地に足つけた浮かれたヒーロー   作:マーカー

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第36話 不穏な静けさ

爆豪・青山・蛙吹・八百万、自身と共に並ぶライバルを見渡し千土は思案する。

爆豪は勿論、蛙吹の機動力もかなりのもの、加えて壁に吸着できることも加えればこの場で最も有利である可能性が高い。

更に八百万のどんな状況にも対応できる個性に関しては今更考えるまでもなく脅威だ。強いて言うなら創造するにあたってのタイムラグが前の2名に速度負けする可能性があることぐらいか。

青山の個性は――連射には難はあるが実は移動に応用が利く辺り油断は出来ない。周囲の破壊が厳禁である以上発射角度には気を配る必要こそあるが使い方次第によっては読めない相手だ。

 

――さて、どうしようか。そう考える内にオールマイトの声が響く。

 

『さぁてそろそろ始めるよ、皆位置に着いているね?』

 

「早く始めろや!」

 

オールマイトからの呼びかけに爆豪が気合十分と叫ぶ。

他の者も決して出遅れまいと集中力を巡らせているのがひしひしと感じられる。

 

『よぉし、それじゃ――スタァァァートッ!!』

 

スタートの合図で一斉に駆けだす。

各々個性を活かし素早くスタート地点から離れてゆく、その中でも特に目を惹くのはやはり――爆豪だ。

 

「絶対に――俺が1番だ!!」

 

いつもの彼の宣言、しかしそれはいつも以上に必死に見えた。

同じグループに自身を土を付けた千土がいるから――それも少なからずあるが最も大きな理由はやはり緑谷の急成長。

自身が職場体験先で足踏みしている間に緑谷は同じ時間で自分に追いつき、追い抜かさんとしていることを肌で感じていた。

 

だがそんなことは認めない、己こそが一番であり誰もが比類することのない圧倒的な頂点であると周囲の柱やパイプを爆発の推進力ですり抜け宙を掛け――辿り着く。

 

「は…ははっ、どうだ…オールマイト」

 

「うむ、大したものだ爆豪少年!1位到着おめでとう!!」

 

全力を出し切り肩で息をする爆豪はオールマイトのその言葉に確かな手応えを感じ自身とオールマイト立つ塔の上へと目指す者達を見下ろす。

各々の個性を活かして徐々に集まりつつあるクラスの連中、蛙吹、八百万がやがて辿り着き、それからだいぶ遅れて最初のスタートダッシュの反動で腹痛に苦悶の表情を浮かべた青山より僅かに先に千土が漸く塔を登り切るのだった。

 

「――くはぁー、やっぱ早いな爆豪…それに蛙吹に八百万も流石だわ。なぁ青山…青山!?大丈夫か!?もうすぐ終わるはずだから耐えろ!!」

 

「フフ…限界☆」

 

千土は自身より早く到着した者達に声をかけながら僅かに後ろにいた青山が"限界"に晒されていることに気付き必死に呼びかける。

 

「オールマイト、総評は後に一度戻りましょう!?」

 

「う、うむ!青山少年もお疲れ様だ!途中退席して大丈夫だ!!」

 

流石のオールマイトもこれはまずいとそう言い第2組のメンバーの評価を後回しに帰還を進める。

 

「よし、戻るぞ皆――っていうか青山!」

 

「っ――待てや!!」

 

青山に付き添い慎重に彼を歩かせる千土に爆豪が叫ぶ。

ピタっと足を止め振り返った千土は自身を視線で射殺すつもりかと思える程鋭く睨む爆豪と向き合う。

その場の空気はまるで一触即発の緊張感を宿し居合わせた者達は息を飲む。

 

「テメェ4位なんだぞ!?しかもこいつとかなりの差を付けて!!なのに何でヘラヘラしてやがる!?」

 

3位である八百万を指差しながら爆豪は大声で叫ぶ。

以前自分に土を付けた相手である男のあまりに不甲斐ない結果に爆豪は拍子抜けした、しかしそれだけならばそれでも構わなかった。だが千土は悔しがる素振りを一切見せずただ自身より上の順位の者を誉め、自身より僅かに遅れた青山を気遣っていた。

別に悔しがる姿を見たかった訳ではない。しかし千土の様子からまるでやる気がないように感じ、1位を手にした爆豪からすれば手を抜かれたようにさえ感じた。

 

「落ち着けよ爆豪、別にヘラヘラしてるなんてことはねぇよ。実際俺は本気だったぜ」

 

「嘘ついてんじゃねぇ!!ろくに個性すら使ってなかっただろうが!!」

 

「うっせぇな!こんな工業地帯で地面動かせるかっての!!周囲の被害無視できるんならいつぞやの障害物競走の時よろしく好き勝手やってたわ!!」

 

「落ち着いて2人とも、喧嘩なんて良くないわ」

 

「そうですわ次のグループにだって迷惑ですわ。そもそもヒーロー科としての自覚をもっと持って下さい」

 

案の定一触即発から言い合いに発展した爆豪と千土の間に静観していた蛙吹と八百万が割って入る。

売り言葉に買い言葉を自覚したのだろう千土は申し訳なさそうに視線を逸らして頭を掻き、爆豪は未だに怒り収まらずといった様に千土を睨んでいる。

しかし沈黙を破るかのように響いた青山の腹の音に怒りが削がれたの小さく舌打ちし爆豪はその場から離れようと足を動かし――

 

「心配しなくても緑谷はまだまだお前程の完成度に至ってねぇよ。お前も落ち着いて訓練してればそうそう追い越されるなんてねぇよ」

 

「っ!……うるせぇっ!!テメェが知った風な事言ってんじゃねぇぞ!!」

 

「爆豪さん!!」

 

掌を爆発させながら怒りを剥き出しに叫ぶ爆豪に八百万がすぐに静止を掛ける。

流石に勢い任せに手を出すまでは行く気はないのだろう爆豪が睨みだけで済んでいる内に八百万は千土へと視線を移す。

 

「地城さんもあまり言い過ぎないで下さい」

 

八百万としては千土がそこまで悪いとは思わなかった。

どこか理不尽に怒りを露わにする爆豪とあくまで言われた内容を否定している言い合いだったから、しかし先程の千土の言葉で八百万は状況を理解した。

 

自身と近しい動きを見せた緑谷に爆豪は焦っていたのだ。

彼と緑谷の間に複雑な関係性があるのは皆多少ではあるが理解していたが、それ故に自身と緑谷との間の差が無くなりつつある状況に焦燥感を覚えた爆豪はこの訓練で必死に1位を取りに行った。

しかし1位を狙えば狙う程、一度自身を打ち負かせた相手が低い順位を受け入れているのが我慢出来なくなってしまったのだと察する。

 

しかしそこまで理解すれば先程の千土の言葉に八百万は疑問を覚える。

爆豪の焦りを一体どのタイミングで察したのかは分からないが理解した上で敢えて口にする必要はないだろうと。理解しているならば猶更だ。あんな簡単に言ってしまえば火に油を注ぐ結果になると分かるはずだと八百万は厳しい目で千土を見る。

 

それに気付いたのだろう千土は再び申し訳なさそうに顔色を変えると口を開く。

 

「悪かったな爆豪、別に喧嘩を売るつもりはなかったんだ…ただ」

 

そう言って千土は自身の左腕に巻かれた包帯を僅かに捲りその奥を覗かせる。

青い、強く痛めたのだろうその腕は青く滲んでおり痛々しいものだった。

 

「俺も随分焦って周りに迷惑かけた身なんだ、どうも冷静じゃいられなかった。許してくれ」

 

「地城ちゃん、そんな身体で?」

 

「心配すんなって蛙吹、力入れ過ぎると痛むだけで上手く身体動かせば大したことはねぇんだ」

 

職場体験最終日の訓練で必死になり過ぎた結果自分でも分からない程にブレーキが利かなくなり自分を止める為に応戦したギャングオルカから受けた傷。

流石プロヒーローというべきか軽くない傷ではあるが日常生活や授業内の訓練で支障は出ないように手加減されていた為千土はこの訓練も本調子と然程変わらない動きで臨めたと語る。

そんな言い分に爆豪はまた小さく舌打ちし、しかしそれ以上は何も言わず静かにその場を離れるのだった。

 

「やれやれ、やっぱ爆豪とは上手く話せねぇな…悪かったな皆」

 

「本当にこれっきりにして下さいね」

 

「気を付けるよ。――まぁ何だ、割と順位自体は悔しかったのに手を抜かれたと思われてたのがムカついてな…引っ込みが利かなくなった」

 

「えっ!?あの言い合いの原因はそこでしたの!?」

 

「軽い様で冷静な様で実は血の気が多いわね地城ちゃん、何だか良く分からないわ」

 

「悪い悪い。しっかしもうちょっと機動力の向上を考えないとなぁ――なぁ青山」

 

八百万と蛙吹の呆れた様な視線にHAHAHAと陽気に笑いながら千土はいい加減顔色が悪くなってきた青山を―密かに我慢しきれなかったら放り捨てるからなと半分本気で耳打ちしつつ―支えてその場から歩く。

その姿は先程までの少し不穏な空気は一切感じられないいつもの地城千土の姿だった。

 

(――どういう事だ?)

 

そんな姿にオールマイトは疑問を抱く。

ギャングオルカから送られてきた千土の評価表、いくつかの項目に対する評価値に加えて書かれた備考欄に記された内容に自身や彼の担任である相澤をはじめ教師陣が頭を抱えたのが記憶に新しい。

 

ヒーロー殺しとの接触による焦燥感に駆られた影響か静止さえ振り切って過剰なまでに訓練に没頭したという事があり、恐らくその兆候は未だに続く可能性が高く十分に警戒して欲しいとまで書かれていた。

その事もあって今回オールマイトは他の生徒達の様子も確認しながらも千土の様子を警戒していた。

 

しかし爆豪との言い合いでは逆に焦りに駆られた爆豪を諫める発言し、他の生徒達との話もいつもと変わらない穏やかなものだ。少なくともギャングオルカからの報告を受けた内容では5人中4位という順位ではまともではいられないだろうという予想に反してそんな結果にオールマイトは逆に戸惑う。

 

(本人が言う様にギャングオルカに迷惑をかけたことを職場体験が終わった事で落ち着き実感したのか…ならば心配はないのだが、しかし――)

 

オールマイトは千土が抱えた事情を知っている。

それ故に彼がヒーロー殺しと応戦したことで強い焦燥感を抱くことも在り得ると思った。

だからこそ予め千土にそんな傾向が見られたら対処。説得しようと考えていたが結局はどうにも歯切れの悪い結果と終わり、大きな出来事の直前の不穏な静けさの様なものを感じながらも続く第3組目の訓練にあたるのだった。

 

 

 

▼▼▼

 

 

その後はオールマイト、そして相澤達の懸念を他所に千土はこれといって問題行動を起こすことなく日々の授業を受け、やがて期末試験を一週間後に控えた六月の最終週を迎えるのだった。

 

――さて、いかにヒーロー科といえど学生、この時期を迎えればお約束というべき光景を広げていた。

 

「勉強してねぇーっ!!体育祭やら職場体験やらで勉強なんてしてねぇよォッ!!」

 

空を仰ぎ(室内だけど)嘆きを叫ぶ座学分野においてクラスでワーストの成績を持つ上鳴、傍らにはワースト2位の芦戸の姿もある。

 

「行事が重なるとやっぱキツイよな、おまけに期末だから範囲も広いし…」

 

「演習試験もあるって話だしなぁ…」

 

筆記試験への不安を語る砂藤とは別に峰田は筆記試験と合わせて行われる実技――すなわち演習試験へ意識を向けている。それもそのはず、誰が予想できた事か峰田の筆記試験においての成績はクラスの中でも上位組に分類されるのだった。

 

「あんたは同類と思ってたのに…」

 

「お前みたいのはバカだから愛嬌あるもんだろ…どこに需要があるんだよ」

 

「"世界"かな?」

 

ある意味理不尽な、しかし何故か納得してしまいそうな上鳴と芦戸の嫉妬に峰田は余裕の笑みを浮かべて応じる。

その表情は圧倒的優越感に浸っているのだとはっきりと伝わってくる。

 

「が…頑張ろうよ!全員で林間合宿行きたいもんね!」

 

「うむ!学校行事にはやはり皆が問題なく参加できることが望ましい」

 

「そもそも普通に授業うけてりゃ赤点になることはねぇだろ」

 

「言葉には気を付けろ優等生共!!」

 

緑谷、飯田、轟の波状攻撃に上鳴は涙を流しながら怒りの声を上げる。

特に轟の言葉には心が抉られるような痛みを覚えた。

――自分も同じように授業を受けているのに何故向こうは成績上位層の中でも上の部類、一方でこちらは最下層なのか理解出来ない。違いなど精々授業中に睡眠欲との戦いを繰り広げているか否か程度なはずなのに…

 

「まぁ最悪2日ぐらい詰め込みすれば赤点ぐらいは避けられるんじゃね?」

 

「む、詰め込みは良くないぞ地城君、やはり勉強は自分に合ったやり方で最低でも毎日1時間以上やらねば身につかないぞ」

 

「そりゃ正しい勉強法って意味じゃそれが正解だろうけどあと一週間でその自分に合ったやり方を掴むってのも難しいんだって」

 

「地城の言う通りだ!頭良い奴は自分に合ったやり方って言うけどな、そんなもんが分かるなら最初っからテストに悩んだりしないんだよ!!」

 

「……あれ?でも地城君この前の中間テスト結構良かったよね?」

 

「あぁ俺まともにテストとか受けたのって入試の時ぐらいだったから中間の時はむしろ結構気合入って当日までにだいぶ詰め込みしたんだよ。心理テストやら自分試せるのって案外好きだから割と楽しめた」

 

「根が真面目かよこいつ!?」

 

小学の途中から雄英入学するまで『個性制御施設』で一般的教養を学んできた身からすればクラス全員で受けるテストというのも中々新鮮なもので結果としてクラスで5位の成績である轟に次ぐ6位という満足のいく結果を得ることができた。

その為今回の期末テストでも気合を入れ今度は5位以内――いっそ1位を目指すかと数日前から自主学習に手を出して――いざその気になってみたら何から手を付ければいいのか分からなくなり結局片っ端から詰め込もうというのが千土の現状であった

 

結論として味方っぽく話しに入ってきた千土のスタンスが"とにかく詰め込め"というスパルタ思考かつ本人がそれをそれとして楽しんでいるという下手な優等生以上に危険な存在であると上鳴と芦戸は戦慄する。

 

「お二人共、座学なら私、お力添えできるかもしれません」

 

「ヤオモモー!!」

 

地獄に仏とはこの事か、クラス内での成績1位を保持する八百万の言葉に上鳴と芦戸は歓喜の涙を流す。

演習の方は自信がないと断りを補足する八百万に対し他にも耳郎や切島、砂藤や瀬呂など色々なメンバーが集まってくる。

流石に集まり過ぎではないかと傍から見ていた千土は少し心配するもクラスのメンバーに囲まれる八百万の表情は周囲から必要とされていることに心の底から喜んでいるようでとても晴れ晴れしく敢えて水を差すような無粋な真似はすまいと引き下がる。

 

――気が付けば目の前に一冊の本が差し出されており、その本の持ち主である飯田へと視線を向ける。

 

「これは何だい委員長?」

 

「俺が読んでる自主勉強法の参考書だ。短い時間で読みやすくテスト期間中でも参考になるはずだ。良かったら読んでくれ」

 

「いやあの、まず参考書自体あんまり読まないので…」

 

「詰め込み方法であんなに良い点が取れるのなら地城君は正しい勉強法を身に付ければより良い成績を必ず取れるはずだ!」

 

「い、いや…元々俺詰め込みで覚えるのとか慣れてるからやっぱりこのやり方が一番合ってる気がするというか…」

 

悪気なし、純粋な親切心で自らの勉強法の参考元を競い合う関係でもある者に快く預ける飯田の言葉は有難く――しかしそれ以上にその謎の気迫に圧され千土はじりじりと後退る。

 

勉強自体は然程苦ではないが、何故勉強する方法を勉強をしなければならないのか?

未知の価値観に千土は戸惑い、近くにいる轟へと救いを求める。

 

「そうだ轟!お前授業聞いてるだけなんだろ。折角だしまずお前が読んで内容をかいつまんで俺に教えてくれ!」

 

救いを求めるというより呪いのアイテム(参考書)を押し付けてる感があるがきっと気のせいだろう。

 

「いや授業聞いてるだけで赤点取ることはねぇってだけで自主勉ぐらい人並みにしてるぞ?」

 

「テメェそれで良く上鳴にあんなこと言いやがったな!!」

 

「いやあいつらのは赤点についての話でお前のは高得点についての話で――」

 

「真面目か!?」

 

結局交渉も失敗し手元には飯田推薦の勉強法の本が残された。

仕方なし、受け取った以上は一度読ませて貰おうと本を開き1ページ目から順に見ていく。

――恐ろしいまでにページが進んでいく。勿論頭には入っておらずただただ目が滑っていってしまっている。

 

やはり参考書というのはどうも苦手なのだとはっきりと認識し飯田に謝罪と共に本を返すのだった。

その後の昼休みには緑谷達がB組の拳藤から期末における実技試験では入試や体育祭で使用された仮想敵を倒す内容らしいという情報を聞いたとクラス内で共有し上鳴や芦戸などは心配はなくなったと普段の調子を取り戻すのだった。

 

2人のような強力な攻撃的な個性の場合生徒同士の模擬戦などでは殺傷力が高い分調整が重要となる為機械仕掛けの仮想敵の方が精神的に楽なところがあるのだろう。

試験の結果が悪ければ折角の林間学校に参加出来ず学校で補習なのではという心配を抱いていたこともあってその喜びも大きいのだろう、千土としても仮想敵との戦闘は相性が良いこともあって不安は少なく油断とはいかないまでも気が楽になるのを感じていた。

 

しかしそんな明るくなりつつある空気を破る声が教室に響く。

 

「人でもロボでもぶっ飛ばすのは同じだろうがアホが!」

 

「アホとは何だアホとは!!」

 

「うるせぇな調整なんざ勝手に出来るもんだろ!――なぁデク!?」

 

突然話題を振られ緑谷はビクリと肩を跳ね上げる。

しかし爆豪はお構いなしに主張を続ける。

 

「個性の使い方、ちょっと分かってきたのか知らねぇがテメェはつくづく俺の神経を逆撫でするなぁ……!」 

 

「――あれか!前のデク君、爆豪君みたいな動きになってたやつ!」

 

「あー、確かに!」

 

救助レースの際に緑谷が披露した新たな技術――それは確かに爆豪が使う爆発による推進力を利用した移動法によく似ていた。緑谷がそれを参考にしたのかどうかは分からないが爆豪にとっては緑谷が自身の技法近い力を得たことに思うところがあったのだろうと何となく察する。

 

「――体育祭では無様な姿を晒したがもうあんな結果は残さねぇ!次の期末試験なら個人成績ではっきりと優劣つく!完膚なきまで差ァ付けてデク…テメェをぶち殺してやる!――いや、デクだけじゃねぇ…地城!テメェも轟も全員俺がぶっ潰す!!」

 

「久々にガチなバクゴーだ」

 

「焦燥……?あるいは憎悪か……」

 

爆豪の鋭い視線が轟、そして千土に刺さるのを見てクラスの者達が遠巻きに見守る。

 

しかし常闇を始め多くの者が闘争心を剥き出しにする爆豪の心中に宿る焦りを理解していた。

 

体育祭の結果、そして恐らくだが望んだものと大きく違っていたのだろう職場体験の内容にプライドの高い爆豪は今大きなストレスを抱き、それらを払拭するためにもこの期末試験に本気なのだろう。

 

言動こそ荒いが彼のその一直線な覚悟にクラスの皆も緩みかけていた意識を引き締め迫る期末試験に備えようと思うのだった。

 

その期末試験が例年とは比べ物にならないものへと変化しようとしている――それをまだ知る由もない生徒達は油断なく――しかしそれでもただ年相応の、テスト前日の学生らしい心境で備える日々を送るのだった。

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