魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~   作:G-3X

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第23話 仮面ライダーシード・ハイパー解説タイム【前編】

年が明けて、何事も無くとまでは言えないが、どうにか無事に正月を迎える事が出来た今日この頃。

 

世間も少しずつ正月気分から抜け出して、普段の生活へと戻り始めている。

 

俺もそんな現代日本を代表する一般市民の一人であり、残り数日となった冬休みを自分なりに満喫していた。

 

今日は珍しく、店員としてでは無く、翠屋にお客の一人として来店していた俺は、普段からバイトの報酬として稼いでいるただ券を使い、優雅に紅茶とケーキのセットで静かな午後のティータイムを演出しつつ、自前で持ち込んだ一冊の雑誌を読んでいたのである。

 

「何を読んでるんですか?純の旦那」

 

俺が雑誌に目を通していると、横から俺の名前を呼ぶ男性の声が聞こえて来た。

 

それが誰なのかは、視線を向けるまでも無く理解できる。

 

何故なら俺を純の旦那なんて呼ぶ人物は、一人しかいないからだ。

 

「お疲れ様ヤス。今日のバイトは終わりなの?」

 

振り向けば予想通りの人物が、俺の目の前に居た。

 

日本人にしては長身と言えるであろう、180センチを超える短髪で鋭い眼つきが特徴的な、ワイルド系なイケメン男子。

 

まだ冬休み中という事で、シンプルな白地のトレーナーにブルーのジーンズという、私服を着ていて分かり難いかも知れないが、こう見えても彼は正真正銘の現役高校生である。

 

ヤス本人も、見た目が二十台半ばに見える事を何気に気にしているそうなので、本人には言わない様にしているが……

 

「はい。今日のバイトは朝からでしたんで、さっき上がったばかりなんですよ。そんな事よりも純の旦那が読んでいるその本は?」

 

どうやらヤスは俺が読んでいる雑誌が気になるらしく、俺の質問に答えた後に、改めて聞き直してくる。

 

「ああ、これね……」

 

俺はヤスから視線を再び雑誌に移して、苦笑いを浮かべてしまう。

 

雑誌のタイトルはこうだ。

 

【月刊海鳴別冊新年特別号・仮面ライダー編】

 

タイトル通り、表紙を飾っている写真は、俺が変身した姿であるメタルブラックの身体を持つ、仮面ライダーシードである。

 

この雑誌は、去年の月刊海鳴の人気アンケートで一位を獲得した記事が、新年に特集を組んで発刊する別冊となっているのだが、去年の記事では、恵理さんが書いた仮面ライダーの記事が、見事一位に輝き、今年の特集が仮面ライダーに選ばれたのだ。

 

正直な話、その事実を恵理さんから聞き、特集記事の取材を正式に依頼された時は、断ろうかと思ったのだが、その時一緒に話を聞いていたメカ犬が何故か乗り気で、取材は俺の意思とは無関係に進んで行った。

 

「それって月刊海鳴が毎年新年に出してる別冊号ですよね。でも確かその雑誌の発売日って後一週間は先じゃありませんでしたか?」

 

「ヤスの言う通り、まだこの雑誌は発売されて無いよ」

 

「じゃあ何で純の旦那がその雑誌を?」

 

「この雑誌は今朝早くに、俺の家に郵送されてきたんだよ」

 

ヤスもこの雑誌の購読者だったのか、発売日等にやけに精通していた。

 

これは説明しておかないと、雑誌の続きを読むのも難しいと判断した俺は、雑誌を一度テーブルの隅に置いてから、説明を開始する。

 

先程も言った通り、本来は発売日まで、後一週間はある筈の、この雑誌が俺の手元までやって来たのは、今朝の出来事だ。

 

配達のお兄さんから、荷物を受け取り、その中身がこの雑誌だという事を確認した俺は、すぐに恵理さんに連絡をしたのである。

 

そしたら恵理さんいわく、この雑誌は協力してくれた俺に対しての、御礼の一つなのだそうだ。

 

発売日を前にして、自分が参加した雑誌を手に取れるとは思ってもいなかったので、それについては素直に感謝した。

 

しかし話は、ここで終わった訳では無かったのである。

 

実は今俺が、翠屋にこの雑誌を持ち込んで、一人寂しくお茶会しているのも、原因はその話の内容に起因しているのだ。

 

それと言うのも、この郵送されてきた雑誌の他にも、直接俺に渡したいものがあるそうなので、恵理さんとここで待ち合わせをする事になったからである。

 

俺がこの雑誌を持ち込んだのは、折角届いた世間では発売前の雑誌なので、待っている間に、暇潰しに読もうと考えたからだ。

 

「へ~純の旦那も色々大変なんですね……」

 

ヤスは俺の説明を聞きながらも、何時の間にかテーブルの隅に置いていた筈の雑誌を手に取り、ページを一枚一枚流し読みしている。

 

どうやらヤスは、俺が思っている以上に、月刊海鳴を読み込んでいるらしい。

 

「お待たせ純君」

 

俺がヤスと雑誌の経緯について会話をしていると、後ろからとても聞き覚えのある女性の声がした。

 

「そんなに待ってないですから、大丈夫ですよ」

 

声のした方向に振り向きながら、俺はその声の主に言う。

 

振り向けば其処に居たのは、俺にこの雑誌を郵送した人物であり、ここで待ち合わせをしていた俺の待ち人でもある。

 

雑誌記者という職業の為か、普段から撮影用のカメラ等を持ち歩いていたりと、持ち物の多い恵理さんだが、今日はそれに加えて、背中に肩幅程ある大きさの女性が普段から使うには、シンプルデザインの黒いバッグを背負っていた。

 

「良かったわ」

 

俺の言葉を聴き、恵理さんは笑顔を浮かべながら、俺の向かいの席に腰を下ろした。

 

「どうもっす」

 

俺の隣ではヤスが、恵理さんに挨拶をしている。

 

そう言えばこの二人は、直接会った事はあっても、会話をしている所は見た事は無いな。

 

心なしかヤスの表情には、緊張の色が見えている。

 

「それで、俺に直接渡したい物って、何なんですか?」

 

ウェイターとして此方のテーブルにやって来た恭也君に、恵理さんがコーヒーを注文したのを確認した後、俺は早速ここに呼び出された用件について聞いてみた。

 

「ええとね……」

 

俺の質問に対して、恵理さんは何処か言い辛そうにヤスを見ながら、俺にも視線だけで合図を何度か送ってくる。

 

その視線の意味に気づいた俺は、朗らかに笑いながら、周りのお客さんに聞こえない様に、少し声を抑えながら答える。

 

「ああ、大丈夫ですよ。ヤスは知ってますから」

 

「そうなの?」

 

恵理さんは俺の言葉を聞き、僅かに目を見開いて、絵に描いた様な、驚きの表情を浮かべた。

 

俺が仮面ライダーだという事を秘密にしている事を、恵理さんは知っていた為か、ヤスがその事を知っているのが意外だったのだろう。

 

恵理さんのこういった表情は、滅多に見れるものでは無いので、中々に新鮮である。

 

暫くして恵理さんが注文したコーヒーを、恭也君が運んで来た後、改めて話は再開された。

 

「……それじゃあ、話しを戻すわね。私が純君に渡したかったのはこれよ」

 

恵理さんはそう言うと、コーヒーを一口飲んでから、俺に何処にでも売っている様な、何の変哲も無い透明のCDケースを差し出してくる。

 

「これは?」

 

そのCDケースを手を受け取り、良く確認してみるが、表面は何も書かれていない白い状態になっているので、それが何なのか、見た目だけでは判断がつかない。

 

「ふふん。ちょっと待っててね」

 

俺の様子を見ながら、恵理さんは得意そうに笑みを浮かべると、普段は持ち歩かないバックから見覚えのある機材を取り出してテーブルの上に置いた。

 

それは白を基調とした、小型のノートパソコンに形状が似ているが、恵理さんがディスプレイの部分を開くと、それがノートパソコンでは無い事が良く分かる。

 

「DVDプレイヤーですか?」

 

俺に代わりヤスが、恵理さんの取り出した機材の正体を言い当てた。

 

恵理さんがこのタイミングで、DVDプレイヤーを出したという事は、俺が今手に持っている物の正体は……

 

「そのDVDをこれで再生して、皆で見てみましょう」

 

「あ!やっぱりこれって、DVDだったんですか」

 

どうやらこのCDケースの中身の正体は、俺の予想通りDVDだった様だ。

 

俺は頷きながら、CDケースの中身であるDVDを取り出して、再び恵理さんに手渡すと、恵理さんはDVDプレイヤーにセットして再生ボタンを押した。

 

先程まで待機画面となっており、画面全体に青い絵が表示されていたのだが、一瞬だけ画面が暗くなると、動画が再生され始める。

 

するとアップテンポなBGMと共に、メタルブラックのボディーを持つ超人、仮面ライダーシードの姿が映し出された。

 

「このDVDってもしかして……」

 

DVDプレイヤーの画面から映し出されるシードの動画を見ながら、俺は思わず呟きを零してしまう。

 

「編集するのに苦労したのよ。このDVD」

 

先程とは逆に、俺が驚きを一段上回る、驚愕の表情を浮かべていると、向かい側に座っていた恵理さんが、良い仕事をしたと、言わんばかりの、爽やかな笑顔で語っていた。

 

「あの……これって一体どういう事なんですか!?」

 

俺は声量を抑えながらも、慌てて恵理さんに説明を要求する。

 

確かに俺は、恵理さんの取材に協力したので、雑誌が存在する事は納得出来るのだが、その際に動画を撮った記憶は一片も無いのだ。

 

なのに今流れている映像には、恵理さんの有無に関わらず、今まで戦ってきた多くのホルダーとの戦闘シーンが、ダイジェストで流れている。

 

その中には恵理さんと出会う前に戦ったホルダーとの戦いまで流れていた。

 

はっきり言って、こんな映像を恵理さんが独自に入手するのは、物理的に不可能である。

 

だとしたらこの映像集を恵理さんに提供した協力者が居る筈だ。

 

……というかこんな事が可能な奴は、あいつしか居ない。

 

「……出て来いメカ犬。お前がここに来ているって事は分かってるんだよ」

 

『ばれていたか』

 

俺がそう呟くと、何とテーブルの下から、全身銀色のフルメタルボディーを持つもう一人の首謀者であるメカ犬が、這い出てきた。

 

「朝から用事があるとか言って、随分早くに家を出たと思っていたら、こういう事だったんだな」

 

『どうだマスター。恵理殿に提供した映像データを編集してもらったのだが、中々に良い出来だろう?」

 

「良いも悪いも、どうやって撮ったんだよこんな映像……」

 

もはや突っ込む気力さえ無くなりつつある俺は、溜息を吐きながらも質問を続ける。

 

『うむ。この映像は主にチェイサーが記録していた映像データでな。去年システムを最適化する際に出たマスターの映像データで、直接マスターとワタシの正体がばれる心配の無い範囲を、此方の映像再生機器にも対応出来る状態にしておいて保存しておいたのだが、丁度タイミング良く恵理殿が、取材を申し込んできたのでな。雑誌のオマケにでもどうかと勧めてみたのだ』

 

取材を受けた時に、何か含みのある言い方をしていたメカ犬だが、今にしてその正体が判明した。

 

「何を考えてるんだよお前は……」

 

『うむ。今では海鳴市でも、仮面ライダーは有名になっただろう』

 

俺がメカ犬の説明に対して、呆れ混じりに溜息を吐き出していると、突如としてメカ犬が真面目な口調で語り出す。

 

『今まではホルダー事件の殆どが海鳴市内のみで起きていた。だがこれからはどうなると思う。シルバーライト島で戦ったホルダーは例外だとしても、最初のホルダー事件が起きてから、時間は経ち過ぎた。今は事件を起こしていなくても、暴走プログラムを所持した状態で、海鳴市外に出ている者も居るかもしれない』

 

「……確かにな」

 

『それに加えて、ワタシ達にもその正体を諮りかねる存在。オーバーとメルトが現れた』

 

メカ犬の独白に、俺だけでなく恵理さんとヤスも黙って耳を傾ける。

 

『だからワタシは考えたのだ。少しでも多くの人達に、最低限の情報を持っていてもらいたいと。もしかしたら別の土地でホルダーが現れるという可能性も、これからは考慮しなければならないかもしれない。その際に情報の有無は、その事件に巻き込まれた人物の生死を別ける事となるかもしれない』

 

其処までメカ犬が語ったところで、俺もメカ犬が何を言おうとしているのかを理解する。

 

メカ犬は出来るだけ多くの人達に知って欲しいのだ。

 

俺達仮面ライダーというよりも、ホルダーの危険性を……

 

その為に、地域の域を出ないとはいえ、メディアを利用して広めるのは確かに効率が良い。

 

特に映像として残っていれば、この地域の外を出て、より多くの人達の目に触れる機会も、確実に増える事だろう。

 

「……悪かったなメカ犬。そんな理由がある何て、俺は気付きもしなくて」

 

『いや。ワタシこそマスターに説明もせずに、話を進めてしまって悪かった。マスターは目立つのがあまり好きでは無いと思い、何より反対されると考えてしまい、独断で決定してしまったが、やはり事前に説明しておくべきだったな』

 

俺とメカ犬はお互いに、謝りながら相手の意見を尊重する事にした。

 

ただ一つだけ、言っておきたい事がある。

 

確かに俺は目立つのが好きな性格ではないが、それは俺の周囲が濃すぎる面々の為に、空気にされがちだというだけで、別に自ら望んで地味になっている訳ではない……

 

それだけは正しく理解してもらいたいと、切実に心の底から願う。

 

「……あの、ちょっと良いですか。メカ犬さんに、純の旦那」

 

予想外に突如として始まったメカ犬の語りのせいで、何処かしんみりとした空気を醸し出していたところで、今まで黙っていたヤスが、右手を上げながら、遠慮しがちに聞いてきた。

 

『どうしたのだヤス』

 

「何が聞きたいんだ?」

 

俺とメカ犬は、揃ってヤスに聞き返した。

 

「いや……俺も仮面ライダーの記事は以前から、何度も見ているんですが、折角本人が居るんですから、いっそ直接聞いてみたいと思いまして」

 

そう言うとヤスは、上げた右手をそのまま後頭部に廻して、苦笑いを浮かべつつ短髪を掻いた。

 

これはヤスなりの、気を使い方なのだろう。

 

実際この質問をされた事により、先程までの何処かしんみりとした空気が、四散していくのを肌で感じた。

 

ならばその気づかいをありがたく受け取るのが、礼儀というものだろう。

 

俺は視線を一度メカ犬に移してから、頷くのを確認して、わざとらしく一度大きな咳を吐いてから、周りに声が漏れない様に音量に気を付けつつ、大げさな説明口調で、シードについての説明を開始する事にした。

 

「それじゃあまずは、ベーシックフォルムの説明をしようかな」

 

DVDプレイヤーに流れる映像に目をやれば、丁度ベーシックフォルムのシードが、植物を模したホルダーによる鞭の連続攻撃を回避しているところだった。

 

「あ!それなら俺も知ってますよ。純の旦那とメカ犬さんが、何時も一番最初に、変わる姿ですよね?」

 

『うむ。この姿は、シードの基本形態となっているのでな。最初の変身時は必ずこの姿と決まっている』

 

「へえ~。それは私も初めて知ったわ」

 

俺とメカ犬が始めた説明に対して、恵理さんが納得した様に、頷いてみせる。

 

「このベーシックフォルムは、素手の格闘戦に向いているんだ」

 

『全フォルムでも、最も基本能力値が安定しており、様々な戦い方に適応する事が出来る』

 

再び俺が、DVDプレイヤーの映像に視線を向けると、今度は港で初めてこのベーシックフォルムの能力を使う映像が映し出されていた。

 

「それでこのフォルムの特殊能力は、ベーシックファントム」

 

『一時的ではあるが、発生させたエネルギーをシードと同等に生成してワタシが遠隔操作するのが、この能力の大きな特徴だな』

 

「まあ、簡単に言えば、限定的な分身って言えるかも」

 

俺はそう言ってメカ犬の説明を締め括る。

 

「そう言えば、純君って何時も最後は何か白い光を身体に纏ってるけど、あれって所謂必殺技なのよね?」

 

続いて恵理さんが、確認する様に会話に入ってきた。

 

流れている映像にも、丁度シードがライダーキックを放つ場面が映し出されているので、先程の言葉が出たのだろう。

 

「あれは幾つかの種類があるけど、ベーシックフォルムの時は、ポイントチャージって言うんだ」

 

『エネルギーを集約させるのと同時に、ホルダーとなってしまった人間と暴走プログラムを、強制的に分離させる効果を持っているぞ』

 

「足に集めればライダーキック。腕に集めたら、ライダーパンチって所かな」

 

「確か記事の情報通りなら、手足に集めて連続攻撃をするライダーラッシュなんて技もあるんですよね?」

 

説明の最後に、ヤスが少年の様に、瞳を輝かせながら、聞いて来る。

 

その瞳は何故か、前世で俺が初めて仮面ライダーを知った時の思い出を呼び起こした。

 

俺もきっと初めて仮面ライダーを知った時は、あんな瞳でライダーが活躍するTVの映像を見ていたに違いない。

 

「さてと、ベーシックフォルムはこれぐらいにしておいて次は……」

 

次に視線を画面に向けると、ベーシックフォルムの映像が終わったのか、今度はシードのボディーがライトグリーンに変わり、二体の猿型ホルダーと戦っている場面が映し出されている。

 

「これは確か、スカイモンキーの事件を追っていた時の映像ね」

 

恵理さんが少し懐かしそうに言う。

 

そう言われてみれば、その通りだ。

 

思えばこの事件が、恵理さんに正体を知られる切欠になった訳で、今回の事も含めて、無茶な頼み事の始まりだったのかもしれない……

 

「このフォルムはスピードフォルム。その名前の通り、シードの素早さを飛躍的に上昇させてくれるんだ」

 

『そして特殊能力は、専用武器のスピードロッドだ。ベーシックに比べて、格闘戦に不向きな部分を補ってくれる上に、多数との近接戦闘に優れているぞ』

 

「必殺技は周囲に風の刃を撃ち出すウインドテイスティングに、一点集中の突きを繰り出すダッシュ・エア・プッシュかな」

 

其処まで俺とメカ犬が説明すると、今度は続け様にスカイブルーのボディーと、クリムゾンレッドのシードの映像が続け様に、画面に流れる。

 

こうなったら一気に説明してしまおう。

 

「それでスカイブルーのシードが、サーチフォルムに、クリムゾンレッドの方がパワーフォルム」

 

『どちらもスピードフォルムと同様に、局地戦を想定したフォルムだ』

 

「サーチフォルムは他のフォルムに比べて、身体能力が下がるけど、代わりに視力や聴覚なんかの感覚を最大限に上げてくれる」

 

『それを言えばパワーフォルムは、サーチフォルムの逆の能力特化と言えるだろうな。パワーフォルム最大の特徴は大幅な戦闘能力の強化にあるな。他のフォルムよりも機動力が大幅に下がってしまうが、純粋な戦闘力だけで言えば、間違い無くこのフォルムが一番だな』

 

「専用武器は其々、サーチバレットにパワーブレード。名前の通り遠距離の銃に、接近用の剣。メカ犬もさっき言っていたけど、この二つのフォルムは戦い方まで真逆に位置してるって言えると思う」

 

ここまで一気に説明したところで、画面の映像が二分割されて、サーチとパワー其々の必殺技が同時に映し出される。

 

恵理さんがこの映像を編集したって言っていたけど、随分凝った編集をしたものだ……

 

「あら、仮面ライダーって、黒と緑以外にも色々とあるんですね?」

 

ここまで説明し終えて、次は必殺技について解説しようとしたところで、この場に新たな介入者が現れた。

 

流れる様な長い黒髪が、生粋の大和撫子を彷彿とさせる、和風美人という言葉を現実に体現した、文句無しの美女が其処に居たのである。

 

「瞳さん?」

 

ただしその大和撫子は、普段からメイド服を着用しているが……

 

俺の反応を見ながら、先程まで俺とメカ犬の説明を聞いていた恵理さんとヤスが、突如として現れたメイドさんである瞳さんを探る様にしながら、会釈した。

 

そう言えばこの二人と瞳さんが直接顔を会わせるのは、これが初めてかもしれない。

 

寧ろ三人とも頻繁にこの翠屋に訪れる上、俺が仮面ライダーだという事を知っている数少ない人間である筈なのに、今まで殆ど面識が無かったという事が、不思議に思えてくる。

 

「良かったら瞳さんも、聞いて行きますか?この場に居る二人も、瞳さんと同じですから、問題無いですよ」

 

ここまで来れば、説明する人間の一人や二人増えたところで関係無いと考えた俺は、時間が空いていればという一言を付け加えた上で、瞳さんに聞いてみた。

 

俺の言った言葉の意味を察した恵理さんとヤスは、瞳さんへの警戒心を緩める。

 

「じゃあ……純君が良いなら、私も聞いていこうかな?」

 

瞳さんはそう言って微笑むと、空いていた恵理さんの隣の席に腰を下ろした。

 

俺は瞳さんが話しを聞く準備を整え終えたところで、解説の続きを再開する。

 

「え~と、それでサーチフォルムの必殺技が、連続射撃を一点集中させて、相手に撃ち出すガトリングブーストに、空中から範囲攻撃をするシューティングサークル」

 

『そしてパワーフォルムの必殺技は、相手に強力な衝撃波を当てるブレイクインパクトに、全ての攻撃を防御した上で繰り出すカウンタースティングだな』

 

ここまで説明したところで、シードについて大体の解説を終えた俺は、ここまで話しを聞いてくれた三人に視線を向けた。

 

「あれ、このバイクさんも、純君達のお仲間さん何ですよね?」

 

瞳さんがそう言いながら、DVDプレイヤーの画面を指差す。

 

その画像には、風を受けながら疾走する黒いライダーバイク、チェイサーさんの姿が映し出されていた。

 

……と言うか、今までの映像データってチェイサーさんが提供してくれた筈なのに、何で本人の映像が映っているんだ?

 

俺が不思議に思い、眉間に皺を寄せていると、メカ犬が俺の様子に気付いたらしく、解説を開始した。

 

『その映像についてなのだが、チェイサーも映りたいと言っていたのでな。メカ竜やワタシのデータの一部も提供させて貰ったぞ』

 

「……ああ。そうなんだ」

 

俺はもう説明だけで今日は疲れた。

 

悪いと思うがこれ以上の、細かい部分の突っ込みは、今日はもう遠慮させて頂きたい。

 

『チェイサーはワタシ事、コンタクトフュージョンのサポートシステムの一部だ。主に地上の高速移動とホバーチェイサーという飛行能力を有しているぞ』

 

疲れきった俺の代わりに、メカ犬が解説の続きをしてくれた。

 

今度こそこれで大体の説明を終えたと、一息吐こうとしたが、何かを忘れている様な気がしてならない。

 

『ちょっと待ってください!』

 

『サポートシステムと言えば、アタイ等を忘れてもらっちゃ困るんだわさ~』

 

……最近は急なエンカウント行為が流行っているとでもいうのだろうか?

 

残念な事だが非常に聞き覚えのある二匹?の声が、俺の耳の鼓膜を容赦無く振るわせたのだ。

 

気が向かないが、このまま無視をすれば、更に困った事態に発展する可能性があるかもしれない。

 

本意では無いが、ゆっくりと視線を声が聞こえて来た足元に向けると、予想通り手乗りサイズなメタルレッドの恐竜と、メタルブルーのイルカの姿が見えた。

 

「……何でお前等が居るんだよ?」

 

この状況で更に俺の疲労感を増大させる存在……

 

メカ竜とメカ海がその姿を現したのである。

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