魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~ 作:G-3X
「それにしても五代さんの怪我が、たいした事なかったみたいで、ほんまに安心したわ」
「何か心配掛けちゃったみたいで、ごめんね。はやてちゃん」
海鳴病院からの帰り道。
街灯が照らす夜道を、五代に車椅子を押して貰いながら、はやてが朗らかに言う。
それに対して、五代もはやてに笑顔で返事を返す。
しかし五代は、その笑顔の裏で、幾つもの懸念を抱いていた。
夕方の海鳴商店街に現れた、以前戦った未確認生命体とは別の、ホルダーという怪物の存在。
病院ではやてから聞いた話によると、更にに加えて、そのホルダーを倒すというこの街を守る仮面ライダーが居るというのだ。
ただ五代は其処で疑問を抱く。
クウガに変身した五代に、襲い掛かってきた謎の人物。
彼もまた自身を仮面ライダーと名乗っていた事についてだ。
病院で聞いた、はやてと純の話を統合すると、その直前に会った緑の奴が話しに出てきた仮面ライダーだという事は、五代にも理解出来たのだが、五代に襲い掛かって来た仮面ライダーの姿は、はやてが話してくれたもう一人居るという仮面ライダーの姿とは随分違っていた。
その事を五代ははやてに聞いてみたのだが、答えは当然ながら知らないと帰ってきたのは言うまでもない。
その答えにより、五代はこの街に仮面ライダーを名乗る人物が少なくとも三人は存在する事を知った訳だが、明らかにその内の一人は、はやてが言う様な平和の為に戦っているとは言い難い存在だという事を確信するに至った。
この街に出没するホルダー及び、仮面ライダーという存在に、大きな関心を抱いた五代ではあったが、考えさせられる事象はそれだけでは終わらない。
病院で空という白髪の青年と握手を交わした際に、自身の体内に存在する古代のベルト、アークルに嵌め込まれた霊石アマダムが強い光を放ったこと。
その光はほんの一瞬で収まったが、その光が収まった後も、アマダムに急激な変化が起こり続けている事を、他の誰でもない五代自身が自覚していた。
その証拠に、意識を向ける事無く、腹部の中心が熱くなるのを、五代は確かに感じ続けている。
はやてはその瞬間を目撃していないので、変に心配させたくもないという思いから、五代はこの事を積極的に話そうとは当然思わない。
直接的な原因である空ならば、何かを知っているかもしれないと五代は考えたが、ある意味それ以上に分からないと感じたのは純の存在だった。
空と握手をした瞬間にアマダムが発光したのを、純も目撃した筈だし、その光景を驚愕とも言える表情でみていたのは確かなのだが、それを騒ぎ立てるような事を一切しなかったのである。
そのおかげで、はやてに余計な心配をさせる事が無くて済んだのは確かなのだが、はやてと同じ年だという、一人の少年がどうして咄嗟に其処までの気遣いが出来たのだろうか。
早熟な子供だと言ってしまえば、それまでの話かもしれないが、五代がそう考えるにはどうしても抵抗を覚えてしまう事柄が病院から出る際に起こっていた。
病院を出た帰り際に、純に呼び止められた五代は、はやてに聞こえない様にする為なのか、小声で明日の夕方にもう一度、病院に一人で来てくださいと言われたのである。
そう言った純の瞳には、強い意志が込められている事を、五代は感じ取った。
はやてがその場に居た事もあり、五代は事情を聞くこと無く、頷くだけに留めたが、アマダムを発光させた空と同様に、純という少年が五代を取り巻くこの現状に対して、何かしらの答えを持っている特別な存在なのではないかと考えさせられるには、充分過ぎる要因と言えた。
どういった経緯があるにせよ、五代は空と純、両名に詳しい話を聞く必要があるということだけは、理解するに至った。
そんな事を考えながら五代が車椅子を押して、八神宅を目指して歩いていると、反対側の道から、コツコツというアスファルトを叩く軽い靴音と共に一人の人影が見えてきたのである。
夜とはいえども、まだ決して真夜中という時間帯ではないので、人が歩いていたとしても、おかしい事は無いだろう。
道を歩いていれば、どの様な時間帯でも、人とすれ違う可能性は存在する。
しかしそのすれ違うと思われていた人物が目の前で立ち止まり、値踏みする様な視線で見詰めてくる可能性はどれだけあるというだろうか。
「ふ~ん。あなたが雄太の言ってた白いライダーなのかしら?」
十代後半に見える赤を基調としたカジュアルなパーカーを着た、吊り目がちな女性は、五代とはやての進行方向を塞ぐかのようにして立ち止まると、五代を一瞥した後に、その視線をはやてへと向ける。
「車椅子の女の子……間違い無いみたいね」
訝しげに女性を見る五代とはやてを他所に、女性は一人納得して、唇の両端を上にあげて笑顔を形成する。
その光景を、理由も分からないまま見ていた五代だったが、女性がパーカーのポケットからあるものを取り出した事により、一気に緊張感が増していく。
それはクウガとシード、両名の間に突如として現れた、茶髪の青年が持っていた黄色い玉と同形の赤い玉に、まったく同じタイプの黒いバックルだったからである。
「それは!?」
五代は咄嗟にはやての前に移動して、いつでも自身の身体を盾に出来る様にしながら身構えた。
「ふふ……良いわね……その顔。ぞくぞくしちゃうわ」
女性はからかう様に言いながら黒いバックルを腹部に宛がうと、その形状が瞬時にベルトへと変わる。
「変……身」
妖艶とも言える笑みを浮かべながら女性が呟きながら、赤い玉を黒いベルトの中央に存在している窪みにはめ込むと、バックルを中心に赤い光が、女性の全身を包み込み、異形の戦士へとその姿を変えていく。
その姿は、五代が夕方に戦ったハンターと名乗るライダーと同様に、ブラウンを基調とした全体に、上半身を覆う若干にデザインの差がある丸みを帯びた銀のプロテクター。
大きな違いを挙げるとするならば、ベルトに嵌め込まれた赤い玉とその色と同色の二つの複眼に、炎を表している様に見える角飾りにおける、細部の形状といったところだろうか。
「な、なんなんや!?」
「他にも居たのか!?」
目の前でその女性、桐崎沙耶の変身する光景を目撃した五代とはやては、其々に驚愕の声を上げる。
「一応、私も自己紹介してあげるわね。私は……そうね。仮面ライダーガンナーって呼んでくれれば良いわよ」
五代とはやてが驚く姿を、意に介す事無く自己紹介を終えたガンナーは、そのままバックルの赤い玉へと両手を翳す。
すると淡い光がガンナーの両腕を包み込み、肘間接付近まで覆う長さの銀の細長い手甲が生成された。
しかもそれはただの手甲ではなく、手の付近にはグリップらしきものがあり、手甲の外側の部分には銃口と思われる穴が開いていたのである。
ガンナーはその手甲を無造作に、目の前の二人へと向けた。
「危ない!」
五代はその動作を見た直後に、車椅子に座っていたはやてを抱きかかえて、その場から飛び退く。
それは五代が数々の冒険と、一年にも及ぶ未確認生命体との戦いの中で培われてきた勘だった。
そしてその予感は残念なことに、見事的中したのである。
五代がはやてを抱きかかえて飛び退いてから、数秒と経たない間に、ガンナーの手甲の銃口から大量の小さく細かい赤い光弾が、マシンガンの様に連続で射出され、その場に残る事となったはやての車椅子を、文字通り蜂の巣へと変えてしまったのだ。
「今のは警告よ。私も手荒なことはしたくないの。だから怪我をしたくなかったら、大人しく言うことを聞いておいた方が身のためよ?」
ガンナーは再び両腕の手甲を、五代とはやてに向けながら言い放つ。
その動作には、次は外さないという明確な意思が窺える。
「……要求はなんだ?」
胸の中で恐怖に震えるはやてを抱えながら、五代はガンナーの動きに警戒しつつ、質問をぶつけた。
「ふふ……簡単なことよ。渡してくれれば良いだけの事なんだから」
「渡す?何を渡せって言うんだ?」
その問いに対してガンナーは、緩やかな動きで、人差し指を、五代の胸元に、正確に表すのであれば、五代の胸元で抱きかかえられている人物へと向けられる。
「え!?わ、私?なんでや!?」
それに驚いたのは、他の誰でもない。
五代に抱きかかえられている少女、はやてだった。
「どうしてはやてちゃんを!?」
突如として現れたガンナーに、自分の事が目的だと、身に覚えの無い要求を聞かされて驚くはやてを抱きかかえた状態で五代が当然の疑問をぶつける。
「さあ?私は頼まれただけだもの。だから目的を聞かれたところで答えようも無いし、その女の子をどうするかなんて、興味も無いわ」
ガンナーは興味無さげに、肩を軽くあげながら五代の質問に答えた。
「……なら、君はどうしてこんな事をするんだ?」
その答えが嘘かどうか、見極める事は出来ないが、本人が知らないと答えている以上、これ以上同じ質問をしても、話は平行線だと考えた五代は、質問の内容を変えた。
「そんなの決まってるじゃない……」
新たな五代の質問に対して、ガンナーは軽い口調で含み笑いをしながら言い放つ。
「楽しいからに決まってるでしょ?」
そう言い放ったガンナーはそう言い放つと、今度は含み笑いではなく、楽しそうに大きな笑い声を上げる。
「楽しい……こんな事が……本当に楽しいって言うのか!?」
「ええ。楽しいわよ!こんなに面白い事が他にあるかしら?」
五代の二度に渡る質問に対して、ガンナーは心から楽しそうに答えを返す。
決して己とは相容れない考えを口にするその様子に、五代は憤る自らの感情を、自身の拳を強く握り締める事で示した。
「さあ。分かったなら、大人しくその女の子を此方に渡しなさい。そうすれば見逃してあげるから」
ガンナーは、話はここまでと言わんばかりに、再度はやてを引き渡す事を、五代へと要求する。
「はやてちゃんは、絶対に渡さない」
しかし五代はその要求に対して、首を横に振りながら即答した。
「あら?どうやら痛い目を見ないと、分からないみたいね?」
「……五代さん」
五代のの下した決断に、この場の当事者である、はやてとガンナーの両名が、其々の反応を示す。
「大丈夫」
自身の胸元で不安に怯える少女に、五代は笑顔で答える。
その笑顔は似ていない筈なのに、はやての脳裏に、良く知る一人の少の面影を垣間見せた。
「でも……」
しかしそれでも、はやての心から、全ての不安が拭い去られて訳ではない。
五代により、街道の隅に下ろされながら、はやてはもう一度、自らの不安を口にしようとする。
「俺が絶対に守る!だから大丈夫!」
はやてがその言葉を全て口にする前に、五代は笑顔でそう言うと、右手を握り親指を立てる仕草を見せた。
サムズアップ。
それは五代が幼少の頃に、恩師から教えを受けた特別な仕草。
その仕草が持つ数ある意味の中で、五代はこの仕草を、古代ローマで、満足できる、納得できる行動をした者にだけ与えられる仕草という意味合いとして使用している。
つまりこれは、五代の意思の表れだ。
今……この瞬間を、一人の少女の笑顔を守る為に、五代はもう一度、強い決意と共に、自ら戦う事を選択する。
「それに俺。クウガだから」
最後にそう言って締めくくった五代は、まだ何か言いたそうにしているはやてに背を向けて、ガンナーと対峙しながら、自らの両手を自身の腹部へとかざした。
すると五代の腹部には、その強い意志に呼応する様に、体内に存在する超古代の技術で作られた霊石アマダムが埋め込まれたベルト、アークルを出現させる。
意識を高めるようにして、左手を腰に添えながら、右手を前にゆっくりと押し出す事で、更に集中力を高めつつ、五代は硬い決意を胸に宿しながら、一人の戦士へと変わる為の言葉を口にする。
「……変身!」
腰に添えた手に右手を上から押し込んだ後に、五代は勢い良く一気に両腕を広げる。
その瞬間に五代の身体が、大きな変貌を遂げる。
身体の上半身は、筋肉を模した造形の鎧に覆われて、頭部は二股に分かれた金の角と、赤い大きな複眼という、人間とは明らかに違った形状へと変化するその様子は、夕方の時と同じだったが、今回はその変化に大きな違いが生まれた。
頭部に輝く金の二本の角は更に大きさを増して、上半身の筋肉を模した造形の鎧も白ではなく赤となり、その大きさすら一回り大きさを増している。
それは戦士の本来あるべき姿……
一人の青年が人々の笑顔を守る為に戦い抜いた、赤い戦士の姿だった。
彼を知る者はきっと、こう呼ぶのであろう。
仮面ライダークウガ
……と!