魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~   作:G-3X

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第24話 真冬の空はミステリー?【後編】

「ほ、本当に人が浮いてるん!?」

 

「……凄い」

 

はやてちゃんとすずかちゃんが、上空に浮かぶ人間を見て驚愕している。

 

それは俺も同じだが、何よりもまず確かめなければいけない事があった。

 

「メカ犬。あれが暴走プログラムを使ってるかどうか分かるか?」

 

『可能性は高いが、こう距離が離れていては、分析する事が出来ないな』

 

俺の質問に対して、メカ犬が返してきた答えは、酷く曖昧なものだった。

 

「どちらにしても、このまま逃がす訳には行かないよな……」

 

そう言いながら俺は、未だに上空に浮遊している謎の人物を見て驚き続けている、はやてちゃんとすずかちゃんに視線を移す。

 

続いて上空に視線を向けると、空中に浮き続ける謎の人物は、緩やかにではあるが、移動を始めている。

 

このまま後を追いたいところではあるが、今それを行動に移せば、間違い無く二人も着いて来るだろう。

 

相手の正体に確証が持てない今、危険かもしれない場所に、あの二人を連れて行く訳にはいかない。

 

「ここは任せてください。純の旦那。俺が二人の注意を引き付けときますんで、二人は隙を見てあれを追いかけてください」

 

これからどう動くべきか、俺とメカ犬が話し合っていると、ヤスがそう言って、二人の下へと走り出す。

 

『マスター。ここはヤスの言う通り、ワタシ達は上空を浮遊している奴を追跡しよう』

 

「ああ」

 

俺とメカ犬は、ヤスがはやてちゃんとすずかちゃんの注意を引いている瞬間を見計らい、一気にその場から駆け出した。

 

上空を見上げながら、追跡を続けると、暫くして人気の無い空き地へと辿り着く。

 

「確かこの辺りに降りてきたと思ったんだけど……」

 

『うむ。ワタシの目にもそう見えた。探すぞマスター』

 

メカ犬も俺の言葉に頷きながら、辺りを見渡す。

 

空き地と一言に言っても、河川敷沿いに存在している為か、その範囲は広い上に、近々何かの工事が始まるのか、ドラム缶等の遮蔽物もあるので、発見は容易ではない。

 

「うわああああああああああああ!?」

 

其処に聞こえて来たのは、男性の悲鳴だった。

 

『マスター!』

 

「分かってる!この先だな!」

 

俺はメカ犬と共に、悲鳴の聞こえた場所へと走り出す。

 

悲鳴はさほど離れた位置から聞こえた訳ではなく、俺達の視界を遮っていた目の前のブルーシートを横切ると、すぐに目的の場所へと辿り着く。

 

「……お前は!?」

 

『何故ここに居る!?』

 

そして俺達は、その場に居る筈の無い人物が居た事で、驚愕の声を上げる。

 

「何だ……君達も来てたんだ?」

 

目の前に居たその人物は、先程まで空中浮遊していた見知らぬ男性ともう一人。

 

藍色の怪人オーバーが居た。

 

「すぐにその人から離れろオーバー!!!」

 

俺はその光景を見た瞬間に叫ぶ。

 

それもそうだろう。

 

悲鳴を上げた男性は、オーバーの姿を見た事により、その顔を恐怖に慄かせて、尻餅をついている。

 

恐らくこの人が、未確認飛行生物の正体に違いない。

 

その証拠に男性は、写真で見たのと同じ格好をしていた。

 

更にこの場にオーバーが居るという事は……

 

「少し待っててくれるかな?すぐに終わるからさ」

 

俺の叫びに対して、オーバーはまるで友達を少し待たせるかの様な、軽い口調で話すと、俺達が止める間も無く、右手を、いまだ尻餅をついて動けないでいる男性の頭に向けた。

 

「う、うわあああああああああ!?」

 

それと同時に男性は、何故か苦しみ始める。

 

『一体何をした!?』

 

突然苦しみ出した男性を見て、メカ犬も叫ぶ。

 

「ふふふ。別に対した事じゃないよ。僕は少しだけ彼の夢を後押ししてあげただけなんだからさ」

 

メカ犬の叫びとは逆に、オーバーは何処までも軽い感じで言葉を紡ぐ。

 

出来ればすぐにでも苦しみ続ける男性を助けたいが、オーバーの現在居る距離が、男性に近すぎる為、どう動くべきか、内心で焦りを覚えるが、その現状は次の瞬間には、杞憂のものとなる。

 

「あああああああああああああああ!!!!!!」

 

苦しみもがいていた男性が、一際大きな悲鳴を上げるのと同時に、全身が緑色の光に包まれたのだ。

 

『キンキュウケイホウキンキュウケイホウキンキュウケイホウ……』

 

そして時を同じくして鳴り響く、タッチノートの警告音。

 

次々と重なる要素に、俺は一つの結論に辿り着き、静かに呟きを零す。

 

「……メカ犬の予想は正しかったって事か」

 

全身を包んでいた緑色の光が飛散すると、男性の姿は、人とは明らかに違う、異形の姿へと劇的な変化を果たす。

 

その姿を一言で表すとするならば、昆虫のトンボに酷似していた。

 

まるでヘルメットの様に顔の半分以上を覆う白い複眼と、背中に生えた四枚の透明な羽。

 

全身を覆う緑色の甲殻は薄っすらと鈍い輝きを放っている。

 

今俺の目の前で男性が変化した、その異形の姿は、間違い無くホルダーだ。

 

メカ犬の話しでは、まだホルダー化はしていない可能性が高いという事だったが、実際は目の前でホルダーへと変化を果たした。

 

メカ犬の予想が最初から外れていたという可能性もあるが、恐らく原因は目の前にもう一人いる、藍色の異形の存在が、大きく関わっているに違いない。

 

「僕は少しだけ、彼の夢を後押ししただけさ。」

 

ホルダーを眺めながら、オーバーは愉快そうに笑い声を上げる。

 

その言葉から、オーバーがあの男性に何かをしたという事は理解出来るが、一体何をしたというのだろうか……

 

『先程オーバーから、特殊なエネルギーが発せられているのを感知した。推測の域を出ないが、そのエネルギーが彼の持っていた暴走プログラムに反応して、ホルダー化を促進したのかもしれん』

 

「ホルダー化の促進?」

 

『うむ』

 

俺が思わず鸚鵡返しに聞き返した言葉に、メカ犬が頷く。

 

「良いのかな?お喋り何てしてる暇は無いと思うけど?」

 

俺とメカ犬の会話に、オーバーが割って入るのとほぼ同時に、一陣の風が吹き荒れる。

 

その風の発生源は、ホルダーだった。

 

ホルダーの全身から、まるで暴風の様な、強い風が発生して、周囲の大気を蹂躙する。

 

空中を浮遊していたという事から、幾つかの予測はしていたが、この風がホルダーの能力という事だろうか?

 

『行くぞマスター!』

 

「ああ!」

 

俺はホルダーの動きに警戒しながらも、メカ犬の言葉に返事を返し、タッチノートを取り出した。

 

もしかしたら今回は戦いを避ける事が出来たかも知れないと考えていたが、現実はそう甘くは無いらしい。

 

その事実を、俺の肌にホルダーが巻き起こす風と、同時に触れる、強烈な殺気が物語っている。

 

男性がホルダー化した後の、この態度の変わりようを見ると、オーバーが他にも何かしたのではないかと、考えてしまう。

 

そうで無ければ、先程の男性との態度のあまりの違いに、説明が着かない。

 

『右に飛べ!マスター!』

 

それは一瞬の出来事だった。

 

俺がタッチノートのボタンを押そうとしたその時、ホルダーの右腕が僅かに動き、それとほぼ同時にメカ犬がすぐ横で叫び声を上げる。

 

その叫びを聞いた俺は、考えるよりも先に、その場から言われた通り、右側に飛び退く。

 

飛び退いた直後、見えない何かが、先程まで俺の居た地点の地面を容赦無く抉った。

 

後一秒でも反応が遅れていれば、俺は間違い無く、その何かに巻き込まれて、ただでは済まなかっただろう。

 

「危なかった……」

 

一筋の冷や汗を額から流しながら呟いた俺は、心の中でメカ犬に感謝しつつ、次の攻撃が来る前に、急いでタッチノートのボタンを押した。

 

『バックルモード』

 

タッチノートから流れる音声と同時に、メカ犬がベルトに変形して、俺の腹部に自動的に巻きつく。

 

それを確認してから俺はタッチノートを閉じて、力ある言葉を口にする。

 

「変身」

 

音声キーワードを入力して、俺は素早くタッチノートを、ベルトの溝に差し込む。

 

『アップロード』

 

ベルトにタッチノートを差し込んだ事により、ベルトから白銀の光が発生して、俺の全身を包み込み、その姿を一人の戦士へと変える。

 

俺の全身を包む白銀の光が飛散すると、其処に一人の仮面ライダーが存在していた。

 

メタルブラックのボディーに、ベルトを中心に四肢へと伸びる、銀色のライン。

 

それと同色の額に輝くV字型の角飾りに、赤く大きな複眼が大きな存在感を放っている。

 

『あのホルダーの能力は、どうやら風を操る様だ。目視出来ない攻撃に注意した方が良いぞマスター』

 

シードへの変身を完了した俺に、ベルト状態となったメカ犬が助言を呈す。

 

「分かった!」

 

俺はメカ犬に、そう短く返事を返すと、オーバーとホルダー目掛けて駆け出した。

 

最初に俺が狙うのはホルダーだ。

 

オーバーの戦い方は、基本的に剣を振るう接近戦。

 

つまり距離を取れば、それでけで攻撃を受けずに済む。

 

それに対して、ホルダーは不可視の風を操るという遠距離攻撃を仕掛けてくる。

 

オーバーの援護に回られて、遠近同時に攻撃を仕掛けられたら、かなり厄介な事になるだろう。

 

だからまずは、ホルダーを倒す!

 

「させないよ!」

 

しかしオーバーもその考えを読んでいたのか、右手に剣を生成して、俺とホルダーの直線上に立ち塞がる。

 

だが俺だって、その位は想定済みだ!

 

「メカ犬!」

 

『うむ!』

 

俺とメカ犬は互いに声を掛け合う。

 

直接言葉にしなくても、お互いに何をするべきなのか、その答えが自然と導き出される。

 

俺はそのまま減速する事も無く、全速力で駆け続けながら、ベルトの右側をスライドさせて、黄色いボタンを押した。

 

『ベーシックファントム』

 

ベルトから流れる音声と共に、発生する大量の光が、メカ犬の遠隔操作で動く分身体となる。

 

『はあああああああ!』

 

そして分身体の操作を開始したメカ犬は、俺の前に躍り出て、立ち塞がるオーバーに、不意打ち気味のミドルキックをお見舞いした。

 

「うわ!?」

 

流石にこれにはオーバーも驚いたのか、剣の腹で防御して直撃こそは防ぐが、俺とホルダーを結ぶ直線状から退ける事に成功した。

 

『ここはワタシに任せて、先に行けマスター!』

 

分身体を操るメカ犬は、更にオーバーに追撃を仕掛けながら、高らかに叫ぶ。

 

「頼むぞメカ犬!」

 

それに対して俺は、振り向く事無く、メカ犬にオーバーの相手を任せて、ホルダーへと肉薄する。

 

しかしホルダーも、ただ其処に立っている訳では無く、当然の事ながら迎撃を開始してきた。

 

先程と同じ様に、ホルダーが腕を振り下ろすと、再び不可視の風が轟音と共に、俺目掛けて放たれる。

 

「喰らうか!!!」

 

だが俺も来ると分かっている敵の攻撃を、態々受けるほど優しく無い。

 

ホルダーが腕を振り下ろすのを見計らい、俺は大きく跳躍した。

 

その場から俺が飛び上がった事により、ホルダーが放った風は、目標を失い俺の足元を虚しく通り過ぎる。

 

「たあああああ!!!」

 

そして俺が咄嗟に取った行動に驚くホルダーに、俺は容赦無く踵落しを、ホルダーの脳天に命中させた。

 

頭部にダメージを負い、後ろへ下がったホルダーを逃すまいと、俺は更に接近戦で畳み掛けていく。

 

距離を取られれば、目に見えない厄介な攻撃がやって来る。

 

だからこのホルダーに対しては、常に接近戦で戦う事で、能力を発動させる時間を与えない様に、注意しなければならない。

 

「はあ!!!」

 

俺は気合と共に拳をホルダーの腹部に叩き込み、その動きを封じると、俺は今がチャンスだと判断して、すぐさまベルトからタッチノートを引き抜き、全体図を表示させて、右拳の部分をタッチしてから、再びタッチノートをベルトに差し込んだ。

 

『ポイントチャージ』

 

ベルトから発生した光が、右腕のラインを通じて、右拳に集約する。

 

「こいつで決めるぜ」

 

俺は光が集約された右拳を振り被り、重心を低く身構えて、一気に駆け出した。

 

「ライダーパンチ」

 

右拳を振り抜き、必殺の一撃が、ホルダーを捉えようとしたその時、突如として横から大きな影が、俺とホルダーの間に割り込んで来た。

 

その影の正体は、オーバーと良く似た色合いの身体を持つ量産型のホルダーモドキである。

 

「くっ!?」

 

既に振り抜いた拳の軌道を変える事も叶わず、俺は右拳をそのままホルダーモドキに叩き込む。

 

その一撃をまともに喰らい爆発するホルダーモドキに、俺は脇目も振らず、再び拳を振り被って本来の目的だったホルダーに叩き込もうとするが、それを実現する事は出来なかった。

 

ホルダーモドキが間に割り込む事で、一瞬だが致命的な時間を、ホルダーに与えてしまったのである。

 

既に能力を発動させていたホルダーは、俺の拳が届くよりも早く、風の衝撃波を俺の身体に命中させて吹き飛ばした。

 

「うわ!?」

 

カウンター気味にその一撃を受けた俺は、予想以上に後ろへと飛ばされてしまう。

 

何とか受身を取りながら、地面に落ちた後に、間を置かずすぐさま立ち上がるが、ホルダーの追撃は止む事を知らない。

 

俺が吹き飛ばされている間に、上空へと飛び上がったホルダーが、連続で風の衝撃波を、俺目掛けて放ち続ける。

 

「危ない!?」

 

目に見えないその連続攻撃を、俺は感じ取れる風の流れと、勘だけを頼りに、何とか避けるが、何時直撃を受けたとしても、おかしくは無いだろう。

 

そして俺が何度目なのか、もはや数えてすらいないホルダーの衝撃波を避けた直後、数体のホルダーモドキが、俺の行く手を阻む。

 

しかしその間にも、ホルダーは次の攻撃を放つ体勢を整えている。

 

どうやらこのホルダーモドキ達共々、俺を狙い撃つつもりの様だ。

 

『マスター!』

 

このままでは不味いと、俺が現在の状況を理解したその時、メカ犬の声が聞こえてくると同時に、俺の前に立ち塞がっていたホルダーモドキの内の一体を、分身体が殴り飛ばした。

 

それにより出来た隙間目掛けて俺は、全力で飛び込んだ。

 

ほぼそれと時を同じくして、背中に強烈な風を感じた。

 

「この!!!」

 

俺は後ろで巻き起こった風により、空中でバランスを崩しながらも、身体を反転させて、何とか着地に成功する。

 

すると其処には小さなクレーターが出来上がっていた。

 

『大丈夫かマスター?』

 

クレーターを目にしてすぐに、ベルトからメカ犬の声が聞こえて来た。

 

どうやら先程の攻撃で、分身体の効果が終わってしまったらしい。

 

「ああ、助かった。流石に今のをまともに受けてたら、危なかったからな」

 

『すまないなマスター。オーバーに逃げられた上に、余計な置き土産まで残されてしまった』

 

周りを見渡せば、後五体程のホルダーモドキが、この空き地居るのが分かった。

 

「気にするなよ。あいつの逃げ足が速いのは、今に始まった事じゃないだろ?」

 

別にメカ犬の失態ではないので、俺は気にするなと、フォローを入れておく。

 

「それより今は、この状況をどうするかだろ?」

 

『……うむ。ここはチェイサーを呼んで、空中戦に持ち込むべきだとワタシは思うが、一つ問題があるな』

 

「確かにな……」

 

俺はメカ犬が言おうとしている事に気付き、空を飛ぶホルダーと周囲のホルダーモドキ達に気を配りつつ、思考を巡らし始める。

 

ホルダーモドキ達の相手はもう一度分身体を生成して、メカ犬にでも任せておけば良いが、一番のネックはやはりあの見えない風の衝撃波になるだろう。

 

何の対策もせずに、チェイサーさんを呼んで、空中戦を仕掛けたとしても、恰好の的となってしまうのは、明らかだ。

 

地上とは違い、上下左右360度何処から来るのか分からない攻撃を避けて、此方の攻撃を当てるのは至難の業である。

 

『見えないとしても、せめて何処から攻撃が来るのか分かっていれば対策の仕様があるんだが……』

 

「何処から来るのか分かれば……そうか!」

 

メカ犬の呟きを聞き、俺はこの状況を打開する一つのアイデアを思いつく。

 

『マスター?』

 

「俺に作戦がある。協力してくれよ相棒」

 

俺はメカ犬にそう言ってから、ベルトのタッチノートを引き抜き、素早く操作を開始していく。

 

『ホバーチェイサー』

 

『ガイア・コール』

 

タッチノートから音声が流れると、すぐに頼れる二人の増援が駆けつけて来た。

 

『お待たせマスター』

 

『やっとボクの出番なんですね先輩』

 

ホバーモードで空中から飛来したチェイサーさんに、その上のシートにちゃっかり乗ってきたメカ竜が、俺とメカ犬に声を掛けてくる。

 

「それじゃあ行くぞ!メカ犬、メカ竜」

 

俺はまず二人に確認を取ってから、ベルトの右側をスライドさせて、黄色いボタンを押した。

 

『ベーシックファントム』

 

そしてベルトから発生した大量の光が、再び分身体を生成する。

 

「まだまだ!」

 

更に俺はベルトの右側の青いボタンを押す。

 

『サーチフォルム』

 

そして俺のメタルブラックのボディーは、音声が流れると同時に、スカイブルーへと染め上がる。

 

「そんでもってラスト!」

 

サーチフォルムへのフォルムチェンジを完了させた俺は、タッチノートを操作する。

 

『スタンディングモード』

 

スタンディングモードを発動させた事により、メカ竜がチェイサーさんから飛び降りながら、アタッチメントパーツへの変形を果たし、俺の手に収まった。

 

メカ竜が変形したアタッチメントパーツを、握りながら俺はタッチノートを、ベルトに差込そのままベルトの左側をスライドさせて、アタッチメントパーツを其処に差し込んだ。

 

『サーチ・ガイア』

 

アタッチメントパーツを差し込んだ直後、音声が流れると共に、俺の周囲にメタルレッドの装甲が展開されて、全身に装着されていく。

 

「それじゃあ、ホルダーモドキ達の相手は頼んだぞメカ犬」

 

『うむ。任された』

 

サーチガイアへの強化変身を完了させた俺が、そうメカ犬に言うと、分身体の首を縦に一度振って、ホルダーモドキ達の居る方向に駆け出して行った。

 

それを見送った俺は、続いてホバーモードで空中に待機しているチェイサーさんに飛び乗った。

 

「俺達も行きましょう。チェイサーさん」

 

『OKよん!』

 

俺の声に快く答えてくれたチェイサーさんは、ホルダー目掛けて飛び上がる。

 

しかしそれをホルダーが、見逃す事も無く、不可視の攻撃、風の衝撃波を俺とチェイサーさんに向けて放つ。

 

その攻撃は確かに見えない……だけど!

 

「チェイサーさん!右に回避!!!」

 

『了解よん!!!』

 

チェイサーさんは俺の指示に従って、右に急速旋回する。

 

それを追う様にして、ホルダーが俺達の背後を取り、再び腕を振り下ろす。

 

「今度は左へ!!!その後すぐに上昇してください!!!」

 

俺を乗せたチェイサーさんは、縦横無尽の動きで、次々とホルダーの攻撃を回避していく。

 

ここで何故見えない筈の攻撃を、俺が予測出来たのか、説明しておこうと思う。

 

確かに風は目に見えないが、物理的に存在している事は紛れも無い事実だ。

 

だから例えそれ自体が、見えなかったとしても、周囲の物や、風自体が作り出す様々な音という様に、風は多くの現象を引き起こす。

 

それを見越してのサーチフォルムだ。

 

サーチフォルムは、全ての感覚を飛躍的に高めてくれる。

 

俺はその能力をフル活用する事で、ホルダーの攻撃全てを予測したのだ。

 

そしてサーチフォルムになって、気付いた事がもう一つ……

 

「悪夢はここで終わらせる!」

 

俺はホルダーの攻撃を避け切り、上空へと急上昇するチェイサーさんの上で叫びながら、ベルトの両サイドのボタンを押す。

 

『サーチバレット』

 

『ガイアブレイガン』

 

ベルトから光が放たれて俺の両手に生成された武器を、俺は更に一つに重ねた。

 

『ジョイントアップ・ガイアバレット』

 

二つの武器を組み合わせる事で、新たに強力な武器が誕生する。

 

「あのホルダーが纏う風は、自分の頭上に作り出す事は出来ない!!!」

 

サーチフォルムとなる事で、気付いた事がそれだ。

 

それはまるで台風の目の様に、其処だけが、風の通り道になっていた。

 

『行きましょうマスター!!!』

 

メカ竜の掛け声を合図に、俺はチェイサーさんから飛び出して、左腰のレバーを引く。

 

『マックスチャージ』

 

ベルトから発生する眩い光が、腕のラインを通じて、ガイアバレットの銃身へと集約される。

 

「こいつで決めるぜ」

 

俺は狙いをホルダーの頭上一点にのみ絞込み、引き金を引いた。

 

「ガイアシューター」

 

限界まで収束された光線が、見事にホルダーを貫き、爆発を引き起こした。

 

「チェイサーさん!」

 

『任せてマスター!!!』

 

俺がチェイサーさんを呼ぶと即座に飛んできて俺を拾って、そのままホルダーの爆発地点に飛び込んだ。

 

その煙から出てくると、俺の手の中には、ホルダーの素体となっていた一人の男性が気絶している。

 

怪我をさせない様に、慎重に地面に降下していくと、分身体を操っているメカ犬が、大きく手を振っていた。

 

どうやら向こうも、無事に片付いたらしい。

 

こうしてこの日から、未確認飛行生物の目撃が噂される事は無くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふふん。やっぱり私の勘は当たっていたみたいね!」

 

翠屋のカウンター席で、恵理さんが胸を張りながら主張した。

 

今回の未確認飛行生物についてのあらましを説明したら、この態度である。

 

「……そうですね」

 

心の中ではただの偶然だろと、思うが俺は苦笑いを浮かべつつ、社交辞令を述べるだけに止めておく。

 

どうせこの人に何を言った所で、聞く耳なんて持っていないのだから、まともに対応するだけ体力の無駄という事は分かりきっている。

 

今は少し忙しいので、あまり長く相手をしてあげられないというのもあるが……

 

「保奈美さん……」

 

それというのも、本日同じシフトで働いているヤスがずっと心ここにあらず、所謂上の空とでも言うべき状態になってしまっているからだ。

 

河川敷で会った時は、まだ軽い症状だったのだが、日が経つにつれて、何処かのベタな恋愛少女漫画みたいな感じになってしまったのだ。

 

ヤスの話しによると、これが初恋なのだそうだが、これは思いのほか重症である……

 

「恋だね」

 

「恋やな」

 

そんなヤスを眺めながら、事情を知っているすずかちゃんと、はやてちゃんは、テーブルで紅茶を飲みながら乙女の顔をしていた……

 

「はあ……」

 

俺はそんなヤス達の様子を見て、溜息を一つ吐いてから、現在戦力外となっている同僚の分まで、仕事に精を出す事にした。

 

本日の海鳴は、まだまだ寒い風が肌を刺激するが、俺の周りには少し速い恋の春が到来している様で、取り敢えずは平和である

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