魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~   作:G-3X

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第五話 読書少女と森の妖精さん【前編】

昔々あるところに一人の女の子がいました。

 

女の子は人里を離れた山の中で家族と共に平和に暮らしていました。

 

家族はとても平和に暮らしており、女の子も今の生活に大きな不満はありませんでした。

 

だけど一つだけ、女の子にも悩みがありました。

 

女の子には暖かな家族はいましたが友達が居なかったのです。

 

人里を離れた山の中に住んでいるため家族以外に人と接する機会も殆ど無く、女の子の唯一の遊び相手は女の子の住んでいる山の森だけでした。

 

その日も女の子は森で一人遊んでいましたが、女の子はこの日不思議な出会いをします。

 

森の中で女の子が遊んでいると、綺麗な歌声が聞こえてきたのです。

 

女の子は思いました。

 

なんて素敵な歌なんだろう。

 

女の子は歌声の聞こえる場所に向かいました。

 

歩き続けて暫くすると、女の子は歌声の主を見つけました。

 

その容姿はとても可憐で、黄色のローブの様な物を纏っておりその背中からは四枚の透き通った羽があったのです。

 

歌声の主は人では無かったのです。

 

女の子は歌声の主の前に出て行き言いました。

 

あなたは森の妖精さんですか?

 

女の子はこの日、生まれて初めての友達と出会ったのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…面白いお話だね、純君」

 

「うん、そうだね」

 

俺はすずかちゃんにそう返事を返すと両腕をゆっくりと上に持って行き大きく伸びをした。

 

流石に長時間本を読んでいると身体が硬くなってしまい、背中の辺りがバキバキと軽快な音を鳴らした。

 

俺が今居る場所は海鳴市の図書館だ。

 

今日は俺とすずかちゃんの二人でのんびりと読書を楽しんでいたのである。

 

普段みんなで遊ぶ時は余りこういった施設には来ないのだが、俺とすずかちゃんだけの場合は当たり前の様に図書館で読書をするという選択肢が追加される。

 

元々今日は、なのはちゃんとアリサちゃんも一緒に遊ぶ約束をしていたのだが、二人とも家の都合で来れなくなってしまい俺とすずかちゃんの二人だけになってしまったのだ。

 

それで如何して図書館なんだと疑問に思うかもしれないが、それなりの理由も存在する。

 

すずかちゃんは見た目おっとり系な割に怪力美少女でもあるが、見た目通りの趣味も持ち合わせていたりするのだ。

 

その趣味の一つが読書だ。

 

小学一年生にしては、すずかちゃんはかなりの読書家で、何処でも常に一冊は本を持ち歩いている程に本を嗜む。

 

そして俺はそんな読書大好きなすずかちゃんに、同類の本好き読書少年と認識されている。

 

なぜそんな認定を下されたかというと、これは俺の転生してから行った行動の一つに起因する。

 

俺は年齢的に最低限の文字を理解できてもおかしくない時期になってから兎に角この世界の情報を集めまくった。

 

勿論その時に本も情報の一つとして多量に読み漁っていたのだ。

 

そしてこの時は同時進行でなのはちゃんの面倒も見ていたわけだが、なのはちゃんから見たら俺はただ単に本を読むのが好きな少年に映っていたのだろう。

 

つまりなのはちゃん経由ですずかちゃんは俺の事を自分と同じ読書仲間だと思った訳だ。

 

それを知ってからはすずかちゃんは良く、俺と一緒に本を読もうと誘うようになってきた。

 

幾ら頭が良いとは言っても今は小学校に入学してそんなに時間も経っておらず、成績トップクラスのアリサちゃんでさえすずかちゃん程には本を読まないので、自分と同程度かそれ以上に本を読んでいる同年代というのは、すずかちゃんにとっては稀な存在なのかもしれない。

 

実際の所俺自身も前世の頃から本はジャンルを問わず中々の量を読んでいた方だったので、お互いに時間の空いたとき等は、二人で読書をする事に異論は無い。

 

最初の頃は同じ場所で其々別の本を読んでいたのだが、それでは一緒に居る意味が無いとすずかちゃんは、本好きの飽くなき探求スピリッツを発揮し、それなら一冊の本を二人で読もうと提案してきたのだ。

 

何やら気合の入りまくったすずかちゃんに、俺は当然の事ながら反抗する事など出来る筈も無く、この提案は即座に可決とされた。

 

そういった経緯で俺は今現在進行形で、すずかちゃんと一冊の本を密着状態で読んでいる。

 

普段のすずかちゃんであれば、こんな状態になれば瞬時に離れて恥ずかしがる筈だが、本に魅せられた今のすずかちゃんには、隣に密着している俺の存在がある事など全く意に介さない。

 

この状態が当たり前と言わんばかりに堂々とした態度で読書を楽しんでいる。

 

「あら、可愛いカップルさんね」

 

俺達が読書をしていると、後ろから女性の声が聞こえた。

 

振り向くとそこに居たのは、二十台半ばと思われるこの図書館の司書の制服に身を包んだ女の人だった。

 

「もうすぐ夕方になるから、遅くならない内に帰らなきゃ駄目よ。特に君はこの子の彼氏なんだからちゃんと帰りもエスコートしてあげないとね」

 

司書のお姉さんは二人にというよりも、俺に対して悪戯っ子の様な笑顔を浮かべながら言って、サービスカウンターの方向に歩き去って行った。

 

この時すずかちゃんはこの司書のお姉さんの言葉で顔を真っ赤にさせて口を金魚のようにパクパクさせ続けていた。

 

先程のやり取りが余程恥ずかしかったみたいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺とすずかちゃんは司書のお姉さんの言いつけ通り其れから程なくして図書館を出る事にした。

 

結局そのとき読んでいた本は読みきる事が出来なかったので借りて帰る事になった。

 

その貸し出しの際にカウンターに居たのが先程俺達を可愛いカップルと言った司書のお姉さんでまたしてもからかわれたが、このあたりの記述はすずかちゃんの名誉に関わるので割愛させていただこう。

 

まあ、そんな紆余差曲を経て俺達は図書館を出てきたわけだ。

 

「それじゃあ純君。この本は私が預かっておくからまた明日二人で一緒に読もうね」

 

「うん。また明日。すずかちゃん」

 

俺はすずかちゃんの家である月村のお屋敷前まで送り、挨拶を済ませてから家路へと急いだ。

 

しかしアリサちゃんの家もそうだけど、すずかちゃんの家も相当にでかい。

 

なのはちゃんの家だって家の敷地内に道場がある時点で一般的では無いし、如何して俺の関係者は家庭からにして一般とかけ離れた人物が多いのか偶に不思議に感じる。

 

これでは益々俺のモブキャラスキルに磨きが掛かってしまうと不安になるが、それを言った所で今更な部分も多いので、気にしても仕方ない事なのかもしれない。

 

ただ、担任の先生に点呼の際に呼び忘れられる回数が最近は加速度的に増えているので、出来る限りの対策は考えておくべきだと、俺の本能が警報を鳴らしていたりもする。

 

俺は考えても答えの出ない己の人生における最大のテーマをその胸中に抱えながら、自宅への帰還を果した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌日。

 

昨日の約束通り、俺とすずかちゃんは二人で本の続きを読むために一緒に居た。

 

場所は昨日の図書館では無く俺の家だ。

 

『すずか嬢は本当に本が好きなのだな』

 

今日はメカ犬も家におり、すずかちゃんが本を取り出すのを見ながら話しかけてきた。

 

「うん。本は色んな事を教えてくれるから私は大好きだよ。それに物語を読んだりすると実際にその場所に行った様な気分になったりするしね」

 

『それは中々に興味深い。ワタシは情報を得る際は解析やダウンロードといった手法を用いるため読む概念が如何にも理解出来ないからな』

 

「う~ん。メー君はそれをして面白いって感じたことは無いのかな?」

 

『うむ。個人的な主観に基づき、すずか嬢の言っているであろう状態になった事は何度かあるかも知れないな』

 

「それと似たような物だと私は思うよ」

 

『成る程。それではワタシも読書を楽しんでいると言えるのかもしれないな』

 

「ふふふ、きっとそうだよメー君」

 

すずかちゃんとメカ犬は示し合わせた様に笑い合った。

 

『それではマスターにすずか嬢。これから読書する所を邪魔して済まなかったな。ワタシはジャックに用事があるのでこれで失礼するぞ』

 

メカ犬はそう言うと、俺達の前から歩き去って行った。

 

「純君。メー君が言ってたジャックって誰なの?」

 

「ああ、メカ犬の犬友達だよ。最近良くつるんでるんだ」

 

ジャックとはこの海鳴市一の情報屋でありチワワな奴だ。

 

メカ犬は日頃からホルダーの情報が無いかと良く彼の所へ行くのだが、何か馬が合ったらしく最近はプライベートでもジャックに会いに行っているらしい。

 

メカ犬も取り合えず形としては犬にカテゴリーできるかもしれないので、それも有りなのだろう。

 

「そうなんだ。それじゃあ早速続きを読もっか」

 

「うん。そうだね」

 

俺はすずかちゃんに返事を返してから隣の椅子に腰掛けた。

 

そして本を開いたのだが、そこで異変が起き出した。

 

ページを開いた瞬間に本が眩いまでに発光しだしたのだ。

 

「な、何なの?」

 

「分からない。でも危ないかもしれないからすずかちゃんは下がって!」

 

俺は咄嗟にすずかちゃんを背中に庇いながら尚も輝き続ける本を睨みつける。

 

『キンキュウ…』

 

ん?

 

今一瞬だけどタッチノートが反応した様に思えた。

 

一応ポケットから取り出してみる物のタッチノートは沈黙を守っており、ホルダーの反応が無い事を教えてくれている。

 

気のせいだったんだろうか…

 

「じ、純君。あれ見て!」

 

すずかちゃんの言葉に我に返った俺が指し示された指の方角の先を見ると、謎の発光現象を続ける本に更なる変化が始まっていた。

 

本は己の姿を捨てて光の中で別の何かに変貌していった。

 

そのシルエットが何処か人の形を思わせる形を取った時、更に光は勢いを増して俺は堪らず目を閉じた。

 

その急激な発光も瞬間的なもので、暫くしてから目を開けると、そこにはファンタジーな存在が居た。

 

黄色いローブの様な布を全体に巻きつけており、背中からは四枚の羽を生やしている。

 

この特徴を除けば今目の前に居るのは普通の女の子に見える。

 

だけどこの子が人間では無い事は一目で分かる。

 

その奇抜な格好や背中の羽以前に決定的に違う部分が存在するからだ。

 

この女の子は小さかったのだ。

 

それもサイズにすればメカ犬と同程度の手のひらサイズである。

 

俺の知っている限りではこんな存在が実在するなんて聞いたことが無い。

 

もし仮にいたとしても、日本のこんな一般家庭に何の前触れも無く出現する確立なんて限りなく無いに等しい事だろう。

 

それでも今一つの現実としてこのファンタジーは目の前に、確かに存在しているのだ。

 

暫くはファンタジーも何処か放心していた様だったが、やがてその瞳に一つの確固たる意思を灯して、辺りをキョロキョロと見回し始めた。

 

そしてその視線が一人の少年と、一人の少女を捕らえた。

 

つまり俺とすずかちゃんの事だ。

 

ファンタジーは俺達を交互に見た後、屈託の無い笑顔を浮かべて文字通り飛んできた。

 

四枚の羽を細かくはためかせ、黄金色の粒子を撒き散らせながら飛んできたファンタジーは俺とすずかちゃんの目の前にやって来ると自己紹介を始めた。

 

「初めまして。私の名前はフェアリーベル。森の妖精だよ。ベルって呼んでね」

 

ベルと名乗った女の子はそう言ってから、宜しくねと言っておじぎをした。

 

この一連の中で俺とすずかちゃんができた事はただ固まり続ける事だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

未知との邂逅を果した俺達はあの後何とか正気を取り戻して、自身を森の妖精だという手乗りサイズの女の子、ベルに色々と聞いてみる事にした。

 

俺はメカ犬の事も有り多少は耐性が出来ていたので割りと早く回復する事が出来たのだが、すずかちゃんも俺と殆ど変わらずに復帰してきたのは以外だった。

 

まあ、パニックに成られても困ってしまうので余り気にしない事にしておこう。

 

取り合えず質問をしてみた結果なのだが、ぶっちゃけて言ってしまえば最初のベルの自己紹介部分の情報以外は殆ど分からなかったのである。

 

ベルは自身の名前と森の妖精だという事と、今まで眠っていたという以外は何も覚えてないと言うのだ。

 

本人が分からないと言ってる以上、先の進展も期待できないので如何しようかといった話になったのだが、この時すずかちゃんが一つの提案を出してきた。

 

「だったら私のお家に来れば良いよ」

 

俺はこの時まですずかちゃんは基本おっとり系だと思っていたけれど、意外にアグレッシブな一面もある事を知った。

 

ベルもそのすずかちゃんの提案に賛成した。

 

俺の家で預かっても良かったが、俺の家には既にメカ犬が居るし、女の子同士の方が何かと都合も良いだろう。

 

この後も話し合いは続き、取り合えず暫くの間は周りにもベルの事は内緒にして、様子を見てみようという事に落ち着いた。

 

話し合いが終わる頃には日も傾き掛けており、今日はこれで解散する事になった。

 

「私と純君の…二人だけの秘密だね」

 

すずかちゃんはそう言ってベルを連れて帰っていった。

 

すずかちゃんとの約束の手前、誰にも言う訳にはいかない。

 

だけど俺は突然目の前に現れた森の妖精ベルについて、幾つも気になることがある中で、特に気になる事が一つだけある。

 

俺の勘違いなのかも知れないが、一瞬だけタッチノートが反応した様に思えたのだ。

 

ベルがホルダーだとは勿論思えないが、それでも何かしらの関係が在るかもしれない可能性が少しでもあるならば、メカ犬にだけでもこの事を話して置かないといけない。

 

俺はメカ犬が帰ってきてから、一度相談してみる事にした。

 

俺が決意を決めてからそう時間も掛からずにメカ犬は帰ってきた。

 

『今帰ったぞ。マスター』

 

メカ犬が俺の部屋に入ってくる。

 

「なあ、メカ犬に話があるんだ。少し時間良いか?」

 

『うむ。何の話だ?今更改まって』

 

メカ犬は俺に続きを話すように促してきたので俺は話を切り出す事にした。

 

「実は俺さ…妖精に遇ったんだ」

 

『…マスター。原因はストレスか?』

 

あれ?

 

何か話が変な方向に向かってないか?

 

『最近のマスターは戦いの連続だったからな。ワタシの立場としては余り多くの事を言ってやる事はでき無いが、今日は取り合えず早く寝た方が良い。さあ、早く布団に入るんだマスター。ゆっくり休むんだぞ』

 

何故だろう。

 

メカ犬にとんでもない誤解を与えている気がする。

 

変だな?

 

悲しくとも何とも無い筈なのに俺の目から心の汗が流れ出てきやがる。

 

『さあ、マスター早く布団に入るんだ。明日も辛いようならワタシから母殿に言っておくから、病院に行って看てもらおう』

 

メカ犬の優しさが俺の心を抉り捲くりやがった。

 

俺の心の汗の洪水量は本日最高を記録する事に相成った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が心の汗を大量に流したあの日から一週間が過ぎた。

 

メカ犬の誤解は未だ解けておらず、今も妙な優しさを持って俺に接してくる。

 

俺とメカ犬の事はさて置き、この一週間ですずかちゃんとベルは随分と仲良くなった。

 

すずかちゃんには珍しい事に、ベルを呼び捨てで呼んでいる事からも仲の好さが伺える。

 

未だ俺以外にはベルの存在は秘密にしているが、もうそろそろなのはちゃん達にも打ち明けても良いのではないかと思う。

 

その旨をすずかちゃんと話した所、すずかちゃんも同じ事を考えていた様で自分から話すと言っていた。

 

だが俺は一つの後悔をする事になる。

 

すずかちゃんは俺と同じ過ちを犯してしまったのだから…

 

放課後の教室ですずかちゃんは、なのはちゃんとアリサちゃんに満面の笑顔で言い放った。

 

「私ね。妖精さんとお友達になったんだよ」

 

周りの空気が凍るのを俺は確かに感じた。

 

そしてなのはちゃん達の心の距離が遥か彼方に飛んで行くのを、俺は心の目で確りと目撃したのだ。

 

程なくして心が無事に身体へと帰還した、なのはちゃんとアリサちゃんの瞳が慈愛に満ちていた。

 

「すずかちゃん…私達何があってもお友達だよ」

 

なのはちゃんが優しくすずかちゃんを抱きしめた。

 

「悩みがあるなら言いなさいよね。私達にできる事なら何だってしてあげるから」

 

アリサちゃんがその後ろからすずかちゃんの肩にそっと手を添えていた。

 

「え?え?」

 

雰囲気がすっかり変わってしまった二人にすずかちゃんは戸惑うばかりだった。

 

俺はその光景を見ながらまるで一週間前の自分を見るかのようで、再び心の汗を己の目から流していた。

 

メカ犬同様二人の慈愛モードは解除される事無く、今日はこのまま帰る事になった。

 

帰り際の二人の会話で千羽鶴計画なる単語が聞こえたが、気にすれば負けだと俺は自分に言い聞かせた。

 

今日はなのはちゃん達を遊びに誘っても無理であると判断し、すずかちゃんと後で遊ぶ約束をしてから皆と別れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま~」

 

『お帰り。マスター。無理はしていないか?』

 

俺が家に帰ってくるとメカ犬が迎えてくれた。

 

相変わらず妙な優しさを振り撒き続けるのはいい加減にしてもらいたい。

 

「だからあれはメカ犬の勘違いだって言ってるだろう」

 

これ以上誤解を招き続けても仕方ないので、今日こそはメカ犬の誤解を解くために一週間続けてきた説得を今一度実行する。

 

『自分の疲れとは自覚症状が無い物だ。今のマスターは疲れている』

 

「だからそれが誤解だって『キンキュウケイホウキンキュウケイホウ…』メカ犬!」

 

タッチノートからホルダーの反応が感知され警報が鳴り響いた。

 

『うむ。しかしマスターは…』

 

「だー!もうその話は後だ!さっさと行くぞ!」

 

俺は問答無用でタッチノートを開く

 

『バックルモード』

 

音声と共にメカ犬が銀のベルトに変形して俺の腹部に巻かれる。

 

変形しながらもメカ犬は何か言っているが、今は緊急事態なので無視だ。

 

「変身」

 

俺は半ば強制的に変身した後チェイサーさんを呼んで現場に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さあ…それじゃあ後は宜しくねマスター』

 

現場に到着した後、チェイサーさんはいつもの様にホルダーに突進せずに少し離れた場所で降ろしてくれた。

 

何でも、今チェイサーさんはワックス塗り立てで突っ込むとケアが大変になるから二時間は待って欲しいとの事だ。

 

今にして思えばチェイサーさんはメカ犬以上に謎の多い人?である。

 

俺が呼んだ時以外は普段何処に居るのかとか、塗りたてのワックスにしろ誰が塗ってるんだよと思う。

 

機会が有れば其の内詳しく聞いてみようかなと思う。

 

『マスター。ここまで来てしまったからには、それに対してはワタシは何も言わない。全力でホルダーを止めるぞ』

 

「ああ、分かってるさ」

 

俺はホルダーの元に走り出す。

 

爆発音が聞こえたので、そちらに全速力で向かうとそこには自動車を大きな木槌でボコボコに叩きまくる化け物が居た。

 

全身が黄緑色でまるで体系は力士の様だった。

 

顔はオレンジの羽毛をトサカの様に逆立たせ口は裂けており鋭い鷹を思わせる眼光を持っていた。

 

「あれが今回のホルダーだな」

 

『…おかしい』

 

メカ犬が呟いた。

 

「おかしいって何がだ?如何見たってあれはホルダーじゃないか」

 

『分からない。確かに奴から反応は出ているが…兎に角気をつけてくれマスター。あれは何かがおかしい事だけは間違い無い!』

 

メカ犬の言ってる事に要領を得ないが、メカ犬そう言うなら何かが有るのかも知れない。

 

「分かった。出来る限りやってみる」

 

『うむ』

 

俺は全速力でホルダーに駆け込み、飛び蹴りを喰らわせた。

 

「ぐがあああっ」

 

身体の大きさの割に重さは余り感じず結構な距離を転がっていった。

 

『マスター!』

 

「一気に攻めるぞ」

 

俺はバックルからタッチノートを取り出し、ボタンを押す事で全体図を表示して右腕の部分をタッチして再びバックルに差し込んだ。

 

『ポイントチャージ』

 

バックルが白い光を発して、銀のラインを通して右腕に光が集約する。

 

「こいつで決めるぜ」

 

俺は光る右拳を腰に添える。

 

「ライダーパンチ」

 

俺はホルダーに走り出す。

 

ホルダーは何とか立ち上がろうとするが奴が態勢を整えるよりも俺の足の方が幾分早い。

 

「うをおおおおおおおおおおおお!!!」

 

俺は無防備に身体を曝け出すホルダーに必殺の一撃を容赦無く叩き込んだ。

 

しかしホルダーは爆発しなかった。

 

鏡が割れるように、粉々に砕け散ったのである。

 

「どうなってんだよこれ?」

 

勿論システムも素体になった人もこの場には居なかった。

 

『うむ…ん!マスター。何か足元に落ちているぞ』

 

「足元?」

 

メカ犬の言葉に従って下を見てみると一冊の本が落ちていた。

 

俺はその本を拾い上げて中のページを適当に捲ってみる。

 

この本の内容は簡単に言えば剣と魔法を舞台にしたありがちなファンタジー小説の様だ。

 

「な?」

 

『如何したマスター』

 

俺は何となく目に映った挿絵に驚愕した。

 

その挿絵に描かれているのは、この小説に出てくる主人公と戦うモンスターの姿だったのだが、その姿が先程俺が倒したホルダーに瓜二つだったのだ。

 

次々に訳の分からない事が起こる中、考える間も無く更に予想外の事が起こった。

 

俺の周りに爆発音が幾つも響く。

 

『マスター!ホルダー反応がこの付近に同時に三つ出現したぞ!?』

 

「何だって?」

 

俺が周りを見渡すと確かに居たのだ。

 

俺が倒した筈のホルダーが同時に三体現れて街を破壊している。

 

『兎に角今は、これ以上の被害を防ぐためにも奴らを倒すぞマスター』

 

「それしかないだろ!!!」

 

俺は走り出す。

 

分からない事だらけではあるが今やらなければ成らない事は、目の前で暴れているこいつ等をどうにかする事だ。

 

「はああああああ!!!」

 

俺は近くに居た一体を標的に定め、飛び蹴りを繰り出した。

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