地に足つけた浮かれたヒーロー   作:マーカー

31 / 37
第30話 血染めの審判者

職場体験2日の早朝、時間を確認しようとして手元に置かれた携帯を確認すれば表示された時間はギャングオルカの事務所への出社にはかなりの余裕がある時間だった。

 

そのことに安堵しつつも携帯に表示された通知を見て昨夜耳郎達とのやり取りの途中で寝てしまったのだと気付く。

耳郎と障子がパトロールについて叩き込まれたという報告や常闇が受け入れ先のホークスの事務所の運営方式に面食らったことなどのやり取りの中に『寿司が旨かった』とだけ送って寝てしまっていたらしい。

 

案の定戸惑いの言葉が送られてきていたがそれらを放置して今に至るというわけだ。

 

「……まずいな、ツッコミ貰ったらスパルタ指導クリアのご褒美だったと説明するつもりが……」

 

ボケるだけボケて打ち切ってしまった。

これでは下手をすれば俺が気楽にやってるどころかギャングオルカが甘い人と思われてしまうかもしれない。

 

「とはいえ朝一の忙しいだろう時間に余計なメッセージ飛ばすのもなぁ……。まぁいいか、昨日以上に厳しくするって話だし今日の夜にでも合わせて報告すれば」

 

そんな段取りの下、部屋に支給されているポットで湯を沸かし家から持ってきていたカバンからカップ麺を取り出して朝食の準備をする。

 

心奈さんからはちゃんと飯を食えと言われていたが流石にホテルで頼むと出費が一気に重くなる。

男子高校生の飯なんてジャンクな物で良いんだと出来上がった朝食をペロリと平らげる。

 

「さぁて、今日も1日頑張るか!」

 

 

 

 

 

▼▼▼

 

 

 

 

 

『死ぬ』

 

『いきなり何があった?』

 

その日の夜、ホテルへと戻った千土はベッドに辿り着くことさえ叶わずドアを閉めると同時に床に倒れ辛うじて動く手で友人達へと遺言を残そうと連絡を飛ばす。

 

早速障子から返信が届いた為、震える手で続きを綴る

 

『社内訓練で地獄を見た……朝食ったカップ麺吐いた……晩に用意しておいたカップ麺食える気がしない……』

 

『昨日と今日で何故そうなる?』

 

『てか朝からカップ麺食うな! せめてコンビニでもっとマシなの用意しろっての!』

 

気が付けば耳郎の方も既に終了していたのかメッセージが飛んでくる。

律儀に人の食生活にダメ出しする真面目さに苦笑し返事を綴る。

 

『買ってきて』

 

『アホか』

 

お約束なボケをやって怒られた辺りでそろそろ仕切り直そう。

 

『今日はギャングオルカに直接手合わせしてもらったんだけどもうボッコボコよ、トップクラスのプロヒーローはやっぱすげぇわ』

 

『直接手合わせって……マジでしたの?』

 

『マジもマジよ、まぁボロ負けしたから再戦は望めなさそうだけどなぁ』

 

思い返すだけで気が滅入る。

単純な膂力一つで岩を砕かれこちらの攻撃は通用せず、ならば守りを固めて持久戦に持ち込もうとすれば超音波で脳がイカレた。

 

目に付いた課題としてはやはり硬度、脳無とかいう怪物との戦闘以来どうも簡単に砕かれるケースが多い。

といってもこちらはまだ個性を鍛えれば改善できるだろう、問題は超音波という非物理的な攻撃に対して身を守る術がないことだ。

ギャングオルカの事務所を出てからずっとリベンジの策を練っているがどうにも手詰まりだとため息が出る。

 

そんな思考に埋没しているうちに耳郎から『疲れているからもう寝る』という旨の連絡が謝罪と共に届いており返事するより早く障子からも同様の連絡が届いた。

 

『了解、おやすみ』

 

別れの挨拶だけ打ち込んで投げ出していた身体に力を入れて起き上がる。

重い身体を動かしてベッドの上へ崩れ落ちると手にしていた携帯を操作してグループの会話に混じっていなかった友人に個人メッセージを送る。

 

『というわけでこっちもこんな感じだ、職場体験が終わる前にプロヒーロー絶対見返してやろうぜ!!』

 

昨日の情報交換の内容と今日のやり取りに混ざらない様子からして恐らく向こうも苦戦しているのだろうと思いメッセージを飛ばす。

 

──ただの思い過ごしならめっちゃ恥ずかしいけどな……既読着く前に取り消そうかな? 

 

勢い任せの内容に若干の後悔が過り自身が送ったメッセージを長押ししメニューを開く。

 

『無論だ』

 

──が、それより早く既読が着き簡潔な、しかし真っ直ぐな返事が送られてくる。

 

それだけ聞ければ満足だと常闇との連絡を切り上げ携帯を布団の上に投げ出して上体を起こす。

依然として疲労感に満ちてこそいるが友人達との他愛ないやり取りのおかげか幾分か精神的に楽になった。

それに伴い空腹感が唐突に訪れたのを感じ、しかし常備したカップ麵はさすがに食べる気にはなれずホテル内の売店にでも行ってみようかとカバンの中から財布を取り出す。

 

カードキーを手に取り部屋を出ようとして──その瞬間鳴りだした携帯のアラームに足を止める。

表示された名前は昨日の時点で連絡用として頂いたギャングオルカのものだった。

思わぬ相手からの連絡に慌てて携帯を耳に当てる。

 

「はい、地城です。何かありましたか?」

 

『夜分にすまないな。少々厄介事が飛んできてな、今大丈夫か?』

 

了承の返事をすればギャングオルカから急に舞い込んできた話の詳細が語られた。

 

曰く、今世間を騒がしている"ヒーロー殺し"が保須市に出没する可能性が極めて高いらしくその対策としてエンデヴァーを始めとしてトップクラスのヒーローが集められているらしい。

当初ギャングオルカは位置関係の都合もあってか声はかかってなかったらしいが元々向かう予定だったヒーローの一人が自身の担当区域内に出没したヴィランとの戦闘で軽度ではあるが負傷したらしくその代理として頼られたという。

 

『無論要請された以上私はヒーローとしての責務を果たす。明日保須市へ向かう、しかし事情が事情だ。あるいは長期の仕事になるやもしれん。そこでお前の扱いだが、事務所に残す私のサイドキック達と共に職場体験を進めるか……あるいは保須市へ同行するか』

 

「っ!? ──良いんですか?」

 

『無論、貴様の個性使用は制限されるがな。基本的には避難誘導として働いてもらうぞ?』

 

「分かりました。ヒーロー科学生としての責務を全うします、同行させてください」

 

確かにこの場に残って真っ当に学ばせてもらう方が安全で確実だろう。だがプロヒーローがヴィランとの戦闘に赴く本当の意味でのプロの世界を肌で感じるまたとない機会、それを逃す訳にはいかない。

いや、それ以上に"ヒーロー殺し"などという危険人物が出没するやもしれないと聞いておいて安全な場に留まるなんてことはどうしても考えられなかった。

 

確かにプロヒーローの中でもトップクラスが集まるというのならば自分に出来ることなど何もないかもしれない、そもそも学生の身で現場にしゃしゃり出る時点であまり良くないのかもしれない。

 

──けれど

 

──けれども、何か出来るかもしれないのならば足を止めているわけにはいかない。

 

『いいだろう、急な話で悪いが明日の朝すぐに発つぞ。準備をしておけ』

 

「了解!」

 

通話が切れると一度大きく息を吐き気持ちを落ち着ける。

 

「ヒーロー殺し……」

 

その名を口にすれば思い浮かぶはただ一つ、クラスの委員長、飯田の顔だ。

 

雄英体育祭の最中彼のプロヒーローである兄『インゲニウム』が襲われ再起不能にされたという事情は後で知ったことだが認識していた。

飯田との交流は然程深いわけではないが、委員長として奮闘してくれている姿やヴィラン襲撃の一件で入院した際にわざわざ見舞いに来てくれたりと彼の人の良さは十分理解しているつもりだ。

だからこそ、皆に語った『俺は大丈夫だ』という言葉が周りに心配をかけまいとする為のものであることは分かっていた。

──いやそれ以前に身内を、家族を理不尽に傷つけられて穏やかでいれるはずなんてないだろう。

 

「……何としても、捕まえる」

 

あくまでも自分は避難誘導を始めサポートが役目、ましてや本当にヒーロー殺しが保須市に現れる保証はない。

どちらにしても俺自身がヒーロー殺しと直接的に対峙する可能性はほぼゼロだろう。

それでも、決意を胸に拳を握るのだった。

 

 

 

▼▼▼

 

 

 

その翌日千土は早朝からギャングオルカと平坂さんを含めた彼のサイドキック数名と共に電車に乗り込み保須市へと入った。

市は厳戒態勢を執っているらしく一応市民の姿は確認できるもののどこかピリピリとした空気を肌で感じた。

 

駅を出るとすぐに同じく厳戒態勢のため集まったのだろうヒーロー達の姿が何人も確認できた。

 

「ここまでヒーローが1つの街に集まってるなんて……」

 

「それほどヒーロー殺しという存在を危険視しているのだろう」

 

千土の言葉にギャングオルカはそう応える。

今まさにヒーローを目指し己を磨く学生にはいまいち想像出来ないだろうがヒーロー殺しという存在はその犯行のみが脅威ではない。

 

彼が出没した後、その区域と周辺区域のヒーロー達の功績が増しているという傾向があるとはギャングオルカも耳にしていた。

 

自らがヒーロー殺しの標的にならぬよう意識向上。

ヴィランにヒーローが引っ張られ成長する、決してまだ明るみには出ていないが傾向として既に現れている。

この状況が続けばヒーローという存在に少なからず良からぬ影響が出るだろう。

 

「ひとまず我々の担当の範囲に移動するぞ、道中にも周辺警戒は怠るな」

 

「「了解!」」

 

 

 

▼▼▼

 

 

 

街を駆けながら周囲を見渡す。

一般の人達に混じって何人ものヒーロー達が目に付くがその一方で不審な人物は一人として見当たらない。

 

「こんな厳戒態勢ですからね、ヒーロー殺しどころか半端なヴィラン一人まともに動かないのでは?」

 

「何も起きないのならばそれで良い、ただし気は抜くなよ」

 

言ってしまえば拍子抜け、しかし各地からヒーローが集まっている以上ある意味当然ともいえるそんな状況にサイドキックの一人がつい呟いたその言葉にギャングオルカもある程度同意しつつも一切気を抜いた様子はなく窘める。

 

「…………」

 

千土もまたどうにも居心地の悪い静けさに気を抜くことなく神経を研ぎ澄ます。

平穏を尊く思えどもかつて平穏を一瞬で崩された記憶がこの場において油断を許さない。

初日の体験学習でギャングオルカに指摘されたように地面の振動感知と直接の観察を平行して行い周囲を警戒し続ける。

 

 

『キャァァァァァッ!!』

 

 

しかし、異常を伝えたのは個性でも目でも耳、幾分か離れた位置から聞こえた悲鳴だった。

 

 

「「っ!?」」

 

平時であらば聞くことなどないであろう本気の悲鳴。

それは保須市が混沌に染まる始まりであった。

 

 

 

▼▼▼

 

 

 

先頭を走るギャングオルカに続いて全力で走る。

悲鳴が聞こえた位置は近く、すぐに現場に辿り着いたが目の前の光景にその目を疑う。

 

 

 

そこにいたのはその巨躯をもってしてヒーロー達を薙ぎ払う"脳が剥き出しになった異形の怪物"。

 

「っ脳無!?」

 

ヴィラン襲撃事件の際に対峙した怪物、それと同種らしきその姿に目を見開く。

直接目の当たりにした馬鹿げた力を否応なしに思い出す。

あんなものが街中で暴れたらどれ程の被害が出るというのか、最悪のイメージが頭を過り歯噛みする。

 

「うわぁああぁぁぁっ!?」

 

「まずい!!」

 

しかし向かい合っていたヒーローをその大きな腕で突き飛ばしその背後にいた民間人の男性にその拳を向ける。

 

「させるかァァァァァッ!!」

 

右足で地面を全力で踏み鳴らす。

鈍い音が響くと同時に脳無と男性の間の地面を隆起させ壁を形成する。

 

突如出現した壁に脳無は対応出来ず振りかぶった拳を放つことなく全身を土壁に打ち付け、その足を止める。

同時にすぐに駆けだしていたギャングオルカが動きを止めた脳無の胴体にその強靭な拳を放つ。

そのまま態勢を崩した脳無を力尽くで抑え付ける。

 

「トルペディーネ! 捕獲を!」

 

「了解!」

 

ギャングオルカの指示を受け平坂さん──トルペディーネがその尾棘をギャングオルカの拘束から逃れようともがく脳無の肩へと突き刺し痺れ毒を流し込む。

 

呻き声らしきものをあげ脳無はその動きを止める。

 

「良し、念の為拘束具を頼む」

 

「はい!」

 

サイドキックの人達が手際よく脳無の手や足に拘束具を巻き付けていく。

ひとまず脅威はなくなったのだろうか。

 

(しかし、今度の脳無は以前の奴と比べればまだマシだな)

 

近しい風貌こそしているが以前の脳無は硬化した土壁を容易く砕いてきたのに対し今回の奴は動きを止めた。

パワーもスピードの以前の奴より劣っている、ヒーローの集う保須市を狙うにしてはどうも違和感がある。

 

「まったく、早速勝手に動いたね」

 

「あっ! ……す、すみません」

 

「とりあえず説教は後だ。──よく守ったな」

 

ギャングオルカは千土の行動を厳しく叱りながらも褒めた。

千土が動かなければあの状況で間に合っていた保証はない。しかしそれはそれ、学生の身である以上まだプロのヒーロー達が立つ前線に並ばせるわけにはいかない。

 

「グランディス、お前はそこの男性を安全なところへ連れていけ──どうやらここだけではないらしい」

 

「っ!?」

 

目の前の状況に張り詰めていた意識を戻せばあちこちから狂騒が聞こえてくる。

他にも脳無がいるのかあるいは本命のヒーロー殺しが現れたのか、いずれにしてもこの脳無を捕らえただけで終わる事態ではないらしい。

 

「早くしろ! 現場は一瞬たりとも待ちはしない!!」

 

「了解です! ギャングオルカも皆さんもお気を付けて!!」

 

「余計な心配などいらん! ──貴様、グランディスについていけ、未熟な学生一人ではその男性も心許ないだろう」

 

自身のサイドキックの内の一人を指差してギャングオルカはそう言う。

『本当は"未熟な学生も"心配な癖に……』と皆思いつつも厳格な上司の顔を立て(あと純粋に言うのが怖いから)何も言わずその指示に頷くのだった。

 

 

 

▼▼▼

 

 

 

周囲の地面の振動の感知を張り巡らせば大勢の人が1つの位置に集まっていることに気付き、男性と共にそこへ向かう。

予想通りそこは民間の人を集める避難所らしく、大勢の市民達と彼らを守るべく周囲を固めるヒーロー達の姿がそこにあった。

 

男性をその場のヒーロー達に託し役目を果たした千土はその場から移動をしながらここまで護衛してくれたサイドキックの男性と顔を見合わせる。

 

「このまま逃げ遅れた人を捜しますか? 一度ギャングオルカと合流した方が良いですか?」

 

「そうだな……一度シャチョーと合流しよう。敵の戦力が分からない状況で少数で行動するのは危険だ」

 

「了か──ん? すみません、ちょっと」

 

少し迷う様子を見せながらもサイドキックの男性はそう告げる。

ギャングオルカは恐らく前線にいる為そこに再び学生である千土を連れて行くことに不安はあるが自分と2人で救難行動をするよりは例え前線であってもギャングオルカや他のヒーロー達と合流する方が安全と判断してのことだた。

 

千土もそれに同意し頷こうとし、それより先に携帯の振動が響く。

サイドキックの男性に断りを入れて携帯を確認するとどうやら緑谷からの連絡らしい。

 

『江向通り4-2-10の細道』

 

……何だこれは、これだけ送ってきてどうしろというんだ? 

送信ミスだろうかと一瞬考えるも記された場所がここ、保須市内のものだと気付く。

──となるとこれは救援の要請か? 気が動転した……もしくは余程時間がない状況だったのかは分からないが、そこまで推測した時点で無意識の内に駆けだしていた。

 

「すみません手の空いてるプロヒーローを捜してください! 江向通り4-2-10へ救援要請をお願いします!」

 

「え!? グランディス何を!?」

 

背後から焦った声が聞こえてくるが既に駆けだした脚は止まらず進み続ける。

指定された位置は然程遠い場所ではない、友人の無事を祈りながら千土はその場へと急ぐのだった。

 

 

 

▼▼▼

 

 

 

──江向通り4-2-10の細道。

そこは緑谷が指定したその場は既に戦場と化していた。

 

ヒーロー殺しステイン、彼は標的と定めたヒーロー、ネイティブを襲撃しその命を奪おうとしていた。

しかし事態はそれだけに留まらなかった、兄であるインゲニウムを再起不能へ追いやったステインを密かに追っていた飯田が、そしてその飯田の暴走を心配した緑谷が順にその場へ駆けつけた。

 

緑谷は自身が着いた時、既にステインの何らかの個性で動きを封じられたネイティブ、そして飯田を守るべくこの職場体験を通し新たに会得した戦術、そして思考力を以て時間を稼ぐべく応戦するも振るわれた斬撃により負った傷、血がそれを許さなかった。

 

ステインの個性を緑谷は理解する。

対象となる人物の血を経口摂取すること、その条件を満たせばステインは相手の動きを停止させることができる。

決して使い易い個性ではないだろう、だが今この場にいる全員がその個性に縛られステインを除いて動ける者は誰一人として存在しない。

──すなわちステインの凶行を止める者は誰一人としていない……彼自身を除いては。

 

「ヒーローを名乗る殆どが口先だけの贋作ばかり……だがお前は生かす価値がある。こいつらとは違う」

 

友を救う、曇りないその"ヒーローの意志"こそステインが尊ぶもの、故にステインは目の前の緑谷にその凶刃を振り下ろさない。

──しかし、復讐に囚われ目の前の人間を救うことより私怨を優先する贋作にその価値はないとステインは飯田へ足を進める。

 

「やめろぉぉぉぉっ!!」

 

必死に叫び全身に力を込めるが縛られた身体は動かない。

 

頭上に掲げたその刀を振り下ろすステイン。

目の前で友の命が奪われる絶望に緑谷は顔を蒼白させる──直後、紅蓮の炎が路地裏に走る。

 

「っ!?」

 

自身を飲み込まんとする炎の激流を飛び上がりステインは回避する。

手にした刀に新しく血が付いていないのを見て緑谷は視線を飯田へと向けようとして──何者かに襟を掴まれる。

 

「ぐぇっ!? だ、誰!?」

 

「悪ぃ緑谷……流石に2人はキチィんだ」

 

そういうのは自身を掴む右手とは反対の左腕でいつの間にかネイティブを支えていたクラスメイトの姿。

 

「ち、地城君! ──それに」

 

「緑谷、こういうのはもっと詳しく書いてくれ」

 

氷と炎、相反する2つの力を纏ったもう一人のクラスメイトの姿がそこにはあった。

 

「轟君も! 何で2人が!?」

 

「お前の飛ばしたメッセージだ、ざっくりとした内容だったからその辺りの足音の探知をしてここに辿り着いたんだよ……途中から足音が1つになったら焦ったわ」

 

「偶然地城と会って助かった。最悪もっと遅れてたぞ」

 

メールの内容に従い向かって見ればビル群だけあって細道なんていくらでもあった。

 

やむを得ず地面の振動を探知してみれば路地裏の一つからやたら激しい振動を感知し慌ててその方向に走ればその途中で轟と合流し、轟の方でも同じ状況だったらしく2人で件の路地裏へ向かう最中気が付けば激しい振動は収まり残ったのは一人の足音だけ。

正直最悪の想像が頭を過った。

 

「……だがおかげで助けに来れた。いずれプロヒーロー達も集まる」

 

幸い轟の方もプロヒーロー達に救援の要請はしているらしく、プロヒーロー達が来るのも時間の問題だろう。

──ならばすることは決まりだ。

 

緑谷とネイティブを自身の背後にゆっくり降ろすとヒーロー殺しと向き直る。

 

何人ものプロヒーローの命を奪った凶悪な男。

すなわちそれはプロヒーローさえも凌ぐ力量なのは間違いない。──故に意識を研ぎ澄まし睨む。

 

「殺させはしないぞヒーロー殺し、こっから先は俺達が相手だ!」

 

「ハァ……邪魔ばかりだな今日は……」

 

煩わしそうにステインはそう呟く。

どこか気が抜けたようなぼやき、しかし纏う狂気、気迫は僅かにも薄れず、むしろ高まっていく。

 

カチャリと手にした刀が金属音を奏で刃を向ける。

プロヒーロー達がいずれ来る、そんな状況であっても退く気はないということだろう。

 

隣に立つ轟と視線を交わす。

数で勝ろうと気は抜かない、敵は間違いなく自分達より強い。

 

──けれど退く訳にはいかない。

 

ならばするべきことは一つ、場所は違えど雄英生としての信念を果たす。

 

──Plus_Ultra

 

限界を越え、今一度巨悪へと挑む。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。