魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~ 作:G-3X
世間はクリスマスも間近となり、何処と無く浮き足立っていた。
日本では本来の風習とは少々違い、一つのイベントとして捉えられているが、こういった行事は楽しんだ方が得であろう事は明らかだ。
海鳴市の住人達も、例に漏れる事無く、クリスマス当日を楽しみにしていた。
だがその街全体に流れていたクリスマスムードは、突然に終わりを告げる事となる。
「きゃああああああああああああああああ!!!!!!!!!?」
それは一人の女性の悲鳴から始まった。
女性の悲鳴に気付いた、他の海鳴市民達が、悲鳴を上げた女性に視線を向ける。
其処から第二、第三の悲鳴が上がり、それは周囲へと際限無く伝染していく。
悲鳴の中心に居たのは、人では無い、異形の存在。
辺り一体に藍色の球体が幾つもばら撒かれ、その一つ一つが光を纏いながら、藍色の怪人を模した異形へと変貌を遂げる。
異形達は恐怖と混乱で逃げ惑う海鳴市民の意思など、省みる事無く街を蹂躙していく。
異形の者達により、街が混沌を極めようとしたその時、大型の白と黒のツートンカラーのバイクが、サイレンを響かせ、エンジン音を唸らせながらこの場へと駆けつける。
そのバイクに搭乗しているのは、メタルイエローのボディーが輝く、一見して人型のロボットの様な存在だった。
メタルイエローのロボットは、右腰のホルスターに納められている、変わった形状の銃、ESM01を抜き放つと、突如として街に現れた異形の者達に向けて発砲を開始する。
放たれた光を纏う弾丸は、異形の者達を次々と捉えて、地に伏せさせていく。
「ここは危険です!一般市民の方達は、誘導員の指示に従って、この場から速やかに避難してください!」
辺り一体の異形、ホルダーモドキ達を倒したメタイエローの彼、ホルダー対策特務課が誇るESシステム、仮面ライダーE2は専用バイク、マシンドレッサーを止めると、周りの人達に避難するように呼びかける。
E2がホルダーモドキ達を倒した事により、若干の余裕が生まれた市民達は、指示に従い避難行動に移っていく。
[「長谷川君。ここはもう大丈夫みたいだから、商店街の方に向かってくれる?さっき通報があって、其処にも例の藍色のホルダー達が複数出現したそうなの!」]
E2に内臓された通信機から、E2の装着者、長谷川啓太の直接の上司であり、このE2を開発した天才美少女の風間恵美の声が聞こえてきた。
「分かりました!」
通信を聴いたE2は、すぐさまマシンドレッサーを走らせて、指示された現場へと急行する。
「一体何が起こっているって言うんだよ!?」
『分からない。だが今この海鳴市で、途轍もない何かが、起ころうとしているのは間違い無いだろう』
俺は人々が混乱する海鳴の街をメカ犬と共に駆け抜ける。
始まりは本当に唐突だった。
突如として、街中に現れたホルダーモドキが、暴れ始めたのである。
近場に居た連中は倒したのだが、その数はあまりにも多くて、焼け石に水といった程の成果しか出ない。
そこで俺達は考えた。
このホルダーモドキ達の異常なまでの大量発生に何かの意味があると仮定するのであれば、この街の何処かにこの混乱に乗じて何かをしようとしている奴等が居る筈なのだと。
だから俺達は、この大量のホルダー反応がする近辺でも、特に大きな反応が示す地点に向けて、走っているのである。
『見えてきたぞ!マスター!』
メカ犬の声に反応して前を向けば、其処に居たのは藍色と灰色の二人の怪人、オーバーとメルトである。
しかもその後方には、何か見慣れない建造物が聳え立っていた。
それは通常の成人男性の背丈の倍程はある高さを有した、金属製の杭の様に見える。
しかもその杭の一番上には、拳大の大きさを誇る緑色の球体がはめ込まれており、怪しげな光を放ち続けていた。
あれが何なのか分からないが、俺でも何か良くないものだという事は一目で理解出来る。
「メカ犬!あの杭みたいな奴。何だか分かるか?」
『いや……しかしあの杭からは、何故か一際大きなホルダー反応が感知出来る。何としても破壊するぞ!』
「ああ!」
俺とメカ犬が会話しながら走る間に、数体のホルダーモドキが、俺達の進行を妨害するべく、立ち塞がる。
「行くぞメカ犬!」
『うむ!』
走りながらも俺は、タッチノートを取り出して開くと、ボタンを押す。
『バックルモード』
音声が流れると同時に、俺の隣を走っていたメカ犬は、ジャンプしながらベルトに変形して、俺の腹部へと自動的に巻きつく。
「変身」
俺は音声キーワードである言葉を言いながら、タッチノートをベルトの中央に設けられている溝へと差し込んだ。
『アップロード』
ベルトからは白銀の光が発生して、尚も走り続ける俺の全身を包んでいく。
そして光が飛散して現れたその姿は、メタルブラックのボディーを持つ一人の戦士である。
「はあ!」
シードへと変身した俺は、走る勢いはそのままに、進行方向に数体佇んでいるホルダーモドキの内の一体に狙いを定めて拳を振るう。
それを皮切りにして、他のホルダーモドキが、俺に襲い掛かるが、俺はその攻撃を裁き、時には受け流して、カウンターの一撃を放り込みながら、前へと前進する。
ホルダーモドキの相手よりも、今はあの謎の杭をどうにかしなければいけない。
何故かは分からないのだが、俺の勘がそう告げているのだ。
「オーバー!メルト!今度は何を企んでいるんだ!?」
ホルダーモドキ達を蹴散らして、どうにか二人と謎の杭が突き立てられた場所にまで辿り着いた俺は、二人の怪人に対して言い放つ。
「ふん。やっと来たか、仮面ライダー」
「来てくれた所で悪いんだけど、もう時間切れなんだよね」
俺の姿を捉えたメルトが淡々と言い、オーバーは何時もの様に軽い口調で、意味不明な事を言い始める。
『それは一体……む!?』
「な、じ、地震か!?」
メカ犬が言いかけた所で、突如として大地が震え出す。
「始まった……ついにこの時が来た……」
震える大地の上にありながら、メルトが珍しく感情を乗せた言葉を呟き始める。
『始まった?お前達!一体何を始めたと言うのだ!?』
メルトの発言に対して、メカ犬が吠えた。
「ふふふ。これは実験なんだよ」
「実験?」
「そう。これは今まで以上の大きな実験。これが成功したら、世界の壁が一気に崩れるんだよ!凄いでしょ!!!」
吠えたメカ犬に対して、オーバーが嬉しそう喋りだす。
実験……世界の壁を崩す……やけに物騒な単語が入っているが、先程からのこの地震も、それが原因なのだろうか。
「何をやろうとしているのか分からないが、絶対に止める!」
俺は叫びながら、今も震え続ける大地をものともせずに駆け出した。
「ふん。貴様の相手はこいつだ」
一気に距離を詰める俺に対してメルトはそう言い放つと、右手を振りかぶる。
それを合図としてなのか、上空に明らかに雲とは違う影が発生した。
何かと思い、視線を上に向けると、そこに居た影の正体は、翼をはためかせながら空を飛ぶ異形の存在。
茶色い羽毛を身に纏う鷲に良く似たホルダーだった。
「モドキだけじゃなかったのか」
俺がホルダーを目の辺りにして言葉を零すのと、ほぼ時を同じくして、ホルダーが口から無数の炎弾を、此方に向けて射出してきた。
『来るぞマスター!』
メカ犬の声を聴きながら、俺は炎弾を避ける為に、回避行動を試みる。
「くそ!?」
空中からのホルダーによる攻撃を、何とか回避する事には成功するが、このままでは一向にして、オーバー達に近づく事すら出来ない。
『マスター!チェイサーを呼ぶぞ。まずはあのホルダーを倒さなくては、どうにもならん』
「分かった!」
俺はメカ犬の助言に頷きながら、ベルトの溝にはめ込まれているタッチノートを引き抜き、開いてからボタンを数回押した。
『ホバーチェイサー』
タッチノートから音声が流れると、程なくして、上空からホルダーの羽ばたき音とは違う、エンジン音が辺りに響き渡る。
『お待たせマスター』
やって来たのは、乙女口調のオッサンボイスなライダーバイク、チェイサーさんである。
「チェイサーさん!力を貸してください!」
『OKマスター!飛ばすからアタシの上に乗ってねん』
俺の頼みにチェイサーさんは、快く答えを返してくれた。
『行くぞマスター!』
「ああ!」
ベルトから発せられるメカ犬の言葉に頷きながら、俺はチェイサーさんの上に飛び乗った。
それを確認したチェイサーさんは、ホルダーが放つ炎弾を回避しながら、ホルダーに接近していく。
際限無く撃ち出され続ける炎弾を避けながら、俺達は空を自在に飛ぶホルダーに対して逆に上を制する。
『今よマスター!』
チェイサーさんの合図を聞きながら、ホルダーの頭上を取った俺は、ベルトからタッチノートを引き抜き、全体図を表示させて、右足をタッチしてから、再びベルトに差し込んだ。
『ポイントチャージ』
ベルトから発生した光は、銀のラインを通り、右足へと集約されていく。
「こいつで決めるぜ」
俺はチェイサーさんを足場に跳躍すると、真下のホルダーに向けて、右足を突き出す。
それを見たホルダーが此方に向けて、炎弾を発射しようとするが、チェイサーさんが、頭上からの体当たりをホルダーに喰らわした為に、不意打ち気味に攻撃を受けたホルダーは完全に、反撃のタイミングを逃す。
チェイサーさんが作ってくれた一瞬の隙を逃さない為に、俺は全力の一撃をホルダーに向けて、解き放つ。
「ライダーキック」
輝く右足は凄まじい勢いと共に、ホルダーに直撃し、大きな爆発を引き起こす。
爆発の中から、ホルダーの素体となっていた気絶した青年を抱きかかえながら、地上に着地した俺は、気絶した青年をチェイサーさんに任せて、再びあの謎の杭がある場所を目指して走り出した。
いまだに揺れ続ける地面に危機感を覚えながらも、俺は当初の目的通りに、謎の杭が突き立てられた場所に辿り着く。
だがおかしな事に、俺の予想では、この場所を死守してくるであろうと考えていた、オーバーとメルトの姿が何処にも見えない。
『考えるのは後だマスター。今は早くあの杭を破壊するぞ』
「ああ、そうだな」
俺はメカ犬の声に、一旦考える事を中断して、ベルトからタッチノートを引き抜いて全体図を表示させて、右腕部分をタッチしてから、再度タッチノートをベルトに差し込んだ。
『ポイントチャージ』
音声と共にベルトから発生した光は、四肢に伸びる銀のラインを流れて、右腕へと集約される。
「ライダーパンチ」
俺は輝く右拳を、力の限り振り被って、謎の杭に叩きつける。
拳は謎の杭を貫き、全体に亀裂が走り、やがて埋め込まれていた緑に輝く球体もその光を失う。
『その杭からのホルダー反応は消えたぞマスター』
「……そうか」
安堵の溜息を吐きながら、俺は杭に突き刺さった己の拳を引き抜いて、改めてもの言わぬ杭を眺めてみる。
確かに先程まで、揺れていた地面も、この杭を破壊すると同時に、嘘の様に治まったし、今この杭自体からは、何の力も感じられない。
でも何故か、得体の知れない胸騒ぎが、俺を襲い続ける。
その胸騒ぎが、ただの思い過ごしならば、それで良いと思うのだが、どうにも嫌な感覚は拭えない。
『どうやら奴等は、引き上げた様だな』
メカ犬が言うには、俺達がこの杭を破壊した直後に、この辺りに無数に居たホルダーモドキを含めて、反応が消失したのだそうだ。
「……あいつ等は何をしようとしていたんだろうな?メカ犬」
『分からない。だが一度この杭を、調べてみた方が良いかもしれん』
俺はメカ犬と今回のあまりにも謎の行動が多い、奴等の動向について話し合いながら、再びその動きを止めてただのオブジェと化している謎の杭を見上げた。
「今回の作戦、上手くいったみたいだね。メルト」
「ふん。ここまではただの序章に過ぎん。本当に成果が出るのはここからだ」
深い闇の中で、二人の怪人が言葉を交わす。
「……そうだね。でも良かったの?あれって作るのにかなり苦労したのに、あっさり壊されちゃったしさ」
「所詮あれは実験用の試作品だ。完成には程遠い……それに」
「それに?」
「あれは壊されたからこそ、中に内包されていたエネルギーを地球に放出する事が出来たのだ」
「ふ~ん。それじゃあ仮面ライダーには、感謝しなくちゃね」
「ふん。そうだな」
軽い口調で会話を続けるオーバーに対して、相変わらず淡々と喋るメルトだが、その口数は普段以上に多い。
「それで、次の実験はどうするのさ?」
「今は時を待てば良い。やがて変化は訪れる筈だ。この世界を大きく動かす変化がな……」
何処までも続く深い闇の中で、二人の怪人の怪しい笑い声が、何処までも響き渡った。