地に足つけた浮かれたヒーロー   作:マーカー

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第21話 仕込まれた爆弾

歓声が響く会場に爆発音が木霊する。

自身と爆豪の間に造った壁を爆豪は掌を下へ向け放った爆発の推進力で飛び越える。

 

そのまま落下に加え更に爆発の推進力を上乗せし猛スピードで飛来してくる。

頭上から抑え込もうとする掌から逃れ降りてきたところに拳を放つ。

――が、その拳は反撃を見越し備えていた爆豪のもう片方の掌に抑えられる。

 

それはつまり――致命的な状況を意味している。

 

再び爆発音が今度は先程より大きく響き渡る。

 

「「――ぐぁ……」」

 

激痛に呻く小さな声が2つ重なる。

 

1つは千土、振るった右手を掴まれ直接爆発を受けて焼けた右手を抑えながら苦悶の声を漏らした。

 

もう一つは爆豪、確実に決められると判断した反撃に意識を向けた直後に背に鈍い痛みが走った。

飛び越えた壁から一塊の瓦礫が撃ち出され背に直撃したのだった。

 

「甘ぇよ爆豪、俺は地に足を着いてりゃ手なんぞ潰されようが構いやしねぇぜ?」

 

「ならその足からぶっ潰してやらぁ!!」

 

低く身体を傾けて爆豪が走ってくる。

今まで上空をキープし続けていた爆豪のその行動に意表を突かれ対応が遅れる。

 

かざされた掌から放たれた個性が千土の足元を爆発させる。

 

咄嗟に後方に下がり事なきを得たかと思えば爆発の煙の中から飛び出てきた爆豪の腕が足へと伸びてくる。

それを避けるのではなく足に瓦礫を纏って蹴りを放って迎え撃つ。

硬質化させた石の装甲ならば爆豪の爆発に耐えられるのは確認済み――しかし爆豪は再び爆発の推進力を用いて一瞬で軌道を変える。

 

千土の足をすり抜けその胴体に爆発を見舞う。

 

――足狙いはフェイク

自らの個性の鍵である足をこれまでさんざん自身を苛立たせた奴がそう容易く潰させるとは思っていなかった。むしろその足を狙うように煽ってきているのが分かったからそんな"見え透いた挑発"に付き合ってやるつもりなど爆豪にはなくその胴体、腕、背中、あらゆる部位に爆発を見舞っていく。

 

千土にとってそんな爆豪の動きは予想外だった。

爆豪は動きこそ繊細だがその言動、行動自体は読みやすかった。

自分こそが№1だと自負するが故に直線的な精神性、それが爆豪の特徴だったが今は自らの言葉をフェイクに攻めてきている。

 

真っ向から突っ込んできたと思えば急に軌道を変える、更にその狙いが読めない。

正面、横、背後、様々な方向から襲ってくる爆豪の動きに千土は歯噛みする。

 

(やべぇ、完全に虎の尾踏んだ…いや眠れる獅子をってやつか?)

 

明らかに爆豪の動きが変わった。

自らが原因の出来事に相変わらずの自業自得と笑えれば良かったが想像以上の爆豪のそれに笑う余裕などない。

 

『やべぇ、爆豪の動きがやべぇ!?あの地城が防ぐことすら出来てねぇぞ!?』

 

『完全に地城を倒すことに集中している――元々ポテンシャルは極めて高かったんだ、今のアイツは今までの倍はくだらねぇな』

 

相澤もまたいつもの無気力な目を研ぎ澄ます。

自身が受け持つクラスの中でも指折りの実力者同士のこの試合、その結果がどちらに傾くかをただ見据える。

 

「くっそ…これならどうだ!!」

 

自身の足元の地面をいくつも逆方向の氷柱の様に隆起させる。

正面、横、背後、全ての方向へ放った反撃だが爆豪は上空に飛び上がり回避し、そのまま両腕を大きく振るう。

 

放たれた爆発が隆起した地面を全て吹き飛ばすと同時に強力な爆風で千土を動きを縛る。

 

「うおおおおおぉぉぉっ!!」

 

雄叫びと共に爆豪が再び回転しながら地上に向かう。

硬質化させた地面を吹き飛ばした大爆発、それを再び放つつもりだと爆炎に視界を奪われ見えていない千土以外の者達が理解する。

 

その手が地面に触れれば爆豪の勝ちが決まると皆が固唾を飲む。

――そして爆豪のその手が地面に触れる――直前に横から飛び込んできた何かに身体が弾かれる。

 

「――っテメェ!!」

 

全身で飛び込んできた千土に爆豪は目を見開く。

確実に視界を潰したはずなのに何故これ程正確に捉えられたのかと疑問を抱く。

 

だがその答えは簡単。

千土にとって爆豪の動きはある程度だが把握できるものだった。

自身もまた砂煙で相手の視界を奪うが正確にはそれは自分の視界も奪っている。

その状況で見るべきものはその相手が動くことで生じる砂煙の流れのズレ、それを見極めることで相手の位置を把握しそれに加えて歩く振動の感知で精度を上げる。

 

今回は爆豪が飛んでいる為歩く振動の感知は出来なかったが肝心の要領はそれと同じ、爆炎とそれによって生じた煙と砂煙の流れをずらす回転しながら落下する爆豪を捉えることは千土にとって可能なことだった。

 

「もらったぁ!!」

 

空中で体勢を崩した爆豪の腹に石の手甲を叩き込まんと右手を引く――が。

 

「勝つのは――俺だァァァッ!!」

 

それを放つ前に爆豪が強引に掌を向けてくる。

しかし構うことは無い、爆発を受けようがこの渾身の拳を当てれば自分の勝ちが決まると確信したから。

両目に鮮烈な閃光が飛び込んできたのはその瞬間だった。

 

「っ!?うおおおおおぉぉぉっ!?」

 

焼けつくような激痛が両目を襲い千土は苦悶に叫ぶ。

 

――閃光弾、スタングレネード

 

千土がその『地』に属する物を操るその個性で砂や石を操るように、爆豪も『爆破』という個性で様々な爆発を起こす。

それはダイナマイトのようなものもあれば光を炸裂させるものもある。

 

爆炎に覆われた視界で爆豪の動きを捉えんと目に全神経を集中していた千土はその強力な光に思考全てが吹き飛ばされた。

それゆえ自身の胴体に爆豪の両手が添えられたことに気付くのが遅れた。

 

「ぶっ飛べぇぇぇぇっ!!」

 

大型の車に跳ね飛ばされるかの様な圧倒的な衝撃に身体が宙に浮き吹き飛ばされる。

皮肉にも激痛で引き戻された視界に広がるのは青空、その身を襲う浮遊感に思考が蘇る。

 

――今の位置はどこだ?、境界線は――超えている。

 

「うおおぉぉぉっ!」

 

動きが鈍る身体に今ならまだ間に合うと喝を入れる。

宙に浮いた自分が操れる浮かせていた瓦礫はとっくに個性を解除していて既にないが両手両足に纏っている分がある。

それらを一度分解し自身と地面の間で足場として再構築する。

 

「よし――っ!?」

 

「俺の――」

 

しかし、その僅かな隙に爆豪が飛び込んでくる。

爆発による飛行で境界線の外までの追撃、確実に千土を場外まで叩き落しに来たのだ。

 

身動きのとれない空中、反撃の為の僅かの石は既に足場にする為に使えない。

打つ手の無い千土に爆豪は最後の一撃を放つべく右手の掌をかざす。

 

「勝ちだァァァァァッ」

 

 

 

 

 

――この瞬間をずっと待っていた。

 

 

 

 

 

最後の爆発音が響き渡る――その瞬間に爆豪の体操服のポケットから砂が噴き出し起爆直前の彼の右腕を絡めとって空へと向ける。

 

「――――――は?」

 

予期せぬ方向への爆発の推進力が彼を境界線の外の地面へと叩きつける。

 

地面に打ち付けられたその痛みの意味が分からず放心する爆豪のすぐ傍に僅かに遅れて千土が着地する。

 

「俺の勝ちだ爆豪」

 

『しょ、勝者!地城 千土!!――ってそうじゃねぇ!!何が起きたんだ今!?』

 

『――あの野郎…最初からこれを狙ってやがったのか…』

 

相澤は彼らの試合の序盤を思い出し舌を巻く。

 

千土が爆豪に対して行った最初の反撃である砂の拘束、あの時既に彼の体操服に砂を仕込んでいたのだと推測する。

 

『爆豪の飛行は爆発による推進力によるもの、それを利用して場外へ叩き込む。あいつの狙いははなっからそれだったってことだ』

 

「『地質操作・減重』、今まで見せることはなかった石や砂を軽くする力さ。そいつで重さを限りなく減らして最後の一瞬までずっと隠してた」

 

重さを無くすという折角の威力を損なう非攻撃的な力。

しかしそれも使い方によっては強力な武器になり得る。

 

爆豪の個性『爆破』、その衝撃は自身にも及ぶ。

だからこそ爆豪はそれを推進力として空を飛べる。だが逆に言えばそれを本人の意志と異なる方向へズラされれば場外アリのルールではそれだけで命取りだ。

 

「完璧主義のお前だからこそ、俺が一度空中に瓦礫を浮かして足場にするのを見たら今度は確実に場外に落とすため境界線の外まで追撃にくると思っていた。だからこそ俺の方も"爆弾"を仕掛けたって訳だ」

 

挑発から砂の仕込み、そして足場の印象付けからの最後の詰め。

一体どれ程先を読んでいるのか、会場の者達が息を飲む。

 

(戦略どうこうよりも異常なのは他人の個性へのアプローチだ、味方としても敵としても本人以上にその個性の特性を把握してきやがる。自分の力に揺るぎない自信を持つ爆豪とは真逆の、他人の力にこそ目を向ける地城――今回の勝敗はその差といったところだな)

 

皆が結果そのものに目を向ける中相澤はその特異性にこそ目を向けるが彼の傍に立ち尽くした爆豪が身体を震わせていることに気付いてそちらに視線を移す。

 

「――ふざけんな…認めるか、こんな終わりなんざ…認められるか」

 

真っ向から倒されるのならば或いは受け入れられたのだろうか、それ自体に確証はないが少なくとも今ほど身が焼かれるほどの悔恨はないはずだ。

あれ程闘志を引き起こされ、その結末が自身の個性を利用され自滅――目の前の男への苛立ちと、まんまと思い通りに動かされた自分自身への嫌悪に頭がどうにかなってしまいそうになる。

 

「悪いな爆豪、まぁこんな勝ち方しかできねぇ奴だけど試合中に言った言葉は本心さ。お前との本気の戦い、悪くなかったぜ。おかげで俺は――」

 

「うるせぇ!!負けは負けだろうが!?気持ち悪ぃ同情してんじゃねぇ!!」

 

「あ、おい――」

 

話の最中だったのだが爆豪はさっさと退場口へと向かってしまう。

仕方ないとため息を吐いてその背中に再び声をかける。

 

「次の試合、ちゃんと見てくれよ!次も勝ってみせるからな!!」

 

その言葉に足早に退場しつつあった爆豪がピタリと足を止め、激情にまみれた表情で振り返る。

 

「あぁっ!?くだらねぇ負け方しやがったらぶっ殺すぞ!!」

 

「ああ、無様な真似はしねぇさ。他でもない――お前に勝ったんだからな」

 

そうはっきりと宣言すると爆豪は小さく舌打ちして退場口の奥へと姿を消すのだった。

 

『えー以上、決勝戦進出を決めた地城 千土の優勝宣言でしたってな!』

 

「やめろォ!!勢いで言った後やっちまったと思ったさ!次ってもう決勝だもんな!で、おまけに相手はあいつだしな!?」

 

勢い任せの言葉を拾われて千土は頭を掻きむしる。

せめて退場してから爆豪個人に言えば良かったのになんでこんな場所で言っちまったんだろ…

 

――まぁ、いいか。どうせもう開会式の時に優勝宣言しちまってたんだし。

 

今更頭を抱えるというのも馬鹿馬鹿しくなって顔を上げる。

意図していた訳ではないが何の偶然か、クラスの皆が集まる一角から離れた位置で一人こちらを見ている少年と目が合う。

 

「――つぅ訳だ轟!!次の試合よろしくなぁ!"全力"でこいよ、その上で勝たせてもらうからな!!」

 

いっそ開き直って右手を振ってそう言う。

誓った宣言は最早取り下げられないし取り下げるつもりもない、ならば浮かれていた方が気が楽だ。

 

改めて自らの勝利を宣言して退場する。

準決勝終了で即決勝戦とはさすがの雄英といえどもしないようで安堵する。

自業自得で重圧は増したがこれはこれで悪くない、適度な緊張感とともに最後の試合が始まる前に一休みさせてもらうとしよう。

 

――それにしても

 

「眼中にない…か」

 

試合開始直前に言われた爆豪の言葉がふと蘇る。

 

「――そんなつもりはなかったんだが…結果的に間違ってねぇのかもな――何で分かるんだろうな、怖いわあいつ」

 

自身と競い合った相手、障子や切島をはじめトーナメントの結果ぶつかることはなかった者達を含めて全員をライバルとしてその試合をずっと見ていた。

眼中にないなど、そんなはずがない。

 

しかし、現に自分は体育祭と無関係の、それも他人の事情に首を突っ込んで、次の試合の動き次第ではそれを持ち出そうと考えている。

爆豪の言い分も考えてみればもっともな話だった。

 

「――でも仕方ねぇよな…こればかりはさ」

 

見て見ぬ振りなどそんな器用な真似が出来るのならば自分はこんなところに立ってはいない。

例えどんな状況でも目の前に苦しんでいる人がいるのならば乞われずとも手を伸ばす、それが最高のヒーローになる為自らが定めた生き方なのだから。

 

「見つけた、地城!これ何とかしてよ!!」

 

足元ばかり見て歩いていると正面から耳郎の声がした。

よく分からないが何かあったらしい口振りに反射的に顔を上げる。

 

「やっふー千土ー、おっひさぁー」

 

「ども…ご無沙汰っす千土先輩」

 

「――何で居んのお前ら…」

 

いつもの友人3人と何故か緑谷、そして耳郎にべったりくっついてる少女と周りの全員と僅かに距離を空けて立っている少年、一般入場者で来ていたのだろう去年までの顔馴染みどもが今の友人達に迷惑かけてやがった。

 




という訳で決勝戦を前にオリキャラ2名登場です。
といってもあくまでオリ主のバックボーンの為のキャラなので本筋には深く絡むことは多分ないです。
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