魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~ 作:G-3X
「あれは!?」
近隣の住民の通報を聞き、現場へと駆けつけたE2は、驚愕の声を上げた。
[「あれって……」]
E2に内臓されたカメラを通して、同じ映像を別の場所から見ている恵美も、同様に驚愕の声を通信機越しから上げた。
E2である長谷川と、恵美が共に驚愕するのも無理は無い。
目前に広がるその光景は、既に幾度と無く経験してきた、異形の者達が繰り広げる戦いの場。
しかしその場には、今までとは決定的に違う要素が含まれていたのである。
この場に居るのは三人の異形の姿をした者達と、個人的な知り合いでもある一人の少女だったのだが、その異形の者達の姿は、今までに見てきたこの街を何度と無く脅かし続けてきたホルダーとは一線を画す姿だったのだ。
その内の二人は、全体的にブラウンのカラーリングと上半身を覆う銀のプロテクターという、酷似した形状をしており、残りの一人は全体的に黒く、頭部に金の二本角と、上半身には、青いプロテクターという、先に述べた二人とは別系統の姿ではあったが、その三人の姿、それに加えE2も含めて、一言で表す事が出来る、共通の認識用語が存在していた。
「……彼らは、仮面ライダーなのか?」
そしてE2は、この海鳴市において、己自身と、この場にはいない、もう一人を指し示す言葉を口にした。
更に青いプロテクターをしたライダーの方は、ダメージを負っているのか、右脇腹にあたる部分から、白い煙が上がってもがき苦しんでいるようだ。
その様子を目にして、E2は二人のライダーともう一人のライダーは、敵対関係にあるのではないかという、考えへと辿り着く。
[「詮索は後よ!長谷川君!まずは要救助者の安全を確保して!」]
「は、はい!」
逸早く、現状をその雰囲気から察知した恵美が、通信機からE2に指示を送る。
E2もまた、その指示に返事をすると、現状を理解する事よりも、二人のライダー、ガンナーとボマーの向かい側に居るもう一人のライダー、クウガの後ろに居る一人の少女、八神はやてを安全な場所に移動させる事を第一の優先として行動を開始した。
[「標準装備のESM01は、はやてちゃんに流れ弾が当たる可能性があるから、近接装備のESM02を使ってちょうだい」]
「了解しました!」
再び恵美の指示に返事をしたE2は、マシンドレッサーの側面部分に設けられている格納庫から、近接戦闘用の両刃の剣、ESM02を取り出して右腕に装備する。
[「長谷川君!高熱のエネルギーを発している物体が、後方から接近しているわ!注意して!」]
ESM02を装備した直後に、通信機から焦りを含んだ恵美の声がE2の鼓膜を振るわせた。
その声に従い後ろを振り向くと、E2の目前にまで、小さな細い筒状の物体が迫っていた。
「くっ!?」
E2には、その正体が何なのかは分からないが、これまでの戦いの勘からか、嫌な気配を感じ取り、装備したばかりのESM02で、その筒を斬るのではなく、明後日の方向へと弾き飛ばす。
結果として、E2の下した判断は正しかった。
弾き飛ばした筒の正体は、ボマーの放った爆弾であり、E2のすぐ横で小さな爆発を起こしたのである。
「爆発した!?」
[「気をつけて長谷川君!同じのが大量に来るわよ!」]
すぐ横で起こった爆発に対して、驚愕するE2に、通信機から恵美の注意を促す声が木霊する。
恵美の言葉通り、E2が正面見据えると、先程と同じ筒状の爆弾が、空を舞いながら、E2の元へと接近していた。
E2は先程と同じ手段では、全ての爆弾を爆発させる前に捌き切るのは不可能と判断して、すぐさま回避行動へと移る。
「ぐう!?」
更にそれに追い討ちを掛ける様に、ガンナーが手甲の銃口から放つ光玉により被弾して、小さな呻き声を上げるE2だったが、何とか大きなダメージを受ける事だけは避ける事が出来た。
しかしE2が爆弾を避けた直後には、既にボマーが次に投擲する爆弾を生成させていた。
「これじゃあ、近づく事も出来ない……」
E2はその光景を見て、呟きながら今一度、回避行動へと移る為の予備動作を開始する。
出来る事であれば、一刻も早くこの爆撃地帯から、要救助者である、はやてを引き離したいが、現在ボマーとガンナー、両名の標的となっているE2が不用意に接近すれば、余計な危険を招く結果となってしまうだろう。
この場にはやてが居なければ、この距離からのESM01による射撃が可能ではあるが、流れ弾が行く事を考えると、易々とその手段に出る訳にも行かない。
ならば、E2が現在の所、用いる事が出来る手段は、自然と限られてくる。
E2は回避行動を中断して、大地を蹴り走り出す。
[「無茶は止めなさい!?」]
突如として行動指針を変更したE2に対して、その光景をカメラ越しに見ていた恵美は、通信機から制止の声を掛けるが、E2は構わずに、ガンナーとボマー目掛けて走り続ける。
「確かに危険ですけど……僕に狙いが集中すれば、その分、周りへの被害が減りますから!」
E2は走る速度を更に上げながら、自身の考えを言葉にした。
己が下した行動に対して、恐れが無いという訳では無い。
しかし彼は、あえてその方法を選んだ。
それは他の誰でも無い……己の為である。
はやてを、海鳴市で日々を生きる人々の安全を、守りたいと願うその意思が、E2を駆り立てたのだ。
ガンナーが放ち続ける光弾の嵐を駆け抜ける最中に、新たに投げられたボマーの爆弾が、E2の視界へと入る。
このまま前へと走り続ければ、間違い無くE2を爆発の衝撃が襲う事となるだろう。
E2はその爆発の衝撃に耐える為に、身体全体を強張らせて目を閉じてしまったのだが、最初に耳に入ってくる筈の爆発音よりも先に、E2自身でも恵美でもない別の人の声が聞こえて来たのである。
「超変身!!!」
その声を耳にしたE2が目を開くと、目の前に佇むのは、一人の仮面ライダーだった。
E2に対して攻撃を仕掛けるガンナーとボマー同様に、この場に居たもう一人のライダー、クウガである。
ボマーの爆弾によってダメージを受けたクウガだったが、E2の登場により、標的が移った間にある程度動けるまでに回復した事で、E2のピンチに駆けつける事が出来たのである。
「……紫の身体?」
目の前に佇み、己の背中を見せるクウガを見て、E2が呟いた。
E2の呟いた通り、クウガの身体は、超変身によって、俊敏な動きが特徴のドラゴンフォームから、騎士の様な重厚な紫の鎧を纏う、タイタンフォームへと変わっていたのである。
そしてE2が呟いた直後に、ボマーの投げた爆弾が、クウガの身体に当たり、小規模な爆発を起こす。
「バカじゃないの?態々自分から当たりに来るなんてさ!」
クウガが爆発に巻き込まれる様子を見ながら、ガンナーが笑いながら言うが、その笑いは爆煙の晴れた瞬間に終わりを告げる。
「……効いて無い?」
爆煙が晴れて、クウガを視界に捉えたボマーが、静かに言葉を紡ぐ。
タイタンフォームの能力は、先程までのドラゴンフォームの特性とは、真逆に位置していると言えるかもしれない。
ドラゴンフォームが力を犠牲にして、早さを特化させているのに対して、このタイタンフォームは、機動力を犠牲にして、高い攻撃力と防御力を得ているのだ。
クウガは過去にこのフォームで、幾多の未確認生命体の強力な攻撃を正面から受け止めてきたのである。
「大丈夫でしたか?」
爆発を凌ぎ切ったクウガは振り向きながら、E2へと喋りかける。
「え!?ま、まあ……おかげさまで……」
突然に話し掛けられたE2は、戸惑いながらも、何とか返事を返す。
「さっきは俺も助かりました。もしあのタイミングで貴方が来てくれていなかったら、結構危なかったかも知れないんで!」
饒舌にそう言い放ったクウガは、E2の空いている左手を掴み、半ば強引に握手を交わす。
「貴方がはやてちゃんの話に出てきた、警察に勤めているっていう、仮面ライダーなんですよね?」
「え、ええ……一応は……」
クウガの認識に、細かい経緯に差異は見受けられるが、言いたい事は理解出来たので、E2は取り敢えず首を縦に振って肯定する。
「それとこの剣、ちょっと借ります!」
「え!?」
二人が握手をしていたのも束の間であり、クウガは話の脈絡を無視して、E2の持つESM02を掻っ攫う。
「ち、ちょっと、突然に何をす……これって!?」
[「……興味深い現象ね」]
傍から見ても強引と言える手段に驚きながらも、E2は抗議の声を上げようとするが、その声は途中で驚愕の声へと変わる。
それに続き、E2と同じ光景をカメラを通じて見ていた恵美が、驚くE2とは違った反応を示す。
なんとクウガがESM02を手にした瞬間に、メカニカルな形状から、紫と銀の西洋剣を思わせる形へと変化したのである。
「また姿が変わったと思ったら今度は剣を出すなんて……あんた一体何なのよ!?」
クウガのタイタンフォームへの変化と、タイタンソードの形成を目の当たりにしたガンナーは、叫びながら手甲を前に構えて銃口から光弾をクウガへと連続で射出していく。
「もう一人の方を、お願いします!」
ガンナーの攻撃をノーガードで受け止めながら、前進するクウガは、E2にそう言いながらボマーを指差す。
「ええ!?」
[「良く分からないけど、今はあのライダーが敵じゃない事を信じて協力しておいた方が良さそうね……右から来るわよ!!!」]
クウガの発言に戸惑うE2に対して、恵美が説得を試みる最中に、声を張り上げた。
その声に反応してE2が右に視線を向けると、先程と同じ形状をした筒状の爆弾が、目前へと迫っていた。
「うわっ!?」
E2は驚きながらも、元居た場所から飛退いて、辛くも爆発の直撃から逃れる。
「……喋ってる暇は無いと思うよ?」
投擲した爆弾を避けるE2を、冷静に観察しながら、ボマーは新たな爆弾を生成しながら呟く。
「……やるしか無いみたいですね!」
[「取り敢えずESM01が使えないから、装備を整えるわよ長谷川君。」]
「はい!」
E2は恵美の提案に了承して、すぐさまEブレスの操作を始める。
「何をしようとしてるかは知らないけど……無駄だよ!」
Eブレスを操作するE2を放って置く筈も無く、ボマーは間髪入れずに爆弾を投げつける。
[「また来るわよ!」]
「くっ!?」
恵美の声に反応したE2は、Eブレスの操作を一旦中止して、側転で爆発を回避していく。
「……避けてるだけじゃ勝てないよ?」
爆発を避け続けるE2に、ボマーが攻撃を緩める事無く、連続で生成した爆弾を次々と投げつけながら言い放つ。
[「それはどうかしらね……長谷川君!」]
ボマーの発言に対して恵美が、不適な微笑みを浮かべながら、E2に指示を出す。
「了解です!」
恵美の指示に答えたE2が、回避行動を続けながら、Eブレスのボタンを押した。
「一体何を……ぐっ!?」
E2の行動を訝しげに見ていたボマーの背中に衝撃が走ると同時に吹き飛ばされる。
ボマーを強襲した正体は、E2の専用バイクであるマシンドレッサーだったのだ。
E2はEブレスから遠隔操作で、マシンドレッサーをここに呼び寄せたのである。
[「長谷川君。相手が爆弾を使った中距離戦を得意としているなら、うってつけの装備があるわよ」]
「うってつけの装備ですか?」
[ええ。格納庫のESM05を使うのよ」]
「やってみます!」
遠隔操作で呼び出したマシンドレッサーの格納庫を開けたE2は、恵美の指示に従って、言われた通りの装備を取り出した。
ESM05は、棒状の先端に取り付けられた取っ手がある武器。
一言で表すのであれば、その形状はトンファーに近いと言える代物だった。
しかしESM05は、勿論ただのトンファーではない。
ESM05は間違い無く、恵美が開発した特殊装備の一つである。
「さっきのは……流石に予想外だったよ!」
E2が装備を取り出している間に、マシンドレッサーに跳ね飛ばされたダメージから回復したボマーは、立ち上がりながら、新たに生成した爆弾を投げつけた。
[「早速出番よ長谷川君!」]
「はい!」
投げつけられた爆弾に対して、E2がESM05を装備した状態で、身構えるとほぼ同時に、爆発が巻き起こる。
「これは流石に効いたかな……え!?」
確かな手応えを感じたボマーだったが、爆煙が晴れた瞬間に目にした光景は、ボマーの想像とは違う光景が広がっていた。
トンファーの形状をしていた筈のESM05の棒状の部分が、大きく展開されて盾の形状を形成しており、爆発の衝撃を受け切ったのである。