原作通りにいかないけど、何とか頑張ってます。   作:ホルイゾ

10 / 17

色々あったので初投稿です。

お気に入りが100件を越えてました!ありがとナス!

そして今回は、原作前エピローグ的な奴です。


立ってるのもきついけど、なんとか耐えています。

 

 

 

 

 

 大剣を床に刺すとふぅっ、と息をついた。

 目の前には、兜が割れた右腕の無い鋼の騎士がどす黒い血を垂れ流しながら倒れていた。

 血以外にも真っ黒な塵、と言うよりは霧のような瘴気のようなものが騎士の体から漏れ出し、天に昇るように消えていった。それに伴って騎士の鎧や盾も黒い霧に変換されていき、消えていった。それを見た沙樹はある事に気付いた。

 

「(人じゃない......?)」

 

 そう、明らかに人ではなくてノイズでもないような変な消え方をしていた。それに騎士には位相差障壁と言われる、ノイズ特有の性質が無い事にも疑問を感じた。

 あの山での黒い騎士と戦った時、騎士の大剣には血がついていた。つまり、位相差障壁によって塵にしたのではなく、騎士の剣によってそのまま屠られたのだろう。位相差障壁を持たない埒外の存在、だとしたらまさか    

 

    聖遺物の一種?

 

 と、ここまで考えたところで視界が二重、三重とブレた。そして足の力が急に抜けて片膝をついてしまい、床に刺さった大剣の柄を杖代わりに掴んだ。

 どうやら血を流しすぎたらしい。胸元を触ってみると、血は殆ど止まっているようだが、それでも少しづつ血は流れていっている。

 病院行った方がいいかな、いや、二課にばれるな。と考えながら何とか立ち上がった。すると、後ろから厳つい男の声がした。

 

「彼女は...........一体................?」

 

「アァ.........?」

 

 いきなりの言葉につい変な反応をしてしまう。誰か確認しようとして振り向くと、そこには聖遺物疑惑のある二課の司令こと、風鳴弦十郎がいた。

 弦十郎はこちらを見据えると、ゆっくりと歩き出して来た。そして、畳二つ分ぐらいの距離で止まると口を開いた。

 

「君は、何故戦うんだ?」

 

「何故、だと?」

 

「ああ、君があの騎士と戦う理由を知りたい。」

 

 何故戦うのか。それを聞かれて原作云々に出てこない騎士について話しても、はいそうですかとは信じられないだろう。ましてや、二課にはまだ一期ラスボスがいるからこの話をしたせいで計画の変更になったらまずい。

 ならば、この際だから翼みたいに適当にぼかして伝えて、適当な理由付けて拒否しよう。翼よりはまだ話も聞いてくれそうだし大丈夫だろう。

 

「不要だから。」

 

「何?」

 

「なぁ、質問を質問で返すようで悪いが、ゴミをどう思う?そこら辺にあるような糸くずや埃とかだ。」

 

「それは.........捨てるが.........?」

 

「そうだよなぁ、それだよそれ。この世に存在する不用品は消滅あるのみだ。」

 

「随分と、横暴な自論だな..............。」

 

「ハハハ、耳が痛いね。だがいずれゴミも積もれば邪魔になる。ゴミを捨てるのはいつか誰かがやらなければいけないものだ。それともなんだ、お前達がやってくれるのか?この無能共の集まりで?」

 

 今の発言に一課の連中も頭に来たのか殺気の籠った目を沙樹にぶつけて来る。しかし、彼女は大きな金属音を立てながら床に刺さった大剣を抜いて肩に担ぐと、周りの視線も一気に散り散りになった。

 

「まぁ、そういう事だ。あと、俺はお前達のような組織には属する事はないと思え。どうせアレだろ、そっちに所属でもしろって言うんだろ?」

 

「むっ、それはそうだが.......しかし、その力は個人で所有していい物ではない。それにどんなリスクがあるか分からないんだ。だから」

 

「しつこいぞ。大体、所属したところであの一流アーティスト様に背中から斬られるなんて事にはなりたく無いんでね。」

 

 その言葉を聞いた弦十郎は、少し思うところがあったようで声が詰まってしまい、目線を下に下げた。

 沙樹は弦十郎に背を向けて、大剣を肩に担いだまま外に出ようとしたところで、あっ、と一言漏らして弦十郎の方へ振り向いた。これは一応聞いておいた方が良いだろう。

 

「そうだ、お前の名前は?」

 

「......俺は特異災害対策機動部二課の司令をやっている、風鳴弦十郎だ。」

 

「弦十郎、ね。覚えておく。ああ、それと司令なら部下の教育と掃除はやっておきな。」

 

「掃除?一体何を」

 

「それじゃ、またいつか。」

 

 沙樹は弦十郎の言葉を遮ると、黒い霧を出してレーダーに発見されないようにして走り出した。弦十郎とはもう少し話していたいが、もうそろそろ失血で倒れそうなのだ。さらに怪我は前だけでなく背中も翼に切られたから多少の血が出ている。

 ショッピングモールから出てその近くの裏路地に駆け込む。このまま家に帰ったとしてもじいちゃんばあちゃんに病院に連れて行かれ、病院経由で二課へと連絡が行くかもしれない。ならばここで一旦休みながら適当に傷の理由でも考えよう。

 ふらふらと歩いていると、近くに座れそうなほどの廃材を見つけた。それに腰掛けてギアを解除すると黒い霧が晴れていき、次の瞬間には制服に戻っていた。

 言い訳どうすっかなー、とかいっそ隠して帰ろうかなー、とか考えていたら、体に限界が来たのか瞼が自重落下してしまい、意識もすぐに暗闇へと落ちていった。

 

 

 

 

 

 

「全く........無茶をする子ねぇ。でも、なんて美しいのかしら。」

 

 

 

 

 

 

「................んぁ?」

 

 瞼を開くと日は沈んでおり、真っ暗な裏路地が更に一層暗くなっていた。腰掛けたままの体勢で寝ていたからか、全身ががっちりと接着剤でなられたかのように凝り固まっていた。

 ぐっと立ち上がって背を伸ばしながらほぐしていると、ある事に気づいた。そう、体が普通に動く事だ。視界のブレや体の力が抜けそうになったりする事がなかった。というか寧ろ体が軽い。

 疑問に思って、制服の胸元から自分の体を覗いてみると傷が殆ど治っており、うっすらと傷痕が出来ている程度だった。

 

「誰かが........⁉︎」

 

 その場で周りを見渡してみても何も無い。強いて言うならカラスが一匹いるだけで、相変わらず人気の無い裏路地が存在するだけだった。

 まぁ、また二課に会った時にちょっと聞いてみるか。なんて事を思いつつ家に向けて歩き出した。ふと携帯を開いてみると、ばあちゃんからのメールが入っており、『早く帰って来なさい』の件名を見て溜息をついた。多分説教かなぁ、と呟くと早歩きで裏路地を抜けた。

 

 やがてそれを見届けた赤目の鴉は、月を背に飛び立っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 むぅ、と椅子の背もたれに寄りかかりながら深い溜息を吐いた。

 今日の一件で出会った、黒い騎士。それが弦十郎の頭を悩ませる種だった。

 前々から存在自体は確認せども、確認に行く度に姿を消し、いざ目の前に姿を現したと思ったら、よく分からない事を言われて結局何も分からないまま消えていった。これ程までに話のしようが無い人は、弦十郎も初めてだった。

 

「どうしたら.........。」

 

「例の騎士?」

 

 後ろのドアが開いて了子が入って来る。目の下に少しだけ隈ができており、半分閉じそうになっているのを見て弦十郎は少し気を緩ませた。

 

「ああ。こちらが話し合いをしようにもあまり応じてくれなくてな。どうしたものかと考えていたのだが................そっちはどうだ?何か分かったか?」

 

「全然よ、アウフヴァッヘン波形も相変わらず不定形だし、かと思ったら、あの騎士のエネルギー出力は翼ちゃんのギアを超えていたわ。」

 

「翼のギア出力を?」

 

「ええ、それこそあの騎士が本気を出したら、絶唱以上の威力が出るかもしれないわね。」

 

「それ程までの力が........⁉︎」

 

「あるみたいね。少なくとも予想だけど。」

 

 了子はそう言うと、近くの自販機にコインを入れて紅茶のボタンを押した。コポコポと液体の流れる音を聞きながら待っていると、不意に了子が口を開いた。

 

「でも、分かった事もあったわよ。あの鋼の巨大な騎士の方だけど」

 

「本当か?」

 

「勿論よ。あの鋼の騎士、どうやらノイズでもないし人でもないみたい。」

 

「となると、聖遺物か?」

 

「いえ、聖遺物でも無いわ。()()()()()()()()。」

 

 了子は自販機から出てきた紅茶のカップを手に取ると、口をつけて啜る。体の内を流れるひんやりとした紅茶がとても気持ちよかった。

 

「あの鋼の騎士から僅かに残った黒い体液と、鎧の破片を調べてみたのだけれど、鎧に関してはただの鋼。液体の方はこの世に存在しない物質よ。」

 

 もしくはまだ見つかってないだけかもしれないけど、と付け足すともう一度紅茶を啜った。

 

「存在しない物質、か..............。」

 

「そうね、本当に厄介なこと極まりないわね。」

 

 二人で頭を抱えていると、弦十郎がよしっと言いながら席を立った。そして、首をコキコキと鳴らすと扉から出ようとした。

 

「あら、どこに行くの?」

 

「翼の様子を見てくる。あとついでに気分転換がてら体も動かしてくる。」

 

「分かったわ。こっちももうちょっと調べてみるから、何かあったら連絡するわ。」

 

「分かった。無理するんじゃないぞ?」

 

「勿論よ、肌はきにしてるもの。」

 

 二人でハハハ、と笑うと弦十郎は扉から出ていき了子一人だけがその場に残された。

 紅茶を一気に呷ると、ゴミ箱にカップを投げ入れて顎に手をやり考える。今回の件、不明な存在の出現、未知の物体、黒い騎士の『不用品』に『掃除』。

 

「まさか、私の事が知られている?」

 

 了子は黄金色に輝く目を光らせながら呟いた。その姿は一人の考古学者ではなく、終焉の名を持つ巫女としてのものだった。

 

「計画を変更するか?いや、もう少し様子を見るか...........。」

 

 ひっそりと呟くと、了子の目は元通りになり研究室へと歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 真っ白な病室で俯く一人の防人の姿があった。いや、それは防人というよりも、今はただの少女だった。

 思い出されるのは今日の戦闘。例のアンノウンがようやく姿を現したと思ったら、未知の敵を一人で鎮圧してしまったのだ。

 それを見て『もしも』が翼の中で芽生えた。もしあの時アンノウンがいたら、もし三人で戦えてれば。そんな思いが爆発し、鎮圧し終えたばっかりのアンノウンに斬りかかった。

 その結果が、これだ。鋼の騎士に奇襲をかけられ、アンノウンの足を引っ張ってしまい、挙句に自分も軽々と吹き飛ばされた。

 でも、何よりも、アンノウンに守られた。それが翼の中ではとてつもなく不甲斐ないと感じた。あの場でアンノウンは鋼の騎士の奇襲に気付いてた。だから自分に声を掛けた。

 

「それを、私は    ‼︎」

 

 あろう事か問答無用で斬りかかった。だからやむを得ずアンノウンは、私と騎士の両方から斬られることとなった。

 

「不甲斐ない.........!」

 

 ベッドの上で体を縮こませていく。心の中でアンノウンへの恨みのような物と、自分の不甲斐なさにアンノウンへの後悔がせめぎ合うように混ざりあっていく。

 こんな時、かつての相棒がいたらなんと言っただろう?そんな事を考えながら翼はもう一度瞼を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    そして、舞台は完成する。

 

 

 

 

 

 

「響、忘れ物は無いかい?」

 

「うんッ!バッチリだよ、沙樹!」

 

「ならよかった。初日から忘れ物なんてすると、先生に目を付けられるからね。」

 

「ええッ⁉︎それはやだなぁ.........。」

 

「そうでしょ?ほら、じゃあ行こっか!」

 

 

 

 

    乱入者ありのツギハギの舞台が。

 

 

 

    その結末はどうなるか。

 

 

 

    それは、神すら知らない。

 

 

 

 

 

 

 






はい、というわけで原作前完了です。

次は幕間と設定を書いたら原作突入です。お楽しみに。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。