RISKY×DICE〜転生した俺の念能力がリスキーダイス〜   作:スプライト1202

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カクヘン×スル×カクリツ

 ギャンブル都市ドリアス。

 俺はそのあまりに豪奢な街の光景に圧倒されていた。

 

「こっちだ」

 

 レイザーの背を追う。

 ふと思った。すでにレイザーはかなりの自由を与えられているようだ。たとえばだが、逃げようと思えば逃げられそうなくらいに。

 

「なぜオレが逃げねーのか、って思ってんだろ」

 

 ドキッと心臓が跳ねる。

 いや、ちょっと違うけど……俺のこと逃がしてくれたりしないかなー、とは思ってた。

 

「残念だがアイツはそこまで甘くねェよ。この島全体を監視してるヤツがいる。それも、ふたり」

 

 イーナとエレナだ、とすぐにわかった。それぞれグリードアイランドへのログインとログアウトを担当しているGMだ。

 いや、ドゥーンとリストのことかもしれないが。

 

 にしてもレイザーはツンデレだなァ。

 監視がいたからといって、戦闘能力でレイザーがジン以外に劣るとは思えない。

 

「なんだそのツラは」

 

「え!? い、いや~」

 

「チッ……まァ、べつに構いやしねェか。オマエはジンのお気に入りみたいだしな。……ここから先はひとりごとだ」

 

 そこから先の話は知ってのとおり。

 ジンはいずれ息子がこの島へやってくると告げた。そのときは遠慮なくぶっ飛ばせ、と。そう”レイザーに”頼んだ。レイザーははじめて”レイザー”という個を認めてくれたジンに――。

 

 と、その話を聞いて俺は思った。

 ん? ちょっと待て。てことはもう今、ゴンって産まれてるのか!? 

 

 今が1986年12月2日。ゴンが産まれるのが年齢から逆算して、えーっと……1987年5月5日か。てことはゴンは今、母親のお腹の中にいるってことか。

 妊娠5ヶ月……性別がわかってもおかしくない時期だ。あるいは”それ以外”か。

 

 ゴンの出生には秘密が多い。

 それこそ人間じゃない可能性だってある。

 

「……しゃべりすぎたな。ここが目的地だ」

 

 ひときわ大きな建物の前で立ち止まる。そこにはハンター文字で大きく『CASINO』と書かれていた。

 

「案内はここまでだ。これを持っていけ」

 

「おっとっと」

 

 投げられたものをキャッチする。それは指輪だった。

 

「まァ、精々がんばるんだな。――『磁力(マグネティックフォース)』使用(オン)! ジン!」」

 

 レイザーは恥ずかしさを紛らわせるかのように、さっさと飛び去ってしまった。

 いや、それはいいんだけどバインダーの使いかたも、どのカードを入手したらクリアかもまだ聞いてないんだが。

 

 俺じゃなかったら詰みかねないぞ、これ。

 ったく。と嘆息してから指輪を嵌める。

 

「ブック! ……ふむ?」

 

 パラパラとページをめくる。

 俺のプレイヤー名は『GUEST256』になっていた。わかりやすくテスト用のIDだな。数字を見るに、ほかにもテストプレイをしている人は大勢いそうだ。

 今考えてみると、あの崖登りもテストプレイの一環だったのだろう。

 

 バインダーは俺の記憶にあるものと差異が見られた。たとえばまだ指定ポケットとフリーポケットの区分けがなかったり。

 こういった違いがじつにアルファ版らしい。

 

「さて、と。行くか」

 

 カジノに足を踏み入れる。

 

「お、おぉ~」

 

 一気に騒がしくなる。広大で芸術品のようなエントランス。

 高級感と鉄火場独特の空気に、場違い感を覚えてしまう。

 

 いかんいかん、と頬を叩いて気合を入れ直す。

 どのカードが今回のテストプレイにおける収集対象か考えよう。

 

 ゴンたちがドリアス(またはその周辺)で手に入れた指定ポケットカードは『魔女の媚薬』『記憶の兜』『リスキーダイス』『レインボーダイヤ』『大ギャンブラーの卵』の5枚。

 中でも目玉カードといえば――。

 

 エントランスを通り抜けた奥、真正面をスロットコーナーが陣取っていた。

 ぐるっと台を見て回る。台の上部には排出率と景品の名前が記載されていた。台の群れの中で発見する。

 

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絵柄 景品

777 レインボーダイヤ

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 現代日本では、という前提が入るためあくまで参考にしかならないが……。

 スロットマシンのコマ数は1リールあたり21個以下と決められている。20*20*20=8000。1/8000は0.0125%。1/(21*21*21)はそれよりも少ないわけだから、ざっくり0.01%とちょっと。

 約0.01%。作中でキルアが言っていた言葉と合致する。

 

 台を見るとメダル1枚の交換レートが50ジェニーだった。プレイは、カジノ内のメダルでも、G.Iのジェニーカードでもどちらでもできるようだ。

 1回転でメダル3枚だから実質150ジェニー。

 

「……あれ? わりとどうにでもなるんじゃね?」

 

 現在、無一文の俺が言うのもなんだが、余裕なのでは? と思ってしまった。

 我がことながら現代っ子の感覚恐ろしいな。ガチャ文化に染まったものなら0.01%はむしろ良心的に感じることだろう。

 

 電卓がないためどんぶり算になるが、排出率1%を100回ガチャして引ける確率が約60%だったはず。0.01%を10000回言引いたときの確率も同程度に収束するだろう。

 

 それにスリーセブン以外が揃ったときに貰えるメダルもある。

 スロットの還元率がたしか8割くらい。今回は1等が物品(レインボーダイヤ)だからそれよりもずっと低くなるだろうが、それでも何割かは返ってくるわけだ。実際に賭ける金額以上にチャンスは多い。

 

 レインボーダイヤは作中で語られていたよりもずっと”安い”。

 プロポーズが100%成功するトンデモアイテムが、そんな簡単に手に入る。

 

「相変わらずH×Hの世界の物価はよくわからんな」

 

 天空闘技場では簡単に20億ジェニーが手に入る。G.Iは定価でも58億ジェニーする。G.Iで500億ジェニーを手に入れるために何十人と殺す。

 ……うーん。G.Iの1ジェニーが外の世界の1ジェニーに比べて重いだけ、と言われればそれまでだが。

 

 なんにせよまずは、元手となるお金を稼がな――。

 

「おっと、っと!」

 

 考えごとをしながら歩いていたせいで、正面から歩いてきた人にぶつかってしまう。ジャラジャラジャラと、その人が持っていたメダルがあたりに散らばった。

 

「すいませ、」

 

「お、オレのメダルだ! どけ! だれも触るな!」

 

 拾ってあげようとしたら、すごい剣幕で怒鳴られた。

 まるで周囲がみんな泥棒にでも見えているかのよう。相手はメダルを掻き集めると、こちらを睨みつけて「死ね! クソがっ!」と暴言を吐いてから、去っていった。

 

「え、えぇ……?」

 

 いや、俺が悪かったけどそこまで言わんでも。そんなんじゃあ、どんな運命の女神にだってそっぽを向かれてしまうだろうに。

 そう肩をすくめ歩き出そうとしたそのとき、視界の端にキラリと光るものを見つける。さっきの男が拾い忘れていったのだろう、メダルが1枚転がっていた。

 

 拾い上げて見ると、メダルはきれいなデザインをしていた。

 このカジノのロゴが刻印されている。裏面にはグリードアイランドのロゴ。こういう細かいところにまで拘っているのが、ジンらしい。

 

「うーん」

 

 わざわざたった1枚を、さっきの男を追いかけて返すのもなぁ。揉めるのが目に見えているし。

 

「ま、いっか」

 

 俺は落としもの箱に放り込むつもりで手近なスロットマシンにメダルを投入し、レバーを下ろした。そこへ「オイ」と背後から声が掛かる。

 

「はひィ!? ……あれ? レイザー?」

 

「今、いいか? そういやァ、バインダーの使いかたや入手対象のカードについて説明すんのを忘れてたぜ」

 

 あ、やっぱり忘れてたんだ。

 さっきの男が帰ってきたのかと思って、ちょっとドキッとしてしまった。俺はテキトーにボタンを押してさっさとゲームを終わらせ――。

 

 

 ――けたたましいほどのファンファーレが鳴り響いた。

 

 

 見れば『7』『7』『7』が横一直線に揃っていた。

 見間違いかと目をこするが、何度見てもスリーセブンが並んでいる。

 

「え、えーっと。どうしたらいいスかね、これ」

 

 は、はは、とレイザーを振り向きながら問う。

 彼は額を押さえ天を仰いでいた。

 

「……おいジン、これは想定してねェぞ」

 

 レイザーは小さくそう呟いた――。

 




・考察(というか妄想)
ジンの能力は運命操作……?


前回の考察の続きというわけでもないけれど、個人的に好きなジンの念能力に関する考察というか妄想を。
ジンが先天的に「運命操作」の念能力を持った特質系だとしたら……。


リスキーダイスのカードを作ったのはジンじゃないか、とか。

ゴンの性別がわかったのは「運命操作」の副次効果じゃないのか、とか。

ジンに近しい人が軒並み不運で亡くなっているのは能力の悪影響じゃないか、とか。

地元から離れたのはミトを不運から遠ざけるためじゃないか、とか。

ゴンを地元に置き去りにしたのも不運から遠ざけるためじゃないか、とか。

ジンが言っていた「欲しいモノ」とは不運にも負けない強い仲間なのでは、とか。

改名したドゥーンの運気が上がったのは「運命操作」の影響じゃないのか、とか。

ジンが相手の能力をコピーできるのは、自分の運命(自分がその能力を習得できた可能性)を弄ってるからじゃないか、とか。


これだけで一本作品を書けそうなくらい妄想が広がる。
面白い考察(IF)だと思う。

本編に出すかは微妙なので、ここでネタ供養。

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