RISKY×DICE〜転生した俺の念能力がリスキーダイス〜   作:スプライト1202

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アカンパニー×オン×アントキバ

 やがてG.Iとなる島へと連れてこられた俺たち。

 レイザーが代表して訊ねる。

 

「で、どこだここは」

 

「元々はある国が使ってた流刑地なんだけどよ。ちょうどよかったから、そこにいたやつらごと買い取ったんだ。……あー、言ってもムダかもしれんが、そいつらと仲良くやれよー」

 

「で、オレたちになにをさせるつもりだ?」

 

「そう早まるなって。見てろ――ブック」

 

 ジンの手元に一冊の本が現れる。

 

「なんだそりゃ? テメェの念能力か?」

 

「いいや、ちがう。これは……まァ、いっちまうと舞台装置だな」

 

「舞台って、なんの?」

 

「それは――島を丸々ひとつ使ったゲームの、さ。お前たちにはこれから、オレたちのゲーム製作を手伝ってもらう」

 

「……はァ?」

 

 知らなければ俺もレイザーたちと同感だったろう。死刑囚を集めてやることがゲーム制作だって? なにを考えてるんだ、と言いたくもなる。

 

「まだコイツも未完成だけどよ……すっげェ楽しくなるぜ。これから」

 

「……もしかしなくてもバカだろ、テメェ」

 

「んだとコラァ? オレはただ、オレがおもしれーと思ったことを全力でやってるだけだっつの」

 

「やっぱバカだろ」

 

 ジンが「あ、そうそう」と手を打った。

 

「お前らの雇用条件を一応確認しておくぜ。働きに応じた減刑、死刑の延期でいいな? あとは作ったゲームもいくらかプレイさせてやるよ」

 

「おいおい、それじゃあ足りてねェだろ――お前が死んだ場合の条件は? 事故でうっかり、なんてこともあるだろ? そうなったとき、オレたちの首も一緒に飛ぶんじゃたまったもんじゃねェからよ」

 

「ありえねーことは雇用条件に加える必要ねェだろ? そんときゃ勝手にしろや」

 

「……後悔してもしらねェぞ?」

 

「言っただろ。やれるもんならやってみろ、ってよ。それと、ゲーム開発をオレとはじめた仲間がいるんだが……ま、紹介は今度でいいか。そのうち会うこともあんだろ。……で、お前たちにやってもらいたい仕事だが――ゲームのアイテム作りだ」

 

 ジンがバインダーからカードを1枚取り出す。

 

「あん? なんだそりゃ」

 

「試作品さ。今から建設中の街へ行く。――『同行(アカンパニー)』使用(オン)! アントキバへ!」

 

「――なっ!?」

 

 次の瞬間、身体が浮遊感に包まれていた。気がつくとそこは建設中の街の中だ。アントキバ……ということは、ここは将来の懸賞都市か。G.Iに来たゴンたちが、最初にたどり着くことになる都市だ。

 アントキバにはすでにちらほらと人が見えた。さきほどジンが言っていたセンパイたち――流刑囚だろう。

 

「今のは念能力、じゃあねェのか?」

 

「スペルカードっつって、魔法――って設定の能力が使える、ゲーム内アイテムだ」

 

「オイオイ、つーことはなんだ。だれでもそのカードがあれば今のが使えるってことか?」

 

「あァ、その通りだ。どうだ? 最高に面白そうだろ?」

 

 それからジンはゲームのシステムやルール、製作途中のアイテムや建設予定の街について楽しそうに……本当に楽しそうに、何時間も語り続けた。

 

「ふー……とまァ、とりあえず現状決まってんのはこんなところだ。あとの足りない分はこれから考えながら作っていく感じだな」

 

「……すさまじいな」

 

 レイザーが零した。

 

「そういえばレイザー、お前は放出系能力だったな」

 

「あァ、それがどうした?」

 

「ならちょうどいい。お前、移動系スペルを担当しろ」

 

「は……?」

 

「さっき使った『同行(アカンパニー)』みたいなやつだな。ほかのヤツらにも念能力に合わせてそれぞれの開発を手伝ってもらう予定だ。いやー、助かったぜ。レベルの高い念能力者を大勢確保できて」

 

「ハッ、言いやがる」

 

 ジンにパパっと選別される。が……。

 

「あの、ジンさん。俺たちはどうすれば?」

 

「お前らはまだ四大行ができねーんだったか。んー、念能力者は多けりゃ多いほどいいしな……よし。まったく念ができねーヤツは土木工事に加われ。それ以外のヤツは――よろこべ。オレが直々に指導してやる」

 

「……!」

 

 それはなんという幸運だろうか! やがて世界最高峰とまで呼ばれるハンターとなる……いや、もしかしたらすでにそうかもしれないジンから念を教われるだなんて!

 そう俺は降って沸いた幸運に感謝し……。

 

「ちょうど、色々と試したいものがあったからな」

 

「え」

 

 ――あれ? なんか……イヤな予感が。

 

   *  *  *

 

 ジンが俺たちを連れて行ったのは、アントキバから北へ10キロほど行った崖だった。指示されるがままに梯子を伝って崖下へと足を下ろした。

 その場所が四方とも崖に囲まれた窪地になっていることに遅れて気づく。

 

 崖上から俺たちを見下ろし、ニッとジンは笑った。

 

「じゃあさっそくやるか」

 

「へっ?」

 

 困惑する俺たちを無視して、ジンはバインダーから取り出したカードを崖下にバラまいた。そのカードを見た瞬間、ぶわっとイヤな汗が流れた。

 ちょうど1分後。ボン! とカードが消え、代わりに現れたのは……ハエ、ハエ、ハエ。それらは俺たちへと群がってくる。

 

「ぎゃァああああああああ!?」

 

 逃げ回るが、あっという間に追いつかれる。

 

「あいだだだだだ!? 痛い痛い痛い痛い!? こいつら噛んできやがる!」

 

「死にゃしねェから安心しろ。まァ、めちゃくちゃイテーけどな」

 

 俺はこのハエに覚えがあった。G.I内でゴンやキルアを追い回していたモンスターの一種だ。でも……あれ? と疑問が浮かぶ。

 ハエに襲われている人と、あまり襲われない人がいる。

 

「そいつらはオーラを嫌う。だから、噛まれたくなけりゃしっかりと『纏』をがんばるこったな」

 

「そういうことは早く言え! へへっ、そういうことならオレサマにゃあ……いだだだだだ!? オイ、『纏』しても噛んでくるじゃねーか!」

 

「そりゃ、お前の『纏』がヘタクソだからだろ。こいつらはオーラにムラを見つけりゃ、そっから集ってくるからぜ。しっかりと維持するこった。ちゃんと『纏』ができるヤツはさっさと上がってオレについてこい」

 

「へへっ、そういうことならヨユーヨユー」

 

 ハエに噛まれていなかった受刑者のひとりがはしごへと手をかける。

 

「あ、忘れてた。――ゲイン!」

 

 ボンッと音を立ててはしごが消える。ジンの手に一枚のカードが握られていた。

 

「おいなにしやがる!」

 

「上がりたきゃ、自力でこの崖を上がってくるんだな」

 

「……チッ、ナメやがって。べつに梯子なんざなくたって……アイダダダダダ!?」

 

 意気揚々とクライミングをはじめた受刑者があっという間にハエに集られ、崖の途中から落下した。

 

 難易度の高さに頬が引きつった。

 ただ『纏』を維持するだけじゃない、その状態で自由に動けるようにならないとこの窪地からは脱出できないのだ。

 

「定期的にメシは運ばせるから安心していいぞ。じゃあな」

 

 それだけ言ってジンはあっさりと去っていった。

 

「え? うそん。指導ってたったこれだぎゃァあああああ!?」

 

 ジンに不満をぶつける暇すらなく、俺は群がってくるハエの対処に追われることになった。

 そうして、やがてG.Iと呼ばれることになるこの島での生活がはじまったのだった――。

 




・考察
メビウス湖は海か?

答えは海。
無限海と書いてメビウスとルビ振ってある。作中でもなんども「海」と呼称されている。なによりシーハンターのモラウさんが……その、アレになっちゃうからね。

水も塩水だと思われる。
1巻でゴンが「塩気が多い」と言っている。

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