魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~   作:G-3X

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第22話 新年・元旦・初バトル【後編】

『スタンディングモード』

 

俺がタッチノートを操作する事で、チェイサーさんの上に鎮座していたメカ海が、飛び上がりながらアタッチメントパーツに変形して、俺の左手の中に納まる。

 

メカ海を握った俺は、操作していたタッチノートを閉じて、ベルトの溝に戻した後、ベルトの左側をスライドさせて、アタッチメントパーツに変形したメカ海を差し込んだ。

 

『サーチ・ダイバー』

 

音声が鳴り響くと同時に、俺の周囲にメタルブルーの装甲が展開して、次々と全身に装着されていく。

 

重厚な装甲と、全身に取り付けられたスクリューに、パンチンググローブを彷彿とさせる腕部。

 

後から一度、鏡でこのフォルムの頭部も確認したのだが、赤い複眼はそのままなのだが、全体的に何処かイルカの様な形状になっている事が分かった。

 

……そして相変わらず非常に重い。

 

全く動けないという訳ではないが、かなり動きが制限されてしまうのは明らかだ。

 

「ぎああああああああああああああああ!!!!!」

 

其処へ新たに現れた、黒い体毛のホルダーが俺目掛けて、再び突進を仕掛けてくる。

 

現状動きがかなり制限されている俺には、その突進を避ける術は無く、真正面からホルダーの突進を受け止めた。

 

「ぎ、ぎあ!?」

 

しかし俺は吹き飛ばされる事は無く、代わりに聞こえてきたのは、ホルダーの困惑する声だった。

 

はっきり言って、デメリットがあるにも関わらず、このフォルムに変形したのはそれなりの意味がある。

 

確かに本来水中戦に特化したダイバーは、地上戦では著しく動きが鈍くなるのだが、それを覆す程のメリットを、一つ有していのだ。

 

それは深海の水圧でも、自由に動く事を可能としている防御力である。

 

「はあ!」

 

ホルダーの突進を受け止めた俺は、いまだに困惑し続けているホルダーに拳を何度も叩きつけていく。

 

その合間にもホルダーが、反撃に拳や蹴りを繰り出してくるが、俺は避ける事無く、攻撃に集中する。

 

このままでは分が悪いと判断したのか、俺と近距離でインファイトを続けていたホルダーが距離を取った。

 

『マスター。奴は何かを仕掛けてくる気だ』

 

その様子を見て、メカ犬が俺に注意を促す。

 

「ああ。分かってるさ」

 

俺はメカ犬の注意に頷きながら、目の前のホルダーの行動に対して、警戒を強める。

 

距離を取ったホルダーは、何処から取り出したのか、金属製と思われる、蜂の巣に良く似た形状の物体を俺に向けた。

 

それを見て何だこれはと、俺は思考を巡らせたのだが、その答えはすぐに身をもって理解する事となる。

 

「何だよあれ!?」

 

蜂の巣の形状に良く似た物体には、本物の蜂の巣と同様に、複数の穴が開いていたのだが、その穴から大量の機械で出来た蜂が飛び出してきたのだ。

 

その総数を数えるには、あまりにも多すぎる機械蜂は、大群で俺に襲い掛かって来る。

 

「くそ!?」

 

俺は何とか纏わり付いてくる機械蜂の大群を振り払おうと拳を振るうが、機械蜂の大群はそれ自体が一つの個体かと思わせる動きを見せて、まるで嘲笑うかの様に、俺の拳を回避していく。

 

「……これじゃあきりが無いな」

 

何度攻撃を加えても、全く手応えを感じない相手に対して、俺は焦燥感を覚える。

 

『マスター。打撃が効かないなら、攻撃手段を変えてみるんだわさ~』

 

この状況を打開する良いアイデアはないかと、俺が頭を悩ませていると、メカ海が俺に助言してくる。

 

「攻撃方法を……そうか!」

 

俺はメカ海の助言に、ある考えが閃き、早速それを行動に移す。

 

まず俺が最初にした事はベルトの左側にあるアタッチメントパーツのレバー部分下に、設けられているボタンを押す事だった。

 

『サーチランチャー』

 

ボタンを押す事により、音声が流れて、俺の両肩にはミサイルポットが生成され、複眼の上には、薄い青のバイザーが装着される。

 

「一度の攻撃で倒しきれないなら、全部纏めて吹き飛ばす!」

 

俺は続け様に、ベルトの左に取り付けられているアタッチメントパーツのレバーを引く。

 

『マックスチャージ』

 

ベルトから発生した光は両腕のラインを通じて肩まで伸び、両肩のサーチランチャーへと集約される。

 

それと同時に複眼を覆うバイザーには、幾つもの光る点が浮かびあがってきた。

 

『ターゲットロック。命中精度補正、全システムオールクリアだわさ~』

 

メカ海の高い声が普段とは違い、まじめに聞こえてくる。

 

最後の語尾だけは蛇足だと思うが……

 

そして俺はその声を合図に、必殺の一撃を放つ。

 

「ダイバーフルバーニング」

 

俺の声と同時に、両肩のサーチランチャーから大量の小型ミサイルが発射されて、全ての機械蜂と、ホルダーがその手に持っていた、機械蜂の発生源を捉える。

 

神社では、大量の小爆発が発生して、それにより周囲は爆煙に包まれた。

 

少しの間を得て、風に爆煙が流されると、周りには機械蜂の残骸に、その発生源を破壊されて先程の攻撃でダメージを負ったホルダーが立ち上がろうとしていた。

 

『これで邪魔な蜂は全て倒したぞマスター。後はあのホルダーだけだ!」

 

「そうだな」

 

俺はメカ犬の言葉に肯定の言葉を返しながら、この戦いに決着をつけるべく、ベルトの右側をスライドさせて、赤いボタンを押す。

 

『パワー・ダイバー』

 

スカイブルーだったサーチフォルムのボディーは、クリムゾンレッドに染め上がり、肩のサーチランチャーはその役目を終えて光に返る事で、俺を新たなフォルムへと変化させる。

 

パワー・ダイバーになった俺は続けて、ベルトの左側のアタッチメントパーツのレバー下のボタンを押した。

 

『パワーアックス』

 

青い掴みに、赤い刃を携えた、巨大な斧が生成されて、俺の右手に握られる。

 

俺は握り締めたパワーアックスを、立ち上がろうとするホルダーに突きつけながら言い放つ。

 

「悪夢はここで終わらせる」

 

そして俺は大地を蹴り、ホルダー目掛けて突進していく。

 

皮肉な事だが、本来は機動力の一番低い筈であるパワーフォルムが素体となっているダイバーが地上では一番早く動ける様だ。

 

どうやら力が他のフォルムよりも飛躍的に上がっている分、その補正が掛かっているらしい。

 

「うおりゃあああ!」

 

俺は立ち上がったばかりのホルダーに、何度もパワーアックスで斬りかかる。

 

その一撃が当たる度に、ホルダーからは盛大に火花が発生して、その巨体を何度も仰け反らせた。

 

『マスター決めるなら今だわさ~』

 

気の抜けそうな口調で、メカ海が進言する。

 

俺は何とか脱力する事だけはせずに、ベルトの左側のレバーを引く。

 

『マックスチャージ』

 

サーチ・ダイバーと同様に、再びベルトから発生した光が、右腕のラインを通じて、パワーアックスの赤い刃に集約される。

 

「こいつで決めるぜ」

 

俺はパワーアックスを両手で握りながら、上段に構えを取る。

 

最後の力を振り絞ってなのか、今まで以上の素早さで、真正面から突進を仕掛けてくるホルダーに対して、俺は上段に構えたパワーアックスを、渾身の力で振り下ろす。

 

「ダイバークラッシュ」

 

振り下ろされたパワーアックスは、突進してきたホルダーを一刀両断にすると同時に、大きな爆発を引き起こした。

 

爆発が晴れると、地面には五十台半ばと思われる、立派な髭を蓄えた男性が気絶して倒れていた。

 

「あれ?この人って何処かで見覚えがある様な……」

 

俺はホルダーの素体となっていた男性の顔を見て、思い悩んでいると、メカ犬がこのもやもや感を解消させてくれる言葉を言ってくれた。

 

『見覚えがあるのは当然だろう。彼はこの海鳴市でも有名な炭職人の平田辰樹《ひらたたつき》殿だ。彼は月刊海鳴で、炭のある生活というコーナーを持っている。マスターが見覚えがあるのはその為だろう』

 

「……ああ」

 

必要以上に説明的な解説をしてくれたメカ犬のおかげで、俺の胸に痞えていたもやもやが解消した。

 

しかしそれと同時に、もう一つの謎が浮上してくる。

 

「でも、平田さんは何で木を切り倒そうとしていたんだろうな?」

 

『うむ。予測でしかないが、ワタシに一つだけ心当たりがある』

 

「何だよそれ?」

 

『マスター。基本的に炭の原料は何だか知っているか』

 

「唐突に何だよ?そんなの木に決まって……もしかしてそういう事なのか?」

 

『恐らくな』

 

俺は改めて気絶している平田さんと、先程ホルダーに倒されそうになっていた大木を交互に見る。

 

そして一言だけ口にした。

 

「なんて罰当たりな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ!?」

 

E2は迫り来る茶色い体毛のホルダー突進を、ダメージが残り続ける身体で、何とか避け続けていた。

 

突如として現れたもう一体の黒い体毛を持つホルダーは、シードが引き受けてくれているので、何とか持ち堪えているが、やはり先程の突進によるダメージが抜け切らず、何度も荒い息を吐き出し続ける。

 

[「大丈夫!?長谷川君」]

 

通信機越しからは、恵美のE2を心配する声が聞こえてくる。

 

「はい!今のところは何とか……」

 

しかし今の所とはというだけであり、E2装着員である長谷川は、シードとは違い中身はあくまで普通の人間なのである。

 

E2自体は大丈夫だったとしても、生身の人間には体力の限界が当然ながら存在するのだ。

 

先程の不意を突かれた一撃は、その体力を長谷川から著しく奪っていた。

 

「……こうなったら、一気に決める!」

 

自身の体力が限界に近い事を自覚したE2は勝負を急ぎ、ホルダーの何度目になるか、最早数えてすらいない突進を避けると同時に、左腰からマガジンを抜き放ち、ESM01に装填する。

 

『ブレイクチャージ』

 

マガジンを装填した瞬間に、ESM01から機械的な音声が鳴り響く。

 

「は!」

 

E2は音声を聞くと、すぐにESM01の標準をホルダーに向けて引き金を引いた。

 

射出された黄色い光弾はネット状に広がりながら、ホルダーの動きを阻害する様にして覆い被さる。

 

それを確認しながら、E2はESM01を右腰のホルスターに収めた。

 

するとESM01から黄色い光が、E2の右足へと流れて行き、集約されていく。

 

「はああああああああああああ!!!!」

 

E2は残りの体力を振り絞り、必殺の回し蹴りをホルダーに向けて繰り出す。

 

しかしここで予想外の出来事が発生した。

 

何とネット状に広がり、動きを阻害していた黄色い光弾を、ホルダーが自力で引き裂いてしまったのである。

 

「な!?」

 

既に回し蹴りを繰り出したE2はそれに驚きながらも、今更攻撃を止める事も出来ずに、輝く右足をホルダーにぶつけるが、身体の自由を取り戻したホルダーは両腕で、E2が繰り出した必殺の一撃を受け止めてしまう。

 

万全の状態であったのであれば、このまま力で押し切る事が出来たかもしれない。

 

だが既に、殆どの体力を使い切っていたE2にその力は残されておらず、必殺の一撃は無残な事にホルダーに押し返される事で、不発に終わってしまった。

 

「ぐは!?」

 

そのまま地面に投げつけられたE2から、荒い呼吸と共に、咳き込む声も聞こえてくる。

 

更にこれを好機と見たホルダーが、何とか立ち上がろうとするE2に対して、鋭い爪で容赦無く追撃を仕掛けてくる。

 

鋭い爪による攻撃で、E2の装甲からは何度も火花が上がり続けた。

 

[「長谷川君!急いでこの戦闘から離脱して!これ以上攻撃を受けたら君の命が危ないわよ!」]

 

通信機からは恵美の焦りを含む声が聞こえて来た。

 

しかしE2は立ち上がり、自身の限界を悟りながらも、まだ戦意を失う事無く、目の前に佇むホルダーに戦う構えを取った。

 

「……まだです……恵美さん……まだ、引くには早過ぎます……」

 

E2はそう言いながら腕に装着したEブレスを操作し始める。

 

すると少し離れた場所からエンジン音が鳴り響き、白と黒のツートンカラーであるE2の専用バイク、マシンドレッサーがE2の目の前に走って来た。

 

[「遠隔操作でマシンドレッサーを呼んで……まさか長谷川君!?」]

 

恵美は今からE2が、何をしようとしているのか気づいたらしく、更に声を荒立てる。

 

「……多分体力的にこの一撃が……限界だと思いますんで……一気に攻めます!」

 

[「無理は止めなさい!長谷川君!!!」]

 

しかしE2は荒い息を何度も吐き出しながら、恵美の忠告を無視してEブレスの操作を続けていく。

 

そしてE2がEブレスに【E・0・3】と入力した事により、マシンドレッサーが劇的な変化を遂げる。

 

『カタパルトモード』

 

機械的な音声が流れると同時にマシンドレッサーは、人間一人を飛ばす事が出来るであろう程の大きさを誇る発射台へとその変形を果たす。

 

「……行きます!!!」

 

マシンドレッサーが自身の意図する形態に変わった事を確認したE2は、本当に最後に残った全てを力を振り絞り、真っ向からホルダーに接近戦を仕掛ける。

 

「うをおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

それを正面から迎え撃つホルダーだったが、E2の目的は別の所にあった。

 

ある程度の距離を詰めたE2は飛び上がり両足でドロップキックを繰り出す。

 

しかしそんな大技を真正面から放って、まともにダメージを与えられる程、ホルダーも甘くは無い。

 

ホルダーは突き出した両腕で、E2の渾身の一撃を押し返してしまう。

 

反動により、ホルダーもよろけるが、E2はそれ以上の勢いで後ろに吹き飛ばされてしまった。

 

だがそれもE2の狙い通りだったのである。

 

E2の本来の目的は、ホルダーの動きを一瞬でも足止めする事にあったのだ。

 

空中に投げ出されたE2は再びESM01を抜き放ち、マガジンを再装填する。

 

『ブレイクチャージ』

 

動きの止まったホルダーに対して、E2は再度ESM01の引き金を引き、黄色い光弾をホルダーに命中させた。

 

バランスを崩しよろけた隙を、ネット状の光弾で捕らえられたホルダーを他所にして、E2はカタパルトモードに変形したマシンドレッサーの上に、見事に着地した。

 

そしてESM01を、もう一度右腰のホルスターに収める事により、黄色い光がE2の右足へと集約されていく。

 

[「……こうなったら、私から言う事は一つだけよ!長谷川君!!!必ず勝ちなさい!それでこの事件が片付いたら一緒に初詣よ!!!」]

 

「はい!」

 

カタパルトに着地したE2に、通信機から恵美の応援する声が聞こえて来た。

 

E2はその声に、僅かばかりの元気を貰ったのか、体力の限界が近いとは到底思えない、覇気の篭った返事を返す。

 

『スリー・ツー・ワン・スタート』

 

マシンドレッサーから機械的な音声がカウントを開始され、スタートという言葉が聞こえると同時に、マシンドレッサーの上に乗ったE2が凄まじい勢いで、弾丸の如く射出される。

 

「うおおおおおおおりゃあああああああああああああああ!!!!!」

 

もはや一発の黄色い弾丸と化したE2の蹴りが、ホルダーを捉えて大きな爆発を引き起こした。

 

爆発した後には、二十台半ばと思われる男性が気絶して倒れていた。

 

この人の名前は平田虎紀《ひらたとらのり》。

 

炭職人である平田辰樹の実の息子であり、同時に炭作りの弟子でもある。

 

「……お、終わった」

 

ホルダーを倒した事により、緊張の糸が切れたのだろう。

 

E2はその場で膝を地面に着き、脱力してしまった。

 

[「お疲れ様……長谷川君」]

 

そんなE2に通信機越しから、聞こえるかどうかの小さな声で、恵美の労いの言葉が聞こえて来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「サルも木から落ちる」

 

「貰った!!!」

 

「甘いでアリサちゃん!私の腕前を見せたるわ!!!」

 

ホルダーが出てきて一騒動あったものの、何とか無事に初詣を終わらせた俺達は、現在何故か皆で俺の家に集まり、カルタ大会を開催していた。

 

読み手は母さんがしてくれているので、参加者は何時もの仲良し美少女四人組プラス俺である。

 

特に勝負事となった為なのか、アリサちゃんが一番にヒートアップして、それに続く様にして、はやてちゃんもテンションを上げていた。

 

ちなみにメカ犬はまだ八束神社に居る。

 

何でも折角の正月なのだから、あの場に居なかったメカ竜も呼んで、彼等独自の親睦会を兼ねた初詣を執り行うのだそうだ。

 

俺も一応は誘われたのだが、丁重にお断りさせてもらった。

 

ただでさえホルダーと戦った直後で疲れているというのに、新年早々に想像するまでも無く、精神が磨り減らされそうな行事に参加したいと思う属性は俺には無い。

 

取り敢えず神社の神主さん達や、他の参拝客に迷惑を掛けるなと、釘は刺しておいたのだが、最近メンバーに加入したメカ海辺りが、何かを仕出かしそうで、結構な不安が残るのだが、折角の正月なので、俺はあまり深く考え込まない様にして、皆とのんびりカルタ大会を続行する事にした。

 

「これはこれで面白いんやけど、何か物足りへんわ~」

 

先程アリサちゃんとの激闘の果てに、見事カードの奪取に成功したはやてちゃんが、カードを指で弾きながら、不満を口にした。

 

「そうかな?今のままでも面白いと思うけど」

 

「私もなのはちゃんと同じかな」

 

はやてちゃんの発言に対して、俺と同じスタンスでゆっくりと、このカルタ大会を楽しんでいたなのはちゃんとすずかちゃんが、今のままで良いのではないかと、意見を言う。

 

「なら、どうしたら面白くなるって言うのよ?」

 

それに対してすっかりヒートアップしているアリサちゃんは、早く勝負を再会させろと、目で訴えながら会話に参加してくる。

 

「俺も今のままで充分だと思うけどなあ」

 

何かこれ以上この話題を広げるのは、これまでの経験から判断して、何かが起こると本能的に結論を出した俺は、なのはちゃんとすずかちゃんの意見に賛同して、流れをこのまま勝負を続行させる方向に持っていこうとした。

 

「あら、それなら良い方法があるわよ」

 

本来ならば、それで全てが平和に解決する筈だった。

 

しかしこの場には、もう一つのイレギュラー。

 

俺の母さんが存在していたのである。

 

「「「「良い方法?」」」」

 

なのはちゃん達は四人揃って、母さんに視線を向ける。

 

そんな中俺は、あまり願いを聞いてはくれない神様に対して、今日くらいは賽銭を入れたのだから、小さい奇跡を起こしてくれと、必死に心の其処から拝み倒す。

 

「こういう勝負にはね。何かを賭けたりすると白熱するものなのよ」

 

一児の母とは思えない、純真な小学生達に対する賭け事を進めてくる母さん。

 

俺の中で、嫌な予感は加速度的に、その勢力を伸ばしていく。

 

「何を賭けるん?」

 

無垢な瞳で、場合によっては物凄い小学生の低学年が口走ってはいけない言葉を吐き出すはやてちゃん。

 

「そうね……それじゃあ私の権限で、勝った人は息子の純を一日好きに出来るって言うのはどうかしら?」

 

母さんが何気なく言ったその一言が、この空気を一変させた。

 

それがどうしてなのかは、俺にも分からない。

 

割と普段から俺は、なのはちゃん達の言う事を聞いてあげたりしていたので、それくらいなら良いかなと、一瞬思ったのだが、瞬時にこの場の空気を変えてしまった四人の気迫が、それは大きな間違いだという事を教えてくれた。

 

「それじゃあ、この勝負は最初からという事にして仕切り直しだね」

 

「そうだね。このまま続けると、アリサちゃんとはやてちゃんが有利過ぎるし……」

 

「良いわよ。全力を出して勝つ。私がやる事に変わり無いから」

 

「甘いで皆……私の新の力を見せたるわ……」

 

……皆笑顔で会話している。

 

だけど全員目が笑っていない。

 

そして俺は次の瞬間に、一瞬だけ向けられた視線を浴びて、確かな身の危険を感じた。

 

勝たなくてはならない……

 

俺の生存本能が、この戦いに必ず勝利しろと、訴えかけてくる。

 

そうしなければ生き残れないと、昭和の少年漫画のキャッチフレーズの如く、何度も頭の中を駆け巡る。

 

「じゃあ始めからいくわよ。皆準備は良い?」

 

母さんはこんな空気を作り出した張本人の筈なのに、一人だけ相変わらずなマイペースで、のほほんと仕切り直しとなったカルタ大会を進行させて行く。

 

その母さんの性格が恨めしいと思うと同時に、俺は心から尊敬の念を抱いた。

 

俺を含めた皆が、極度の緊張感を伴いながら、無言で頷く。

 

それを合図に母さんが一枚目の札を読み始めた事により、ある意味俺の正月最初の真剣勝負の幕が開いた。

 

今日の海鳴はめでたくも新年を向かえ、平和であるが初日から真剣勝負をする事になってしまった……

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