では、どうぞ。
※2/29 最後の言葉を訂正。
あのOTONA達に思考放棄してから数週間。
俺は近くの小学校に転校し、そこで授業の一環として森林のゴミ拾いのボランティアに来ていた。
学校の先生曰く、軽いピクニックみたいな物だと言っていた。それと親交を深めろとも言っていたので、それを梅子さんに伝えると当日に特製の弁当を貰った。すげーいい匂いがする。何が入っているのだろうか..........?
そして翌日、広場にて。
本来なら、そこで適当にゴミを拾ってほっつき歩いていれば良かったんだが、何と教師が「じゃあ二人一組でペア作って」と言い始めた。
................やっべ、何か涙が出てきた。
多分、分かる人には分かるであろうこの辛さ。周りを見渡せば、仲のいい男子や女子同士でニッコニコの笑顔でペアを組んでいた。
その中でも、ちらほらと男女のペアもいた...........んだが、それはいい。オイそこ。顔を真っ赤にしながら手を繋ぐな。ほら初々しそうに微笑むんじゃねぇよ。何?お前等デキてんの?
因みにこれは憶測だが、自分は案外近寄り難い雰囲気があるのかもしれない。だってほら、俺の周りには誰一人寄り付かない。というか半径1メートル以内には常に人が居ない...............待って、俺って何かやらかしたかなぁ............?
それから数分後。
同じく余り者の男子こと、「
何だあれ、完全に虐められっ子押し付けられたんだが。というか教師も見て見ぬ振りしてんじゃねぇよ。虐められっ子が目の前で殴られてんのに、何も注意しない先生とか初めて見たんだが。
因みに泰永君自体は結構大人しく、顔もまあまあ美少年だと思うが、いつもおどおどしてるから何となく小動物の様な雰囲気がある人だ。
まぁそこでなんやかんやありつつも、泰永君と一緒にゴミ拾いに行く事に。
行く前に先生からゴミ袋と火ばさみを受け取って、適当にそこら辺をぶらつきながらもゴミを拾って行く。ゴミは意外と多く、コーヒーの缶から何かよく分かんないガラス片までと種類は様々だ。
因みに泰永君は黙々と俺の後ろを歩きながらゴミを拾ってる。
正直な所、泰永君とはこのまま話さないで黙々とゴミ拾いをしていてもいいのだが、それだと何か気まずい。かと言って虐められっ子にズカズカと喋るのもなぁ..........何か自分が虐めっ子達に標的にされそうで怖いな..........。
いや、自分でも割と最低な事考えてるのは自覚してる。だが、唯でさえモブに厳しいシンフォギアの世界で、自分から虐めっ子に話し掛けるのも何かしらのフラグが立ちそうで怖い。
そうやって悶々と考えてると、泰永君が服の裾を引っ張って来た。
俺は、頭にクエスチョンマークを浮かべながら振り向くと彼が心配そうな目でこっちを見て、口を開いた。
「あの.........」
「ん?何だい?」
「君の、名前って何だっけ?」
「私の名前?『方波見 沙樹』だが。それがどうかしたのか?」
「少し、君の事が気になって。何というか皆が近寄り難そうにしてたけど、僕は話した事無かったから、どんな人なのか気になって。それに、出来れば仲良くしたくて。」
................oh、何という事だ。虐められっ子だからってちょっと性格的にもおかしい奴なんじゃないかとも思ったが.........もしかしなくともこの子はかなりいい子なんじゃ無いか?
いやもう何かあれだ。さっきまで損得勘定で考えてた自分が恥ずかしいね。
よし、仲良くする為にもここはあの自己紹介でいこうか。
俺は泰永君に向き合う。そして胸を張って、口角を上げて思いっきり息を吸って叫んだ。
「私の名前は方波見沙樹ッ!誕生日は4月7日ッ!血液型はAB型で、身長は145cm!体重は.....あー.........忘れたッ!趣味は居眠り!好きな物は本と音楽!彼氏は勿論居ない!」
「................」
................................やっべ、何か選択肢を間違えたみたいなんだが。ほらもう泰永君も俯いちゃったし。
やっぱり
「ふふっ」
「 え?」
「ふふっ、はははっ」
「え、ちょ」
「ふふっ、はははっ、あはははっ!」
「おい、どうかしたのか?」
「あはははっ、いや、沙樹さんってこんなに、ふふっ、面白い人だったんだなって思ってさ。」
「そ、そうか?」
「そうだよ!さっきも言ったようにさ、皆が近寄り難そうにしてたから僕も何処か気難しい人なのかなって思ってたけど、全然いい人じゃん!」
お、おう。何というかよく喋るなお前、と言う言葉を何とか呑み込むと、改めて泰永君を見る。
さっきまでの暗い雰囲気は何処へやら。目にはハイライトが灯り、にぱーと眩しい笑顔がそこにあった。
................ん"っ"、ま"ふ"し"い"。
おっと、危うく泰永君の純粋な笑顔に浄化され掛けた。顔に出てないといいが。というかさっきと全く別人だな泰永君。
そして、気付けば沙樹の口から自然と謙遜が出ていた。
「いやいや、泰永君。私はそこまで優れた人間じゃない。何なら私だって差別やら意地悪な事だってするさ。まぁぶっちゃけて言うとさ、君を虐めてる人と同類さ。」
俺がそう言うと、泰永君は一瞬だけ目を丸くしたが次の瞬間にはさっきの様な調子に戻っており、両腕を胸の前に持ってきて声を上げた。
「いや、それでも僕とこうやって話してくれてるだけでも嬉しいんだ!沙樹に比べて、他の奴らは意地悪な事しかして来ないからね。特にあの
「は、ははは、そうなんだ。」
おおう、いきなり虐めについてぶっ込んで来るとは。というか笑顔でそんな事言わないでくれ。俺ちょっと引いたぞ。てか下手すれば俺の顔引きつってるかも知れない。
そんな考えを頭の隅に追いやると、まだ
俺が右手を差し出したのを見て、泰永君が首を傾げた。
「これは?」
「ほら、あれだよアレ。万国共通の挨拶って奴。」
すると、泰永君の笑顔がもっと輝かしくなった。そして嬉々として俺の右手を握った。
「よろしく!沙樹さん!」
「あぁ、宜しく、泰永君。」
それから二人で談笑しながらゴミを拾い続けた。
因みに、その途中で食った梅子さん特製弁当はめっちゃ美味かった。後、中身はのり弁だった。
その人はまるで、僕にとっては救世主のような人だった。
その人の名前は『方波見 沙樹』。
黒に近い茶髪、少し鋭い目。そして何より元気で活発な人だ。
僕と沙樹さんはまるで正反対だった。
僕は活発でもないし、基本的におどおどしてるような性格だったからか、『弱そう』という理由だけで殴られたり蹴られたりetc.......。
まぁ兎も角、そんなのが日常茶飯事だった所に一人の転校生がやって来た。
それが沙樹さんだった。
最初に見た時、僕は何というか『不思議』という印象を持った。
彼女は、特に何もしている訳でも無いのに近寄り難い雰囲気を持っており、彼女自身は何もしていなくとも何かと遠ざけられている所がある。
授業はいつも机に突っ伏して寝ていて、禄に聞いてない筈なのに昨日の小テストでは満点を取っていた。それでも彼女は喜ぶでも無く、テストを一瞥するとまた突っ伏した。
(何だろう、自由な人だな。)
居眠りする彼女を他所に、今日も僕は
それから数日。
森のゴミ掃除のボランティアにて、沙樹さんとペアになった。
................正直に言うと、彼女も
なんと彼女、僕が話し掛けても嫌な顔一つせずに自分の自己紹介をしてくれた。いや、本来それが普通なんだろうけど。
それに結構面白い人でもあった。あそこまで堂々として、それでいて独特な自己紹介は見た事が無かった。それに何より僕に握手を求めてくれたのが嬉しかった。
握手してから少し経った頃。
僕と沙樹さんは談笑しながらゴミ拾いをし続けていた。
「 へぇ、沙樹さんって今は親戚の家にいるんだ。」
「まぁちょっと訳ありでね。でも将さんも梅子さんも優しくてさ、さっき食べた弁当だって梅子さんが作ってくれた物なんだ。」
「確かに美味しそうな匂いがしてたもんね〜。やっぱり親戚の人も沙樹さんの事を大事にしてくれてるんだね。」
「あぁ、本当に引き取ってくれた親戚には感謝してもしきれないぐらいだ................と、そろそろいいかな?」
沙樹さんがそう言いながら足元を見下ろすと、そこにはパンパンに詰まったゴミ袋が置かれていた。
僕が様々な角度でゴミ袋を見てみると、ぎゅうぎゅうに詰まった錆びたネジや灰色のプラスチック片が一つの地層の様にも見えた。
暫くそうしていると、「ほれ」と沙樹さんが軽く肩を叩いた。
「そろそろ行くよ、集合の時間まであと20分だ。」
「あ、うん!」
意外と重いゴミ袋を持って広場まで歩こうとした瞬間。
「ッ‼︎」
沙樹さんは
「っは、なにす「喋るな」むぐっ⁉︎」
突然引っ張られた事に抗議の声を上げようとすると、沙樹さんは片手で僕の口を塞ぎ、もう片方の手で持ってたゴミ袋を置いて人差し指を口に当てた。
それから、沙樹さんはまたそっと木の陰から覗くと片手で僕の口を塞いだまま僕にも見せる様に肩に寄せた。
そこには、オレンジ色の着ぐるみのような形の生命体と、黄色のずんぐりしたなめくじの様な物が居た。
「今の、見たか。」
唐突に沙樹さんが尋ねる。
口を塞がれてる僕はコクコクと頷くと、沙樹さんは思い出した様に手を離して謝罪を口にした。
「いきなり引っ張ってすまん、だがそうでもしなきゃお前の命が危なかった。」
「い、命?」
「あぁ、あれは認定特異災害の『ノイズ』触れれば体が塵と化す。」
それを聞いた瞬間、僕は口をあんぐりと開けて大きな声を上げていた。
「塵⁉︎」
「バカ!声が大きい。だがこのまま気づかれずに逃げれば何とかなる。なるべく静かに歩けば『バキッ』は?」
木の割れる音と共に沙樹さんの重低音が聞こえた。どうやら沙樹さんが木の枝を踏んでしまった様だ。
そして二人で、もう一度木の陰からノイズのいた所を覗いてみるとそこには
ノイズがこっちをガン見していた。
「走れ‼︎」
沙樹さんが声を荒げるのと同時に僕は沙樹さんと二人で全速力で走りはじめた。
僕達が走り始めたのが合図だったのか、ノイズもこっちに向かって走ったり這いずって来たりと様々な追いかけ方をして来た。
そんな中、二人でほぼ叫ぶのと同じぐらいの声で喋る。
「ちっ、私の不手際とはいえ厄介だなこいつら..........!」
「ねぇ、何か攻撃手段とかは無いの⁉︎」
「殆ど無いと言っていい!ノイズ特有の障壁、その名は『位相差障壁』!次元の違いを操って自分が『現世に存在する比率』を変えてこっちの干渉を無効化、もしくは弱くする事が出来るんだ!」
「つまり⁉︎」
「詰み!王手!!チェックメイト!!!」
「駄目じゃん⁉︎」
「ホントね!勘弁して欲しいけど.......っあっぶね‼︎今頬スレスレだった‼︎...........あ、そういえば!道ってこれどうなってんの⁉︎」
「え、僕分かんないよ⁉︎真っ直ぐ進んでるだけだからね‼︎」
「ファッ⁉︎じ、じゃあこれって.........」
そこまで言い掛けた時、目の前が森が開けた。そしてその先には、崖が広がっていた。更に、その崖は目測で大体数十メートルはありそうな程高かった。
そして、もうにがさんと言わんばかりにジリジリと距離を詰めてくるノイズがそこに居た。
「ど、どうしよう沙樹さん............。」
僕がそう言いながら横を見ると、沙樹さんは
やがて、彼女は口を開く。
「なぁ、
「ひゃっ、はい⁉︎」
いきなり名前を呼ばれた事で少し変な声が出たが、沙樹さんはそれを気にも留めず口角を上げたままだった。
「あー、何だ。
「え?」
「奇跡だよ、奇跡。ほら、何かすげー幸運な事とかさ。そういうの。」
「えっと......じゃあ、信じる。」
「おっけー、じゃあそれに身を任せましょうかね。」
そう言ったが直後、沙樹さんは僕の手首を掴むと駆け出して
宙を飛んだ。
「うわぁぁぁぁあああぁぁ!!!!」
気持ち悪い浮遊感に思わず叫んでしまう。どんどん地面との距離が短くなって来ているのに、目が離せない。目を瞑りたいの瞑れない。そんな恐怖の中。
歌が聞こえた。
「knight of 」
美しくも哀しく。
「crazy Aroundight 」
強くも脆い。
「tron」
湖の騎士の歌だった。
気が付けば、僕は膝裏と背中に手を回され抱きかかえられている所謂、『お姫様抱っこ』をされていた。
そして彼女と僕は
「う、あぁ?」
またもや、腑抜けた声が出てしまう。そんな僕を覗き込んでいたのは紅に光るバイザーが特徴的な軽甲冑の少女だった。
「沙樹、さん?」
彼女の名前を呼び、この特異な現状を見ていると、僕達を追って来たであろうノイズがやって来たが、それでも彼女は僕を抱えたまま動かない。
そしてノイズが、僕達に接触しそうになった刹那
革のしなる様な音と共に幾本もの黒いコードが
まるでコードが生き物の様に貫き、打ち、果ては締め切る。
そして、抱きかかえていた僕をゆっくりと下すと彼女は立ち上がり、笑う、否、嗤った。
「ホンット、ついてねぇよなぁ
「取り敢えず、死ねや」
今、狂気を孕んだ騎士の蹂躙劇が始まる。
次は戦闘回かも。