地に足つけた浮かれたヒーロー   作:マーカー

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第13話 目立ちたがり屋の騎馬戦

自身の鉢巻きを自ら投げ捨てる千土の行動への戸惑いから始まった第二種目の騎馬戦。

最初のインパクトこそ強かろうとここまで残った実力者達はすぐに意識を取り戻すと千土達から一瞬遅れながらも行動を始める。

 

「何のつもりか知らねえがいらねぇってんなら貰っちまえ!!」

 

開始早々に放り捨てられた千土チームの鉢巻きに体格の都合上騎手意外の選択肢がなかった峰田が率いるチームが手を伸ばす。

 

「4位のポイントいただ―「んな訳ねぇだろォよォッ!!」―うおっ!?」

 

鉢巻きを捨てると同時に全力で緑谷チームへと駆け出していたはずの千土チームがその勢いのまま衝突してくる。

 

障子の体格に任せたタックルを騎馬である砂藤に当てバランスを崩した峰田の鉢巻きを奪うと同時に耳郎のイヤホンジャックで落とした自分達の鉢巻きを回収する。

 

「撒き餌作戦大成功ってな!」

 

「きたねぇぞ!!」

 

「ヒーロー志望が背負ってるもん捨てるかってんだ、次からは良く考えて行動しろな!」

 

千土はそう言い残すと同時に障子が動きを再開し耳郎も引っ張られるようにそれに続く。

 

「…次、2時の方向な、あと予定通り位置を変えるぞ」

 

確保した鉢巻きを首に回しながら千土は他のチームの気迫や観客席からの歓声本来で掻き消される程の小声で指示を出す。

聴覚に優れる耳郎と複製腕で千土の近くに耳を造った障子のみがそれを聞く。

 

これがこのチームの優れたところ、他のチームと違って相手に聞こえないように指示を回せる。

障子と耳郎が指示した位置に走ると同時に千土は僅かに今の位置から前のめりに姿勢を整える。

 

『おっと、早速他のチームの鉢巻きを奪ったチームが出やがったな!しかも妙にせこい手で!!』

 

『まぁやり方がせこいのは否定しないが相変わらず連携は確かだな。味方の聴力と広範囲の視界で完璧にタイミングを合わせていた』

 

他のチームも食いついた時や罠を警戒して誰も来なかったらどうするつもりだったのか、穴の多い作戦だが結果としては大成功を収めた千土の作戦に一応の評価を下す。

 

そしてそう言葉を紡いでいる内にも状況は目まぐるしく動く。

 

▼▼▼

 

千土の異常な行動を無視して1000万Pを狙う貪欲な者達が次々と緑谷チームに攻撃を仕掛けていた。

 

最初に足元の地面が沈み始め足が地面に飲まれかけた。

もしや千土の仕業かと一瞬思ったが彼は騎手である為地面への干渉は出来ないとすぐに結論付け周りを見るとB組の生徒にして轟と八百万と同じ推薦組の骨抜の姿があった。

 

最初の奇襲、しかし緑谷、そして常闇は万が一の為にも地面への警戒を怠っていなかった。

その為すぐに麗日、そしてサポート科の発目に指示を出して宙に逃れる。

 

続く青山達を騎馬に添えた蛙吹の舌が迫るもそれは常闇の"闇影"が弾く。

追撃を躱したと思えば次はB組の固める個性と更なる追撃――そして

 

「デェェェェクゥゥゥゥッ!!調子に乗ってんじゃねぇぞォ!!」

 

1-Aの修羅が吠える。

固まる個性から逃れようとすれば激情に染まった顔で爆豪が迫る。

 

「"闇影"!!」

 

しかしそれも辛うじて常闇の個性がガードする。

爆豪側も追撃を狙うのは難しかったのか一度自身の騎馬の下へと帰還する。

 

「分かっていたけど狙われる…」

 

「だが全てのチームが狙っているわけではないな。漁夫の利を狙う為に安全圏で控えている者、他に狙われることを避け別のチームを狙う者もいる」

 

「うん!とにかく僕たちは最後までこの1000万Pを守りぬいて――」

 

「――そうはいかねぇな」

 

緑谷の言葉を遮って目の前に姿を見せたのは2人だけの騎馬に乗る3人チーム。

 

「来たか地城」

 

「よォ常闇…お勤めご苦労だったな。――もうこっち来ていいぜ?」

 

「――えっ!?」

 

騎手となり自身の個性が使えないにも関わらず余裕に満ちた表情で告げた地城の言葉に緑谷は一瞬思考が凍り付いた。

 

「――ッ緑谷右だ!!」

 

「え!?うわ!?」

 

常闇の警告に咄嗟に緑谷は頭を下げる。

自身の頭上を耳郎のイヤホンジャックが通り過ぎたのはその直後だった。

 

「くっそ!上手くいくかと思ったんだがな」

 

「あ、ありえない話なのに心臓止まるかと思った」

 

「…地城、まさかとは思うが…これの為に3人チームで挑んだのか?」

 

真面目に悔しがる千土と本気で顔を蒼白させている緑谷に挟まれ常闇は曖昧な表情を浮かべる。

 

確かに心臓には非常に悪い一手だろう。

基本的にこの競技、4人で組まないメリットがあまりに少ない。

人数が多ければ防衛範囲は増え、加えて個性という手札も増すし時間内まで戦い続ける負担も軽減できる。

そこを敢えて3人、しかもいつも一緒に行動している友人関係のチームで普段は常闇自身もそこにいる人間。相手がその状況であの発言をすれば緑谷からすれば今までの多くのチームによるプレッシャーと合わさって「まさか」と一瞬でも思ってしまうある意味恐ろしい作戦だ。

 

だがまさかこれの為だけにそんなリスクに満ちた作戦は――

 

「あ、バレた?」

 

千土は酷くあっさりと、障子と耳郎は実に申し訳なさそうな顔をする。

 

「…どうやら俺は随分過小評価されているようだな…」

 

わざわざ自身の個性を弱体化させる騎手というポジション、おまけにこんな不意打ち頼りの作戦の為のチーム編成、さすがの常闇も僅かに怒りが湧く。

 

「緑谷!――どう動く!?」

 

「地城君の個性は地面に足が着いてなければ使えない!でも攻めには行けない!逃げの一手!!」

 

「了解した!」

 

しかしそれでも思考は冷静に、相手は十全に個性を活かせない状態だが彼らに意識を向ければ他のチームに狙われかねない。

自身の騎手に従い麗日、発目と共にサポートアイテムの推進力で千土達から離れる。

 

「逃がすな!障子前し――いや下がれ!!」

 

不意打ちが失敗した以上他に手はなし、とにかく障子と耳郎のリーチを活かして攻撃をと思ったが――厄介な奴が動き出したようだ。

 

直後、緑谷を囲むかの様に巨大な氷山が周りの生徒を巻き込みながら形成される。

 

「――っやばいな…」

 

「地城?」

 

「あ、あぁいや何でもない気にするな耳郎…さて」

 

不意にぽつりと呟いた千土に耳郎は違和感を感じるも千土は首を振って、この状況の現況へと視線を向ける。

 

「いよいよ参戦か、"暫定"最強?」

 

「――お前、今個性使えないんだってな」

 

「聞いてやがったのかよ」

 

軽い挑発を向けてみれば返ってきたのは冷え切った声。

緑谷の奴、必死とは言え容赦ない真似をしてくれる、見れば周りのチームも僅かにこちらを睨んでいる。

実質2人のチームとバレた以上今からは積極的に狙われるかもしれないが今は目の前の相手が先だ。

 

「なら今のお前に用はねぇよ、あるのは…」

 

しかし轟の鋭くなった目は千土をすり抜け緑谷に突き刺さる。

 

「くそ、もう時間がねぇ、俺達も1000万狙うぞ!!」

 

競技時間も終盤に差し掛かり既に鉢巻きを失い余裕の無いチームも加わり緑谷達を包囲する。

しかしそれは極めて迂闊な行動だ。

 

轟チームの一人、上鳴の身体が僅かに動く。

 

「障子、耳郎、俺の合図で跳べ」

 

密かに小声に指示を出す。

 

直後、周囲一帯に光をまき散らして強力な電流が駆け巡る。

過剰な痺れに動きが止まると次は凍結、上鳴と轟の二段構えの攻撃に集まっていた大半のチームが拘束される。

 

「マジか…」

 

辛うじて逃れたのは上鳴の放電の直前に跳躍した千土のチームと同じく咄嗟に動けた緑谷のチームのみ。

他でいうと爆豪達のチームがここから離れた位置でB組の生徒達と何やらやり合っているようだがこの場にいうのはこの3チームのみだった。

 

「流石にお前らはこれぐらいじゃ捕まらないか…まぁいい、そろそろ取りに行くぞ」

 

轟の氷が地面を伝い緑谷に迫る。

圧倒的な攻撃範囲を誇る轟の凍結能力、しかし緑谷は以外なことにそれを辛うじて避け続ける。

 

(轟の能力の癖を完全に理解してやがる、緑谷の奴…凄いな)

 

轟の個性の癖。

右の凍結、左の燃焼。

相反する2つの属性を操るその"個性"だが轟はその"左"を使わない。

事情は知らずとも緑谷はそこを利用する。

 

結果、右の凍結による攻めが僅かに遅れる左サイドを維持することでこの均衡状態を作り出した。

――しかし、いつまでも続かれるとこちらももう限界だろう。

 

「どうすんの…どのタイミングで仕掛ける?」

 

――時間もあと僅か、次の狙い目で例の策をやるぞ

 

轟の凍結攻撃。

緑谷の回避。

B組の生徒の油断。

爆豪の反撃。

あらゆる状況を障子は見る、耳郎は聞く。

 

複製腕の目が捉える。

――B組の生徒の鉢巻きを奪った爆豪を彼のチームの瀬呂が拾い、"全員が地に足を着いた"

 

耳郎の耳が捉える

――均衡状態の轟と緑谷が互いに睨み合い、"どちらも地に足を着いている"

 

「「――っ!?」」

 

直後、各チーム全てが立つ地面が沈む。

ありえない、それが出来る個性の奴は先程騎手では個性が使えないと言われたばかりのはずだ。

 

頭と首元、鉢巻きを巻いた部位を何かが通り過ぎる。

バランスを崩された騎馬達が立て直す隙を突かれ意識がある騎手もそれを防げなかった。

先程まで凍り付いて意識がなかった者達は尚更だ。

 

「「――っ、鉢巻きが!?」」

 

宙を見れば無数の砂の塊が浮いていてそれらに"全チーム"の鉢巻きが捕らえられている。

砂の行き先は当然、チーム全員が騎馬になった地城チームの下へ。

 

「っ!?おいルール違反じゃねぇか」

 

「騎手が地面に落ちた状態で戦闘続行は――」

 

「――おーおー、好き勝手言われてるなァ、何か言ってやってくれよ…大将!!」

 

搔き集めた全チームの鉢巻きを千土は手にし、それを自身の頭上の存在の手渡す。

 

「ルール違反何てしてないよーだ!油断した君らが悪いんだー!!」

 

何もない空間から明るい少女の声がする。

 

「――っ!?葉隠か!?」

 

1-Aの全員が絶句する。

確かに他のチームでは声がしなかった。しかし行き交うチームの中で遠距離からの攻撃能力がある訳でもない"透明人間"への警戒はあまりに薄過ぎた。

 

その結果が千土が額に回していた自分達のチームの鉢巻きのみを同じように見えない額の位置に巻いて残りのチーム全員の鉢巻きを同じく首の位置に巻いた透明人間の姿だった。

 

この時全員は"開始と同時に千土が鉢巻きを一度捨てた意味"を理解する。

開始時、騎手は必ず自チームの合計Pの記されたポイントを巻かなければならない。

これを地城と葉隠は位置を調整することで正面から重なって見せ千土が頭に巻いているように見せかけた。

 

離れた位置でセットする以上開始時はそれで良い。

離れた位置ではその微妙なズレには気付きにくく、何より大半のチームは1000万Pという圧倒的魅力を保持する緑谷チームに意識を向け、緑谷チームはあらゆるチームに警戒しなければならないのだから。

 

しかし、競技が始まればそうはいかない。

他チームとすれ違えば横から頭に何も巻いていない千土と何もない筈の空間で輪になる鉢巻きが見えてしまうのだから。

 

――だからこそ千土は開始と同時に自分の正面に潜んだ葉隠の頭から鉢巻きを抜き取って捨てた。

それが別の作戦目当てあるように見せかけて。

その後回収したものを騎馬が巻こうがそれはチームの勝手だ、一度手放した鉢巻きを千土が巻くことで"個性"を使えなくなる癖して騎手をやりたがる目立ちたがり屋の騎馬が居るだけだ。

 

「誰がわざわざ自分の"個性"も活かせない土俵で、数で不利な3人チームで挑むかよ」

 

「本当に無茶苦茶、博打打ちすぎでしょ?」

 

「実は賭け事の経験があるんじゃないか?」

 

「馬鹿言うな障子!俺は未成年だぞ!?」

 

得意気に笑っていたはずが一緒に組んでいるはずの仲間の騎馬達からあらぬ誤解を受ける。

先生方やプロのヒーローが注目している場所で言うのは止めてくれないものか。

 

「さぁポイント独占だぁ!残り30秒、何処からでもかかってこーいっ!」

 

「悪い葉隠お前もう仕事ない。あとは落ちない様にだけしてて」

 

「え!?――「来るぞ、4時の方向!!」――」

 

見えないが得気に胸を張っているのだろう、しかしこの作戦が成功した以上彼女の役目は既に果たしたものだ、あっさり切られたことに葉隠が気の抜けた声を出した直後障子の警告が聞こえる。

 

「おっと!早いな爆豪」

 

「ッ!…舐めた真似しやがってクソ野郎がァァァッ!!」

 

穴の中から這い上がるのに時間がかかる騎馬を捨て、爆発による推進で単騎突撃する爆豪。

しかしその行動は全方位に目を向ける障子の複製腕と耳郎の超聴覚で筒抜けだ。

すぐに石の壁を形成し爆豪を地面に弾き落とす。

――これで爆豪は一度騎馬と陣形を作り直すまで復帰できない。

 

「峰田のチームが立て直した」

 

「OK、また落とす」

 

砂藤が自身の怪力を用いてチームメンバーを纏めて背負い這い上がったのを耳郎の耳が拾う。

申し訳ないがその這い上がり踏みしめた地面をまた陥没させる。

――これで峰田チームもまた立て直しだ。

 

「っ9時方向、蛙吹の舌だ!」

 

「ナイス障子!!」

 

宙に浮かせた砂を集めて壁にする。

穴の中で騎馬を組み直して這い上がらず舌だけで奇襲を仕掛けたようだがそれでは視覚での状況把握が出来ずに軌道を変えられないだろう。

 

とはいえ、そもそも1-Aにおいて視覚と聴覚による索敵能力に優れた障子と耳郎、五感は並だが人知れず探れる葉隠を独占したんだ。この状況でこのチームが負けるはずがない。

足音での探知は投げ捨て相手の行動把握は耳郎と障子に任せてある。

残り20秒、全てのチームの攻撃を俺が防げば恐らく最終競技に残るのは"このチームのみ"。

――有言実行にこれ程相応しい姿はないだろう。

 

会場にいるプロヒーロー達でさえ息を飲む。

彼らもまた想像もしていない展開に見入っているのだ。

 

千土は張り詰めた息を吐いて集中を一気に全身に巡らせる。

 

「拳――奇襲――」

 

隣の耳郎から小声で情報が入る。

穴の中で密かに進められた作戦を聞き取ってくれたようだ。

 

耳郎の顔はこの状況のプレッシャーに晒されながらも強い意志を宿していて心の底から信頼できる。

 

穴の中から巨大な掌が出てくる。

B組の、拳藤の個性だ。

 

「6時の方向!来るぞ」

 

同時に地面から氷の槍が襲ってくる。

厄介な連中の挟み撃ちだ。

 

「ッ!冷た!?」

 

「クソ…」

 

しかし、拳藤の掌は目的の相手を捕らえることなく轟の氷とぶつかり合い、氷を砕きながらも予想外のその冷たさに手を引っ込めてしまう。

 

「地城のチームがいねぇ!?」

 

氷が空振ったのを認識した轟がチームの騎馬達と這い上がるとそこには怨敵であるチームの姿が何処にもなく上鳴が戸惑う。

 

「地面の中に一度隠れただけだ。逃げ場がねぇからすぐ出てくる」

 

「さすがだな」

 

あくまで地面から生えてくる氷から逃れる為、より深くに一度逃げただけ。

長居すれば全チームから包囲される以上隠れ続ける気はない。

チームの仲間が敵の動きを把握してくれる以上隠れるより防御に全力を尽くした方が遥かにマシだと陥没させた地面を元に戻す。

 

――加えて残り時間後10秒。既に打てる手は限られて――

 

聞こえたのは彼らのチームを除いて耳郎だけ。

 

『最後の手段だ轟君、必ず掴め』

 

「なっ――」

 

「トルクオーバーッ!!"レシプロバーストッ!!"」

 

飯田の叫びが会場に響く。

 

一陣の風が吹き抜ける。

『何かが来る』と告げるより早く神速の足が走り抜ける。

飯田を除く互いのチームが茫然とする中で轟は自身の手に意識を傾ける

 

「――っ!!」

 

――違う!

 

――蘇った触覚がそれは違うと轟の脳に告げる

 

その手に握られていたのは小さな石塊

視界全てが潰れる超速度で狙いが定まらなかったため"直前で"割り込んだ石を掴まされた

 

「ッ残念だったな轟ぃ、生憎相棒の声聞き逃す程落ちぶれてねぇよ…」

 

耳郎が何かを伝えようとしていたのは気付けた。

咄嗟に石を動かして葉隠の額付近まで持っていったが轟がそれを掴んだのはただの幸運、運良く偶然それを掴んでくれただけ。

恐らく飯田にとってもさっきの技は最終局面まで温存しておきたかったとっておき、それ故その存在を轟達に伝えていなかった為に生じた僅かなズレ、互いに勝利を目指しているが故の罪なき連携不足が招いた偶然だ。

――だがこの状況、ちょっとぐらいカッコつけても許されるだろう。

 

――残り時間僅か7秒

 

「――っ地城!!」

 

「――っ常闇」

 

気が緩んだ。

ほんの一瞬の油断に影が差し込んだ。

 

残り僅かな時間だからこそもう一度崩されるわけにはいかない。

緑谷はそう判断し決定的な隙が生まれる瞬間を待ち続けた。

そして遂にその時が訪れた。

 

"闇影"が千土の脇をすり抜け葉隠に伸びる

 

――させるかっ!!

 

思考していない、反射だけが身体を咄嗟に動かし騎馬の陣形を崩して"闇影"と葉隠の間に身体を割り込ませ――"闇影"に抱えられていた"誰か"に掴まれる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――"無重力―ゼロ・グラビティ―"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

麗日お茶子が千土の腕に触れる。

 

「…くそっ!!」

 

それが何を意味するか理解し千土は歯噛みする。

 

重力解除、触れた者にかかる重力を無くす能力が地城の足を"地面から離れさせる"

 

個性の力が失われる。

――だがまだだ、地面への干渉が出来ずとも宙に浮かせていた砂ならまだ操れる。

 

咄嗟に全ての砂を"闇影"に纏わりつかせて葉隠に迫るその動きを抑える。

残り時間僅か3秒、電光掲示板の数字が赤くなる。

浮いた状態で地上を見渡しても誰も葉隠には手の届かぬ範囲。

 

「勝っ――!?」

 

視界の端を何かが横切った。

 

あちこち尖った爆発したような金髪が空から自身が守るべき騎手に手を伸ばす。

 

「――――っ爆ゥ豪ォォォォッ!!!!」

 

悔恨に満ちた千土の絶叫が会場に響くと同時に葉隠の首元で小さな爆発音が響き渡る。

 

葉隠を傷つけないように――ではなく自分の手が届く範囲で舞うように計算された小さな爆発が葉隠の首からいくつかの鉢巻きを吹き飛ばす。

 

残りカウント1

 

唯一許された一瞬にその場にいた者達が手を伸ばす。

 

地面に着いて判定が無効なるより先に空中で確保せんと爆豪が鉢巻きを1つ掴む

 

緑谷が

轟が

見知らぬ紫の髪の少年が騎馬から飛び出して宙を舞った鉢巻きを1つずつ掴む。

 

カウントがゼロを告げ競技終了の声が響く。

麗日が反射的に個性を解いたのだろう、地球の力が蘇り抵抗なく背中から地面に落下する。

 

「…これだから地に足着いてないと嫌なんだよ」

 

力なく呟いたその言葉は会場に響き渡る歓声に飲まれ誰の耳にも届かず消えるのだった。

 

第二種目"騎馬戦"

葉隠 透

地城 千土

障子 目蔵

耳郎 響香

 

獲得P1000万以上

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