魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~ 作:G-3X
「やっと見つけたぜ」
管制塔の奥で、翔太郎は目の前に居る男性に宣言した。
翔太郎の目の前に居る男性は、見た目は十代後半という所で、男性というよりは、少年と言った方が適切かも知れないし、もしかしたら学生なのかも知れない。
「……何でここが分かった?」
少年は翔太郎が、ここに居る事を不思議に思い、警戒しつつも疑問を口にした。
「明らかに、ここのスタッフじゃない人間が、関係者以外立ち入り禁止の施設に入って行くんだ。誰かが見ていたとしても、不思議じゃないだろ」
質問に答えた翔太郎に対して、少年は悔しげに舌打ちをする。
「お前!あの女の差し金だろ!?」
半ば自暴自棄なりながら、少年は叫ぶ。
「おいおい。実の姉をあの女は無いだろ?沢渡和也《さわたりかずや》」
今回の依頼主、沢渡登紀子と、今現在、翔太郎の目の前に居る少年、沢渡和也は実の姉弟である。
鳴海探偵事務所に依頼した内容はこういったものだった。
家出した弟を連れ戻してほしい。
原因は両親との、些細な意見の行き違いだった。
しかし和也は売り言葉に買い言葉で、勢いのまま、家を飛び出して行ってしまった。
登紀子と和也の父親は、社会でも目立つ立場の人間であり、あまりこの事を表沙汰にはしたくない。
最初の頃は、一人暮らしをしている登紀子が和也を庇い、家に居候させていたのだが、最近になって和也の様子が何処か変に思うようになり、問い質そうとする直前に、再び家を飛び出してしまったのである。
しかし他に行き場所が無かったのだろう。
和也はある理由から、この風都ランドパークを根城にし始めた。
何故一介の少年にそんな事が出来たのか。
それはこの風都ランドパークの経営者が、沢渡登紀子その人だったからである。
登紀子の実の弟である和也は、登紀子の家を飛び出す少し前まで、この風都ランドパークで、アルバイトをしていた。
どうもその間に、パーク内施設の鍵を幾つかコピーしていた様なのである。
アルバイトを止めたのも、それが発覚したからだ。
身内という事もあり、警察には突き出さなかったのだが、登紀子が和也からコピーされた鍵を取り戻す前に、和也は第二の逃亡をしてしまった。
ここまでの話を聞けば、何て支離滅裂で恩知らずな奴だと思われるが、和也を良く知る人達は、揃えて首を横に振る。
本来の彼は、繊細な性格をしており、そんな事が平気で出来るとは到底思えない。
沢渡和也という人間を良く知る人達は、そう声を揃えて言う。
突然人が変わったとしか言い様の無い行動をする和也だが、翔太郎には一つの心当たりがあった。
「く、来るな!来るなよ!!!」
一歩ずつ近づいてくる翔太郎に、和也は半狂乱になりながら、叫び続ける。
そして恐怖心が、最高に達したのか、和也はポケットからある物を取り出す。
「やっぱり持っていやがったな」
それを見て翔太郎は、自分の予想が当たった事への喜びと、和也に持っていてほしくなかったという二つの感情を心に秘めながらも、更に一歩ずつ近づいていく。
和也が取り出したのは、一本のガイアメモリ。
恐竜の化石を彷彿とさせるフォルムに、Aのイニシャルが刻まれている。
「やってやる……やってやるんだ……」
そう何度も呟きながら、ガイアメモリのボタンを押す。
『アノマロカリス』
音声を辺りに響かせた和也は、首の襟元を開き、首の側面に刻まれた黒いコネクタ部分に、メモリを差し込んだ。
メモリはコネクタを通して、和也の体内へと吸収されて、和也自身の身体にも大きな変化をもたらす。
その姿はまさに異形。
ガイアメモリに内包された、古代に生きた生物、アノマロカリスの姿を色濃く反映させた、ドーパントへと自身の姿を変質させる。
ドーパントは翔太郎に狙いを定めて、口から圧縮された水弾を発射した。
「危ねえ!?」
迫り来る水弾を辛うじて避けた翔太郎だが、常人を遥かに超えた力で、発射された水弾は、後ろの壁を跡形も無く破壊する。
「ちょっと、お灸を据えないと駄目みたいだな」
後ろに開いた大穴を見ながら、翔太郎はドーパントを見据えつつダブルドライバーを腹部にかざす。
『ジョーカー』
続いて取り出したジョーカーメモリのボタンを押して、翔太郎は振りかぶり、ポーズを決める。
「変身」
ダブルドライバーの右側のスロットに、サイクロンメモリが転送され、翔太郎はそれを更に奥へと押し込みながら、左側のスロットにジョーカーメモリを装填して、ドライバーを展開させる。
『サイクロン』
『ジョーカー』
疾風と切り札の音声が再び流れると同時に、翔太郎は周囲に風を巻き起こしながら、風の街、風都を守る二人で一人の仮面ライダー。
仮面ライダーWへと変身を果たす。
「「さあ、お前の罪を数えろ」」
サイクロンメモリと共に転送された、フィリップと同時に、Wは目の前のドーパントに己の過ちを問う。
「くそおおおお!!!」
既に理性が崩壊しつつあるドーパントは、形振り構わずにWへ突進を試みる。
「「は!」」
しかしWはドーパントの突進の威力を上手く受け流して、先程ドーパント自身が開けた大穴目掛けて、ドーパントを外に投げ飛ばす。
ドーパントを投げ飛ばしたWもすぐに、穴へと飛び込んで、追撃を仕掛ける。
投げ飛ばされてまだ態勢を整えられずにいるドーパントに対して、Wは拳と蹴りの連打を叩き込んでいく。
「うあああああああああ!!!!!」
最後に強烈な蹴りを喰らって吹き飛ばされたドーパントだったが、雄叫びを上げながら、すぐさま立ち上がり、口からの水弾を連続でWへと撃ち出す。
「追い込まれて完全に理性が飛んでやがるな」
がむしゃらとも言えるドーパントの連続攻撃を避けながら、翔太郎は今の相手の心理状態を観察する。
「翔太郎。このままじゃ近づくのも難しい。僕の方のメモリを変えよう」
それに対して、フィリップが一つの提案をする。
「ああ!」
相棒の意図を瞬時に読んだ翔太郎は、展開されていたドライバーを一旦閉じて、サイクロンメモリを引き抜くと、代わりに別のガイアメモリを取り出した。
『ルナ』
三日月を模したLのイニシャルが刻まれたガイアメモリ。
それをサイクロンメモリと同様にスロットに装填して再び展開させる。
『ルナ』
『ジョーカー』
すると先程までのWに変化が起こり、右半身のカラーリングが緑から黄色へと変更される。
変化が完了した直後、ドーパントの放つ無数の水弾が、Wへと降り注ぐ。
「うおおおおお!!!」
しかしその直前に、Wは右腕を鞭の様に振り回す。
するとその腕は、伸縮自在に伸び縮みしながら人体の稼動限界を軽く凌駕して、迫り来る水弾を次々と叩き落して行く。
ルナメモリに内包された記憶は幻想。
その効果はまさに変幻自在と言える。
「「せやああ!!!」」
Wがその場で右足による回し蹴りを繰り出す。
本来ならば当たる筈の無い距離だ。
しかしWの右足はゴムの様に伸びて、見事にドーパントの頭部に一撃をお見舞いした。
「もう一丁!」
続いてWは右腕を足と同様に伸ばして、連続攻撃を叩き込む。
「一気に行くよ翔太郎」
「分かってるさ」
フィリップの声に答えながら、翔太郎は先程と同じ様に、展開していたドライバーを閉じて、ルナメモリを引き抜くと、更にジョーカーメモリも引き抜いて新たなガイアメモリを二本取り出してボタンを押す。
『メタル』
『ヒート』
他のメモリと同じ要領で、メタルメモリを左側に、ヒートメモリを右側のスロットに差し込むと、Wはまたしてもドライバーを展開させた。
『ヒート』
『メタル』
音声が流れると同時に、Wの右半身は燃える様な赤に、反対の左半身は金属の重厚感が漂うメタリックカラーへと変化を見せる。
そして背中には、闘士の記憶を秘めたメタルメモリの専用武器、メタルシャフトが生成される。
メタルシャフトを引き抜いたWは、先程の攻撃で弱っているドーパントに肉薄して畳み掛ける。
更に熱の記憶を宿したヒートメモリの効果により、右拳に炎を纏うと、その拳を何度も叩きつけて吹き飛ばす。
「翔太郎。メモリブレイクだ」
かなり弱っているドーパントを見て、フィリップがトドメの合図を送る。
「これで決まりだ」
翔太郎はフィリップの合図に促されながら、ドライバーのメタルメモリを引き抜いて、メタルシャフトのスロットに差し込む。
『メタルマキシマムドライブ』
凄まじいエネルギーが、メタルシャフトに注がれて、シャフトの両端からは、激しい炎が噴出される。
よろけながらも何とか立ち上がろうとするドーパントに対して、Wは炎を宿すメタルシャフトを構えて一気に駆け出した。
「「メタルブランディング」」
必殺の一撃が、ドーパントに直撃して、大きな爆発を引き起こす。
爆発が晴れると其処に居たのは、メモリブレイクによって、ガイアメモリが破壊されて元の姿に戻って気絶している和也と、メタルシャフトを背中に戻しているWだった。
これで今回の依頼は終わったと、翔太郎とフィリップが思った、その時である。
少し離れた位置から、拍手が聞こえて来た。
「強いね君。さっきの戦いを見ていたら、僕もワクワクしてきたよ」
拍手がする方向から、軽い口調の声も一緒に聞こえてくる。
その方向に居るのは、藍色の身体を持つ異形の存在だった。
「お前は……」
「初めまして。違う世界の仮面ライダー。僕の名前はオーバーだよ。メルトの仲間って言えば少しは伝わるかな?」
警戒するWに対して、オーバーは何時も通りのマイペースで、話を進めていく。
「どうやら君も、純君が言っていたホルダーとやらの上位存在って奴で間違い無いみたいだね」
オーバーの話を聞いて、フィリップが最も高いと思える可能性を口にする。
「ふふ。話が早くて助かるよ。実はね、今日は僕のお友達を紹介しに来たんだ」
そう言ってオーバーは横手に手を振りながら、出て来て良いよと声を管制塔の方向に上げる。
すると建物の影から、一人の青年が、ゆっくりと此方に向かって歩いて来た。
見た目は黒髪黒目の、純日本人。
正確な所は定かでは無いが、恐らく年齢は翔太郎とさほど変わらない様に見える。
パッと見は、日本の何処にでも居る様な普通の青年に見えなくも無い。
しかし翔太郎とフィリップは、出会った一瞬で気付いてしまった。
この青年が纏う、異常なまでの殺気を……
それは先程まで話していたオーバーの比では無い。
しかもその殺気は、明らかにWへと向けられている。
「気を付けるんだ翔太郎。彼からは得体の知れない何かを感じる」
「……ああ」
二人は互いに警戒を更に強めて身構える。
「お前は俺の証になるか?」
青年は殺気を放ち続けながら、口を開きそれだけを言葉にした。
それは質問だったのか、ただの独り言だったのか、判断に困る程に、青年の言葉にはその身から放つ殺気とは裏腹に全く覇気が感じられない。
そして青年は、自身が紡いだ言葉に対しての返答を待たずに、次の行動へと移行する。
ロストドライバーを取り出した青年は、自身の腹部へとそれを宛がいベルトの形状にした。
続いて【0】の表記が施された紫のガイアメモリを取り出してボタンを押す。
『サイファー』
音声が流れるのを確認した青年は、ガイアメモリを頭上に放り投げる。
「……変身」
小さく言葉を紡いだ直後に、放り投げたメモリが、地球の重力に従って落下して、ロストドライバーのスロットへと装填される。
青年はそのままドライバーを展開させて、変身は完了した。
「その姿は!?」
変身した青年の姿を見た翔太郎が驚愕の声を上げる。
「ふふ、驚いてくれたみたいで、嬉しいよ。わざわざ紹介した甲斐があったね」
翔太郎の反応を見て、オーバーが楽しそうな声で笑う。
「……俺の名前は、仮面ライダーサイファー。お前の敵だ」
全身を覆う紫のボディーに、鬼を彷彿とさせる二本の角飾りに、漆黒の複眼。
四肢に伸びる螺旋を描いた緑のラインと、その先の肘と膝に突き出した鋭利な突起が、底知れない重圧を見る者全てに与えている。
サイファーは一気に駆け出して、Wへ強襲を仕掛けてきた。
「くっ!?」
咄嗟に反応したWはメタルシャフトで、何とかサイファーの拳を受け止めるが、その一撃は凄まじく重い。
「ヒートメタルのパワーですら、ここまでの衝撃を受けるとは……相当な力があるみたいだね」
サイファーの一撃を受け止めたメタルシャフトを握っていた腕が、かなり痺れている事を確認しながら、フィリップは、目の前の強敵を分析し続ける。
「僕を忘れてもらっちゃ困るよ」
「なに!?」
サイファーが攻撃した続け様に、オーバーが自ら生成した剣で、Wへと追撃を仕掛ける。
「くそ!二対一は辛いな……」
相手が通常のドーパントならばまだしも、今戦っているのは、ホルダーの上位存在だという未知の敵に、ロストドライバーを使って変身した仮面ライダーを名乗る奴だ。
かなりの強さを誇るこの二人を相手に、Wだけで戦い続けるのは、正直に言ってかなり厳しいだろう。
「翔太郎。こっちも増援を呼ぼう」
何とかオーバーとサイファーの攻撃を裁きながら、フィリップが新たな提案を出す。
「増援って誰を呼ぶつもりだフィリップ!?今は照井の奴も風都にいないんだぞ」
フィリップの提案に、翔太郎はそもそもの問題点を問い質す。
「翔太郎。今はもう一人だけ居るじゃないか。この風都に僕達以外の仮面ライダーが」
抗議の言葉を言い続ける翔太郎に対して、フィリップは余裕の笑みを浮かべながら答えを返すと、ヒートメタルから、サイクロンジョーカーにメモリチェンジして、一旦後ろに跳躍する事で、一時的にではあるが、サイファーとオーバーの連続攻撃から逃れる事に成功する。
「それじゃあ、早速呼ぶよ」
フィリップはそう言って、右手にスタッグフォンを取り出して、操作をし始めた。
この難局を乗り切る為の、逆転の一手と信じて。