魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~ 作:G-3X
「はあああ!!!」
俺はホルダーモドキ達に容赦無く拳を振るう。
「たあ!」
そのすぐ近くでは、Wが回し蹴りで、ホルダーモドキ達を文字通り、蹴散らしている。
しかし敵の数は、あまりにも多い。
サイファーに自分と戦えとまで言われたのに、いまだに奴の居る場所まで辿り着けずにいる。
Wも余裕は無い様で、突破する隙を窺う事すら出来そうにない。
歯痒い気持ちを胸に抱きながらも戦い続けていた最中、後方からエンジン音を唸らせて、二台のバイクがやって来た。
それはどちらも見覚えのあるバイクだ。
特にその内の一台は最近馴染み深い、白と黒のツートンカラーで、サイレンを鳴らし続けている。
「照井!?」
「長谷川さん!?」
この戦いの場にやって来た二台のバイクが止まり、被っていたヘルメットを取るのと同時に、俺と翔太郎さんは、そのバイクの所有者の名を呼んだ。
「遅くなってすまなかったな左。急な呼び出しで、署に行っていたんでな」
「ホルダーが風都で大量に目撃されたという情報があり、出動要請が来ていたんですが、シードさんも既に此方に来ていたんですね」
到着した二人は俺達にそう言いながら、戦う為の準備を整えて行く。
まずは長谷川さんが、左腕につけたEブレスのボタンを幾つか押すと、乗ってきたバイクが、箱状に変化して、長谷川さんはその正面に設けられている入り口に躊躇い無く飛び込んでいった。
「変身」
外からは全く見えないが、長谷川さんがそう言うと、同時に入り口が閉まり、機械的な音声が中から響いてくる。
続いて隣に居た赤いジャケットを着た青年、風の街、風都を守るもう一人の仮面ライダーその人が、行動に移ろうとしていた。
彼の名前は照井竜《てるいりゅう》。
風都警察署の超常犯罪捜査課に配属され、若くして警視という役職を務める、とても優秀な人だ。
翔太郎さん達がしていた話の流れで、何となく理解出来たが、やはり照井さんが、亜樹子さんの結婚相手なのだろう。
後ろで亜樹子さんが頑張れと、エールを送っているし……
『アクセル』
照井さんは、バイクのハンドルグリップスロットルを模した、アクセルドライバーを取り出して腹部に宛がう事でベルト状態にした後、一本の赤いガイアメモリを握り締めながら、ボタンを押す。
そのメモリに刻まれたイニシャルはA。
加速の記憶を内包していて、専用のアクセルドライバーを使う事で、Wのサイクロンメモリのスピードとヒートメモリの熱風を超える力引き出す、強力なガイアメモリである。
「変……身!」
そして照井さんは力ある言葉を叫び、アクセルメモリを、アクセルドライバーに差し込んだ。
『アクセル』
アクセルメモリが差し込まれた瞬間に、バイクの排気口を彷彿とさせる筒が幾重にも、赤い光を纏いながら大きな円を照井さんの正面に展開させて、その姿を変えていく。
全体的なボディーは赤が基調とされており、頭部にはAの文字と良く似た形の突起が形成されている。
フルフェイスマスク状に形成された、その顔の奥には、円を描かれた青い複眼が、眩しく輝きを放つ。
仮面ライダーを深く知る人ならば分かるだろう……今照井さんが変身したこの姿こそ、風都を守るもう一人の仮面ライダー。
その名も、仮面ライダーアクセルである。
そして照井さんが変身を完了させた直後に、長谷川さんが入っていた、箱状に変形したバイクの扉が開く。
中から現れたのは、メタルイエローの装甲に、青い二つの複眼が特徴的な、俺と同じ海鳴市でホルダーと戦い続ける仮面ライダー。
風間恵美さんという一人の天才が、設計開発を行い、警察が試験的に実戦投入した、科学の結晶、その名は仮面ライダーE2だ。
アクセルは乗ってきたバイクから、エンジンブレードを引き抜き、E2は右腰のホルスターから専用武器の銃、ESM01を抜き放つと、二人はホルダーモドキ達に攻撃しながら、俺とWのすぐ近くまでやって来た。
「左。詳しい事は後で聞くが、今はこいつ等を倒せば良いんだろ?」
「ここは僕達に任せてください。シードさん」
アクセルとE2は、そう言うと、其々の武器を携えて突貫していく。
「純。俺達が道を作ってやる。あいつと決着をつけてこい」
二人が先行してホルダーモドキ達に向かって行く中で、翔太郎さんが、俺に話し掛けながら、ある一点を指差す。
その指差す方向にいるのは、紫のボディーを持つ、仮面ライダーサイファーだった。
「はい!」
俺は短い返事と共に頷く。
「それじゃあ行くよ。君は何も考えずに、あそこまで走り抜ければ良い」
続いてフィリップ君が出してくれた指示に従って、俺は全力で駆け出した。
「ふん。易々と通すと思うか?」
「残念だけど、ここで通行止めだよ」
しかし、その前にオーバーとメルトが立ち塞がる。
俺はこいつ等が一筋縄では行かないという事を良く知っている。
だからこそ一瞬だけ、己の足を止めそうになるが、そこで俺に対して尊敬する、そして今は共に戦う、彼等の叫び声が聞こえてきた。
「止まるな!走れ!」
「言っただろう?君は何も考えずに走れば良いって」
目の前には、Wが陣取っており、メルトとオーバーを俺から遠ざける様に、戦いを繰り広げていた。
「ありがとうございます!」
俺は一瞬止まりそうになった足に、再び力を込めて走りだす。
本当ならばもっと、感謝の言葉を送りたい。
でもそれは今俺がするべき事じゃないだろう。
俺が今するべき事は……
「……来たか」
目の前に居る、この人を救う事だ。
「悪いですね。遅くなって」
俺はサイファーの前で立ち止まり、何時でも戦える様に構えを取る。
「は!」
もう俺達の間に、それ以上の会話は無かった。
俺が構えると同時に、サイファーは怒涛の攻撃を開始する。
その一撃は一つ一つがとても重い。
それを肌で感じる事で、この人がどれだけ長い間を戦い続けてきたのか、その片鱗に気付く。
だが、それでも、俺にだって譲れないものがある。
『マスター!一旦距離を取って、遠距離攻撃を仕掛けよう!』
サイファーの鬼気迫る格闘戦に、このままでは不利だと分析したのか、メカ犬が俺に指示を飛ばす。
確かにこの連続攻撃は厄介だ。
「分かった!」
俺はメカ犬の指示に、肯定の返事を返してから、すぐさま実行に移す。
「はああ!」
サイファーの連続攻撃の隙間を縫うように、俺は正面から蹴りを繰り出す。
だがその攻撃は、サイファーも読んでいたのだろう。
身体に直撃する前に、右腕を斜めに滑り込ませて、俺の繰り出した蹴りの威力を軽減させてしまった。
だが、ここまでは俺の予想範囲内である。
こんな単純な攻撃が通用する相手だとは、最初から思っていない。
俺の本当の狙いは、防御の為に、滑り込ませた腕である。
蹴り上げた足をそのまま右腕に添えてから、俺は其処を足場として、後方へと跳躍した。
後方に飛びながら俺は、空中でベルトの右側をスライドさせて、青いボタンと黄色いボタンを同時に押した。
『サーチフォルム』
『サーチバレット』
音声が流れると同時に、メタルブラックのボディーは、スカイブルーへと染め上がり、俺の右手には、サーチフォルムの専用武器である、サーチバレットが握られる。
サイファーから少し後ろに離れた位置に着地した俺は、すぐさまサーチバレットの銃口の標準を合わせて、光弾を撃ち出す。
しかしサイファーはその光弾を冷静に回避していく。
更になんと、肘の突起を鞭の様に伸ばして、俺が連続で撃ち出す光弾を弾き始めたのである。
最初はそれを片手で行っていたが、サイファーはもう一方の腕も、同じ様に鞭状にすると、俺に直接攻撃を仕掛けてきた。
「くそ!?」
俺はサーチバレットの標準を、外さない様にしながらも、側転で何とか鞭を回避して、再び光弾を連続で撃ち込む。
めまぐるしく攻守が入れ替わるが、それもすぐに終わりを告げる。
「くう!?」
避けた直後に狙いを定めたのだろう。
サイファーは防御を捨てて、サーチバレットの光弾の直撃を喰らいながらも、その瞬間に狙いを絞って、俺の首に鞭を巻き付けたのである。
すぐさまサーチバレットで、サイファーを攻撃しようとはしたが、撃とうとした瞬間に、もう片方の鞭で、手から叩き落とされてしまった。
『マスター!』
俺は徐々にきつく絞まり続ける鞭に耐えながらも、ベルトの右側をスライドさせて、この状況の打破を試みる。
『パワーフォルム』
『パワーブレード』
スカイブルーのボディーは、クリムゾンレッドへと変化して、俺の身体に力が漲ってくる。
更に右手に生成されたパワーフォルムの専用武器であるパワーブレードで、俺の首を締め上げる鞭を、力任せに切断した。
「はあ、はあ、はあ、はあ……」
鞭の呪縛から開放された俺は、久しく吸う事が可能となった新鮮な空気を、勢い良く肺に送り込む。
『大丈夫か!?マスター』
「ああ、なんとかな」
『む!来るぞ!!!』
呼吸を整える俺に、メカ犬が注意を促してきた。
前を見据えれば、サイファーが、鞭状にしていた肘の突起を元の状態に戻した後、此方へと駆け出してきたのである。
俺は急いでパワーブレードを構えて、再び接近戦へと戦いの場を移していく。
サイファーは、肘の突起を武器に俺のパワーブレードと何度も切り結ぶ。
一撃、二撃、三撃と、互いに拮抗した力がぶつかり合うその中で、不意にサイファーが語り掛けてきた。
「……何故だ。お前は何の為に戦う?」
俺はその質問に、少しだけ答えを言うのに躊躇う。
その質問は以前にも、戦いの中でされた質問だった。
だから俺は逆に問い返す。
「何でそんな事を聞くんだ?」
「俺には理解出来ない。お前が言った言葉の意味も、そこにあったであろう感情も……お前は何故、誰かの為に戦おうとする?何故この大きな力を、他人を守る為に使う?俺はそれが知りたい」
「……俺の戦う理由は、単純だ。それは誰もが持っていて、あんただって、手に入れたいと願ってるものだ」
そうさ……
俺の戦う理由は何時だって、笑ってしまう程に単純なんだよ。
「それが俺の証だからだ」
「戦う事がお前の証だというのならば、俺とお前では何が違うというのだ?俺もお前も、戦う事を己の証と言うのならば、何も変わらないだろう」
「いいや。俺とあんたは違う。あんたは戦う事に、戦いそのものに自分を求めようとして逃げてるだけだ」
俺は首を横に振りながら否定する。
「俺が戦う事で得られる証は、自分の大切な誰かを守りたいっていう想いそのものなんだよ」
どんなに力があったとしても、助ける事が出来ない人だっているだろう。
どんなに大切に想っていたとしても、零れ落ちてしまう何かがあるかも知れない。
だけど、たとえそうだとしても、俺はこの力で大切な人達を、守りたいんだ。
俺が思い出すのは、今までに出会った沢山の人達。
その出会いがあって、幾つもの絆が生まれたからこそ、今の俺がいる。
俺はその人達の笑顔を守りたい。
大切な絆を俺にくれた皆が、笑顔でいてくれたならば、俺も笑顔になれるから、だから……
「戦いが証になるんじゃない。戦いの先に得られる、大切に想う何かが、自分の証になるんだ!!!」
俺が叫ぶのと同時に、切り結んでいた状態の俺とサイファーは互いに後ろへと飛び退いた。
「ならば証明してみせろ!お前の証を!!!そして俺の証を否定してみせろ!!!」
サイファーは、そう叫ぶと、ロストドライバーから、メモリを抜き出して、腰のスロットに装填し直して、勢い良く上から手のひらで叩いた。
『サイファーマキシマムドライブ』
すると同時に、サイファーの肘の突起が眩い光を発し始める。
「……相棒。俺に力を貸してくれるか?」
『何を言っているマスター。当然だろう』
「……だよな」
次の一撃で、きっとこの勝負に決着がつくだろう。
だからこそ、俺は自分の証と言える、最高の一撃を繰り出さなければならない。
『ベーシックフォルム』
俺はベルトの右側をスライドさせて、黒いボタンを押して、パワーフォルムから、ベーシックフォルムへとその姿を変える。
今から放つ一撃は絆の力だから、俺の……いや、俺達の気持ちをぶつけなければいけないんだ。
『ベーシックファントム』
続けて押した黄色いボタンにより、ベーシックフォルムの特殊能力である分身体が生成される。
『マスター』
「ああ」
生成された分身体から聞こえるメカ犬の声に応えて、俺はベルトからタッチノートを引き抜いて、分身体のベルトの後ろに設けられた溝にスライドさせた。
『ロード』
そして俺は再び、タッチノートをベルトに差し込む。
『アタックチャージ』
音声が流れるのと共に発生した光が、俺と分身体の右足へと集約されていく。
「『こいつで決めるぜ!!!』」
俺とメカ犬は同時に叫びながら構えを取り、跳躍して、光を放つ右足を此方へと駆け込んで来るサイファーへと向ける。
「『ツインシードスマッシュ!!!』」
放たれた両者の必殺の一撃が火花を散らす。
俺とメカ犬が操作する分身体が繰り出したキックを、サイファーはその輝く肘の突起で受け止めているのである。
しかもその力は徐々に強まりつつあり、俺達を押し戻そうとさえしていた。
『気合を入れろマスター!!!』
「分かってる!!!」
俺達は押し戻されそうになるのを耐えながら、今の自分達に出来る最高の力を一気に引き出す為に叫ぶ。
「『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!』」
守りたい人達がいるから、だからこの勝負には、絶対に負けられない。
その想いが俺とメカ犬に、何処までも力を与えてくれる。
拮抗していた力はそこで、亀裂を生んだ。
サイファーの力は段々と弱まり、それを好機と見た俺達は一気に押し切り、その一撃を見事にお見舞いして、吹き飛ばしたのである。
つまり俺達は、この互いの証を賭けた戦いに、勝利したと言う事だ。
勝利の喜びよりも、疲労感が勝る俺が、大きなダメージを受けて倒れているサイファーに視線を送ると、そこには一人の少女、ユイが佇んでいた。