RISKY×DICE〜転生した俺の念能力がリスキーダイス〜   作:スプライト1202

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久々なので初投稿です(?)。

以下、前回までのあらすじ。

マチに見送られ流星街を出立した主人公マーティー。彼はクート盗賊団の一味に間違われて逮捕され、G.Iに連れてこられてしまう。
そんな彼にジンが課したのは、崖登りという名の特訓だった。


ゼッケイ×ナ×コウケイ

 G.Iでの修行の日々が過ぎて行く。

 俺は『纏』を維持しながら崖の壁面を登っていた。あと少し……あと少し……。だんだんと身体にハエが群がりはじめる。その数は壁を登るほど増していき――。

 

「アイダダダダダ!? ――ぎゃふん!」

 

 痛みに耐えきれず、壁から落下してしまう。

 

「アイダダダダダ! しっ! しっ! 噛むな! このっ……落ち着け、すー、はー」

 

 ようやく『纏』が安定し、ハエが去っていった。

 物理的なダメージがまったくないからだろうか? 逆にいつまで経っても痛みに慣れない。

 

 ……また、落ちた。

 焦りが俺を苛もうとし――深呼吸してそれを飲み込んだ。

 『点』を乱せば『纏』が乱れる。そうするとハエに噛まれる。それらが繋がっていることを、俺は自分の身をもって理解していた。どちらが欠けてもいけないのだ。

 

「もう一回だ」

 

「がんばるねェ、ガキンチョ。なーにそんなに必死になってんだか」

 

 ほかの受刑者からやっかみが飛んでくる。どこかの不良崩れだろう。アイツらはもうダメだ。すでに諦めちまってる。

 俺はやっかみをムシして再び壁に手をかけた。

 

「お前もさっさと諦めアイダダダダ!? あっクソっ、こっち来んな!」

 

 さらに絡んでこようとした受刑者がハエに集られる。

 悲鳴が続き――唐突に静かになった。痛みのあまり気絶したらしい。

 

 あれからいったい、何ヶ月が過ぎた?

 最初は数えていたのだが、先ほどの受刑者のようにハエに噛まれた痛みで気絶することも多く、いつの間にか日付の感覚はなくなってしまっていた。

 

 しかしこの極限状態は、確実に、そして急速に『纏』の精度を上昇させていた。

 外国語を覚える一番の近道は海外へ行くこと――必要に迫られること。それを体現していた。

 

 だがひとつだけ、これだけは言わせてくれ。

 

「ジンのクソヤロォおおお! ここから出たらゼッテーぶっとばしてやらァあああ!」

 

 なァにが『指導してやる』だ! これのどこが指導だよ! 放置プレイもいいとこじゃねーか!

 

 最初の『ジンさん』呼びも今は昔。原作キャラへのあこがれなんざ、とうの昔に消え去った。

 ジンのやってることは間違ってない。実際成長してるし。だが納得いかない。めっちゃ腹立つ。ジンが高い実力を持ち多くの功績を残しながらも、ハンターみんなから罵倒を投げられるのがわかった気がする。

 

 あるいはこれすらもジンの狙いなのかもしれないが。

 ――反骨心とやる気は類義語だ。

 

「ふっ!」

 

 手足に力を籠め、再び崖を登りはじめる。ゆっくり、しかし確実に。

 焦るな。焦れば『纏』が乱れる。

 

「はぁ……、はぁ……」

 

 崖の出っ張りに手をかける。力が篭もる。そのたびに『纏』が揺らぐ。それは、自然体を主とする『纏』とは対極にある行動だ。

 だから、その両者を両立させる方法はひとつしかない。つまり”慣れ”だ。

 

 だんだんと空が近づいてくる。

 あとすこし。ここからがしんどい。欲は『点(こころ)』を、すなわち『纏』を乱れさせる。いつもここで失敗する……のだが、今回はいつもとなにかが違った。

 

「……あれ。なんか、空が、広い」

 

 身体は崖登りに全力を費やしているのに、頭にはぼんやりと関係ないことが浮かんでいた。

 今ごろマチはなにやってんだろ。まぁアイツのことだし、どーせツンケンしてんだろなぁ。アレがマズイ、コレが汚い、ソレが嫌い。何度聞かされたことか。

 

「オイオイ。あのガキ、行けんじゃねぇか?」

 

「マジかよ。あんなガキが?」

 

 外野の声がやけに鮮明に聞こえる。だが、それらが俺の『点』を乱すことはない。どころか「ははっ」と思い出し笑いがこぼれていた。

 そうだ、今思いついた。流星街に戻る際にはひとつ、アイツにプレゼントを買っていってやろう。いつも、長い髪をうっとうしそうにしていたから――。

 

「――あれ?」

 

 俺は指先に違和感を感じ取った。

 壁が、ない。

 

 何度も壁を登っていたせいでボロボロになった俺の手が、いつの間にか崖のフチに掛かっていた。自然と背後を振り向いていた。受刑者たちが俺を見上げている。ハエはまるで諦めたかのようにいなくなっていた。

 

 だれが言っていたんだっけ。

 人の成長は一定ではない――あるとき急にドカンと伸びるもんだ。

 

「広いな、この世界は」

 

 遠い。窪地の端々までよく見える。その向こうには青々とした森がずっと先まで広がっている。そのさらに上には蒼穹。強烈なコントラストが目に刺さる。

 涙が出そうになる。俺はG.Iという世界の美しさを目の当たりにしていた。

 

 グッと身体を持ちあげ、崖の上に立ち上がった。

 それはもはや俺にとって容易いことだった。

 

「……ぷはっ」

 

 今さらになって、ぶわっと汗が噴き出す。膝から力が抜け、へたり込む。

 崖下から「あんなガキに先越された!」「冗談キツいぜ!」と悲鳴。

 

「そうか。俺、やったのか。……は、はは……そうか、やったのか! 俺! やったのか!」

 

 感情が遅れてこみ上げてくる。その喜びをほんの少しだけ噛みしめてから、俺は頭を振るってそれを払った。

 

 そうだ、思い出せ。

 俺の目標は”ここ”じゃない。

 

 アントキバへ向けて足を踏み出す。まだ膝が笑っていた。

 拳を打ちつけ、しっかりしろと活を入れる。一歩、一歩、着実に。歩みはだんだんと速まり、やがては全力で駆けていた。

 

 すぐに自分の変化に気づいた。

 

「身体が、軽い」

 

 『纏』を身につけた成果だろう。一歩踏み出すたびに身体がグンと加速する。足がいままでにないくらい強く大地を踏みしめている。

 まるで身体が風になったように木々の合間を駆けていく。

 

「すぐ迎えに行く」

 

 アントキバはあのころよりもずっと近かった。

 

   *  *  *

 

 森を抜け、アントキバに帰還した。

 アントキバの様相はまるっきり変わっており、それこそ街と呼ぶに足るものへとなっていた。

 

「おーボウズ、見ない顔だな。崖下組か?」

 

 土木作業をしていたらしい男が俺に気づき、声をかけてくる。俺が頷くと男は抱えていた木材を置き、「ついてこい」と歩きはじめた。

 道中、ずっと気になっていたことを訊ねた。

 

「今日って何月何日ですか?」

 

「12月2日だ」

 

 俺がここに放り込まれたのが5月だったから、7ヵ月が経過していることになる。マチに教わっていた期間を合わせればちょうど1年で『纏』を習得した計算だ。

 おかしな精孔の開きかたをしている、と言われたにしては早い。

 

 本編でビスケも言っていたが、G.Iがいかに念能力者の育成に優れているかがよくわかる。

 石田スイが書いたヒソカの過去編でも『早くて1年』掛かると語られていたし、プラマイゼロむしろプラスといったところ。

 

「お前タイミングがよかったな。今日はちょうどジンの野郎が来てる。これからなにさせられるかはアイツから直接聞け。あー……ただし、アイツをぶん殴るんならオレが去ってからで頼むぞ」

 

「……」

 

 わざわざそんなことを言うくらいだ。過去にやったヤツがいるんだろう。

 気持ちはすごくわかる。

 

 そうこうしているうちに人だかりが見えてきた。その中心にいたのはほかでもない、ジンだ。

 となりにはレイザーもいる。すこし丸くなったか? どことなく目元が優しくなっている。

 

「おい、ジン。連れてきたぞ。崖下組だ」

 

「苦労さん。んじゃ、お前はもう帰っていいぞー」

 

「チッ……相変わらずオレらをこき使いやがって。いつか覚えとけよ」

 

「おう、精々がんばれ」

 

「……だァ~、クソっ」

 

 ガシガシと頭を掻き、男は去っていった。ケンカ腰だったが、なんというか……気心の知れた仲だからこその軽口、みたいな。

 ほかの、今ジンの周りに集まっている人たちもそうだ。殺し、殺される関係だったはずが随分と仲がよくなっている。さすがはジンというか、なんというか。

 

「ようマーティー、遅かったな」

 

 牢屋での自己紹介を覚えてくれていたようだ。

 しっかしコイツ、遅かったとは……どの口が言ってやがるんだか。

 

「ジン、牢屋での約束――」

 

「お前、ちょうどいいところに来たしなんかアイデア出せ。この街のイベント考え中なんだけどよォ、なーんかしっくり来ねーんだよなー」

 

 ……こ、コイツほんま。

 人の話を聞け! とツッコミたいがどうせ聞きやしない。さっさと話題を切り上げよう。

 

「あー、ジャンケンとかいいんじゃないっすかねー」

 

「採用」

 

 即決かい! 原作を知っているとは言え……。

 同じことを思ったのか、レイザーからもツッコミが入る。

 

「オイオイ、そんなテキトーでいいのかよ」

 

「いいんだよ。つーかテキトーじゃねェ。この街はプレイヤーの多くが最初に来ることになる場所だからよ、能力が低いヤツにも勝ち目のあるゲームが欲しかったんだ。なおかつ、実力が飛びぬけてるヤツなら動体視力でさっさと勝ち抜けられる」

 

「なるほどねェ。そーいうもんか」

 

「それでジン、約束の――」

 

「じゃんけんホイ!」

 

「え、あ」

 

 思わずグーを出す。ジンはパーを出していた。

 

「オイの勝ち。ってことでお前、今からドリアスのテスト役な」

 

「……はい?」

 

「ちょうどいいだろ?」

 

「いや、ちょうどいいってなんだよ!? 俺はそんなヒマ……そもそもドリアスって、」

 

「ギャンブル都市だ」

 

 ドリアスがなにかを聞いてるんじゃねェえええ!

 俺は――。

 

「そこ攻略して景品のカードを入手できたら釈放してやってもいいぜ」

 

「っ!?」

 

 釈放。それはまさに俺が望んでいたことそのものだ。

 俺がさっきから何度も話そうとしていたことだ。

 

「な、悪くねェ条件だろ? あーでも改善点まとめてレポート提出までセットな。レポートのできが悪けりゃあ、たとえカード入手できても釈放はナシ。んじゃレイザー、案内しといて」

 

「……ったく。――ブック」

 

 レイザーが俺の肩に手を置いた。

 

「『同行(アカンパニー)』使用(オン)! ドリアスへ!」

 

 身体を浮遊感が包む。

 景色があっという間に後方へと流れていく。その光景に一瞬目が眩み――次に目を開いたときには、豪奢な街が視界いっぱいに広がっていた。

 




・考察
ジンの念能力は未来視……?


可能性はある、と思う。
ジンはレイザーに対して「いずれ”息子”がやってくる」と述べている。
つまりその時点ですでに生まれてくる子どもの性別がわかっていた、ということ。

だが、そう言っている当時のジンはまだかなり幼い(ように見える)。


ただ、可能性ウンヌンでいえばほかにもいろいろ考えられて、

1.ジンが未来のわかる念能力を持っている。
2.(ジン以外の)占いのような念能力者に教えてもらった。
3.単純にレイザーが参入(打ち解けた)のが、G.I発売直近(数ヶ月~1年以内)。
4.ゴンの出生は、一般的な出産とはちがう。

などなど。
正直、情報が足りないせいで考えてもキリがない。


なので本作ではオッカムの剃刀に従った。
原作に記述のない念能力や設定が介入してこない3.を採用している。
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