刊海鳴を思い切り破りまくる。

 

どういった原理になっているのかは知らないが、ホルダーはこの雑誌を使って、フォルムチェンジをしていたのは間違い無いだろう。

 

ならその雑誌が無ければ、あのホルダーはこれ以上姿を変えられない筈だ。

 

雑誌を破った瞬間、仮面ライダーの姿をしていたホルダーの身体が、更なる変化を開始した。

 

だがそれは、今までのフォルムチェンジでは無く、全体的な姿そのものが変化したのである。

 

変化の収まったホルダーの姿は、仮面ライダーとは似ても似つかない姿をしていた。

 

ピエロの様な仮面の頭部に、全身は灰色の全身タイツの様な姿をしている。

 

その様子を見て、俺は何となくだが、ホルダーの能力に察しがついた。

 

恐らくメカ犬ならば、奴の能力はモノマネだとでも言うだろう。

 

そしてホルダーの姿が変わったのは、多分雑誌が無くなると、変身そのものが出来なくなるから、といったところだろうか。

 

兎にも角にも、これで心置きなく戦える。

 

戸惑うホルダーに更なる追撃を仕掛けようとしたその時である。

 

「あああああああ!!!居たわね仮面ライダー!!!」

 

少し前まで恵理さんの部屋でBGM代わりに聴いていた声が、辺り一体に響き渡った。

 

声のした方に振り向くと、そこに居たのは、美少女中学生改め、超天才コスプレ美少女の恵美さんである。

 

「やっぱり私って運が良いわ。あの子供を追って来たら、また仮面ライダーに出会えたんだもの!!!」

 

恵美さんはそう言いながら、戦闘中だというのにも関わらず、仮面ライダーである俺に近づいてくる。

 

姉妹揃ってはた迷惑というか、辺りの状況を確認しない辺り、姉よりも性質が悪い。

 

『すまないマスター。時間稼ぎはここまでの様だ』

 

しかも最悪な事にベルトから聴こえるのはメカ犬の声。

 

どうやら分身体を出していられるタイムリミットを越えてしまったらしい。

 

タイミングが悪いにも、程があるだろう!?

 

前方を見れば、恵美さんの後ろから迫り来るオーバーとホルダー。

 

「くそ!?」

 

「え?きゃあ!?」

 

俺は咄嗟に間に居た恵美さんを背中で庇い、ホルダーの突進をまともに喰らって吹き飛ばされる。

 

『大丈夫かマスター!?』

 

「ああ……それよりも恵美さんは?」

 

何とか致命傷は免れた様で、俺は問題無く立ち上がるが、恵美さんが動かないのだ。

 

『大丈夫だ生命反応に支障は無い。恐らく気絶しているだけだろう』

 

メカ犬の答えを聞いて、俺はホッと胸を撫で下ろす。

 

「取り敢えずチェイサーさんを呼んで、恵美さんを安全な場所に運んでもらおう」

 

俺は言いながらタッチノートを引き抜きボタンを押す。

 

『チェイサー』

 

音声が流れると同時に、エンジン音が唸りを上げて、チェイサーさんがやって来る。

 

『お待たせマスター』

 

「チェイサーさん。恵美さんを安全な場所までお願いします」

 

俺はそう言って、気絶している恵美さんを、チェイサーさんの座席シートに乗せる。

 

『良いわよ~。所でマスターは、今ピンチなんじゃないの?』

 

余裕からなのか、後ろから歩いて近づいてくる、オーバーとホルダーを見て、チェイサーさんが俺に質問してきた。

 

「まあ、そうなんですけど、何か良い手があったりしますかね」

 

せめてもの強がりに、俺は冗談交じりに、質問返しをしてみた。

 

『あるわよ』

 

しかしチェイサーさんから帰ってきた返事は、予想外にも、希望溢れるものだった。

 

「あるんですか!?」

 

『ええ。あの子を呼べば良いじゃないの。ほらマスターがメカ竜って呼んでたあの子』

 

「いや、呼べれば最初から呼んでるんですけど、あいつあれから何処かに行っちゃって、連絡も寄越さないんですよ」

 

『だ・か・ら・呼べば良いのよ。あの子は私と同じサポートシステムに分類されてるから、同じ要領で呼べるわよ』

 

驚愕する俺に対して、チェイサーさんは、衝撃の事実を淡々と告げていく。

 

「……知ってたかメカ犬?」

 

『……いや、ワタシも知らなかった』

 

俺達と、チェイサーさんの間に、確かな温度差が生まれる。

 

『兎に角頑張ってね~』

 

チェイサーさんは、そんな空気等ものともせず、気絶した恵美さんを乗せて、走り去ってしまった。

 

「……取り敢えず呼んでみるか?」

 

『……うむ』

 

何かやるせない気持ちになりながらも、俺はタッチノートを開き、以前使ったガイアシステムを起動させる。

 

映し出された画面に表示されている【ガイア・コール】という文字。

 

俺は色んな感情を内に秘めながらも、その文字をタッチした。

 

『ガイア・コール』

 

タッチノートから音声が流れると、以前にも聞いた事のある声が聞こえてきた。

 

『お呼びですかマスターへぶ!?」

 

当たり前の様に現れたフルメタル恐竜に、俺は無言で手刀を振り下ろした。

 

来てくれたんだという喜びよりも先に、行く前にちゃんと説明しろやテメエ、という怒りがこみ上げてきたのだから仕方ない。

 

「何するんですかマスター!?」

 

メカ竜が何か抗議してくるが、そんなのは無視だ。

 

『今は非常時なのだ。急ぐぞ!』

 

『は、はい!』

 

メカ犬が抗議の声を急かす事により黙らせる。

 

その通りだ。

 

メカ犬の言う通り、言いたい事は後で話せば良い。

 

後でタップリとな……

 

『何か悪寒がしたのですが!?』

 

俺はメカ竜の言葉など無視して、タッチノートのボタンを押す。

 

『スタンディングモード』

 

レバー付きのアタッチメントパーツに姿を変えるメカ竜を握り締め、俺はタッチノートをベルトに差し込んだ後、ベルトの左側をスライドさせて、溝の部分へとスタンディングモードのメカ竜を差し込んだ。

 

『ベーシック・ガイア』

 

音声と共に、俺の周りにはメタルレッドのパーツが複数生成されて、それが新たなる装備としてベーシックフォルムに追加されていく。

 

その瞬間、今まで以上に力が全身に漲るのを感じた。

 

「へ~それが噂の……確かに凄そうだね!!!」

 

ベーシック・ガイアへのフォルムチェンジを見たオーバーが、歩く速度から、駆け足へと変えて、一気に距離を詰めにかかる。

 

俊足の下に、刃を振り下ろすが、俺はその刀身が振り下ろされる前に、その刃を受け止めて、蹴りを喰らわせた。

 

倒れはしなかったものの、オーバーの身体はかなり後方に飛ばされる。

 

「悪夢はここで終わらせる」

 

俺はその様子を見ながら呟く。

 

「……へ~。凄いねそれ。僕も本気で行かなくちゃ不味いかな?」

 

あまり堪えた様子は無い様で、そう言うとオーバーは、やはり何処までも軽い口調で、今度はホルダーと一緒に、俺を強襲する。

 

『マスター!相手が複数で来るのでしたら、こっちは武器を使いましょう!』

 

「え、このフォルムってベーシックフォルムが基準だけど、武器があるの?」

 

『はい。ボクのレバーになっている下部分が、生成する為の起動ボタンになっているので、押してみて下さい」

 

俺はメカ竜の説明を受けながら、言われた通りボタンを押してみる。

 

『ガイアブレイガン』

 

音声と共に、メタルレッドを基調とした剣の柄と、トリガーが付いた物体が生成された。

 

『剣の柄部分を真横にスライドさせて引き金を引いてくださいマスター』

 

「ああ!」

 

俺はメカ竜の指示通りの動作を行い、オーバーとホルダーに狙いを定めて、引き金を引く。

 

すると散弾銃の様に、光弾が射出されて、狙いを定めたオーバー達に襲い掛かる。

 

「これは?」

 

『それがガイアブレイガンの第一形態、ガンモードです』

 

撃った本人である俺が驚いていると、あの弾幕を潜り抜けてきたのか、オーバーが剣を片手に、駆け上がって来た。

 

『マスター!次は柄の部分を上にスライドさせてから、もう一度引き金を引いて下さい!』

 

メカ竜から続いて指示が飛び、俺はオーバーが此方に辿り着く前に全速力で、全ての動作を完了させる。

 

「うを!?」

 

俺は引き金を引いた瞬間驚愕した。

 

何と引き金を引くと、柄の部分から、赤い光が伸びて、剣状の形を形成したのだから。

 

そして俺は驚きながらも、その剣でオーバーの一撃を受け止める。

 

『それがガイアブレイガンの第二形態、ブレイドモードです!』

 

オーバーの一撃を受け止めた俺は、メカ竜の説明を聴きながら、何時かの様に刃同士で鍔迫り合いを起こす。

 

だが以前と今回では、大きな違いがある。

 

「はあああああ!!!」

 

今の俺は、パワーフォルムを越える力を引き出す事が出来るという事だ。

 

「ぐっ!?」

 

力でオーバーを完全に吹き飛ばすと、続いてホルダーが俺に飛び込んでくるが、俺は冷静に飛び掛るホルダーに、ガイアブレイガンの一閃を命中させてから蹴り飛ばす。

 

『今がチャンスですマスター!』

 

メカ竜の声が聞こえると同時に、俺の視界に以前とは違う内容が書かれたウインドウが表示される。

 

「任せろ!」

 

俺はその内容を読んだ後、メカ竜に答えながら、ベルトの左にあるレバーを傾けた。

 

『マックスチャージ』

 

音声が流れると、ガイアブレイガンの刀身に光が集約されて、俺の前方には、同じ状態の四体の分身が生成された。

 

「こいつで決めるぜ」

 

そして本体である俺を一番後ろに、五人の仮面ライダーが、一列に並び、ホルダーに駆け寄り、通り過ぎざまに、一閃ずつ一撃を喰らわせて行く。

 

そして一番最後尾の俺は、ホルダーの目の前で立ち止まり、まるで野球のバットを振るかの様に回転斬りをお見舞いする。

 

「ガイアチェーンスラッシュ」

 

幾多の斬撃を受けたホルダーは、その場で倒れながら、爆発を引き起こした。

 

爆発後に残されたのは、気絶した若いお兄さん一人だけである。

 

辺りには、俺とその人を抜かせば、もう誰も居ない。

 

『どうやらオーバーには逃げられた様だな』

 

「ああ……さてと、それはそうと、やるか?」

 

『うむ』

 

真面目な空気は置き去りに、俺とメカ犬は言葉少なくも、互いの意思疎通を図り、同意する。

 

『何の話ですか?』

 

それを聴いていたメカ竜が、頭に疑問符を浮かべるが、そんな態度はもう取れない事だろう。

 

何故ならば……

 

「『今からお前のお仕置きタイムだ』」

 

俺とメカ犬の声が重なり、続いてメカ竜の悲鳴が上がるが、それはまた別の機会に話すとしよう。

 

 

 

俺は頑丈な荒縄を準備しながら思う。

 

ああ、今日の海鳴も平和だなあと……

 

 

 

『ぎゃあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今まで何処に行っていたんですか主任!?」

 

とある研究施設で、白衣を着たメガネの男が、セーラー服を着た女の子を主任と呼ぶ。

 

「ごめんごめん!でも私だって、このプロジェクトを完成させる為に、頑張っていたんだから許してよ」

 

女の子は、自慢のポニーテールを揺らしながら、言葉だけの謝罪をする。

 

「本当でしょうね?」

 

そのふざけた態度に、白衣の男は、疑いの眼差しを向けた。

 

「あ!疑ってるでしょ!!!」

 

セーラー服の女の子は、疑いの眼差しを向けられた事を、不満を感じたのか、懐からある物を取り出して、某時代劇の世直し副将軍の印籠の様に見せ付ける。

 

「そ、それってもしかして!?」

 

それを見た白衣の男は、驚きの声を上げる。

 

「ふふ~ん!どうよ?私だってちゃんと仕事はするんだからね!!!」

 

白衣の男の反応に満足したのか、女の子は胸を張って自らを褒め称える。

 

「ついに完成するんですね……」

 

「ええ、そうよ」

 

先程までの軽い雰囲気はなりを潜め、真剣な口調で語り合う二人。

 

その二人の視線の先には、自分達の研究成果であるそれが、映し出されていた。

 

「後の問題は、これの装着者だけという事ですね」

 

「それに関しては、私に心当たりがあるわ」

 

白衣の男の言葉に、女の子は再び、軽く答える。

 

「ESシステム……本当のプロジェクトはここから始まるのよ」

 

セーラー服の女の子、風間恵美は、心から嬉しそうに笑顔で言葉を零した。

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