読んで下さった皆様大変ありがとうございます。
誤字報告も多く頂き大変感謝しております
(何でこんな間違いするんだろうという間違いも多く恥ずかしいものです)
そしてまたしても体育祭突入前の話で申し訳ありません。
「書き直せ」
「何故ですか? 俺の反省文の何が駄目だってんですか?」
ヒーロー科の最難関と謳われる雄英高校の一教室の教卓を挟んで教師と生徒が睨み合う。
当初の予定通り一週間の入院の後、無事に退院を果たした千土は朝のHRの開始と共に自身の担任、相澤へ宿題の反省文を自信満々に叩き付けた。
ぼ~っとした目で1枚目から流し見していた相澤だったが3枚目の途中辺りから目を僅かに細めていった。
「『最初の黒霧との接触時に功を焦りすぎたこと』『U●Jの山岳エリアを過剰に壊したこと』これらの反省内容はまぁいい」
「でしょう、後者に関しては便宜を図ってくれた13号先生には頭があがりませんよ」
「だが途中から『相澤先生も大怪我を負ったと伺いました、私達生徒の為戦って頂いたことに最大の感謝と尊敬を』だの『完治するまでお困りの事がありましたら微力ながらお助けいたします』だの『ご自愛下さい』だの俺への言葉にすり替わってんだが?」
「すいません、提出を考えながら綴っていたところ自然と先生への感謝が──」
「明らかに字数稼ぎだろうが、そもそも余計なお世話だ」
自身の言い分をばっさり切り捨てられようと千土は依然として相澤を睨み続け突き返される反省文を頑なに受け取ろうとしない。
ここで折れてしまえば失うものがあると知っているから、かつて2度も奪われてしまった放課後という学生にとっての黄金の時間を守るため……
「余計なお世話だなんてあんまりです、現に相澤先生は今でも包帯まみれじゃないですか!」
「お前に心配される謂れはない。それと字数稼ぎにしてもキャラじゃないこと書くな気持ち悪い」
「きっ!? 生徒の素直な感謝に対してドライ過ぎる」
「アホ言ってないでさっさと受け取って席戻れ、HRが進まん」
「断固拒否する! 生徒の反省と感謝の言葉を突っぱねる教師があっていいのか合理主義ミイラ!! 略してゴリラ!!」
この後千土は包帯の中から飛び出してきた相澤専用の特殊な捕縛布に締め上げられ反省文共々自分の席に追いやられるのだった。
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「くっそ~あの鬼畜合理主義め、あと3枚も何書けってんだよ……」
「復帰初日から元気なものだな……」
HR終了後机上に置いた反省文の用紙をシャーペンの先でコツコツと突きながら頭を抱える千土に呆れの感情を隠さず常闇は声をかける。
「これが元気に見えるならお前はマジで闇の世界の住民だぞ」
目の前用紙に生きる糧を奪われたと言わんばかりに顔を陰らせる千土だったがそんな変わらない様子にクラスの皆は安堵し自然と千土の席に集まってくる。
「まったくしょうがねぇなぁ、中学時代に反省文のプロと呼ばれた俺が力を貸してやるぜ。まず反省文なんだから感謝状にしたってそりゃ返される、ここは『先生に大切思われていながら不安な思いをさせてすみません』って方向で攻めてこうぜ」
「天才かよ上鳴、採用だ。よし青山、お前も歴戦の反省文クリエイターだろ力を貸してくれ」
「やれやれ仕方ないね☆──そうだね『凶悪なヴィランを相手に臆さず輝き過ぎてしまった罪☆』この反省で行こう☆」
「面白ぇ採用。次、お前こそ歴戦の中の歴戦、歴戦王反省文クリエイターだろ峰田。一つ力を貸してくれ」
「アホか!? お前こんな内容で提出する気かよ正気か!?」
意外や意外、謎のテンションで制作されていた悪夢の反省文は峰田の真っ当なツッコみでブレーキがかかった。
「確かにその通りだ峰田、反省文慣れした奴ってようするに馬鹿以外のなにものでもねぇ、結局こういうのは頭良い奴に頼るに限る。八百万協力してくれ」
「わ、私ですか!? いえ私は今まで反省文を綴った経験など一度も──」
「だからこそだ、反省文に必要なのが偽りない感情なら不慣れな奴が作ったものが一番ふさわしい! その力を貸してくれ」
「いえ代理を頼む時点で偽り以外のなにものでもないかと……」
「大丈夫だってあくまで筆記するのは俺なんだから、それに八百万もいつか軽い悪戯した時に備えて慣れはしなくともある程度は書けるようになっといた方がいいって。俺を助けると思ってちょ~っと」
「いい加減しろアホ地城」
ブレーキ直後にUターンをかましアクセルを踏みぬいて八百万に迫る千土を頭をひっぱたいて耳郎は反省文の用紙を奪い取る。
「反省文なんてどうせ課題じゃないんだから適当なこと反省しますっていってあとはこうこう改善しますって言えばすぐ終わるっての!」
「ちょ、書き込むなよ筆跡でバレるって」
「だったらさっさと終わらせる! 分かった!?」
「はい、すみません」
怒りを含んだ耳郎の声に押しつぶされ千土は大人しく従い、耳郎の指示のもと反省文の作成を再開するのだった。
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放課後、右往左往の末に完成した会心のできの反省文を手に千土はいつもの連れ3人と共に職員室へと向かう。
千土が周囲に違和感を覚えたのがこの時だった。
──アイツら1-Aの……
──襲撃事件を生き抜いたからって調子にのりやがって……
「障子、顔も知らない人から恨み籠った目で見られてんだが俺の普段の行いってそんなマズかったか?」
「安心しろ、今回の件に関してはお前の普段の行いとは別問題だ」
「否定はしないのな、……で、それなら原因は?」
「爆豪の仕業だ」
千土にとって自身が休んでいた時の話だった為知る由もないが近々雄英では体育祭が行われるのだがここで問題が生じたのだった。
雄英の体育祭とはヒーローを目指す優秀な人材発掘の祭典でもあり、生徒の関係者だけでなく一般人、そしてプロヒーローからも注目され、ここでの活躍をみてプロヒーローから生徒に自社への所属、所謂サイドキックへのスカウトもあるという生徒にとって輝かしい未来への最初の一歩を踏み出す絶好の機会なのだ。
そしてそれ故、生徒達を良くも悪くも刺激してしまう。
何でも先日のヴィラン襲撃事件をへて1-Aへの世間の注目が高まり、その一方でまったく同じカリキュラムで学習している1-Bにとってその状況は面白いものではなかった。
実力が劣っているわけではないのに。
まったく同じ授業で鍛えているのに。
たまたま注目される機会を得ただけのくせに。
そんな不満を抱きつつも決して声にはしなかった、しかし体育祭を行うという一報を受けてB組、そしてヒーロー科への入学が叶わず普通科での入学となった者達は件の1-Aの動向が気になり意味がなくともつい視察に訪れて……爆豪と遭遇した。
『意味ねぇことするな、邪魔だモブ共!!』
プライドが高く、絶対の自信家の爆豪らしいその台詞は非常にタイミングがマズかった。
秘められた1-Aへの不満は爆発し気が付けば1-A対その他クラスの構図を完成させていた。
「ははは、あの野郎にも困ったもんだなぁ」
「笑いごとじゃないっての、廊下歩いてるだけで居心地悪いってどうなのさ」
そんな現状を説明してみれば千土はどこか楽しそうに呑気に笑っていた。
「あれ? 地城じゃん?」
「ん? おぉ拳藤か、初日ぶりだな!」
不意にかけられた声に足を止めて振り返れば思い出したくないやらかしの結果知り合った友人がそこにいた。
「地城の知り合いか?」
「入学初日にクラス間違えてたでしょこいつ、そん時にちょっと話してね」
そのやらかしをあっさりと口にされ周りの3人が納得したように頷く中、千土は苦い顔を浮かべさっさと話題を変えるべく口を開こうとしてそれより早く拳藤が言葉を発する。
「ってか身体はもう大丈夫な訳? 例の襲撃で入院したって聞いたけど」
「あー、そりゃそっちにも話はいくわな、もうだいぶ良くなったよ」
「それは良かった、今度の体育祭見学になんてなったら辛いだろうしね」
「あぁ、その体育祭のことだけどそっちのクラス何とかならねぇの? 何かすげぇ睨まれるんだけど?」
流れで出てきたその名称に千土が今の状況を聞くも今度は拳藤が顔を顰める。
「それはそっちが煽るからでしょ、私だっていっつも打倒A組って叫ぶ連中抑えんの苦労してるんだよ?」
「おっしゃる通りで、すまんねうちの爆弾魔が迷惑かけて」
思った以上にこの対立関係の根は深いらしく千土はもうどうしようもないと諦め自身の方から謝罪する。
「気合が多めに入るレベルならいいんだけどね。お願いだから当日余計な刺激はしないでよ」
「? あぁ気を付けるよ」
"当日まで"でなく"当日"、何故か限定的な拳藤の言葉が気にはなるが大してに留めはせずに頷く。
「まぁ、ギスギスした空気も息が詰まるし当日はお互い楽しもうぜ?」
「それは無理。やるからには本気だよ」
千土の言葉を否定し拳藤の視線が鋭くなる。
「最初は初日からクラス間違えるとんでもない馬鹿だと思ってたけど、アンタが一番ヤバいヴィランを倒したって聞いてね。悪いけど本気で挑んでみたくなったから!」
本気で挑む、その言葉に千土の後ろに立った者の中で瞳を揺らす者がいたが、拳藤と向き合っていた千土はそのことに気付かぬまま笑みを浮かべる。
「上等、むしろそっちの方が嬉しいわ。なら"当日までは"楽しみにしとくぜ拳藤」
挑戦的な笑みでそう宣言し千土は拳を握る。
先日のヴィランとの戦いとは違う。ヒーローを志す者同士が高め合う為、競い合う為刃を交える。
それが楽しみで仕方ないと無意識に力が湧き上がる。
手にした反省文は握り潰されぐしゃぐしゃになっていた。
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「地城、俺が言いたいことは分かるか?」
「存じております故、何卒お見逃し頂きたくございます」
職員室にてぐしゃぐしゃになった反省文を精一杯伸ばして修復したものを提出すれば相澤の最早呆れすら失せた光のない目で見られ千土は頭を下げる。
「はぁ、……内容は悪くない。今回はこれで許してやる、わざわざ同じ内容を書き直すを待つのも非合理的だからな」
「合理主義バンザーイ」
「反省してんのかお前……」
盛大な掌返しに失った呆れが一周回って帰ってきた。
「まぁ、お前がまともに文章を作れることは分かった、体育祭の代表挨拶もしっかりやれよ」
「了解っす…………ん? 先生今何か変なこと言わなかったっすか」
「本来はHRで伝えてたんだ、お前の馬鹿のおかげでその時間がなくなったがな」
この時千土は先程会ったけ拳藤の"当日"に余計な事を言ってくれるなという忠告の意味をようやく理解した。
体育祭の代表挨拶。
教師陣や一般来場者、そして今実績を上げ続けるプロヒーロー達を前に雄英生徒代表として開会式で行う"選手宣誓"、それは例年入学1位の生徒が行うのが通例でつまりそれは今年は千土がやることを意味していた。
相澤も目の前のこの浮かれた頭の問題児が無事にその役目を果たせるのか気が気でなかった、主に雄英の看板に傷がつかないかが。しかし、今回提出された反省文を見る限りその気になればある程度まともな文章が作れることは分かった。
勿論反省文と選手宣誓が同じものだとは思っているわけではない。しかし、それでも成功の可能性が一桁から二桁になってくれるだけでも気分的にはマシになるというものだった。
どちらにせよ例年の流れを乱すわけにはいかないし、千土自身は知らないが先日のヴィラン襲撃事件での騒動で詳細を伏せども多少噂は流れるもので今や彼はプロヒーローからの注目が高まっていた為代表の変更もままならなかった、それ故この反省文で多少が気が楽になった。
「──そういうわけだ、生徒代表としてちゃんとやれよ」
「……はい」
相澤先生、その文章考えたのほとんど耳郎さんなんです。
喉の奥にまで出かかったその言葉を飲み込んで千土は小さく返事をするのだった。
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「助けてくれ」
職員室から出てきた千土が開口一番そんな言葉を漏らし、何か嫌な予感を察知し耳郎達は皆全力で逃げる。
爆豪によってもたらされた緊迫した空気の悪さは一高校生には非常に重たく皆これ以上の負担は背負いたくないのだ。
退院一日目の学校、千土は一人切なく帰路につく。
そして数日後。
大きなイベントを控えた時間というのは一瞬で過ぎ去り『雄英高校体育祭』の開催の日は訪れた。