魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~ 作:G-3X
「何だろうね、あれって?」
突如として現れた、謎の介入者を見ても、藍色の怪人オーバーは、相変わらずの軽い口調を止めはしない。
「ふん。何であれ私達の邪魔をするのならば、容赦する必要もあるまい」
それに対して、灰色の怪人メルトは、淡々と言い放つ。
二人の怪人の会話を合図とした様に、俺と戦っていたホルダーモドキの何割かが、メタルイエローの身体を持つ介入者に狙いを変更して、襲い掛かる。
これがただの通りすがりの通行人だったのならば、是が非でも助けなければいけない所だが、この介入者に対して、そんな心配は無用だった。
「はっ!」
掛け声と共に、自身と同色の銃を構えて、躊躇い無く引き金を引く。
撃ち出された弾丸は、淡い銀色の光を纏っており、ホルダーモドキの付近に到達すると、まるで弾ける様に分裂して、多量の弾幕と化しながら、猛威を振るう。
その弾幕を潜り抜けてきた奴等に対しては、相手の攻撃をいなす様に、避けて、時に裁きながら、近距離で銃弾を撃ち吹き飛ばすといった対応を見せる。
「……あれってメカ犬の知り合いか?」
『……いや、あんな知り合いが居たら、既に紹介している筈だぞ』
俺は、突如として現れた介入者の戦い振りに、困惑しながらもメカ犬と、会話を試みるが、メカ犬の返答を聴いてみるも、知り合いという訳では無いらしい。
「ふん!……あの、仮面ライダーさん!」
呆けていた俺達に対して、先程から目の前で戦い続けていた、メタリックイエローの介入者が、話しかけて来た。
「はい!?」
俺は思わず声を上げる。
しかしここで、同時に新たな疑問が生まれる。
この介入者の声が、何処かで聴いた事のある声に思えたからだ。
「ここを貴方に任せても良いでしょうか?僕はあいつに用があるんで!」
そう言うと介入者は、ある一点に向けて、指を示す。
介入者が指し示した指の、その先にあるものは、先程の弾幕の直撃を受けて、落下して、いまだ倒れているホルダーだった。
「あ、ああ」
何とか俺は頷きながら、答えを返す。
「ありがとうございます!」
介入者は俺の答えを聞くと、早々にこの場を離れて、ホルダーの下へと駆け出す。
『マスター!取り敢えずホルダーは彼に任せて、ワタシ達は、奴等を蹴散らすぞ!』
「分かった!」
いまいち現状が把握出来ないが、話してみた感じでは、敵というわけでは無さそうなので、俺とメカ犬は目の前の敵に集中する事にした。
俺はベルトからタッチノートを引き抜き、開くと、スクリーン上に、ガイアシステムを起動させて、メカ竜を呼び出す。
『ガイア・コール』
音声が流れると同時に、何処からともなく、メタルレッドの手乗り恐竜が、俺達の目の前にやって来る。
『お待たせしましたマスター!!!先輩!!!』
やって来たメカ竜は、まるで軍の上官に挨拶をするかの様な、気合の入った敬礼をした。
どうやらこの前のお仕置きが、メカ竜にトラウマ的な何かを、植えつけてしまったのかもしれない。
そのお仕置きをしながら、色々と情報を聞き出した訳だが、今はその話は置いておく事にしよう。
「行くぞメカ竜!」
『はい!』
俺はメカ竜に声をかけながら、タッチノートの操作を続行する。
『スタンディングモード』
タッチノートから流れる音声と共に、首がレバー部分となる、アタッチメントパーツに変形したメカ竜を握り締めた俺は、タッチノートをベルトに差し込んだ後、続いてベルトの左側をスライドさせて、アタッチメントとなったメカ竜を差し込む。
『スピード・ガイア』
差し込んだ瞬間に、俺の周りには、メタルレッドの追加装甲が生成されて、ライトグリーンのボディーの上に、装着されていく。
その瞬間俺の身体には、スピードフォルムの際に感じる身軽さはそのままに、ベーシックフォルムの状態をも超える力を感じた。
ベーシック・ガイアの時とはまた違う、強化を果たした俺は、続いてベルトの左側のレバー下にある、ボタンを押す。
『ガイアブレイガン』
ガイア状態特有の武器である、遠近両用武器のガイアブレイガンを生成した俺は、スピードロッドの普段タッチノートをスライドさせる溝に、差し込んだ。
『ジョイントアップ・ガイアロッド』
ガイアブレイガンを差し込んだ事により、スピードロッドに、メタルレッドのパーツが追加され、新たな武器へと生まれ変わる。
「悪夢はここで終わらせる」
俺は新たな武器、ガイアロッドを構えて、ホルダーモドキ達へと駆け出す。
ホルダーモドキ達が、密集している地点に、一気に飛び込んだ俺は、ガイアロッドを振り回し、怒涛の勢いで薙ぎ払う。
「……必要なデータは取れた。それに、どうやらここが潮時の様だな」
「みたいだね」
俺の戦いを見ていた、オーバーとメルトはそう言うと、夜の闇に紛れて、消えて行く。
何故ここで、奴等が引くのか理解出来ないが、奴等が居なくなった今が、この戦いを終わらせる好機だ。
『マスター!』
「ああ!」
俺はメカ竜の声に、頷きながら、ガイアロッドを一旦肩に担ぎ、ベルトの左側のレバーを引く。
『マックスチャージ』
ベルトから発生する稲妻の様な光が、右腕のラインを通じて、ガイアロッドに集約されていく。
「こいつで決めるぜ」
肩に担いでいた、光を放つガイアロッドを構え直した俺は、ホルダーモドキ達に向かって疾走する。
そしてホルダーモドキ達の中心部に到達した俺は、そこで思い切りガイアロッドを振り回す。
「ガイアツイスター」
俺を軸として、振り回したガイアロッドから巨大な竜巻が発生し、ホルダーモドキ達は、一人残らずその暴風に巻き込まれ、内部で真空の刃に刻まれながら、連鎖的に爆発を巻き起こす。
「……ふぅ」
やがて爆発と暴風は収まり、ホルダーモドキ達が、塵に帰るのを確認した俺は、一息吐いた。
『マスターどうやら、あちらも決着が着きそうだぞ』
一息吐いていると、メカ犬が話しかけて来た。
俺も気になっていたので、視線を先程の介入者とホルダーの戦いに向ける。
「ふん!」
介入者は一定の距離を保ちながら、銃撃戦を仕掛けて、ホルダーを追い詰めていく。
場合によっては助太刀しようかと、考えていたのだが、その戦い振りを見る限り、その必要は無さそうである。
[「さあ!これで終わらせるわよ!」]
「はい!」
先程俺に話しかけてきた男性の声とは別の、女性の声が介入者から聴こえてくる。
ロボットの様な造形をしているが、通信機でも搭載しているのだろうか。
それにしても、さっきの男性の声といい、今聴こえてきた女性の声も、何処かで聴いた事のある声なのだが……
俺が疑問に思う間も、現状は常に変化していく。
介入者は腰の左部分辺りに、取り付けてあった、銃のマガジンと思わしき物を、手に取ると、自身が使用している銃の底に設けられている溝から、差し込んだ。
『ブレイクチャージ』
その瞬間、機械的な音声が流れる。
介入者がその状態の銃を、ホルダーに向けて引き金を引くと、銃口から黄色い光弾が射出されて、その光弾が網目状に広がりながら、ホルダーに命中した。
その光は、ホルダーの全身に絡みつき、動きを阻害する。
次に介入者は、銃を右腰部分に設けられている溝、恐らくあの銃のホルスターと思わしき場所に差し込む。
すると介入者の右足は、まるで俺がポイントチャージをした時の様に、ホルスターに収めた際に、銃から発生した黄色い光が、集約して行き、その輝きを増していく。
「はあ!」
気合の掛け声と共に、介入者はホルダーに向けて駆け出し、その輝く右足を、動けないホルダーに対して、回し蹴りという形で繰り出す。
全身の動きを阻害されているホルダーに、その一撃を対処する事など出来る筈も無く、ホルダーはされるがままに、介入者による必殺の一撃を受ける。
介入者が放つ、必殺の回し蹴りがホルダーに直撃した瞬間、大きな爆発を引き起こす。
やがて爆煙が収まり、爆発地点に居たのは、メタルイエローの装甲を身に纏った介入者と、気絶した黒尽くめの男のみだった。
「任務……完了しました」
[「お疲れ様。今すぐパトカーを手配するから、そのまま待機していて」]
黒尽くめの男が気絶している事を確認してから、先程も通信していた女性の声と短い会話を交わした、介入者は今度は俺達に視線を向けると、ゆっくりと近づいてくる。
俺は一瞬身構えて、張り詰めた空気を形成したが、次に発した介入者の言葉により、その空気は一気に緩和してしまう。
「仮面ライダーさんも、お疲れ様です。いや~それにしても大変でしたね」
やけに朗らかな口調で、喋り始める介入者。
俺はその態度により、完全に沈黙してしまい、どういう事なのかと、思考を巡らす。
「実際にお会いするのは、二回目ですけど……あ!この格好だと分からないですよね?」
なおも話続ける介入者が、俺に直接会った事があると口にしたその瞬間、俺の脳内で、この介入者とある人物の声が見事に合致する。
更に介入者は、一度自分の左腕に取り付けられている、幾つものボタンがついた腕輪状の物体を操作すると、頭部から蒸気の様な気体が、勢い良く飛び出す。
介入者はそのまま頭部に手をかけると、ヘルメットを外す要領で、青い複眼が特徴的な、その頭部を外してしまう。
そして中から現れた、素顔は先程俺の脳内で合致した顔そのものだった。
「どうもお久しぶりです。デンライナー署に居た時は、捜査に御協力していただき、ありがとうございます」
介入者の正体は、以前に海鳴警察署に設置されていた、デンライナー署に派遣されていた新米刑事の長谷川さんだった。
でも何で長谷川さんが?
俺が更なる疑問に直面していると、長谷川さんは、一枚の名刺を俺に手渡して来た。
「海鳴警察署ホルダー対策特務課。実戦対応試験型タイプ2。ESシステム搭載強化ユニットE2。装着者、長谷川啓太……ですか?」
取り敢えず俺は、名刺に書かれた文面をそのまま読み上げてみる。
「はい。これからは現場でも良く会う事になると思いますんで、これからも御協力、お願いします」
「はあ……」
色々と聞きたい事は、あったが、いまだ脳内処理が追いついていない俺に出来る事は、相槌をうつ事ぐらいだった。
「結局あれって何だったんだろうね?」
「さあな……」
暗闇の中で二人の怪人が、言葉を交わす。
オーバーは何時も様に軽い口調で。
メルトもそれに対し、抑揚の少ない、淡々とした物言いで答える。
「あれも仮面ライダーの同種って事かな?」
「ふん。だとしても私達のやる事に変わりは無い……それに実験は次の段階に移る。今更止める事も出来まい」
「まあ、そうだよね」
質問したオーバーに対して、メルトはなおも淡々と呟く様にして答えを返す。
その答えを予測していたのだろう。
オーバーも当たり前の様に軽く流しながら、話を続ける。
「それに邪魔になって来る様ならば、仮面ライダー共々始末すれば、済むことだ」
「そう簡単に行くかな?」
「無理でもやらなければならないだろう。あの方の願いを叶えるためにも……」
「……それが僕達の生まれた意味だから?」
「ふん」
二人の怪人は会話を交わしながら、深い闇へと消えて行く。
一筋の光すら無い闇の中へと……
「う~ん?」
「あ!起きたかな?アリサちゃん」
背中から聴こえる声に対して、俺は声を掛けてみる。
「……純?」
「うん」
まだ寝ぼけているのか、寝ぼけた人特有の、気だるさを感じさせる声で、アリサちゃんが、俺を呼ぶ。
「……ここ……何処?それに何で、純が私をおんぶしてるのよ!?」
漸く意識が浮上したのか、アリサちゃんが俺の背中でわめき始める。
俺は戦いを終えた後、警察が到着する前に、長谷川さんと別れると、先に気を失っていたアリサちゃんを連れて避難していた、瞳さんと合流した。
本来は瞳さんが、そのままアリサちゃんをバニングス邸に連れて行くか、鮫島さんを呼んで、連れ帰ってもらうのが、良いと思うのだが、瞳さんは、これからけじめを着けなければいけない大事な用事があると言い残して、アリサちゃんを俺に引き渡すと、何処かに行ってしまい、ならば鮫島さんにと、連絡してみたら、今日は俺に一任するから、その大役を見事果たして見せろと、鮫島さんは獅子を谷底に突き落とすライオンの様な使命を俺に与えたのである。
なので俺は、アリサちゃんを背中に背負いながら、何時かのなのはちゃんにした様に、おんぶでバニングス邸を目指しているという訳だ。
それにしても、夜中に二人の子供が、出歩いて歩道されないのが、不思議である。
もしくはバニングスお抱えのSでもってPな人達が、周りを囲んでいるとでもいうのだろうか?
周りを見回して、M○Bみたいな格好の人と目が合っても気まずいので、俺はなるべく早くアリサちゃんを、バニングス邸に返そうと、自然と足早になっていた。
もしかしたら、その振動のせいで、アリサちゃんを起こしてしまったのかも知れない。
「気がついたなら降りる?」
俺の背中で暴れるアリサちゃんを宥めながら、大丈夫そうならば、降りるかと、質問してみる。
「……良いわ。もうちょっと……このままでも」
降りるかと質問した瞬間、何故かアリサちゃんは、借りてきた猫の様に大人しくなり、おんぶを続行する様に言ってきた。
「はい。かしこまりました。アリサお嬢様」
折角執事服を着ているので、俺は前世で見ていたアニメの借金執事的なノリで言ってみる。
「……これも奇跡に入るのかな?」
「え、何か言った?」
「な、何でも無いわよ!?」
背中で何かを呟いたアリサちゃんに質問してみたのだが、何故か怒られてしまった。
女の子というのは、改めて不思議だなと実感してしまう。
「……ねえ、家に着くまで何か話しましょう?」
先程の怒りは何処へやら、アリサちゃんは俺の耳元で、囁く様に話しかけてくる。
「うん、良いよ。パーティーの時に約束もしたしね」
俺とアリサちゃんは、バニングス邸に到着するまで、他愛も無い話から始まり、色んな事を話した。
月の光だけが輝く夜の中で、それは何処か現実とは違う幻想的な一時の様に思えた。
その時アリサちゃんが俺の背中で、胸元のブローチ風の囁きが、月の光に照らされて、微笑んでいる様に見えたという話を聞いたのは、随分後になってからの事だ。
「いらっしゃいま……せ」
瞳さんの依頼が無事に終わった翌日の事である。
今日も翠屋でバイトに勤しんでいる俺が、何時もの様に、店内に入るお客さんに挨拶をしようとした所、そのお客さんの顔を見て、一瞬の内に意識がフリーズしてしまう。
そのお客さんは二人組みであり、どちらも俺の知っている顔だったりする。
一人はフォーマルなスーツを着た若い男性と、もう一人はセーラー服姿の見た目だけを言えば美少女中学生だ。
「あれ?君って板橋君だよね」
若い男性の方、長谷川さんが俺に話しかけてくる。
「お姉ちゃんが言ってた美味しいお店で働いてる知り合いって、もしかしてあんたなの?」
続いて美少女中学生こと、超天才コスプレイヤーであり、傍迷惑姉妹の、特に俺の脳内ブラックリストにも掲載されている妹の方、恵美さんが、質問してくる。
もう何がどうなっているのか、俺にはさっぱりである。
「ここでも働いている何て……まさか!?」
「え、何がまさかなのよ?長谷川君」
「実は板橋君は、昨日もパーティー会場で働いていたし、それ以前は僕が居た部署にもお手伝いで来ていて、今日はこの喫茶店で……」
「そういえばこの子ってお姉ちゃんのお仕事も手伝ってるって聴いたわね……それって!?」
漸く俺の脳内フリーズが解けて、正気を取り戻すと、何やらずっと会話を続けていた恵美さんと、長谷川さんが、何か尊いものを見る様な眼差しを俺に向けながら、肩に手を置いてくる。
「苦労してるんだね……」
「あんた、純っていったわね。人生に負けんじゃないわよ!」
「はい!?」
口々に何故か応援の言葉を浴びせかける二人に対して、俺は驚きの声を上げる。
何か知らない間に、妙な誤解がうまれてる!?
「よ~し!今日は一杯食べて、ここの売り上げに貢献するわよ!!!」
「はい!!!」
何故か話題の中心に上げられた筈の俺は置き去りに、二人はテンションを加速させていく。
「取り敢えず、そこのワイルド系な店員!!!メニューの上から順に五つ持ってきて!」
「僕は取り敢えず、このランチセットのBをお願いします」
同じくバイトに出ていたヤスに注文をすると、恵美さんが俺の頭を乱暴に掻き回す。
「さあ!今日は私が奢ってあげるから、純も一杯食べなさい!!!」
絶対何か誤解してるよね、この人達!?
「あ!?ちょっとお客さん!純の旦那に何やってるんすか!?」
そこへ、メニューを士郎さんに伝え終えて、戻ってきたヤスが加わり、更なる誤解を生む。
『この店は何時もこんなに、賑やかなんですか?』
『うむ。大体これ位のものだな』
その片隅で傍観者に徹しているメカーズが、淡々と会話をする。
お前等も見ているだけじゃなくて……いや、やっぱり其処に居てくれ。
この状況でこいつ等が入ってくると、更に変な状況を作り出しそうで怖い。
「純君。もうそろそろバイト終わるんだよね」
「今日はタップリと付き合ってもらうんだからね!」
「ふふふ、そうだね」
「こんな美少女達に囲まれて遊べるやなんて、純君は幸せ者やな!」
更にこのタイミングで、新たに店に入ってきた美少女四人組が、俺に遊びの誘いを持ちかけてきた。
もうこの現状は、はっきり言って、何だこのカオスはといった具合である。
結局この翠屋での騒動は、俺のバイトが終わるまで続いた。
今日の海鳴は、一つの新たな風が舞い降り、とても平和だ。