魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~   作:G-3X

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第21話 姫を守るはナイトの務め【後編】

エミリーちゃんのお父さん、つまりこの国の王様が、城内の豪華絢爛なパーティー会場の高台から、俺達を見下ろしている。

 

その右脇にはお妃様と、左側にはこの国のお姫様であり、今回のパーティーの主役でもあるエミリーちゃんが控えていた

 

それを俺は、横に並ぶ二十台半ば頃と思われる、二人のイケメン男性と共に見上げていた。

 

何を隠そうこの二人こそが、俺以外の婿候補さん達である。

 

この一週間で俺達が集めた情報によると、彼等は共に文武両道であり、比の打ち所の無い昨今の日本で行われている大規模な婚約パーティーで女性達が、理想にしていそうな殆どのプロフィールを有していた。

 

まあ、調べていく上でそれだけではないという事も分かってきたが……

 

小学生が楽に野球が出来そうな大きなパーティー会場に、埋め尽くされる程やって来た来客者達が、そんな俺達を興味深げに見つめている。

 

本日はエミリーちゃんの婿を決めるというこの国を左右する大切な日であり、ここはその盛大なるイベントが催される城内のパーティー会場。

 

周りに大勢居るギャラリーは、このパーティーに招待されたお客さん達だ。

 

多分だがこの中に、なのはちゃん達もこの会場内の何処かに居る筈だろう。

 

ちなみになのはちゃん達は、このパーティーの本当の意味は知らない。

 

パーティー会場では、殆ど日本語は使われていないし、文字もこの国で使われている独自のものだ。

 

日本語かアリサちゃんを含めれば英語で答えられない限りは、ばれる心配は無いだろう。

 

その辺りの根回しは、エミリーちゃんとサバスチャン、そして恵理さんがやってくれている。

 

更に俺が注目されているのは、このパーティーを盛り上げるイベントの参加者だと伝えてあるので、周囲から注目を浴びていたとしても、何とか誤魔化せる筈だ。

 

友達を騙すというのは忍びないが、これもエミリーちゃんの頼みで、なのはちゃん達を必要以上に、国のごたごたに巻き込みたくないという意見の為である。

 

確かにこんな大人の事情なんて、出来れば知らない方が良いに越した事はないだろう。

 

これから一体何をさせられるのか。

 

どうやら正式な婿を決める為に、何か変わった事をやろうとしている事は分かったのだが、それ以上の情報は結局分からないままだった。

 

どちらにしても、平穏無事に終わるとは思っていないが……

 

俺が会場の雰囲気に飲まれない様に、様々な考えを巡らしていると、ファンファーレが鳴り響く。

 

それと同時に王様が立ち上がり、王様が立ち上がって、俺達に向かって何かを喋り始める。

 

勿論王様の言葉は、この国の言語であり、日本人の俺には何を言っているのか、全く理解できない。

 

「メカ犬。翻訳頼むぞ」

 

『うむ』

 

俺は肩に乗せたメカ犬に通訳を頼んだ。

 

どうやらメカ犬は、動物の言葉に加えて、この国の言語も理解出来る様なのである。

 

日本語を喋れるは海外の言葉に加え、人外との意思疎通までこなせるメカ犬は、今すぐにでも、超一流の翻訳家として就職する事が出来そうだ。

 

そう思いながら俺は、王様の言葉とほぼ同時に、耳元でメカ犬が翻訳する声に耳を傾ける。

 

全ての内容を話すと、あまり関係の無い部分も多く出てくる為、要点を絞って説明しようと思う。

 

今回の婿を決める方法なのだが、かなり特殊な方法を取る様だ。

 

お姫様の結婚相手とは、問答無用で決められてしまうものなのかと思っていたが、この国は内部で全てが完結している訳では無く、様々な国と横に様々な繋がりを持っている。

 

現代であまり表立ってそういった行動に出れば、要らぬ悪評が立つ危険性がある為に、上も慎重に成らざるを得ないのだろう。

 

だからと言って人数を絞ってから、本人にお見合いでもさせて本人に決めさせるとしたら、本人が推薦してきた俺が勝つ事は確定だ。

 

それでは態々候補者を激選した意味が無い。

 

だからこその手段なのだろう。

 

その手段……というかこれは本当にゲームと言える内容なのだが、この城内の宝物庫に保管されている宝石、マーメイドブルー。

 

これを一番早く王様に献上した者が勝利するという、何かの番組企画みたいな勝負内容だった。

 

その宝物庫を開ける鍵が、この城内の何処かに隠されている。

 

最も早くそれを探し出した者が、事実上の勝者となるのだろう。

 

これは明らかに俺を勝者にさせないという重鎮達の意思を感じる。

 

何せルール上では、自分が使える全てを駆使して探し出せという事なのだ。

 

つまり自分の部下や家臣に、使用人等に協力を仰ぐのも許されるのである。

 

俺以外の二人は名家の出身であり、多くの人間を使っての人海戦術が可能だ。

 

しかも王様はルール説明では母国語を使用している等、ただでさえメカ犬という翻訳者が居なければ、こんな不利な状況下な上に、何をすれば良いのか分からないままに始まる事になって、かなり出遅れる事となっていただろう。

 

大体のルールをメカ犬の同時通訳で俺が理解するのと同時に、もう一度ファンファーレが会場内に鳴り響く。

 

それと同時に、多くの人間が会場から外へと流れていく。

 

どうやら俺以外の二人は、この勝負の内容まで事前に把握していたらしい。

 

幾らお城のパーティーだと言っても、明らかに会場内で働いている人が多いと思っていたのだが、どうやらこの為に、パーティー運営の手伝いという名目を付けて、使用人を大勢連れて来ていた様だ。

 

「俺達も行くか」

 

確かに不利だが、このまま何もせずに終わる訳には行かない。

 

俺も自分に出来る事を開始する為に、行動を開始する。

 

『マスター。何か心当たりはあるのか?』

 

会場から走り出そうとしたところで、メカ犬が話しかけてきた。

 

「いや、何も情報は無いけど、兎に角探さなくちゃ先を越されるかもしれないだろ」

 

『それについてだが、ワタシに一つ妙案がある』

 

「妙案?」

 

『うむ。だがその為には事前に幾つかの準備が必要だ。その鍵の形状と材質等を出来るだけ詳しく確認したら、人気の無い外に出るぞ。話はそれからだ』

 

「あ、ああ」

 

俺は取り敢えずメカ犬の指示に従い、会場内に居たサバスチャンに、宝物庫の鍵について出来るだけ詳しく聞いた後に、一旦城内から外に出て、人気の無い裏庭の木陰に向かった。

 

「それでこれからどうすれば良い?」

 

『うむ。次はタッチノートを出して、チェイサーにメカ竜と、メカ海も呼んでくれ』

 

「へ?何でタッチノートを?それに皆を呼び出してどうするつもりだよ?」

 

メカ犬の以外過ぎる提案に、俺の頭上にはイメージとして、大量のクエスチョンマークが浮かぶが、どちらにしても、この不利な状況では、何もやらないよりはやった方がましかもしれない。

 

『早くするんだマスター』

 

「……分かった」

 

俺は何をするつもりなのか分からなかったが、メカ犬を信じて皆をタッチノートで呼び出す。

 

『『『お待たせマスター』』』

 

暫くすると、呼び出した皆が、俺達の目の前へとやって来た。

 

日本を越えてやって来たにしては、異常なスピードで来たジェットモードのチェイサーさんに驚きを隠せないが、メカ海が水中を泳いでいない時は、常に飛んでいるという状況にも、結構な衝撃を覚える。

 

『揃ったな皆!』

 

一列に並ぶ助っ人達にメカ犬が指示を出す。

 

『今から皆に、ある特定の物質をこの付近の何処にあるのか、サーチして貰いたい。材質は……』

 

高らかに言い放ったメカ犬は、俺がサバスチャンから教えてもらった鍵の情報を一から十まで余す事無く伝える。

 

『了解よん』

 

『任せてください先輩』

 

『泥舟に乗ったつもりでいるのだわさ~』

 

メカ犬からの情報を聞いた彼等は口々に言いながら、四方に散って行く。

 

ちなみにメカ海のあの言い方では、全く安心出来ずに不安ばかりが扇がれる。

 

「なあメカ犬。これって……」

 

『うむ。ワタシ達のサーチ能力を特定の一つの条件に絞って、捜索をしているのだ。自分が使える物を利用出来るのならば、使用人を使っても構わないという条件なのであれば、これもルール違反には含まれないであろう?』

 

まあ、確かに向こうは事前にルールも把握していた様だし、これぐらいはばれなければ大丈夫と思っても良いかも知れない。

 

『マスター!先輩!ここから100m程先に行った、薔薇園の中に、鍵がありましたよ!』

 

探し始めてから数分と経たない間に、捜索に向かっていたメカ竜が、鍵を咥えて持ってきた。

 

俺はその鍵を受け取り、サバスチャンが言っていた情報と一致しているかどうかを確認する。

 

「うん!これで間違い無い筈だ!」

 

全ての情報が一致した事を確認した事を確認した後、俺達が宝物庫へ向かおうとしたその時である。

 

二人の男性が俺達の前へと立ちはだかった。

 

その男性の顔は良く覚えている。

 

何せ少し前まで、隣に並んでいた婿候補の二人だったからだ。

 

『やはり来たな。マスター!』

 

「ああ、予想はしてたけど、思ったよりも早く本性を見せてきたみたいだ。意外と向こうは焦ってるのかもな?」

 

俺はメカ犬と会話を交わしながら、婿候補達の動きに注意する。

 

婿候補の二人は突如として、叫びだしその姿を黒い光を発しながら、異形の存在へと変えていく。

 

黒い光が飛散すると、赤い表皮のカブトムシに似たホルダーに、青い表皮のクワガタを模したホルダーが目の前に並び立つ。

 

「やっぱり、メカ犬の言う通りだったか……」

 

この二人が最近になって、人魚の入江に頻繁に出入りしていた事は、ここ一週間メカ犬が入江近くに住んでいる動物達から集めた情報で知っていた。

 

彼等が首謀者かどうかは置いておくとしても、全くの無関係と考えるのは難しい。

 

流石にそれだけでは、確信まで持つ事が出来なかったが、彼等から仕掛けてきてくれるとは、こっちにとっては好都合である。

 

『マスター!』

 

「ああ!」

 

俺はメカ犬の掛け声に答えながら、タッチノートを取り出し開き、ボタンを押す。

 

『バックルモード』

 

流れる音声と同時に、メカ犬がベルトに変形して、俺の腹部に巻きつく。

 

「変身」

 

音声キーワードを入力して、素早くタッチノートを、ベルト中央の溝へと差し込む。

 

『アップロード』

 

俺の全身は白銀の光に包み込まれて、その姿を一人の戦士に変える。

 

シードへの変身を完了させるのとほぼ同時に、二体のホルダーが攻撃を仕掛けて来た。

 

『来るぞマスター!』

 

メカ犬の注意を聴きながら、俺はクワガタ型のホルダーが振るう拳を右に手を添えながら軌道をずらして、回避して、後方から追撃しようとしているもう一体のカブトムシ型のホルダーに対して、逆に此方から拳を専攻して叩き込む。

 

拳を叩き込む事で、カブトムシ型ホルダーを後ろに下がらせた俺は、そのまま軽く腰を捻りながら回し蹴りを繰り出して、真後ろにいるクワガタ型ホルダーにも攻撃を喰らわせる。

 

接近戦が不利だと判断したのか、二体のホルダーは、一旦俺から距離を離すと、二体して空中に手を翳し、その腕から黒い光を稲妻の様に発生させた。

 

「あれって!?」

 

その次の瞬間、二体のホルダーの腕には其々に、カブトムシ型ホルダーには、全体が銀の西洋剣が、クワガタ型ホルダーの方には同じデザインの西洋風な槍が握られていた。

 

しかもホルダーが生成した武器からは、何かパチパチと発電現象が発生している。

 

『避けろマスター!?』

 

咄嗟に聞こえたメカ犬の声に、俺は考えるよりも早く、今居る地点から、右横に側転する。

 

その直後に二体のホルダーが、その手に握る武器を振り切ると同時に、黒い稲妻が先程まで俺の居た場所に猛威を振るう。

 

黒い稲妻が薙いだ場所を見れば、其処は無残にも黒焦げた大地が広がっていた。

 

もしもまともに喰らっていたならば、ただでは済まなさそうな威力である。

 

『次が来るぞ!』

 

その光景に旋律を覚える間も無く、ホルダー達の次なる攻撃が、襲い掛かる。

 

「く!?」

 

俺はメカ犬の声に再び反応して、回避行動を取りながら、ベルトの右腰をスライドさせて、緑のボタンを押す。

 

『スピードフォルム』

 

メタルブラックからライトグリーンにボディーの色を染め上げながら、飛躍的に上昇して素早さを駆使して、ホルダー達が放つ連続攻撃を回避し続ける。

 

『あの稲妻は厄介だな』

 

「ああ……こうなったらスピード・ガイアで『ここはアタイに任せるだわさ~』ウミちゃん!?」

 

前回同様に、戦闘中の緊張感を崩壊させる独特な喋り方で、空中から俺の手元へとメカ海がやって来た。

 

『ちょっと!ここはボクの出番ですよ!!!』

 

『うっさいだわさ~』

 

突然の乱入に、傍に居たメカ竜が抗議を申し立てるが、その言葉はメカ海のドルフィンキックで、文字通り一蹴されてしまう。

 

『……誰でも良いから、早くしてくれ』

 

メカ犬がその光景に対して、諦めがちな催促を試みる。

 

俺も今は攻撃を避けるのに精一杯なので、出来れば早くして欲しい。

 

『はいは~い!アタイに決まったんだわさ~』

 

どうやら決まったらしく、メカ海が声高らかに宣言する。

 

その少し後ろで、メカ竜のすすり泣く声が聞こえた気もするが、残念な事に今の俺にはそれを確認するだけの余裕が無い。

 

「良し!」

 

俺はその声を聞きながら、ベルトの右側をスライドさせて黄色いボタンを押す。

 

『スピードロッド』

 

生成されるスピードフィルムの専用武器である、スピードロッドを握り締めて、ホルダーの稲妻攻撃を避けた次の瞬間を狙って、ロッドを振り被る。

 

「飛んでけええええええ!!!」

 

俺の掛け声と同時に投げ放たれたロッドは横に回転しながら飛んで行き、ホルダー達に直撃する事で、僅かだが隙を作り出す事に成功した。

 

『今だマスター!』

 

「OK!」

 

メカ犬の合図で俺はタッチノートを引き抜いて操作する。

 

『スタンディングモード』

 

タッチノートから流れる音声と共に、此方に飛んでくるメカ海が、アタッチメントパーツに変形して俺の手の中に納まった。

 

俺はそのままベルトの左側をスライドさせて、アタッチメントパーツに変形した、メカ海を装填する。

 

『スピード・ダイバー』

 

俺の周囲に展開されたメタルブルーの強化装甲が、ライトグリーンのボディーへと装着されていくのだが……

 

「……お、重い」

 

身体全体が、パワーフォルムの比じゃない程に重いのだ。

 

それこそ、ただ動くのにも支障が出る程に……

 

『それは当然だわさ~。だってアタイは元々水中戦専用に設計されているのだから、地上ではこんなものなのだわさ~』

 

『だからボクの出番だと言ったのに……』

 

「分かってるなら、やる前に言ってくれよ!?」

 

上手く動けない身体に四苦八苦しながらも、俺はメカ竜とメカ海の会話に、渾身の突っ込みを叩き込む。

 

『ふざけている場合じゃないぞマスター!』

 

其処にメカ犬からの焦りが混じる声が聞こえる。

 

前を見やれば、ホルダー達が攻撃準備を整えて、例の黒い雷撃を放とうとしていた。

 

避けようにも、今からでは到底間に合わないだろう。

 

「く!?」

 

俺は回避を諦めて、防御する為に身を竦めるのと同時に、ホルダー達が放った黒い雷撃が衝突する。

 

「……あれ?」

 

確かに直撃したのだが、少しだけ痺れただけで、思っていた程のダメージが無かったのだ。

 

『アタイの防御力を舐めてもらっちゃあ困るんだわさ~。深海の水圧にだって耐えられるんだから、この位は朝飯前だわさ~』

 

驚く俺にメカ海が誇らしげに説明してくるが、改めて突っ込んでおこう。

 

「だから先に説明してくれよ!」

 

『そんな些細な事は気にしないで、今度はこっちから行くんだわさ~』

 

しかし俺の突っ込みを華麗にスルーしながら、メカ海は俺に戦う様に促してくる。

 

他にもまだ色々と突っ込みたいところではあるが、確かに言っている事は正論なので、俺はメカ海への突っ込みを切り上げて、目の前の戦いに意識を集中させて、次なる手を打つべく、行動に移す。

 

俺は左腰に装填されているメカ海の、アタッチメントパーツのレバー部分下に、設けられているボタンを押した。

 

『スピードアンカー』

 

メカ竜の時と同じ位置に置かれたボタンを押す事で、俺の両腕の甲に、フック状になった突起が先端に付いており、その先には長いチェーンが繋がっている一風変わった武器が生成される。

 

最も近い形状を一つだけ挙げるとするならば、船の碇が一番近いだろうか。

 

「はああああ!!!」

 

俺は右腕側のスピードアンカーを勢い良く振り回しながら、フックの部分をホルダー達に投擲した。

 

先程の雷撃を受けて、無傷でいた俺に驚愕していたホルダー達だったが、逸早く俺の反撃に気づいたカブトムシ型のホルダーが、そのフックを剣で薙いで軌道を変えてしまう。

 

しかし俺が手元から微調整を行う事で、フックは弧を描きながら、二体のホルダーを囲む様に旋回していく。

 

「今だ!」

 

飛ばした先端のフックに取り付けられたチェーンが、完全に二体のホルダーを囲んだ事を確認した俺は、タイミングを見計らいながら、思い切り引っ張る。

 

その動作によって、急速にホルダーを囲んでいたチェーンの幅が狭まり、二体のホルダーを捕縛する。

 

『このまま行っちゃうだわさ~』

 

メカ海の声に頷きながら俺は、アタッチメントパーツのレバーを引く。

 

『マックスチャージ』

 

音声が鳴り響くと同時にベルトから発生した光が、銀のラインを伝い、左腕側のスピードアンカーへと集約される。

 

「こいつで決めるぜ」

 

俺は右側に捕縛した二体のホルダーを、力任せに上空に放り投げてから、成す術無く宙を舞う所に狙いを定めて、光り輝くスピードアンカーを振り回しながら全力で投げ込む。

 

「ダイバーウィップショット」

 

投げ込まれたアンカーは身動きの出来ないホルダーを見事に捉えて、大きな爆発を引き起こす。

 

爆発した地点に気絶した二人の婿候補を確認した俺は、一度大きく吸い込んだ息を吐き出してから、一言だけ呟く。

 

「後はあれを持って行って……エミリーちゃんの悪夢を終わらせる」

 

俺は本来の目的である宝物庫を目指して、変身を解いて歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「純に救われたのはこれで二回目じゃな」

 

パーティーがあった次の日の正午、シルバーライト島内の空港で、エミリーちゃんが俺に感謝の言葉を述べた。

 

「いや、俺が出来た事なんて結局は全部の話を無かった事にしただけで、最終的には何の解決にもなってない様な気もするし……」

 

「それで良いのじゃ。ここから先は他人の力を借りずに、己の力で切り開いてみせなければならぬからのう」

 

「エミリーちゃん……」

 

結果から言えばエミリーちゃんの婿を決めるという話は、全て白紙に戻った。

 

それというのも……

 

「おかげで俺も、今回は仕事がやりやすかったよ」

 

エミリーちゃんの隣で朗らかに笑顔を浮かべる一人の青年、Tさんの活躍の賜物と言えるであろう。

 

何故Tさんがここに居るのか。

 

それを説明するには、話が一週間前に遡る。

 

俺とTさんが再会したのはエミリーちゃんが俺の部屋を訪ねて来た翌日の夕方の事だった。

 

ここでTさんとまさかの再会をしただけでも驚きだというのに、情報収集に行くと言って、夜の森に入っていった筈のメカ犬と、一緒にやって来たものだったから、二重の意味で驚きだ。

 

だが二重の驚きだと思っていたそれには、更にもう一段仕掛けが施されている、三重の驚きだったのである。

 

それはTさんの口から語られた衝撃の事実だった。

 

なんとガルドには、同じ出身の仲間が居たというのである。

 

しかもその正体が、最初に俺を城内の部屋に案内してくれた執事の青年だというのだ。

 

Tさんが言うには、その青年はガルドがこの国に来る前から、この場所に潜伏していたらしく、ガルドが頭角を現した辺りから、裏で独自に接触して、助手の様な役割を担っていたそうなのである。

 

ガルドから押収した大量のデータを解析するのにTさんが所属する組織が手こずったそうで、最近になってあの時の事件に、黒澤さん以外の個人的な意思を持ちながら協力する存在に気づいたそうだ。

 

そこで調査と捕縛を目的として、ここでの潜伏調査を経験しているTさんが、抜擢されてやって来たらしい。

 

メカ犬と出会ったのは、Tさんが組織で解析されたデータを基に研究施設を探していたのと、入江付近で情報収集を行っていたという一人と一匹とも近い場所で行動をしていた為だろう。

 

そして久しぶりの再会を果たした俺達は、お互いの情報を交換して、共同で一つの作戦立案して実行に移す事にした。

 

それというのも今回のエミリーちゃんの婿を決める為のパーティーは、その執事が裏で企てていた可能性が出てきたからである。

 

メカ犬の情報によれば、俺以外の二人の婚約者が、人魚の入江に頻繁に出入りしていたという事と、Tさんの見立てによれば、その二人が以前この国の重鎮達に掛けられていた催眠と同じ状態にあると判断した為だ。

 

恐らくはガルドがやろうとした、この国の乗っ取りを、自分が表舞台に出る事無く達成しようと企てたのだろう。

 

そこで俺達はこの黒幕である、執事の青年を炙り出す事にしたのである。

 

作戦は至ってシンプルだ。

 

まずは俺が普通にこのイベントに参加して場を掻き乱す。

 

まあ、その前に向こうから、勝手に焦って妨害しに来てくれたおかげで、その部分は実行に移す必要も無かったが……

 

でもそれだけじゃあ、相手は表舞台に出てくる事は無いだろう。

 

だから俺達は、餌を撒く事にした。

 

その内容はTさんに全て任せていたのだが、どうやら例のマーメイドブルーについて、何かの嘘情報をイベント内容が告知された後すぐに、特別な手法で流したそうだ。

 

専門的な用語が多くて、その辺りは良く理解出来なかったが、確かロストロギアが何とかと言っていた気がする。

 

まあ、其処で俺が会場にマーメイドブルーを持ってきた事により、まんまと誘き出された執事を、Tさんが捕縛した事で、今回の騒動は一応の解決をみせたのだ。

 

その後は俺とTさん。

 

それにサバスチャンに恵理さんと、エミリーちゃんで事の顛末を王様を初めとする上層部に、説明した。

 

全てを話せる訳ではないので、概要部分を話すだけに留まったのだが、以前のガルドの件と今回の事に加えて、全てが仕組まれていた罠だと理解した彼等は、事実上エミリーちゃんの婿を探す事を断念してくれた。

 

確かに将来を見据える事も大切だが、今に目を向けなければ本当に大切な何かが零れ落ちてしまう事もあるかもしれない。

 

この選択が後にどういう結末を招くのかは、俺の知る由もないが、俺が出来る事は全てやって、この婿騒動は一応無事に解決したのだ。

 

今はその事実だけで充分だろう。

 

特別に許可を取ってまで、見送りに来てくれたエミリーちゃんに其々に別れを告げてから、俺達は日本行きの飛行機に乗り込んだ。

 

俺達が飛行機が離陸してから、二時間ほどが経過して、隣に座っていたなのはちゃんが、静かに寝息を立て始めた頃。

 

『マスター』

 

俺の座席の隅に置物の様に座り続けていたメカ犬が話しかけてきた。

 

「何だよメカ犬」

 

『うむ。実はエミリー嬢から言伝《ことづて》を頼まれていたのでな』

 

「言伝?」

 

鸚鵡返しに聞き返した俺に対して、メカ犬が話を続ける。

 

『【三学期を楽しみにしておるのじゃぞ】だそうだ』

 

「何だよそれ?」

 

この数週間後。

 

俺はこの言葉の本当の意味を知る事になるのだが、それはまた別の話である。

 

取り敢えず今日の海鳴がどうなっているのか分からないが、シルバーライト島はそれなりに平和だ。

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