~Side Story ~サトシの兄な転生者の軌跡   作:ゼノアplus+

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さあ行こう未来信じて

3話

 

 

キュィィィィィィィィィィィィン

 

 

「……やってきてしまった。ここがホウエン地方か」

 

 

カントー地方より少し暑い気候で太陽が照りつける空港で、今まさに地上を離れた飛行機の音を聞きながら俺は飛行機から降りた。ああ、どうしてこうなったのだろう。何故……10歳の誕生日の翌日に俺は一人で飛行機に乗ってホウエン地方を訪れているのだろうか。

 

ああ、挨拶がまだだったな。俺の名前はサトル。昨日の10歳の誕生日にポケモントレーナーとしてIDをもらった新人トレーナーだ。ちなみに手持ちは無し。空を見上げれば、スバメやオオスバメが飛んでいる。

……うん、カントーじゃ見られないポケモンだな!!

 

さて、そろそろちゃんと説明しようか。どうして俺がホウエン地方にいるのか、どうしてポケモンを貰ってないのかをね。まずは数日前に時間を巻き戻そう。ディアルガ様お願いします〜

 

 

キングクリムz「違う!!それ違う!!」ゾンッ!!

 

 

 

〜数日前〜

 

 

 

 

「本当にすまん!!この通りじゃ!!」

 

「えっと博士……とりあえず頭をあげてください。玄関を開けた瞬間にそんなに謝られても困りますし、何のことか全く分かりませんし、何よりそんな大声じゃ寝てるサトシが起きてしまいます」

 

「そんなことはできん!!儂はサトルに本当に申し訳ないことを…「博士?サトシが起きます……お静かに」……分かった」

 

 

意味不明な態度を取り続ける博士を言葉の圧で黙らせる。全く……目先の事に囚われすぎてるから普段から俺や研究員さんが所内の掃除するんだよ……

 

 

「とりあえず一旦上がってください。母さんもいいよね?」

 

「ええ、どうぞ博士。紅茶とコーヒー、どちらにしますか?」

 

「申し訳ないのぅ……御邪魔します。ママさん、コーヒーを頂こうかね」

 

 

来客用のスリッパを出し、博士にリビングのソファに座ってもらう。母さんが3人分のコーヒーを持ってきて一息入れたところで、博士の話が始まった。

 

 

「今日訪ねたのは他でもない。サトルのトレーナーとしての旅立ちについてなんじゃが……」

 

「……もしかして、ポケモンがいないとか……?」

 

「そうではない。サトル、ホウエン地方に行ってみる気はないか?」

 

「……ん??」

 

 

ホウエン地方。前世の日本で言う九州をモデルにした地方で、あの人気ポケモン、レックウザが登場した地方でもある。ゲームだとルビー・サファイア……ああ、エメラルドもあったな。それに加えてオメガルビーとアルファサファイアっていうリメイク作品も出ていた。移動用メガラティアスにはお世話になりました。『そらをとぶ』が要らないのは楽で良かったよ。

 

 

「どういうことです?」

 

「最初から話すと長くなるが、端的に言うとホウエンがピンチなんじゃ」

 

「???」

 

 

余計に分からなくなった。ホウエン地方でピンチなことって言えば……カイオーガとグラードンが復活したり、デオキシス入りの隕石が降ってきたり?洒落にならねぇ……

 

 

「儂がトレーナーデビューする者ポケモン図鑑を渡すのは知っておるじゃろ?」

 

「はい、何回か助手として手伝いましたし」

 

「ポケモン図鑑を渡すと言うのは単にトレーナーに便利な道具を与えると言うだけではないんじゃよ。図鑑に登録されたポケモンのデータは各地方におる儂のような図鑑を渡す博士の研究所に送信され、新たな研究材料として重宝するんじゃ。もちろん、ポケモンのデータに関してはトレーナーの許可は取っておるぞ?」

 

 

へぇ〜そんな機能もあったのか。まあ確かにそうしないと各ポケモンの平均的な身長体重とかは計りきれないもんな。

 

 

「今年のホウエンは不作でのぅ。オダマキ博士……ああ、ホウエンでトレーナーにポケモンと図鑑を与える博士の一人じゃが、彼の元で旅をスタートするトレーナーが一人もいないんじゃ」

 

 

……は???そんなことあんの?勉強した限りこの世界はポケモンの協力もあって文明水準も高いし、出生率も問題無い。流石に新人トレーナーが一人もいないなんてそんなこと……ん?

 

 

「あの、ポケモンと図鑑を渡す博士の一人って……各地方に一人じゃ無いんですか?そう言う人」

 

「いや、何人かおるぞ。まず、トレーナーになるためにわざわざ遠くの街の博士の元に行くのは効率が悪いじゃろ?」

 

 

衝撃の事実!?なるほど、ゲームのチュートリアルで出会う博士ってあくまで主人公と一番近いか、何かしらの関係がある博士だからその人の元で始まったのか!!確かにわざわざド田舎で研究所を構える必要もないな……まさかそんな理由が隠されていたとは……

 

 

「と言うことは……俺にそのオダマキ博士の元で旅を始めて欲しい、って事ですか?」

 

「そう言う事になる。本当にすまん……もっと早く伝えるべきだったんじゃが、以前研究者で学会を開いた時にオダマキ博士の愚痴を聞いていてそう言う話になった時には旅立ちの日が近くてのぅ……」

 

「ああいえ、そこは構わないんですけど……」

 

 

俺がホウエンに行っても大丈夫ってことはこのマサラタウンから旅を始めるトレーナーはちゃんといるんだな。良かった良かった。

 

 

「その、どうして俺なのかなって」

 

「ああその事か。単純じゃよ。サトルはカントーにいるべきではないと思ったのじゃ」

 

「はぁ……?」

 

「サトルは小さい時から儂の元で色んなポケモンと触れ合ってきた。自慢になるが儂の研究所にはカントーに生息する全てのポケモンが生活しておる。この5、6年、お前は儂が出した難題とも言える課題をクリアし続け10歳にしては相応しくないほどの知識と精神を持っておると思う」

 

「いやあの……買いかぶりすぎでは……?」

 

 

オーキド博士の俺への評価が異常に高い……ていうか今なんて言った?難題とも言える課題???やっぱあれむずいんじゃねえか!!『これくらいトレーナー資格を持っておる者なら誰でも答えれるぞ?』とか言ってたくせに……あれ全部嘘かよッ!!そうだと思ったよ、色違いのポケモンが生まれる確立とか知ってる奴の方が少ないわ。提示されたデータと実際にあった金色のコイキングがいた群れの観察記録だけで必死にレポートを書いたあの日々をどうしてくれる!?元々持ってた知識で正解知ってなかったら挫折してたね。

 

 

「サトルはこれからもっと大成する。儂の勘がそう告げとるのじゃ。だからサトルにはもっと世界を知ってほしい……まあぶっちゃけると、儂がオダマキ博士に豪語してしまったのと酒の席の雰囲気でもう決まってしまったのじゃがな」

 

「ぶっちゃけたな!?随分とぶっちゃけたなジジィ!!ビビるくらい褒めたのはそのためかッ!!」

 

「ジジィとはなんじゃジジィとは!!これでも儂はサトルのためを思ってだな!!」

 

「いやありがたいですけど!!めっっっっっっっちゃありがたいですけど、最後の一言がなかったら完璧だったよ!!」

 

「「はぁ……はぁ……」」

 

「にいちゃん、どうしたの〜?」

 

「ッ!?ああ、ごめんなサトシうるさくして。大丈夫だからおやすみ?明日はシゲル君と遊ぶんだろ?」

 

「うん〜分かった〜」

 

 

思ったより口論の勢いが激しかったらしい、サトシが起きてしまった。母さんにお願いしてサトシを寝かしつけてもらおう。

 

 

「はぁ……分かりました。その話、お受けしますよ博士。ていうかもう断れる雰囲気じゃないんでしょう?博士の面子を守る意味でも協力しましょう」

 

「本当にすまんのぅ……その代わりバックアップはしっかりとさせてもらうからの」

 

「期待してますよ」

 

 

 

 

〜当日〜

 

 

 

「着替えよし、生活用品よし、お金よし、めんどくさくなったからその他諸々よし!!」

 

「いいの?」

 

「まあ大丈夫さ、当分はオダマキ博士の家に住まわせてもらう事になってるからな」

 

「へぇ〜」

 

 

サトシの羨ましい、といったキラキラした視線を受けながらリュックに詰める物の確認を終えた俺は、一旦伸びをして10年間過ごしてきた部屋を眺める。

 

 

「ははっ、相変わらず子供らしくない殺風景な部屋だよ」

 

 

成長を見越してか今の俺にはまだ大きめのベッド、勉強するために酷使し続けてきた木製の机、参考書とノートが詰め込まれた本棚、衣類が入った棚、モンスターボールの柄のカーペット……サトシが買ってもらったポケモンのぬいぐるみ……散乱していた本をちゃんと片付けをしてみると意外と広いと感じたこの部屋も、今日で当分お別れだと思うと少し物寂しい。でも……まあいいかな。

 

 

「サトシ、今日からこの部屋はお前にあげるよ。大事に使ってくれよ?」

 

「うん!!大事にする!!」

 

「本棚の本も自由に読んでいいからな」

 

「にいちゃんの本は難しいからやだ」

 

「ふっ、確かにサトシには早いかもな。でも、ポケモンのことをもっと知りたいんだったら、勉強しないとダメだぞ?」

 

「うぅ……にいちゃんが言うなら……頑張る!!」

 

「良い子だ」

 

 

俺に頭を撫でられにへらと笑うサトシは、もうアニメの時の面影が見える……特に輪郭。もしや俺も?と、思ったが自分じゃ分からん。

 

 

「サトル、荷物の整理は……って、終わってるみたいね」

 

「母さん、ちょうど今終わったところ」

 

「そう……寂しくなるわね……」

 

「うん、少なくても年に一回は帰ってくるよ。新しい家族も連れてね」

 

「楽しみしてるわ」

 

 

10歳と5歳の子供を持つ女性とは思えないほど若々しい母さんは、親父が旅に出た時と同じように少し寂しそうに見える。でも俺は親父みたいに今まで一度も帰ってこない、なんてことは絶対にしない。次に帰るときは……俺の相棒が紹介できると良いな。

 

 

「ああそうそう。これを渡そうと思ってたのよ」

 

「それは……リュックと服?」

 

「ええ、サトルが持っていこうとしてるリュック、もう随分とくたびれてたでしょ?だから新しいの。服は……もうすこし興味を持ちなさい」

 

「ありがとう母さん!!服に関しては善処するよ」

 

「それ、しない時のいつも言ってるわよ〜」

 

「ははは……なんのことやら……」

 

 

流石母さん、10年も俺を育ててきたことはある。敵わないな。

 

 

バシィ!!

 

「いってぇ!?」

 

「ふふっ、シャキッとしなさいな。そんなんじゃホウエン地方でやってけないわよ」

 

「……うん」

 

 

平手で背中を叩かれた。そんなに雰囲気で出てたか……

 

 

「よし!!」

 

 

気合を入れ直した俺は、母さんにもらった服に袖を通す。白い無地のシャツの上から七分袖の黒いジャケットに、伸縮性のある薄い青のズボンだ。動きやすい。鏡の前に立って自分の姿を見てみると……

 

 

「ちょっと背伸びしすぎじゃない?」

 

「とても似合ってるわよ。ねえサトシ」

 

「にいちゃんカッコいい!!絶対それがいいよ!!」

 

「そ、そうか?なら……そっか〜」

 

 

そこまで言われちゃそうなんだろう。ならば自信を持って突き進むのみだ。

 

 

「すぅ…………はぁ…………行ってくる」

 

 

時計を見れば、そろそろオーキド博士の研究所に行かなければいけない時間だ。残念ながら母さんとサトシは見送りには来ない。いや俺から来ないでほしいとお願いした。最後まで付き添われると旅に出る決心が鈍りそうだからな。

 

リュックに荷物を詰めて俺は愛用のスポーツシューズを履いて外に出た。……この敷地を出れば、俺はもう振り返らない。

 

 

「行ってらっしゃい。気をつけるのよ」

 

「うん」

 

「にいちゃん、行ってらっしゃい!!」

 

「うん……行ってきます!!」

 

 

そして俺は、その一歩を踏み出した。

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